voice@mext.go.jp                   学校や研究機関等での農薬・殺虫剤等の使用について                         2009年1月23日 文部科学省大臣 塩谷 立 殿  私たちは、農薬をはじめとする化学物質による環境汚染・健康被害を出来るだけ減ら  そうと運動している市民団体「反農薬東京グループ」です(下記ホームページ参照)。  昨年は、農薬や化学物質による食品汚染が多発し、貴省におかれましても、7月10日に 「学校給食衛生管理の基準」が改定されたほか、問題が起こるたびに、学校給食に関する 通知や事務連絡を発出されました。  報道や行政発表を調べると、学校や研究機関で、下記のように農薬や殺虫剤等による健 康被害や環境汚染事故が起こっています。、 **** 汚染や事故発生事例 **** ・食品汚染  1月25日、新潟県長岡市給食センターに納入されたアスパラ菜に残留基準を超えるジク ロシメットが検出された。  その後、中国産冷凍食品のメタミドホスやDDVP汚染事件、マッシュルームのジクロ ロフェノールによる異臭、事故米・汚染米の食品への転用、つぶあんのトルエン・酢酸メ チル汚染、メラミン混入食品などで、通知や事務連絡が発出されている。  11月10日、北九州市教育委員会が、給食用の中国産ピーナッツにBHC検出を公表した。 ・3月、福岡県大牟田市の諏訪公園の芝生に、除草剤が散布され、遠足に訪れた小学生が 遊具で遊べなかった。 ・5月15日、大阪府の豊中市立第七中学校で、塩素ガスを発生させる実験をしていたとこ ろ、生徒6人が体の不調を訴えた。塩素系の台所用漂白剤と酸性のトイレ用洗剤を混合し て塩素ガスを発生させたものである。 ・5月26日、島根県出雲市で、松枯れ対策のため農薬スミチオンMC剤が空中散布され、そ の直後から、1000人を超える児童・生徒が眼のかゆみ等を訴えた。  同市は、空中散布を中止し、健康被害原因調査委員会を立ち上げた。9月24日に公表さ れたその報告書では、(1)空散が原因の可能性を否定できない(7人)、(2)空散が原因 (2人)、(3)原因を特定できない(2人)となっており、これを踏まえ、市「松くい虫 防除検討会議」は、今年から、空中散布は止め、樹幹注入・伐倒駆除・樹種転換で対応す るとの報告を出した。 ・5月28日 長岡市立栃尾南小学校で、プール清掃に塩素系消毒剤を使用、排水を川に 流したため、魚が大量死した。 ・7月15日 旭川市緑が丘中学校で、校内のアリ駆除のため、有機リン系農薬スプラサイ ド乳剤(メチダチオン40%含有)を原液で散布、授業中の生徒20人以上が病院に搬送された。 学校用務員が、有機リン剤を散布したのが原因であった。アリは不快害虫であるため、駆 除に用いる薬剤に法規制はなく、農薬取締法でも薬事法でも取締まることは出来ないが、 同市教育員会の指導文書に違反していた。 ・7月30日、山形県三川町にある横山小学校のプールに、空中散布をしていた無人ヘリコ プターが墜落した。「アミスタートレボンSE」(アゾキシストロビンとエトフェン プロックスの混合剤)を散布をしており、当日は、午前と午後の2回、学校プールを開放 していたが、事故発生時は止めていたため、人身事故はなかった。 ・10月2日、西東京市にある東京大学の農場で、水稲栽培に販売禁止の水銀剤が用いられ たことが判明し、農水省が立ち入り検査で、農薬取締法違反が指摘された。  その後の調査で、ほかにも、多数の禁止農薬があることが判明した。 ・10月27日、熊本県の天草養護学校で、飲料用井戸水中にシアン化合物が基準を超えて検 出された。 ・11月17日、貴省所管の独立法人理化学研究所の播磨研究所で砒素系化合物が、お茶に混 入されるという事件が起こった。 ・12月7日、岡山大学で劇物指定の農薬エストックス乳剤(オキシデプロホス)が生活系排 水経路に廃棄された。 ・12月8日、神戸国際大学で、学生が硫化水素自殺を図った。その影響で、学生・職員ら 約100人が避難、約20人が気分悪化を訴えた。報道によれば、この際、農薬の空き容器が 発見されている。 *****  貴省は「学校環境衛生の基準」とこれに基づく「学校環境衛生管理マニュアル」や「学 校給食衛生管理の基準」を発出しておられますが、以上のような事故発生をみましても、 その内容が遵守されているとは思えません。以下の要望をしますので、2月25日までに、 下記へ回答ください。  なお、要望中、殺虫剤等としたのは衛生害虫用、不快害虫用、木材防蟻・防腐用、衣料 用殺虫剤を意味します。     =================================================       ★★★反農薬東京グループ★★★ 代表:  辻 万千子       〒202-0021東京都西東京市東伏見 2−2−28−B        電話/ファックス:042-463-3027        E-mail:mtsuji@jcom.home.ne.jp URL http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/      ================================================== *** 要望 **** 【要望1】学校や研究機関等での農薬や殺虫剤等の使用について  1)2004年から2009年において学校(貴省所管の初等、中等、高等の教育機関をいう)や 貴省所管の研究機関等で発生した、農薬や殺虫剤等による健康被害や環境汚染事例を教え てください。    