2007年4月13日 **************************** 農薬危害防止運動に関する要望 **************************** 農水省消費・安全局長 殿 厚労省医薬食品局長  殿  毎年6月から実施されている農薬危害防止運動に関して、実効あるものとするために 今年度は以下の要望をいたします。  2006年度は5月末に、食品衛生法で残留農薬ポジティブリスト制度が実施され、12 月には、化学的に合成された農薬を使用しないこと等を基本とする「有機農業推進に関 する法律」が施行されました。環境省が地方自治体を対象に街路樹、公園緑地等での防 除実態調査を実施した結果、不適正な農薬使用事例が判明し、07年1月末には、「住宅 地等における農薬使用について」が新たに、農水省と環境省の2局長連名通知(以下、 「新通知」という)として発信されました。  また、私たちのグループは、06年11月から12月にかけて、農薬に関する都道府県アン ケートを行い、事故や被害等の実態を調べました(添付資料参照)。  2006年度には、以下のような農薬に起因する事件・事故や農薬による環境汚染が相次 ぎました。  ・和歌山県有田川町のありだ農協及び愛知県豊田市の農園での農薬盗難事件  ・長野県での農薬不法廃棄事件  ・東京都、長野市、青森県東北町、南あわじ市、鹿児島市、大阪府摂津市、   神奈川県平塚市と藤沢市、愛知県岡崎市、大阪府枚方市等での野鳥や犬・猫の   農薬入り毒餌事件  ・広島県庄原市と長野県でのクロルピクリンによる人体被害、  ・新潟市の小学校での児童のマラソン被曝や愛知県新城市での小学生農薬散布体験  ・茨城県の筑西市での農薬空中散布ヘリコプター墜落事故  ・三重県津市でのベンゾエピンによる魚毒事件  ・滋賀県の三共野洲川工場跡地でのエンドリン、水銀等の農薬汚染、熊本県の   旧三光化学農薬工場でのPCP、BHC汚染。千葉県香取市のBHC埋設個所での漏洩。   福島県の旧農業試験場跡地でのベンチオカーブ汚染。  ・岩手県や山形県での農薬によるミツバチ被害  ・島根県、滋賀県、鳥取県での農薬水系汚染によるシジミの残留・一律基準超え  ・ヤフーネットオークションで、毒物指定の ジクワット・パラコート液剤や   除草剤の小分け・ミックス販売。  上記のような農薬をめぐる法規制の動きや事件・事故ほかの事例、さらには、私たち のアンケート調査結果を踏まえ、本年の農薬危害防止運動をより強化すべきと考え、以 下の要望をします。              ********** 要 望 ********** 1,農薬事故や健康被害をなくすために  前文にあげた事例のほか、化学物質過敏症患者から農薬被害の訴えがあり、その実態 の一部が、日本テレビ製作のドキュメンタリー「カナリアの子供たち〜検証化学物質過 敏症」で紹介されたことは、記憶に新しい。再発防止のため、中毒や被害事例を具体的 に提示することが必要と考える。私たちの都道府県アンケート調査結果のまとめを添付 するので、参考にしていただきたい。 (1)農薬事故をなくすためには、防除業者への指導が必要である。早急に、滋賀県や 兵庫県のように防除業者届けを提出させること。 (2)「新通知」について  @わかりやすいチラシを作成し、配布する。あわせて都道府県や政令市の ホームペ ージに掲載する。愛知県のチラシ「みなさんにお知らせとお願い−住宅地等にお ける農薬使用について」 (http://www.pref.aichi.jp/nogyo-keiei/jizoku/jyuutakuchirasi.pdf) を代用してもよい。  A上記チラシを農薬販売店や行政窓口に置き、造園業者・防除業者、農業者はもと より家庭での農薬使用者に対しても、その内容を周知徹底する。  B農薬危害防止月間中、農薬販売店は上記チラシを購入者に手渡すこと。 (3)農薬危害防止月間のポスターについて    毎年出されているメッセージ性のないポスターは廃止し、重点目標を記したポスタ ーにする。 (4)農薬危害防止月間の6月以降も、危被害の発生が懸念されることから、一部の都 道府県ではその期間を3ヶ月としているように、国としても、期間を延長して6 〜8月を危害防止月間とすること。 2,有人・無人ヘリコプターによる農薬散布について  昨年6月には、群馬県が、無人ヘリコプターによる有機リン剤散布自粛を打ち出した。 さらに、今年度から、新潟県中越防除協議会が有人ヘリコプター、長野県上伊那地区で の無人ヘリコプターによる散布中止も報ぜられている。この流れを加速するために以下 の要望をする。 (1)有人ヘリコプター散布  @有人ヘリコプターによる空中散布は毎年減少しているが、まだ杜撰な散布をして いるところもあるので、中止する方針を明示する。