************************************************ 平成21年度農薬危害防止運動に関連した要望と質問 ************************************************ 2009年3月27日 農水省消費・安全局長 竹谷廣之 殿 厚労省医薬食品局長  高井康行殿   反農薬東京グループです。いつもお世話になっています。  本年も農薬危害防止運動月間が近づいてまいりました。  昨年、貴省らは、危害防止運動期間を、それまでの1ヶ月から3ヶ月に延長され、 事故防止等に努められましたが、運動の通知が発出された5月26日に、出雲市での農薬空 中散布被害が起こり、以後、新聞報道された犯罪を含む危害事例をまとめると、表のよう に32件ありました。内訳は、野鳥・小動物殺害と農薬犯罪(食品混入や盗難など)各6件、 クロルピクリン事故、空中散布事故、工場事故各5件、水系事故2件、その他3件でした。 表1 農薬関連の危害事例(08年5月26日〜09年3月20日) 08/05/26 島根県出雲市   松枯れ対策のスミチオンMC剤で1200人以上健康被害 08/06/06 徳島県徳島市   リサイクル会社で、クロルピクリン廃容器をプレス中に、               残存薬剤のガス発生、30人被害 08/06/14 三重県四日市市  石原産業で、アタブロン乳剤タンクに穴、漏洩 08/06/28 東京都     焼き鳥のたれにグリホサート混入。10月に犯人逮捕 08/06   兵庫県福崎町  松枯れ空中散布で、住民の健康被害6人 08/07/01 長野県安曇野市 カラス8羽が、EPN入り毒餌で死亡 08/07/15 静岡県掛川市  菊川水系で魚大量死。農薬成分検出 08/07/15 北海道旭川市  中学校で、アリ駆除で農薬散布。生徒30人被害 08/07/18 愛媛県坂出市  日本ファインケムで、ナトリウム化合物発火 08/07/28 滋賀県高島市 空中散布中の無人ヘリコプター松に衝突・墜落 08/07/30 山形県三川町、 空中散布中の無人ヘリコプター小学校プールに墜落 08/08/08 福島県会津若松市 昭和電工東長原工場で、ホスゲン漏出。13人被害。 08/08/15 大分県九重町  石灰硫黄合剤や硫黄系製剤メーカー細井化学鰍フ倉庫から               出火し、 消防隊員8人眼・のどに痛み 08/08/16 熊本県錦町   鳴き声うるさいと毒餌で犬を殺害。犯人逮捕 08/08/18 奈良県桜井市  有機リン系農薬をボトル飲料に混入、2人被害。犯人逮捕 08/08/23 山形県三川町 空散の無人ヘリコプター制御不能で、行方不明に。 08/09/09 千葉市      野球場の芝生に、グリホサートが撒かれて、枯れる 08/09/12 京都府八幡市   ダイアジノン盗難 08/10-11 西東京市東大農場 水稲に水銀剤ら使用判明、その他販売禁止農薬所持、 08/10/15 長崎県雲仙市  隣接農地からクロルピクリンで、大根被害、長崎地裁へ提訴 08/10/18 京丹後市     タバコ圃場からのクロルピクリンで住民11人被害 08/10/  東京都大田区   野良猫退治に殺鼠剤混入餌 08/11/03-10北海道室蘭市  カラス16羽死亡、有機リン系殺虫剤混入餌 08/11/05 長野県安曇野市  ハト13羽死亡、MPP検出 08/11/17 福岡県もち吉   MEPを餅菓子に混入。犯人は自殺。 08/11/21 山梨県甲州市   農薬メーカー「おぎはら」で石灰硫黄剤流出 08/11-12 大阪府寝屋川市  府の施設で実施された農薬試験米盗難。犯人逮捕 08/12/07 岡山大学     ESP製剤を生活排水系に廃棄。准教授処分  08/12/24 倉敷市まきび公園 クロルピクリン漏洩で、従業員2人被害 09/01/03 奈良県明日香村  戒外川で魚のへい死。エンドスルファンほか検出 09/01/17 愛知県豊橋市   クロルピクリン剤盗難 09/02/05 神戸市西区    メソミル付着餌で犬が中毒  国産農作物の残留基準違反も後を絶ちません。表2のような事例があり、近隣からのド リフトや不適切な使用による高濃度の残留事故を起こっています。  