発生年月/発生地区名と学校等の名/使用農薬・殺虫剤等の名称と原因/被害状況 の一覧表にしてください。  2)農水省・環境省の通知「住宅地等における農薬使用について」(H19年1月31日改訂)、 環境省の「公園・街路樹等病害虫・雑草管理暫定マニュアル 」(H20年5月30日)では、農 薬使用を出来るだけ減らすことや使用する場合の周知などについて配慮すべき事項が記載 されています。  「学校環境衛生の基準」「学校環境衛生管理マニュアル」には、農薬に関する項はなく、 衛生害虫等として、「樹木等の害虫」があるだけで、「樹木等に害虫の幼虫等が認められ るかどうかを調べる」「安易に薬剤による駆除を行わない」「児童生徒等の健康及び周辺 環境に影響がない方法で駆除を行うようにする」とされているものの、これらの事項が 個々の学校等で遵守されているとは思えません。  貴省の「学校環境衛生の基準」「学校環境衛生管理マニュアル」を改訂し、植栽管理と 農薬使用に関する項を独立させ、農薬による健康被害例や環境汚染例を挙げた上、農水省 や環境省の上記通知等の内容を遵守するよう、貴省所管の学校や研究機関での指導を強化 してください。  3)厚労省の「建築物における衛生的環境の維持管理について」(H20年1月25日)で「建 築物環境衛生維持管理要領」にある「ねずみ等の防除」の項では、害虫等の生息調査を実 施し、出来るだけ殺虫剤等を使用しないIPM(総合的有害生物管理)が推奨されています。  貴省の「学校環境衛生の基準」「学校環境衛生管理マニュアル」を改訂し、殺虫剤等に よる健康被害例や環境汚染例を挙げた上、上記通知等の内容を遵守するよう、貴省所管の 学校や研究機関での指導を強化してください。  4)グリーン購入法で、使用が推奨されている「環境物品等」には、H20年に、役務と して[植栽管理」や「害虫防除」が追加され、農薬や殺虫剤等の使用削減が求められています。 貴省所管の学校や研究機関においても、これを遵守するよう指導してください。  5)万一、農薬や殺虫剤を使用する場合は、施設責任者が、職員、児童・生徒・学生・ 研究者及び未成年にあってはその保護者に散布予定を事前通知することを徹底してくださ い。  6)薬剤使用について、「学校環境衛生管理マニュアル」では、「休日や夏休み等の 長期休暇に駆除を行う等の配慮が必要である」とされていますが、必ずしも遵守されてい ません。万一、農薬や殺虫剤を使用する場合は学校等では児童・生徒らがいる授業や部活 動時に農薬や殺虫剤等を散布しないことを、さらに、周知徹底してください。 【要望2】学校等の周辺での空中散布について  1)有人や無人ヘリコプターによる農薬空中散布では、地上散布よりも、100倍以上高 濃度の農薬が使用されています。  学校等の周辺や通学路での空中散布の中止を地域の散布者や実施主体である散布委託者 に求めてください。  2)万一、散布が中止されない場合は、学校等の休日に実施するよう求めてください。 【要望3】学校等のプールでの塩素系殺菌剤の使用について  1)2004年から2009年において発生した学校等のプールでの塩素剤による健康被害や    環境汚染事例を教えてください。    発生年月/発生地区名と学校等の名/被害状況/原因の一覧表にしてください。  2)「学校環境衛生の基準」「学校環境衛生管理マニュアル」では、プールの衛生管理 が謳われていますが、塩素による利用者の健康への影響や排水による環境汚染がないよう 指導を強化してください。 【要望4】学校や研究施設での販売禁止農薬や毒劇法指定農薬の管理と使用及びその処理 について  1)貴省は、全国の大学と高等専門学校を対象に農薬や毒物、劇物の保管、使用状況が  適正かどうかの調査を実施しておられますが、その結果はいつまとまりますか。  まとまりましたら、公表してください。  2)貴省所管の他の研究機関や法人についても、同様の調査を実施、その結果を公表し てください。  3)販売禁止農薬や毒劇法指定農薬の処理について、どのような指導をされていますか。 【要望5】学校給食での衛生管理と農薬等の食品汚染について  1)給食用の食品原材料については、農薬や化学物質の汚染がないよう十分注意を払っ てください。  2)厚労省は、「食品事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン) に係るそ族及び昆虫対策について」を発出し、IPM(総合的有害生物管理)の考え方に留 意するよう通知しています。害虫の生息調査を実施し、出来るだけ殺虫剤等の薬剤を使用 しないようにしてください。  3)食品の保存場所や調理場所で、万一、衛生管理用の殺虫剤、殺菌剤を使用する場合、   食品にその成分が移行しないよう、十分注意を払ってください。  4)「学校環境衛生の基準」や「学校給食衛生管理の基準」は、細菌による食中毒防止 に重点がおかれていますが、   過度の殺虫剤、殺菌剤等の使用がないよう注意を喚起する改訂を行ってください。 【要望6】貴省では、「学校施設における事故防止の留意点について」の取りまとめを 実施しておられますが、農薬や殺虫剤等、塩素系殺菌剤ほかの化学物質による事故例もと りあげてください。