************************** 学校環境衛生基準案への意見 ************************** 学校環境衛生基準(案) http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1030&btnDownload=yes&hdnSeqno=0000048873                          2009年3月11日 文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課企画・健康教育係 御中  標記の件で、下記の意見を述べますので、ご査収ください。 1.氏名 反農薬東京グループ 代表 辻万千子 2.性別、年齢 3.職業 住民団体 4.住所 西東京市東伏見2−2−28−B 5.電話番号 042-463-3027 【はじめに】  貴省は、02年2月「学校環境衛生の基準」の改訂で、ホルムアルデヒド及び揮発性有機 化合物の検査や判定基準等について規定され、さらに、04年2月には、スチレンなど化学 物質とダニ及びダニアレルゲンを追加されました。  貴省が、04年3月に出版された「学校環境衛生管理マニュアル〜学校環境衛生の基準の 理論と実践」には、アレルギー疾患、シックハウス症候群、化学物質過敏症などについて ふれ、その原因と対処方法を示されています。  これら疾病の原因である化学物質として、農薬や殺虫剤等(以下、衛生害虫用殺虫剤、 殺菌剤、不快害虫用殺虫剤。非農作物用除草剤、木材防蟻・防腐剤、書籍・文化財等くん 蒸剤、衣料防虫剤などをいう)、有機溶剤、可塑剤ほかがあります。  08年は、下に示すように農薬や殺虫剤等による学校関連のトラブルが起こっています。    *** 学校関連の農薬・殺虫剤等のトラブル事例 ***  ・3月 福岡県大牟田市の諏訪公園の芝生に、除草剤が散布され、遠足に訪れた小学生    が遊具で遊べなかった。  ・5月26日、島根県出雲市で、松枯れ対策のため農薬スミチオンMC剤が空中散布され、    その直後から、1000人を超える児童・生徒が眼のかゆみ等を訴えた。    同市は、空中散布を中止し、健康被害原因調査委員会を立ち上げた。9月24日に公    表されたその報告書では、(1)空散が原因の可能性を否定できない(7人)、(2)空    散が原因(2人)、(3)原因を特定できない(2人)となっており、これを踏まえ、    市の「松くい虫防除検討会議」の報告書を出し、空中散布は止め、樹幹注入・伐倒    駆除・樹種転換で対応すべしとの報告を出した。出雲市は、09年2月、今後10年間    空中散布をやめるとの方針を示した。  ・5月15日、大阪府の豊中市立第七中学校で、塩素ガスを発生させる実験をしていたと    ころ、生徒6人が体の不調を訴えた。塩素系の台所用漂白剤と酸性のトイレ用洗剤    を混合して塩素ガスを発生させたものである。  ・5月28日 長岡市立栃尾南小学校で、プール清掃に塩素系消毒剤を使用、排水を川に    流したため、魚が大量死した。  ・7月15日 旭川市緑が丘中学校で、校内のアリ駆除のため、有機リン系農薬スプラサ    イド乳剤(メチダチオン40%含有)を原液で散布、授業中の生徒20人以上が病院に搬    送された。学校用務員が、有機リン剤を散布したのが原因であった。アリは不快害    虫であるため、駆除に用いる薬剤に法規制はなく、農薬取締法でも薬事法でも取締    まることは出来ないが、同市教育員会の指導文書に違反していた。  ・7月30日、山形県三川町にある横山小学校のプールに、空中散布をしていた無人ヘリ    コプターが墜落した。「アミスタートレボンSE」(アゾキシストロビンとエトフ    ェンプロックスの混合剤)を散布をしており、当日は、午前と午後の2回、学校    プールを開放していたが、事故発生時は止めていたため、人身事故はなかった。  ・10月2日、西東京市にある東京大学の農場で、水稲栽培に販売禁止の水銀剤が用いら    れたことが判明し、農水省が立ち入り検査で、農薬取締法違反が指摘された。    その後の調査で、ほかにも、多数の禁止農薬があることが判明した。  ・12月7日、岡山大学で劇物指定の農薬エストックス乳剤(オキシデプロホス)が生活系    排水経路に廃棄された。  ・12月8日、神戸国際大学で、学生が硫化水素自殺を図った。その影響で、学生・職員    ら約100人が避難、約20人が気分悪化を訴えた。報道によれば、この際、農薬の空    き容器が発見されている。  私たちは、このような農薬や殺虫剤等による幼児、児童、生徒及び学生並びに職員(以 下「生徒等」という)の健康被害を防止することが、学校環境衛生維持するために重要と 考えます。  今回の改訂におかれましては、以下の事項を「学校環境衛生基準」に明記していただき たく存じます。 【意見1】  農水省・環境省の通知「住宅地等における農薬使用について」(H19年1月31日改訂)、 環境省の「公園・街路樹等病害虫・雑草管理暫定マニュアル 」(H20年5月30日)では、農 薬使用を出来るだけ減らすことや使用する場合の飛散防止や周知徹底などについて配慮す べき事項が記載されています。  「学校環境衛生基準」案には、農薬に関する項はなく、貴省作成の現行「学校環境衛生 管理マニュアル」には衛生害虫等として、「樹木の害虫」の記載があり、「樹木等に害虫 の幼虫等が認められるかどうかを調べる」「安易に薬剤による駆除を行わない」「生徒等 の健康及び周辺環境に影響がない方法で駆除を行うようにする」とされているものの、こ れらの事項が個々の学校等で遵守されているとは思えません。  「学校環境衛生の基準」で、植栽管理と農薬使用に関する項を独立させ、農水省や環境 省の上記通知等の内容を遵守するよう、指導を強化してください。 【意見2】  厚労省の「建築物における衛生的環境の維持管理について」(H20年1月25日)で通知され た「建築物環境衛生維持管理要領」にある「ねずみ等の防除」の項では、害虫等の生息調 査を実施し、出来るだけ殺虫剤等を使用しないIPM(総合的有害生物管理)が推奨されて います。  「学校環境衛生の基準」で、上記通知等の内容を遵守するよう指導を強化してください。 【意見3】  グリーン購入法で、使用が推奨されている「環境物品等」には、H20年に、役務として [植栽管理」や「害虫防除」が追加され、農薬や殺虫剤等の使用削減が求められています。  「学校環境衛生の基準」に同法を遵守するよう明記してください。 【意見4】  ネズミや衛生害虫等及び樹木等の病害虫、シロアリ、有害昆虫の生息調査の結果や害虫 駆除の実施方法(農薬、殺虫剤等については、使用目的、使用薬剤名、使用量)を記録した 上、5年間保存するよう、「学校環境衛生の基準」に明記し、指導してください。 【意見5】  万一、農薬や殺虫剤を使用する場合は、学校管理者が、生徒等及び未成年にあってはそ の保護者に散布予定を事前通知することを、「学校環境衛生の基準」に明記し、周知徹底 してください。 【意見6】  衛生害虫等対策における殺虫剤等の使用について、「学校環境衛生管理マニュアル」で は、「休日や夏休み等の長期休暇に駆除を行う等の配慮が必要である」とされていますが、 必ずしも遵守されていません。万一、農薬や殺虫剤を使用する場合は学校等では生徒等が いる授業や部活動時に農薬や殺虫剤等を散布しないことを、「学校環境衛生の基準」に明 記し、周知徹底してください。 【意見7】  「衛生害虫等」の定義があいまいな上、検査基準として、『校舎、校地内にネズミ、衛 生害虫等の生息が認められないこと。』との表現は、1匹でも害虫がいたら、薬剤で駆除 するということにつながるため、止めてください。 【意見8】室内における真菌やカビ類がアレルギゲンとなることが知られています。室内 空気中及びダスト中の測定を実施してください。 