***** 平成20年度農薬危害防止運動に関する要望 ***** 2008年4月1日 農水省消費・安全局長 殿 厚労省医薬食品局長  殿   反農薬東京グループです。いつもお世話になっています。  ところで、本年も農薬危害防止運動月間が近づいてまいりました。私たちは、昨年7月 電子版資料集「農薬危害防止運動について」(本要望にe資料6贈呈.pdfファイルとして添 付贈呈します)を発行し、この運動を実効性のあるものにするため、  ・農薬危害の正確な実態把握と情報公開が重要  ・農薬犯罪には、危機管理体制の一本化で対処を  ・インターネットでの農薬類の販売は禁止すべき  ・農薬不法投棄防止のために〜 回収システムの確立を  ・農薬使用者に免許制度の導入が必要  ・一般住民参加の危害防止運動を  ・最良の危害防止対策は農薬使用を減らすこと など、いくつかの提言をしました。  しかし、危害の発生は止むことがありません。  2007年度には、以下のような農薬に起因する事件・事故や農薬による環境汚染が相次 ぎました。  ・07年6月、青森県つるが市で、県委託事業として、道路除草に使われたグリホサート   系除草剤が飛散し、周辺の水稲や大豆ほかの農作物に被害を与え、県が補償金を支払   うとともに、委託散布業者が処分を受けた。  ・07年9月、鳥取県米子市で、並木に散布したMEPが収穫間近の水稲に飛散し、その   出荷が遅れた。  ・国産農作物においても、農薬取締法違反(適用外使用、使用方法の誤り、ドリフト防   止対策の不備、散布器具等の洗浄不備)や土壌残留による後作物への移行により、残   留基準や一律基準を超える事例が明らかになった。  ・クロルピクリンによる地下水汚染が08年1月に秋田県で、08年3月に新潟県で発覚した。  ・福岡県久留米市の三西化学跡地とその周辺でPCP、BHC、CNP、ダイオキシン   汚染が明らかになり。詳細調査後、対策が講じられている。  ・熊本県荒尾市の三光化学跡地でのPCPの水系汚染が継続し、現工場からの排水規制   がなされている。  ・シジミの一律基準や残留基準超えの対策として、関連流域での当該農薬の使用規制に   よる対策でなく、残留基準を緩和して、販売規制をなくす対策がとられている。  ・07年7月北海道苫小牧市、長野県飯田市で、8月に大阪府枚方市で、11月に沖縄県大   宜味村で、08年1月に山梨県甲府市で、08年3月に徳島県徳島市で、犬猫野鳥毒死事件   が起こった(メソミル、エチルチオメトンなどが使用された)、  ・07年11月に、三好商事株式会社が製造・販売した「アグリクール」にアバメクチンが、   08年2月に三浦グリーンビジネスが輸入・販売した「NEW碧露」、「緑豊」及び「凱   亜」に、ピレトリン、ロテノンが検出され、回収が命じられた。  ・農薬の河川汚染・魚毒事件が、07年7月に高知県土佐市と愛媛県松山市、山形県天童   市で、8月には佐賀県唐津市で起こった。(べンゾエピン、トルフェンピラド)  ・07年9月福島県のホームセンターでは、毒劇物取扱責任者を置かないで販売していた   だけでなく インターネットでも劇物農薬が販売がつづいている。  ・07年10月奈良県、劇物臭化メチル農薬が販売店倉庫から盗難事件がおこった。  ・農薬の適用外使用や使用方法の誤り、ドリフトによる残留基準・一律基準超えだけで   なく、土壌残留した農薬の農作物への移行が問題となった。07年9月北海道産カボチ   ャにヘプタクロル、水稲育苗箱で使用したジクロシメットがコマツナ(07年11年、秋   田県)やアスパラ菜(08年1月新潟県)に移行した事例があった。  ・08年1月から2月、中国産冷凍ギョーザにメタミドホスが混入され、これを食べた人の   中毒事件が起こった(現在、原因不明)。このほかにも、DDVP、パラチオン、パラ   チオンメチル、ホレート、などが冷凍食品から検出された。  ・通知「住宅地等における農薬使用について」の周知については、農水省や環境省が努   力していることは認めるが、まだ予防的定期散布がなされている例がある。また、個   人の庭、マンション、団地等の民間所有地での農薬散布はずさんな例が多い。さらに、   住宅地に隣接する農地の農薬散布に関しては、ほとんど手がつけられていない。  以上の事例を踏まえ、私たちは、本年の農薬危害防止運動をより強化すべきと考え、下 記の要望をします。      =================================================       ★★★反農薬東京グループ★★★ 代表:  辻 万千子       〒202-0021東京都西東京市東伏見 2−2−28−B        電話/ファックス:042-463-3027        E-mail:mtsuji@jcom.home.ne.jp URL http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/      ==================================================      *****  要望  ***** 1、農薬による危害統計の充実を求めます。  