〔平成16年4月20日付け 16消安第484号 消費・安全局長通知〕 ******************************** 農林水産航空事業実施ガイドライン ******************************** 1 趣旨    農林水産航空事業(以下「事業」という。)は、ヘリコプターの病害虫防除や水稲直 播への利用により、病害虫防除コストの低減、労働力の軽減、いもち病等地域全体で発生 する病害虫の効率的かつ確実な防除等を推進し、農産物の安定供給に寄与する重要な役割 を果たしている。   また、無登録農薬問題等を背景に食の安全・安心に対する国民の関心が一層高まる中 で、安全・安心な食料を安定的に供給していくため、農薬についても安全かつ適正な使用 の確保を図ることが一層重要となっている。   こうしたことから、「農林水産航空事業の実施について」(平成13年10月25日 付け13生産第4543号農林水産事務次官依命通知。以下「次官通知」という。)によ り農林水産航空事業を実施するに当たっては、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定 める省令」(平成15年農林水産省令・環境省令第5号)及び「無人ヘリコプター利用技 術指導指針」(平成3年4月22日付け3農蚕第1974号農蚕園芸局長通知。以下「技 術指導指針」という。)を踏まえつつ、関係者一同の連携強化の下に、特に、次の事項に 留意し、事業の実施現場へ周知徹底を図ることにより、農薬の空中散布をはじめとする事 業の円滑かつ適切な実施を図る。 2 「次官通知」の2に定める県対策協議会及び地区対策協議会の機能の充実 (1)県対策協議会においては、事業の円滑かつ適切な実施を図るため、以下の点に留意  するよう努める。   @ 協議会構成員には、都道府県の農林水産関係部局等のほか、環境(河川関係を含 む。)、衛生(水道関係を含む。)、教育、警察等の関係部局の関係者を含め、体 制の充実及び相互の連携強化を図ること。   A 適切な事業計画の検討を行うこと。   B 危害防止対策として、設定された散布区域、選定された農薬等の点検・確認の徹 底を図ること。 (2)地区対策協議会においては、事業の円滑かつ適切な実施を図るため、以下の点に留  意するよう努める。 @ 協議会構成員には、その実施区域に係る畜産、水産、養蜂、養蚕、葉たばこ産業    等団体の関係者に加え、保健所、市町村、学校(教育委員会)、警察、病院、水道、    地元自治会等の関係者を広く含めるとともに、相互の連携強化を図ること。 A 航空防除実施区域周辺を含む地理的状況、農業地域における住宅地の混在、転作    田の混在等の作業環境に係る変化に十分対応できるよう、散布区域及び散布除外区    域、散布薬剤の種類及び剤型等についての十分な検討を行うこと。     また、事業計画の立案に際しては、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に    関する法律」(昭和25年法律第175号)に基づき有機農産物に関する認証制度    が創設され、平成13年4月から有機表示の規制が開始されたことを踏まえ、有機    農産物の生産を希望する農家(以下「有機農家」という。)の意向を的確に把握し、    その立場に十分に配慮しつつ、散布区域、散布除外区域、散布方法等についての検    討を行うこと。   B 水質保全の観点から、浄水場、取水口等の周辺地域に設定した散布除外区域の点    検を徹底すること。   C 関係者の地域住民等に対する協力依頼を徹底するとともに、水質評価指針(平成    6年4月15日付け環境庁水質保全局長通知)、気中濃度評価値(平成9年12月    22日環境庁水質保全局公表)等を活用し、航空防除の安全性についての啓発を行    うこと。 D 万一の事故に備え、あらかじめ保健所、病院等の医療機関と十分な連絡をとると    ともに、緊急時に直ちに対応できるよう体制の整備を図ること。 3 事業実施に当たっての留意事項 (1)県、実施主体等をはじめとする関係者は、適期防除を推進するため、作物の生育状   況や病害虫の発生状況に応じた航空防除を適正に実施するよう県対策協議会及び地区   対策協議会の整備等、実施体制の強化に努める。 (2)航空事故及び農薬による危害の防止のため、実施主体及び地区対策協議会は、架線   等の危険個所及び散布除外区域を示す正確な散布地図の作成(より現場の状況を正確   に反映した新しい地図の使用)並びに危険個所及び散布除外区域を示す標識旗の適切   な設置(設置本数及び設置場所)に努める。 (3)航空事故及び農薬による危害の防止のため、航空会社及び実施主体は、作業実施に   関する十分な事前打合せ及びパイロット引継事項の確認並びに航空防除実施区域の地   上及び空中からの事前の調査・確認の徹底に努める。    また、散布実施後においても、実施主体及び航空会社の間で意見交換等による意思   の疎通及び散布に係る情報の共有を図り、次回散布の適正実施に努める。 (4)航空会社及び実施主体は、安全運航及び作業員の事故防止のため、適正なヘリポー   トの設置、テールローターへの接触防止等の安全対策の徹底に努める。 (5)防除効果の向上及び農薬による危害の防止のため、航空会社は、散布飛行基準の遵   守に努める。 (6)農薬の飛散を防止するため、航空会社及び実施主体は、風向及び風速を計測し、次   官通知別紙9の(1)に定める風速を超える場合は、散布の中止を徹底する。また、   当該風速を超えない場合であっても、散布除外区域へ農薬が飛散することを防止する   ため、風向を考慮した散布を行う等必要な措置を講じるよう努める。    さらに、散布区域の周縁部から農薬を散布するとともに、散布除外区域への飛散低   減効果が確認された片側散布飛行やDG(ドリフトガード)ノズルの使用等を積極的   に行い、散布除外区域への農薬の飛散を一層防止するよう努める。 (7)農薬による危害防止のため、実施主体、地区対策協議会をはじめとする関係者は、   引き続き以下の対策を確実に実施するよう努める。 @ 航空防除実施区域周辺の住民、学校・病院等の公共施設等に対する、実施予定日    時、区域その他散布内容に関する広報を徹底すること。   A 通勤・通学路における誘導員・監視員の適正な配置による防除実施時の実施区域    内への人の立入防止を徹底すること。   B 基幹道路等の周辺から散布を行う等適切な散布順序を徹底すること。   C 航空防除実施区域周辺において、飛来する農薬が原因となって有機農産物に関す    る認証が受けられなくなる等の防除対象以外の農作物への損害が生じないために必    要な措置を徹底すること。     特に、有機農産物に関する認証に支障を来すおそれがある場合には、適切な間隔    をとる等必要な措置を徹底すること。 D 天候等により実施時間を変更する場合や補正散布を行う場合は、その旨を直ちに    関係者へ連絡するとともに、地域住民に対し周知し、誘導員・監視員の適正な配置    の一層の徹底を図ること。 (8)航空会社、実施主体等をはじめとする関係者は、環境保全に十分配慮した航空防除   を実施するため、相互の連携の強化に努める。特に、水質保全の観点から、農薬の取   扱いに十分留意し、薬剤の空容器、残液等の適切な処理に努める。 (9)実施主体及び地区対策協議会は、事業を実施する際には、有機農家等の関係者から   の要望があった場合に提供できるよう、従前と同様、散布地図、作業記録等の関係資   料の整備に努める。 (10)実施主体は、農薬散布の効率化等の有人ヘリコプターの利点を発揮させ、かつ、安   全に事業を進めるため、農薬散布区域の設定等の点検・見直しに努める。 4 農業用無人ヘリコプターの利用   農業用無人ヘリコプターを用いて防除を行う者においては、以下の点に留意するよう  努める。   @ 有人ヘリコプターの導入が困難な地域又は補完防除体制が確立できない地域につ    いては、無人ヘリコプターの利用を検討し、その利用に当たっては、安全運航に十    分留意すること。   A 農薬の使用に当たっては、無人ヘリコプターを用いた農薬散布に係る事項をはじ    めとした農薬使用基準を厳守し、適正に使用すること。   B 無人ヘリコプターによる農薬散布を行う場合においても、散布除外区域への農薬    の飛散防止を図るため、技術指導指針別表脚注(3)に定める風速を超えたときは、    散布の中止を徹底する。また、当該風速を超えない場合であっても、風向を考慮し    た散布を行う等必要な措置を講じるよう努めること。     特に、散布区域周辺において、飛来する農薬が原因となって有機農産物に関する    認証が受けられなくなる等の防除対象以外の農作物への損害が生じないために必要    な措置の徹底に努めること。   C 学校や通学路の周辺等で無人ヘリコプターによる農薬散布をする場合にあっては、    オペレーター及び補助員は、散布区域の周辺に十分注意し、散布区域内に児童等が    立ち入らないための措置の徹底に努めること。   D 無人ヘリコプターの適正利用による安全性の確保、機体の有効利用によるコスト    低減等を推進するため、県レベルでの協議会の設置等の組織整備に努めること。 5 その他   県、実施主体等は、生産コストの低減及び農作業の効率化を図る観点から、水稲の直  播等においても、ヘリコプターの有効利用に努める。