反農薬東京グループからキャンペーンのお知らせ(2015年1月29日)

厚労省のネオニコ系農薬クロチアニジンの残留基準案にもう一度パブコメ意見を出そう


 てんとう虫情報最新号(2015年1月発行)でネオニコ系農薬のクロチアニジンの残留基準が緩和されるという記事を載せました。ちょうど発行日の1月23日に厚労省はクロチアニジン残留基準案に関するパブコメ案を公表し、意見募集を始めました。締め切りは2月21日です。

 今回の2015年のクロチアニジン残留基準案のパブコメ募集は こちらに出ています(投稿フォームもあります)。

 2013年の前回のパブコメには1657件の意見が寄せられ、ほとんどが反対意見だったため、厚労省は基準値案を凍結し、食品安全委員会にパブコメで指摘された発達神経毒性試験やARfD(急性中毒発症推定量)など新しいデータを評価してもらうとしてきました。昨年10月に、同委員会がADI(一日摂取許容量)を従来通りの0.097 mg/kg体重/日、新たにARfD(急性中毒発症推定量)を0.6 mg/kg 体重と設定したことを踏まえ、改めて厚労省が残留基準値案を出してきたものです。

 ARfDというのは、厚労省などは「急性参照用量」というわけのわからない言い方をしていますが、一度に多量に食べた場合に、急性中毒を起こすかもしれないという数値です。食品安全委員会はEUの0.1mg/kg体重の6倍に設定しました。

 前回のパブコメで、圧倒的多数が基準緩和に反対したのだから厳しくなると普通は考えますが、厚労省は厳しくするどころか、前回そのままの高い数値を示した上、新たに16作物について更なる緩和を提示しました。
 例を挙げると、
               現行    新提案
   米           0.07ppm から 1ppmへ
   カブ類の葉       0.02     40
   ケール、コマツナ    1       10
   チンゲンサイ、セロリ  5       10
   シュンギク       0.2      10
   パセリ         2       10
   ミツバ         0.02     20
   ホウレンソウ      3       40   などなどです。
 今回の残留基準案の問題点について、てんとう虫情報の記事t28101で、詳述しましたが、ここでは、その要点を示しますので、みなさまも、厚労省へ基準緩和反対のご意見を出してください。

■食品安全委員会がADIを0.097 mg/kg体重/日、ARfDを0.6 mg/kg 体重としたことに対し、私たちはパブコメ意見で、もっと厳しくすべきだとしたが、受け容れられなかった。ARfDが、EUの0.1 mg/kg 体重より6倍も緩く、これに、基づく、残留基準の設定は問題である。

■2013年提案よりもさらに残留基準が緩和された。国のリスク管理には、予防原則の立場で、出来るだけ農薬の摂取量を減らそうとする姿勢がみられない。


 昨年、作物ごとの 一人当たりの一日摂食量を意味するフードファクターの見直しがあり(それまでのフードファクターは現状を反映していないためと説明されました。いいかげんな数値だったわけで、それを元に計算していたことになります。)ADIはそのままで、農薬推定摂取量は作物別及びその総和の算出値が 変更されました。
 理論最大一日摂取量(TMDI)は、残留基準ギリギリの農薬が残留していた場合の摂取量で、これがADIの80%以下なら安全だと厚労省は主張しています。幼小児は、フードファクターの変更で、2015年案では、2013年案よりも減っていますが、他の区分では増えています。
   表 TMDIとその対ADI比の推移
   年            国民平均    幼小児    妊婦     高齢者     
   2009  TMDI     918.8     519.8     811.2     955.3 μg/日/人  
       対ADI比%     17.8      33.9      15       18.2  %
   2013  TMDI     1801       966.2     1577.5   2011.6 μg/日/人
        対ADI比%       34.8      63         29.2    38.3  %
   2015  TMDI     2011       927.2     1590.3   2507.1 μg/日/人
        対ADI比%       37.6      57.9       33.3     46.1 %

■EUよりも6倍緩いARfD基準値に対し、人はいろいろな食べ物を食べるのに、1作物ごとに、対ARfD比が100%を超えなければ、安全だとしている。

 40ppmも残留したホウレンソウを子供が食べても安全だとした理由は、作物ごとに決めた最大摂食量(14年11月27日に初めてリスト公表)をベースに、基準ギリギリに残留していたとして計算した農薬の短期摂取推定量=一時多量摂取量がARfD以下だからだというのです。
 子供はホウレンソウしか食べないと思っているのでしょうか。

 幼小児(1〜6歳)の場合、下記の3作物で、最大摂取量と日本及びEUのARfDと比較してみました。3種合計では、日本の基準でも、100%を超えてしまいます。 1作物ごとにARfDを超えないとする安全評価の理由を糾し、改めてもらいましょう。 また、EUのARfD値は日本の6分の1ですから、クロチアニジンの一時多量摂取量 は、ホウレンソウだけで安全とされる量の4倍、3種の合計で6倍を超えてしまうのも問題です。
     作物別の残留基準と一日最大摂食量       対ARfD比%
                            日本    EU  
    米(残留基準1ppm、最大摂食量179.2g)      1.8%    10.8%
    ほうれんそう(残留基準1ppm、最大摂食量102g)  74.8%   449%
    ぶどう(残留基準1ppm、最大摂食量164.7g)    25.5%   153%
      3種合計                  102%      613%

■前回のパブコメ意見への回答を求めた上で、新パブコメ意見の提出を!

 厚労省は、2103年のパブコメ意見について、下記のような集計数を示しただけで、個別に回答をしていません。
 2013年パブコメ意見の集計結果

 今回、ほとんど同じ内容で新たにパブコメをやるわけで、1657件の意見は無視されたと言えます。厚労省は、今回のパブコメの回答は基準が決まった時に回答を出すと言ってますが、その時に、原案通り決まりましたといわれても、後の祭りです。

 前回パブコメ意見に対して、厚労省が回答を示さず、再度、意見を求めることはおかしいと思います。厚労省の見解を知り、それに対して、私たちが再反論を述べるのが筋です。

 せっかく苦労して書いたパブコメをこのように無視するなと今回のパブコメにしっかり書いてください。
 さらに、私たちが何も言わないとそのまま決まってしまいます。そこで、提案します。

「2013年に出した意見に回答がありません。この意見にきちんと回答してください」と書いて、前回の意見を貼り付けるなどでもいいと思います。 もちろん、新しい意見も書いてください。


 2013年案に対する1657件の意見は、グリーンピース・ジャパンのHPに掲載されています。  2013年の全パブコメ意見
また、今回のパブコメについてはグリーンピース・ジャパンのブログを。

反農薬東京グループが発行した脱農薬ミニノート4もご参考に

農薬も一緒に食べる?〜クロチアニジン残留基準の大幅緩和〜

  発行日:2014年5月15日     定価:400円   送料:10冊まで100円   申し込み:メールフォーム   農薬が40ppm残留した   ホウレンソウは、   インクを40ppm添加した   着色水を飲んでいる   ようなものです