**** 農水省海外農業情報 **** Sub:フランス、030619、殺虫剤「ゴーショ* を巡る問題   *ゴーショは日本商品名では、ガウチョです。   <要約>  バイエル社製造の「ゴーショ」という殺虫剤をめぐり、この殺虫剤が原因で蜂の数が減 り、養蜂業が脅かされているとする養蜂業者と、因果関係を否定するバイエル社との対立 が続いている。養蜂業者は、ゴーショがヒマワリ栽培に使用され始めた93年直後からこの 問題を指摘し、99年、当時の政権がこれについて明確な調査結果が出るまでの予防措置と してヒマワリ栽培でのゴーショの使用認可を全国的に一時停止したが、ヒマワリ栽培以外 の使用は継続されている。   <本文> [減少する蜂の数]  フランスでは、ここ数年、蜂の数が減少している。仏養蜂業者は蜂の減少により、蜂蜜 の収穫量のみならず、植物の受粉、しいては植物種の存続にも影響がでると危惧している。 この原因としてヒマワリなどに使用されている殺虫剤、ゴーショ(Gaucho)の影響が指摘 されているが、ゴーショの使用認可の取り消しを訴える養蜂業者と、因果関係を否定する 製造元のバイエル社との対立の狭間で、仏農業省は決断を迫られている。  1993年にバイエル社製造の殺虫剤、ゴーショ(Gaucho)がヒマワリ栽培用に使用され始 めた直後から、蜂の数の激減がフランス中部地方でみとめられ、その後、同様の現象は全 国各地に広がった。これに伴い、ヒマワリ蜂蜜の収穫量も減少しており、95年から2000年 にかけて半減したとされている(ちなみに、蜂蜜全体の収穫量は95年の3万2,000トンから 2001年には2万5,000トンへ減少)。ゴーショ殺虫剤は当時、フランス国内のヒマワリ栽培 地面積の半分において使用されており、蜂の減少とゴーショとの因果関係が養蜂業者によ り指摘されていた。  バイエル社が開発した殺虫剤、ゴーショはイミダクロプリド(imidaclopride)を主成 分とし、ヒマワリ、トウモロコシ、大豆等の栽培において殺虫剤として使用されている。 ゴーショは種にコーティングされ、土壌中から植物の開花時期を含む全成長期間にわたっ て、殺虫効果を発揮する。蜜や花粉に残留しているイミダクロプリド成分が蜜を吸う蜂の 体内に入り、蜂の中枢を麻痺させ死に至るとされている。しかしながら、ヒマワリに残留 するイミダクロプリド成分の濃度については、バイエル社発表とその他の専門研究機関の 発表との間で数字が異なっている。また、98年にINRA(国立農業研究所)、CNRS(国立科 学研究センター)、ACTA(農業技術協会)を中心とする、農業省、環境省および研究機関 が合同した調査プログラムにより、花や花粉のみならず、土壌の中から残留イミダクロプ リドが検出された。しかし、いずれもゴーショの全面的使用禁止を裏付けるに十分な判定 ができない状況にある。   [フランス行政当局の対応]  ゴーショ問題が世論に浮上し始めた98年前後は、BSEや遺伝子組み換え製品に対する国 民の反発など、食品を含む環境問題が大きく取り上げられていた。当時の仏農相(社会 党)は、ゴーショの有毒性に関する明確な調査結果がでるまで、予防措置をとるべきであ ると環境重視の立場をとり、99年にヒマワリ栽培でのゴーショの使用認可を全国的に一時 停止するという決定を下した(ヒマワリ栽培以外の使用については、認可のまま)。  03年2月に農業省で行われたトウモロコシ栽培でのゴーショ使用の認可延長のための事 前協議において、養蜂業の存続そのものが危ぶまれるまでに追い込まれているとする養蜂 業者の認可取り消し要請に対し、バイエル社はゴーショの使用認可の是非は同社の75人か ら159人の雇用維持にかかるとの経済的要因を全面的に押し出し、最終的に農業省はトウ モロコシ栽培における使用の認可延長との結論を下している。 [フランスは蜂蜜の輸入国]  フランスは蜂蜜の輸入国であり、98年統計によると、フランス人は年間1人当たり600グ ラムの蜂蜜を消費しており、年間約4万トンの消費量に対し、1万4,000トンを輸入してい る。また、ヒマワリ蜂蜜は原料として食品産業用に使用されるものであり、食用にビン入 りで販売される蜂蜜と比較すると単価が安い。ヒマワリ蜂蜜の生産量減少による消費者へ の直接の影響は少ないものの、人の健康への影響については未知数が多い。ちなみに、隣 国のオランダでは、イミダクロプリド成分の土壌中の残留量が欧州基準を大幅に上回ると して、同成分の開放系栽培での使用を2000年1月以降、全て禁止している。しかしながら、 農薬の市場投入に関する欧州指令第91/414号において、農薬の環境リスクに関する判断は 各国に委ねるとされており、残留農薬に関する欧州統一の基準は存在していない。