厚生労働省健康局生活衛生課 御中 2006/02/06 ******************** 興行場法に関する要望 ******************** 貴職におかれましては、平素より生活衛生等に関する業務にご尽力いただきありがとう ございます。 さて、ご存知のように、平成15年に、「建築物における衛生的環境の確保に関する法 律」が改正され、ねずみ・こん虫等の防除に関して、まず、ねずみ等の発生場所、生息 場所及び侵入経路並びにねずみ等による被害の状況について、統一的に調査を実施する こと、そしてその調査結果に基づき、ねずみ等の発生を防止するため必要な措置を講ず ることと規定されました。  建築物衛生法の他にも、興行場法、労働安全衛生法、医療法、食品衛生法、学校保健 法等により、害虫駆除が義務付けられていますが、建築物衛生法の改正を受けて、労働 安全衛生法では、建築物衛生法と整合性を持たせるための改正が行われ、医療法では、 改正の趣旨等を汲んだ通知が出されました。 食品衛生法でも通知が出され、食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針の 中に記されている、『年2回以上、そ族及び昆虫等の駆除作業を実施』という駆除作業 と回数の規定について、生息調査結果を踏まえ対策を講ずる等、確実にその目的が達成 できる方法であれば、その施設の状況に応じた方法、頻度で実施してもよいこととされ ました。 学校保健法でも、平成16年の学校環境衛生の基準の改正で、『ネズミ、衛生害虫等の発 生を見た場合は、児童生徒等の健康及び周辺環境に影響がない方法で駆除を行うように する』との通知が出されました。 ところで、映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物関連施設を対象とした興行場 法では、その第三条で、『営業者は、興行場について、換気、照明、防湿及び清潔その 他入場者の衛生に必要な措置を講じなければならない』と定め、第三条第2項で、その 『措置の基準については、都道府県が条例でこれを定める』こととしています。そして、 この入場者の衛生に必要な措置の基準について、昭和59年4月24日の通知で、条例準則 が示され、各都道府県では、この準則を参照して、条例や規則の設定や改正が行われて います。準則の中で、施設全般の管理として、『施設におけるねずみ、こん虫を駆除す るため定期的に巡回点検及び駆除作業を実施すること』と記されており、都道府県の条 例でも定期的に駆除を行うよう規定されています。回数の規定については、都道府県に より異なっており、「年2回以上」から「月1回」と様々ですが、条例上の「駆除」を 「殺虫剤による駆除」と誤って解釈し、実際に、害虫駆除のための殺虫剤散布を、害虫 の発生の有無に関わらず、毎月行っている施設が数多くあります。 興行場法においても、ねずみ、こん虫等の防除にあたっては、建築物衛生法の規定と同 様に、害虫等の発生状況の調査を行い、調査結果に基づいて適切な対策を講ずることを 必須とすべきであると考えられます。 また、興行場法では、条例準則で、『入場者が利用する場所は、定期的に消毒を行うこ と』と示され、興行場では、害虫駆除のための殺虫剤散布以外に、ホール内の消毒作業 が行われています。消毒作業として、消毒薬での清拭を行っている施設もありますが、 施設によっては、ホール内に殺菌消毒剤を噴霧しています。 室内空間の消毒等、環境消毒については、その有効性が疑問視されるところですが、平 成17年2月1日の医政局の通知「医療施設における院内感染の防止について」においても、 その有効性は否定され、消毒薬の噴霧、散布、くん蒸等は効果が不確実であるだけでな く、作業者への危険性や薬剤の残留毒性の問題等があるとのことで、一律に広範囲の環 境消毒を行わないように示されたところです。興行場法においても、同様の理由から消 毒薬の噴霧等、一律の広範囲の環境消毒は行わないようにすべきと考えられます。 さらに、昨今、公共の場所での薬剤散布やその薬剤の残留暴露による健康被害が増加し、 問題になっています。興行場法では、準則で、衛生管理の措置状況について、場内の入 場者の容易に見えるところに掲示するよう示していますが、実際に、害虫駆除や消毒作 業の情報について、入場者にわかりやすいところに掲示している施設はほとんどありま せん。トイレや奥の通路など、目に付きにくいところに掲示されており、入場に際し、 薬剤散布の状況を確認しようと思ってもできません。今後、薬剤散布による健康被害を 生じさせないためにも、入場者への周知徹底は必須であると考えられます。 以上の興行場法をめぐる状況を鑑み、下記項目について要望いたします。 お忙しいなか恐縮ですが、 文書でご回答下さい。 記 1.興行場法におけるねずみ・こん虫等の防除について  興行場法においても、建築物衛生法の改正の内容に即し、ねずみ、こん虫等の防除に あたっては、生息調査、発生調査等を必ず行い、調査結果に基づいた対策を適切に行 うよう、通知を出してください。 2.消毒について  ホール等の消毒作業について、一律に広範囲の環境消毒を行わないよう、特に消毒薬 の噴霧、散布、くん蒸等は効果が不確実であるだけでなく、残留した薬剤を含む空気 を作業者や利用者が吸い込むことによって、健康への影響が懸念されることから、漫 然と実施しないよう、通知を出してください。  トイレ等その他消毒が必要な場所の消毒作業についても、殺菌消毒剤の噴霧や散布は 行わず、例えば人の手の触れるところ等消毒の必要な箇所を、消毒剤を用いて清拭す る等、有効で且つ有害性の少ない方法により実施するよう、指導を行ってください。 3.危害防止と薬剤散布情報の周知徹底について  害虫駆除及び消毒について、やむを得ず薬剤散布を行う場合に、作業中や作業後の安 全対策を徹底するよう、また、薬剤散布等の情報を利用者や入場者に対して周知徹底 するように通知を出してください。特に散布情報等の掲示の場所について、入場の際 に確認できるよう、わかりやすい場所に掲示することとしてください。 4.IPMに関する情報提供について ねずみ、こん虫等の防除に関して、薬剤散布に頼らない物理的な防除方法等を含め、 IPM(総合防除管理)に関する情報提供を関連団体等に行ってください。 5,貴課が管轄する法律で、まだ、建築物衛生法の趣旨に添ったそ族昆虫に関する改定 をしていないものを精査して、改定するか、通知を出してください。 関係法令 生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(生衛法) 理容師法 美容師法 興行場法 クリーニング業法 公衆浴場法 旅館業法 公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律   要望団体:反農薬東京グループなど26団体と4個人