(準備期間が必要ならその期 間を示す)  A空中散布に際しては、健康被害を受ける住民を地区協議会の一員にいれ、その意 見を聞くこと、  B有機圃場や住宅地等との農薬散布地との間の緩衝地帯幅を明確にすること (2)無人ヘリコプターによる農薬散布について    農水省植物防疫課が無人ヘリコプターでの農薬散布についてパブリックコメントを 求めたものの、いまだ、運用基準がだされていないばかりか、その結果すら公表さ れていない。早急に結果を公表し、厳しい基準を作るべきである。    また、無人ヘリコプターは地上散布の100倍もの濃度で散布されている。こうし た方法が環境や人体に与える影響の調査をしてあるのか。どのくらい飛散し、ど のくらいの濃度で、どのくらいの期間大気中にあるのか、データを示すべきであ る。  そこで、以下の提案をする。   @人体や環境に安全であるという根拠が示せない場合は、無人ヘリコプター散布を 推進するのはやめるべきである。   A無人ヘリコプター空中散布でも、長野県や広島県のように、防除者から実施計画 届を提出させること。  B無人ヘリコプター散布をする場合、緩衝地帯を数値で示すこと。  C無人ヘリコプターによる住宅地周辺での空中散布を直ちにやめること。  D無人ヘリコプターによる高濃度の散布液では、一切、現地混用をやめること。 3,非農作物用除草剤について  非農耕地用除草剤は農薬と同じ成分でありながら、依然として、何の規制もない。環 境省とも連携をとり新通知に準じた指導をされたい。 4,食品への汚染防止 (1)危害防止の「危害」には、農・畜・水産物に農薬が飛散し、残留基準や一律基準 を超えることが含まれることを明確にし、ドリフト防止に万全を期すること。 (2)魚介類の汚染防止のため、水田使用農薬での止水期間遵守だけでなく、種子消毒・ 育苗処理の農薬廃液や散布残液による水系汚染を防止すること。 (3)水道水源や水産物への農薬汚染を防止するため、関連水域での農薬使用計画を提 出させ、場合によっては、使用量の規制を実施すること。 5,その他 (1)夜間の農薬散布を禁止すること。    環境省の調査においても、夜間に農薬散布が実施されているとの認識がない。天 候の確認や予測、また、散布地周辺の状況が把握できない夜間の散布は、危険な ので禁止すべきである。 (2)農薬による人身事故や野鳥・小動物の被害、農作物や水産物等の被害、不法投棄 についての実態調査及び危機管理は、縦割り行政の弊害でバラバラで行われてい る。また、そうした事故を把握してない県もある。今後、担当部署を決め、一本 化して実施すべきである。 (3)シジミについて、農薬が基準を超えて検出される事例が、島根県、鳥取県、滋賀 県で明らかになっている。流域での農薬使用方法の遵守だけでなく、使用量の規 制を実施すべきである。 (4)ミツバチ被害が、昨年も、山形県や岩手県で起こったが、原因とされるクロチア ニジン等の使用を規制すべきである(私たちは、ミツバチの被害が斑点米防止の ためのカメムシ防除対策として実施されている農薬散布に起因しているため、農 産物検査からコメ着色粒の項目削除を求める要望を行っている)。 (5)有機農産物圃場や他作物へのドリフト被害防止対策につては、その責務は農薬使 用者にあることを、再度、明確にされたい。 (6)野鳥や小動物の中毒死事件が多発している。餌に混入されることの多い毒劇物指 定の農薬の販売については、対面販売で、身分証明提示を義務づけるべきである。 とくに、メソミル、パラコート含有製剤については、販売・使用規制を強化すべ きである。 (7)学校や公共施設での芝生化、屋上や壁面緑化が進められているが、これらは新通 知の「住宅地等」に該当するため、農薬不使用を明確にするべきである。 (8)農薬包装・容器、廃農薬の処理については、農薬使用者や販売業者に任かせるだ けでなく、農薬メーカーを含んだ回収システムをつくるよう行政指導すること。 (9)鉄道用地への除草剤等の農薬使用は、用地の境界が道路などの公共用地や民地に 接していることがあるので、鉄道事業者に対しても新通知を配布し、協力を求め ること。  また、やむを得ず農薬を使用する場合は、見やすいところに事前予告、また、事 後もその旨の表示をすること。 (10)米軍基地は、日本法令に服さないが、基地の境界が道路などの公共用地や民地 に接していることがあるので、基地各々の司令官に対し、新通知を送り理解と 協力を求めること。  また、農薬危害防止月間についても、協力を求めること。 (11)危害防止の通知は毎年6月ぎりぎりに出されるが、都道府県が準備できないの で、できる限り早く発出するべきである。