農薬の危害統計は、人については農水省、厚労省、警察庁がなど別個に実施されてい  ますが、これを統一的に行い、具体的内容を公表して、同種事例の発生防止に努めてく  ださい。農薬による農作物被害や物損被害や人の健康被害以外にも次のような事例の統  計が必要です。  ・農薬取締法の違反事例( 製造・輸出入・販売違反、使用基準違反)  ・食品衛生法の違反事例(残留基準などポジティブリスト制度違反)  ・有人・無人ヘリコプターの事故や危害事例、  ・住宅地等での人の受動被曝事例、周辺住民への告知違反事例、  ・農薬の不法投棄事例、野鳥や小動物の毒殺事例、  ・農薬の環境汚染による危害( 土壌、水、大気) 2、通知「住宅地等における農薬使用について」の一層の周知・徹底をはかってください。   農業者、散布業者だけでなく、一般家庭への周知も必要です。  (1)昨年9月には、農水・環境両省からリーフレットが出され、近々環境省から「公園・   街路倉病害虫・雑草管理マニュアル」が出される予定です。   これらを市町村等におき、だれでも手にすることができるようようにしてください。   (すでに、大阪府環境農林水産部農政室はリーフレットを印刷配布している。)  (2)昨年の危害防止通知から、抜け落ちた「農薬使用委託者の責務」を明記してくださ   い。  (3)都道府県や市町村の管理する樹木などへの農薬使用状況を、施設毎に日時、対象病   害虫、使用農薬、使用量、周辺への周知状況を調査するよう指導してください。この   調査後、名古屋市は基本指針を策定しています。全国の自治体でこのような調査がな   されれば住宅地周辺での不必要な農薬散布は格段に減少するでしょう。  (4)農薬のドリフトについては、対象外の農作物に残留基準や一律基準を超える農薬が   残留しないことを目的とした防止対策は重視されていますが、人の健康に影響を与え   る生活環境へのドリフトや大気汚染は軽視されています。住宅地に近接する農耕地で   の農薬使用規制を視野にいれた施策を求めます。  (5)高濃度で、広範囲に農薬を散布する無人ヘリコプター使用面積は増加しています。   農水省の調査により、無人ヘリ散布は、地上散布に比べて、ドリフトや大気汚染の程   度が高いことが判明していますが、パブコメ募集後、2年経つのに、農水省の通知改   訂版はいまだ、に発出されません。近隣住民への周知と合意を含む安全対策の早急な   策定をのぞみます。 3、水系汚染防止の徹底を求めます。  シジミの除草剤汚染発覚を契機に、食品衛生法による魚介類の一律基準の適用が緩和さ  れ、より高い数値の残留基準が設定されつつありますが、これは、本末転倒で、汚染防  止には、関連水域での農薬使用量の削減が第一です。  農水省は、水田農薬の漏れ対策等の強化を指導されていますし、水質汚濁に係るの登録  保留基準や水産動植物に対する毒性に係る登録保留基準は、水田用農薬だけでなく、す  べての農薬に設定されるようになっています。農薬の使用規制が第一であることも念頭  においた対策をもっと具体化してください。 4、家庭菜園などでの農薬事故対策を講じてください。  厚労省の家庭用品に吸入事故報告によると、2006年度には、家庭での園芸用殺虫・殺菌  剤事故が30件(05年度53件)、除草剤事故16件(05年度20件)発生しています。  安易な農薬の使用が危険であるとともに、使用者だけでなく、受動被曝被害もおこり、  近隣の化学物質過敏症の人など農薬弱者に影響を与える恐れがあります。 5、農薬と同じ成分を含む非農作物用除草剤が、道路や空地、その他非農耕地で使用され  ています。また、旧農薬工場跡地やその産業廃棄物処理場での農薬の環境汚染が懸念さ  れます。環境省とともに、危害防止のための対策を策定ください。   6、農薬の通販やネット販売、ネットオークションの規制対策を、総務省とともに、策定  してください。  なお、私たちは、このメールに添付贈呈した電子版「脱農薬てんとう資料集」第6号< 農薬危害防止運動について>のほか下記の資料集を発行していますので、参考にしてくだ さい。 ・電子版「脱農薬てんとう資料集」第5号<「住宅地等における農薬使用について」の新 通知>    07年6月15日 ・電子版「脱農薬てんとう資料集」第7号<農薬類の使用規制をめざす法律案>            07年8月15日刊行 ・電子版「脱農薬てんとう資料集」第8号<ダイオキシン含有農薬とPOPs系農薬>         07年9月20日刊行 ・電子版「脱農薬てんとう資料集」第9号<食品中の残留農薬とポジティブリスト制度>       08年2月10日刊行 ・パンフ反農薬シリーズ第15号<脱農薬ノート〜身近な農薬散布をなくすために>       08年2月20日刊行