食品安全委員会DVD「気になる農薬」に関する要望

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                                                    2007年4月19日
食品安全委員会 御中
 いつもお世話になっている反農薬東京グループです。  貴委員会は、3月末、DVD「気になる農薬」を配布し、HPで公開されました。  私たちは、日本の食の安全・安心確保のため、リスク評価をする貴委員会が情報発信する
際には、あくまで、科学的で偏よりのない態度で終始すべきであると考えます。  農薬に関する知識を拡げようというのであれば、現在の知見であることを明記した上で、 メリット/デメリットを客観的に知らせるべきであると思います。  映像を拝見したところ、DVD「気になる農薬」は、農薬の安全性を強調するにとどまり、 デメリットについては殆ど触れず、今後想定されるリスクについても目をつぶっているなど、 まるで、農薬業界が作成した映像ソフトと見間違えるばかりです。  これは貴委員会がその使命を逸脱し、農薬使用を推進しているととられてもいたしかたな いのではないでしょうか。いかなる意図でDVDを作成したのか、その姿勢をまず問い糾し たいと存じます。  さらに、下記(1)から(8)に示すような問題点が見出せました。  このまま、DVDの配布やHPでの公開をつづけることは、国民に農薬の安全性につい て、誤解を与えることになると思いますので、以下の要望を行います。 4月28日までに文書で回答ください。     =================================================       ★★★反農薬東京グループ★★★ 代表:  辻 万千子       〒202-0021東京都西東京市東伏見 2−2−28−B        電話/ファックス:042-463-3027        E-mail:mtsujiアトマークjcom.home.ne.jp URL http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/      ==================================================      ********** DVD「気になる農薬」の問題点 ********** 1、農作物における残留農薬の検出率を0.44%としている  2005年2月7日に、当グループは、貴委員会に参考資料のような「残留農薬の検出率の算 出方法について」の要望をだしたが、厚生労働省へ丸投げされただけで、貴委員会の見解は 示されなかった。  DVDでは、私たちの問題提起にもかかわらず、総分析農薬件数をベースにした検出率 0.44%を挙げ、農作物での残留農薬検出率が低いことを強調している。  農作物検体ベースの検出率は約20-40%であることは周知された事実で、分析対象農薬を増 やすほど、検出率が低下するような総分析農薬件数をベースにした算出方法は、非科学的で あり、この点を修正すべきである。 2、メーカー見学の場面で、農薬の選択毒性の話しがでたが、現在使用されている農薬は すべて、選択毒性があり、人に対する毒性がないような誤った印象を与える。  化学合成農薬使用による環境負荷を低減するため、昨年12月「有機農業推進に関する法 律」が施行された。農薬は、適正と思われる使用をしても、自然環境や生活環境を汚染し、 生態系や人の健康に影響をあたえる毒性を有していることを、もっと強調すべきである。 3、毒性試験について ・発癌性、催奇形性、アレルギー、生殖毒性、次世代への影響試験などの動物実験が行われ ているが、試験データについては、すべてが公開されているとはいいがたい。  たとえば、今年2月、イチゴのホスチアゼート残留が問題となったが、当グループがメー カー石原産業に残留試験データの開示(農薬抄録、農薬評価書)を求めたところ、『農薬抄 録、農薬評価書は弊社知的財産に属する情報ですので公開しておりません』との回答がきた。 これでは、消費者とのリスクコミュニケーションが十分とはいえない。 ・発癌性のある農薬については、非遺伝毒性メカニズムでない農薬が使用されている。 ・脳・神経系、生殖系、免疫系への影響については、現在の動物実験から評価できないもの があり、さらなる科学的評価が求められている。 ・複合毒性や同一メカニズムを有する農薬類の総合毒性の評価はなされていない。 ・動物実験データから得た無毒性量による毒性評価では、化学物質過敏症患者のようなハイ リスクな人の健康被害を防止できないことに触れていない。 4、農薬の摂取量について  農薬の年間摂取量について説明があったが、年齢別、趣好別の食品からの農薬摂取量につ いての評価をいれるべきである。  