表2 国産農作物の残留基準違反事例(08年8月〜12月) 判明月日 発表者   作物名    産地等   農薬名と検出値ppm(基準)   原因 08/08 秋田県  ミディトマト 鹿角市農家 ジクロシメット0.03(0.01)   e 08/08 JA土佐あき シシトウ   北川村   フルトラニル0.05(0.01)   b 09/02 福島県   モモ     県果樹研究所イミノクタジン残留値不明  a2 09/11 JAとさかみ オオバ     香美市   ピリダフェンチオン0.04(0.03)  d 10/03 山口県   チンゲンサイ 周南市   アセフェート10.9(5)、 a2                      メタミドホス2.7(0.5) 10/16 JA名取岩沼 チンゲンサイ 名取市   メタアルデヒドNAC剤粉末付着 a 10/17 JA当麻  ミニトマト 北海道当麻町 ジクロシメット0.05(0.01)   e 10/28 JA松本ハイランド セロリ 松本市   インドキサカルブ0.25(0.01)  a 10/31 青森県 ミズナ    十和田市での フルバリネート0.586(0.01)  c?                 ハウス栽培  エンドスルファン1.29(0.5) ワサビ菜   同上  フルバリネート0.196(0.01)と                        基準以下のエンドスルファン0.411 11/08 めいきん生協ホウレンソウ 尾張地方 プロチオホス2.6(0.01)     a 11/22 大阪府  コマツナ  泉佐野市   ダイアジノン0.38(0.1) e 11/26 東京都   むかご    茨城県鉾田市 ピラクロホス0.34(0.05)と   e                 笈芻竢、事 EPN 0.03(0.01) 12/14 浜松市 ホウレンソウ 市内温室農家 エトフェンプロックス12.3(2) a          ホウレンソウ 市内農家   クロチアニジン0.06(0.02) a  【原因の凡例】a:適用外使用 a1:県の防除基準誤記 a2:使用基準違反   b:近接からのドリフト又は流入 c:防除器具の洗浄不足 d:土壌残留 e:不明  また、ミツバチの大量死の原因のひとつとして、ネオニコチノイド系の殺虫剤に疑いが かかっています。さらに、昨今の硫化水素による自殺事件では、石灰硫黄剤が使用された こともあります。  上のような事例を踏まえ、私たちは、本年の農薬危害防止運動を前に以下の要望と質問 をします。4月30日までに、下記への回答お願いします。      =================================================       ★★★反農薬東京グループ★★★ 代表:  辻 万千子       〒202-0021東京都西東京市東伏見 2−2−28−B        電話/ファックス:042-463-3027        E-mail:mtsuji@jcom.home.ne.jp URL http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/      ==================================================       *****  要望と質問  ***** 【T、有人及び無人ヘリコプターによる農薬空中散布について】  空中散布においては、高濃度の希釈液が使用されるため(地上散布濃度の100倍を越える こともある)、生活圏への農薬飛散が懸念されます。 1、出雲市では、松枯れ農薬空中散布健康被害原因調査委員会が出した報告書(11人の委 員のうち、空散が原因の可能性を否定できない(7人)/空散が原因(2人)/原因を特 定できない(2人))を踏まえ、今年から10年間、空中散布によらない松枯れ対策をとる ことになりました。 出雲市での健康被害の実態を知ることは重要です。同市の下記HP のURLを都道府県等に知らせてください。  (1)健康被害原因調査委員会 議事録の公開について     http://www.city.izumo.shimane.jp/icity/browser?ActionCode=content&ContentID=1217307259448&SiteID=0000000000000&FP=toppage  (2)健康被害原因調査委員会報告書    http://www.city.izumo.shimane.jp/www/contents/1222228281746/files/9-24.pdf  (3)出雲市松くい虫防除検討会議報告書について   http://www.city.izumo.shimane.jp/icity/browser?ActionCode=content&ContentID=1228360507431&SiteID=0000000000000&FP=toppage   報告書全文は   http://www.city.izumo.shimane.jp/www/contents/1228360507431/files/1.pdf 2、無人ヘリコプターが制御不能で、行方不明となる事故が起こっています。  無人ヘリコプターの事故を誰がどこに報告するのか、国の責任はどこにあるのか、はっ きりさせた上、再発防止のため、事故原因を明確にし、都道府県等に伝えてください。  また、現在、業界団体任せになっている体制を改め、オペレーター資格制度や機体整備 の義務化などを含む、無人ヘリコプターによる事故や危害防止を目的とする法律を制定し てください。 3、学校や通学路、住宅地区、その他の公共施設等の近隣では、風速の如何にかかわらず、 有人や無人ヘリコプターによる空中散布を禁止するようにしてください。 【U、通知「住宅地等における農薬使用について」について】 1、農地や林地だけでなく、市民農園、公園や街路樹、集合住宅・団地、個人の住宅など での農薬使用による事故防止対策のため、「住宅地通知」の一層の周知徹底を求めます。 2、厚労省の家庭用品に吸入事故報告によると、家庭での園芸用殺虫・殺菌剤・除草剤が 原因の事故は、05年度73件、06年度46件、07年度48件発生しています。この件数は、農水 省が毎年発表する農薬事故数の2倍以上にあたります。  使用者だけでなく、受動被曝被害もおこっており、近隣の化学物質過敏症の人など農薬 弱者に影響を与える恐れがあります。  家庭園芸を行う、一般人の農薬使用についても「住宅地通知」の周知徹底するようお願 いします。 3、都道府県や区市町村に対し、その管理する樹木などへの農薬使用状況を、施設毎に日 時、対象病害虫、使用農薬、使用量、周辺への周知状況を調査し、公表するよう指導して ください。 4、08年2月には、グリーン購入法の「環境物品等」の役務として、農薬使用を減らし、 IPM(総合病害虫管理法。雑草管理を含む)を薦める「植栽管理」がとりいれられまし た。5月には、環境省から「公園・街路樹等病害虫・雑草管理暫定マニュアル」が出され ました。 「住宅地通知」や環境省マニュアル、グリーン購入法関係の資料を都道府県や市区町村等 の窓口におき、だれでも手にすることができるようようにしてください。  また、農薬使用を減らし、IPMをとりいれた方法を推奨する基本指針を策定するよう、 都道府県、市区町村等を指導してください。 5、クロルピクリンによる住民被害が毎年おこっています。住宅地近隣での使用を禁止し てください。 【V、残留農薬対策について】 1、水田育苗箱で使用する薬剤が、後作物に移行する事例があります。ジクロシメットの 例を挙げ、指導を強化してください。 2、農薬の適用外使用や使用基準を守らなかった事例は、いままで、どのくらいありまし たか。2003年以後の事例を年月、場所、内容、処分、農薬取締法告発・罰則の適用を一覧 で示してください。 3、残留基準又は一律基準を超えた場合、食品衛生法違反になりますが、農薬使用者には どのような処分がなされていますか。2006年以後の事例について、年月、場所、内容、処 分、氏名公表の有無を一覧で示してください。告発された場合はその旨、罰則を受けた場 合はその旨)を記載してください。 4、シジミが基準を超えるケースは、高い農薬残留基準を設定したため、違反事例はみか け上減りました。一義的には、関連水域での農薬使用基準の遵守と使用量の削減にも取り 組むよう指導してください。 【W、その他】 1、農薬と同じ成分であるグリホサートを含む非農作物用除草剤の出荷量は、環境省の平 成18年度調査によると1750トンあり、道路や空地、その他非農耕地で使用されています。 これらを農薬と同等に扱うようお願いします。 2、昨年4月に、静岡市清水区で農薬廃棄物による土壌汚染が明らかになり、30年以上前 に土中埋設していたクミアイ化学が汚染土除去工事の実施を公表しました。  福岡県久留米市では、07年9月、旧三西化学農薬工場跡地とその隣接地で、61年から83 年にかけて製造されていたBHC、PCP、CNPら農薬とダイオキシン類の土壌汚染が 明らかなり、本年2月、三井化学が10年計画で、その処理をすることになっています。  