また、農薬は環境中で使用されるものであり、水系や大気を汚染している農薬の危険性に ついても触れ、食品以外の水、空気由来の農薬摂取量も評価にいれるべきである。 5、農薬使用に際しては、「きちんと使われていれば」安全性を心配することはないとの趣 旨の解説があったが、農薬取締法が遵守されない場合もみられるし、適正な使用と考えられ ていても、残留基準、一律基準を超える例がある。 6、「残留基準はきびしく管理されている」との発言があったが、ポジティブリスト制度実 施にともない、リストに挙げられた農薬類については、貴委員会が毒性評価をしておらず、 また、曝露量評価がなされないまま、暫定的に残留基準をが設定されたものも多数ある。  さらには、0.01ppmの一律基準に対応する分析方法が確立されていない農薬も多数ある。 7、ADIの算出において、動物実験から得られた無毒性量に安全係数1/100を乗ずるとの説 明があったが、脳・神経系などが未発達の子どもに対しては、安全係数1/1000を採用した場 合もあった(事例、厚労省がしろあり防除剤クロルピリホスの室内空気指針値濃を決める場 合に採用された)ので、1/100で安全だとはいえない場合もある。 8、ADI 0.01mg/kg体重の説明に、プールの水中濃度を例に1/100000000としたが、  体重当たりの絶対量を水中濃度と同列視して、比較するのは、非科学的である。            ******* 質問と要望事項 ******** 【1】DVDの制作についての質問 1)いつからどこの部署がどのような意図で、DVD制作を企画し、どのような経過で、最 終的に、現DVDが作成されたか、制作経過を明かにされたい。 2)解説・監修は、鈴木勝士食品安全委員会農薬専門調査会座長となっているが、シナリオ の作成にかかわったメンバーを教えられたい。シナリオ作成過程で、どのような論議がなされ、 また、シナリオを最終チェックをしたのは、誰か。 3)制作は NHKエンタープライズとなっているが、契約は随意契約か、一般入札か、 また、制作経費はいくらだったか、契約過程と契約書内容及び経費を明示されたい。 4)上述の問題点で挙げた1〜8の項目について、項目毎に貴省の見解を示されたい。 【2】DVDの配布とHP公開についての要望 1)上述のような問題点がある現DVDの配布を中止されたい。 2)すでに配布を受けた人には、上述の問題点を踏まえた解説文書を作成し、配布された い。 3)現映像のHPからの閲覧を中止し、HPでも上述のような問題点を踏まえた解説文書を作成し、公開されたい。    *****【参考資料】2005/02/07の当グループの要望(該当部分のみ抜粋)*****  U、残留農薬の検出率の算出方法について  厚生労働省は、下記HP  http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/040621-1.html  で、残留農薬調査結果を公表し、総農薬分析数をベースに算出した検出率を示し、  『検査の結果、国産・輸入品を含む全検査中で農薬を検出した割合、また、そのうち基  準値を定めている農薬で当該基準値を超えた割合がいずれも低かったことから、我が国  で流通している農産物における農薬の残留レベルは極めて低いものと判断される。』と  結んでいます。   一方、下記5ヵ所の地方衛生研究所の報告  http://www.chieiken.gr.jp/koseirodo/kiki-kanri/kensa/kensa.pdf では、  『その結果、総計28 万5 千件(検体数×分析項目数)の入力されたデータベースを用  いて、検出農薬、濃度、食品群との関係等を検索した。総検査件数に対する検出農薬数  の割合は0.54%(H11年厚生労働省全国集計での検出比率0.7%)、又検体総数(2,012  件)に対する農薬検出率は38.9%で、国内産検体では41.4 %、輸入品全体では36.2 %  の検出率であった。』と記されています。  残留農薬の検出率がコンマ以下であるのと、数10%であるのとでは、消費者が受ける  印象が違います。    厚生労働省のように総分析農薬数をベースにした検出率の算出方法では、使用しても  いない農薬を対象にし、分析する農薬数を多くすればするほど、検出率は低くなるのは  道理で、農作物における農薬検出率はこんなに低いという誤解を消費者に与えます。  そこで、以下の要望をします。  【要望5】厚生労働省に対し、残留農薬検出率の公表に際しては、総分析農薬数      ベースでなく、検体総数あたりの検出率を発表するよう求めてください。

この記事の出典:反農薬東京グループホームページ。転載希望・機関誌購入はメールフォームで。
作成:2002-05-12