その他、農水省や林野庁の指示で土中埋設されたPOPs系農薬や2,4,5-Tが未処理の まま、残っている個所があります。  旧農薬工場跡地やその産業廃棄物処理場等の調査の実施と、その監視及び掘削・無害化 処理の速やかな実施を求めます。  処理にあたっては、汚染が拡大しないよう指導を強化してください。  また、POPs類やダイオキシン類の微生物等を使ったバイオレメディエーションによ る分解方法を研究開発してください。 3、薬事法の改正により、医薬品のインターネットによる販売等が規制されました。農薬 についても、通販やネット販売、ネットオークションによ販売禁止を求めます。 4、農水省の農薬によるミツバチ事故統計は、年間1-4件ですが、実態はもっと多いので はないかと懸念しています(たとえば、日本養蜂はちみつ協会の06年調査では全国で107 件であった)。  欧米では、ミツバチのCCD被害が大きな問題になっていますし、フランスやドイツで は、フィプロニルやネオニコチノイド系殺虫剤の使用規制が行われています。日本でも、 クロチアニジンによるミツバチの大量死が起こっています。ミツバチだけでなく、環境省 の「ExTEND 2005 野生生物の生物学的知見検討会」では、フィプロニルやイミダクロプ リドのアカトンボへの影響検討されています。ミツバチ事故やアカトンボの減少原因につ いて、農薬を含めた、科学的調査を実施してください。 5、硫化水素による自殺が多発しています。石灰硫黄合剤工場でも硫化水素が発生し、死 亡事故が起こりました。自殺だけでなく、同剤による農薬使用者の事故を防止するために も、石灰硫黄合剤を劇物指定し、その販売・保管・管理を厳重にしてください。 6、メソミルや有機リン剤による小動物・野鳥の毒殺事件が後を絶ちません。毒劇法に よる販売業者や使用者に対する立ち入り検査を強化してください。  さらに、登録製剤の含有濃度規制を実施してください。 7、登録農薬や農薬疑義資材の成分違反がみられましたが、製造メーカーの立ち入り検査 を強化して、その結果を公表してください。 8、正確な農薬危害統計を求めます。  昨年も同様の申し入れをしましたが、実現していません。  人の農薬中毒や死亡事件・事故については農水省、厚労省、警察庁がなど別個に実施さ れていますが、これを統一的に行い、具体的内容を公表して、同種事例の発生防止に努め てください。 9、農薬危害防止運動は、都道府県等の取り組みが6月1日から始まるケースが多いなか、 国からの通知の発出が直前にされるため、実施主体である都道府県等による周知が、2週 間前後遅れるケースが目立ちます。都道府県等が余裕を持って運動に取り組めるよう、文 書の発出を早めてください。 10、毒劇法には、「普通物」という分類がないものの、国や地方自治体の行政機関では、 慣用的に使っています。「普通物」は「身近な薬品と同等」というイメージから、安易に 取り扱い、注意を払わず事故が起きる危険があります。  国連食糧農業機関の「農薬の流通と使用に関する国際行動規範」には、広告について 『広告は、特に製品の「安全」、その性質,や組成、適正使用、公的な承認もしくは認可 に関して、直接的にまたは暗示、省略、あいまいさもしくは誇大な主張により、購入者を 誤解させるようなどんな記述や視覚的表示をも含んでいてはならない』との条項がありま す。  毒劇法に沿って、「普通物」は「毒劇物の指定がない物」等に改めてください。 11、都道府県等への通知「平成21年度農薬危害防止運動の実施について」の前文に以下 を追加してください。 (1)UR都市機構、マンション等共同住宅の管理組合等、住宅供給公社等共同住宅管理者に も通知内容を周知徹底させることを明示すること。 (2)市町村が文書を収受した後、農薬を使用する主だった担当課にしか周知されないケー スが多く、漏れが生じることがよくあります。  市町村に周知する際に、農薬を使用する可能性のある、すべての局部課所に周知するよ う、明示すること。   (3)改正農薬取締法の施行で、対象が「農薬の使用者」に拡大しました。ところが、各都 道府県等では、防除業者や販売者向けの安全使用講習会しか開催されず、一般の使用者が 受講できる講習会が用意されていません。家庭等での農薬事故が増えていることを鑑み。 一般使用者対象の講習会等の開催を行うことを明示すること。