【意見9】農薬・殺虫剤成分、TVOC、フタル酸エステル系化合物、リン酸トリエステ ル系化合物等がシックハウス症候群の原因物質となることが知られています。室内空気中 及びダスト中の測定を実施してください。 【意見10】  学校施設内での農薬や殺虫剤等の使用だけでなく、学校周辺や通学途上で、これら薬剤 が使用され大気汚染されると、生徒等の健康に影響が及びます。  特に、有人ヘリコプターや無人ヘリコプターによる農薬空中散布では、地上散布よりも、 100倍以上の高濃度で農薬が散布されます。風向によっては、農薬汚染空気が学校敷地内 に流入する危険もあります。  学校管理者は、学校等の周辺や通学路での空中散布の中止を地域の散布者や実施主体で ある散布委託者に求めるとともに、万一、空中散布が中止されない場合は、学校等の休日 に実施するよう散布者や散布委託者に申し入れるよう、「学校環境衛生の基準」に明記し てください。 【意見11】  校外活動においても、化学物質に過敏な生徒等への配慮が必要であり、学校管理者は、 活動場所での農薬や殺虫剤等の使用状況を前もって把握しておくよう、「学校環境衛生の 基準」に明記してください。 【意見12】  「学校環境衛生の基準」では、プールの衛生管理が謳われていますが、塩素による利用 者の健康への影響や排水による環境汚染がないよう、明記し、注意を喚起してください。 【意見13】  省エネルギー対策として、学校の芝生化、屋上・壁面緑化が推進されています。また、  学校施設の耐震化がとり行われています。これらについては、農薬や殺虫剤等の使用を やめ、グリーン購入法に定める特定調達品目(物品、役務、公共工事)及びその判断基準 に適合するように実施することを「学校環境衛生の基準」に明記してください。 【意見14】清掃のために使用される洗浄剤やワックス類には、界面活性剤、可塑剤、防腐 剤、殺菌剤、香料ほかのさまざまな化学物質が含まれており、揮発した成分やその微粉末、 埃に吸着されたものが室内空気を汚染し、アレルギーや化学物質に過敏な生徒等の症状を 悪化させる恐れがあります。日常的な清掃には、水による雑巾がけで十分です。  万一、洗浄剤やワックス類を使用する場合は、生徒等の健康及び周辺環境に影響がない ように、薬剤の含有成分、その残留性等の性質や毒性等特徴をあらかじめ確認した上で、 休日や夏休み等の長期休暇に清掃を実施するよう、「学校環境衛生の基準」に明記してく ださい。 【p5-8への意見】 水を塩素処理する際に、条件によっては、シアン化合物が生成し、 水質基準を超える事例があります。 「第2 飲料水等の水質及び施設・設備に係る学校環境衛生基準」に、シアン化合物の水 質基準を追加してください。 【p9への意見】「第3 学校の清潔、ネズミ、衛生害虫等及び教室等の備品に係る学校環 境衛生基準」を以下のように改めてください。 『1 学校の清潔及び教室等の備品に係る学校環境衛生基準は、次表の左欄に掲げる検査 項目ごとに、同表の右欄のとおりとする。』  表の検査項目『ネズミ、衛生害虫等』と基準『校舎、校地内にネズミ、衛生害虫等の生 息が見られないこと。』を削除。 【p10への意見1】表の検査項目『ネズミ、衛生害虫等』と表の検査方法を削除し、以下 を表の下に追加してください。 『3 ネズミ、衛生害虫等については、それぞれの生態に応じて、その生息、活動の有無 及びその程度等を調べる生息調査を、毎学年1回定期に行うものとする。  繁殖抑制や駆除の手段をとる際には、殺鼠剤や殺虫剤の使用を削減したIPM(総合的 有害生物管理)の導入をはかり、物理的手法を優先した繁殖防止や駆除を最優先し、 グリーン購入法の役務「害虫防除」や「建築物環境衛生維持管理要領」および「建築物に おける維持管理マニュアル」に沿って対処する。万一、薬剤による駆除を実施せざるを得 ない場合にあっては、生徒等の健康及び周辺環境に影響がないように、薬剤の含有成分、 その残留性等の性質や毒性等特徴をあらかじめ確認した上で、休日や夏休み等の長期休暇 に駆除を行う等の配慮が必要である。  なお、万一、殺虫剤等を散布やくん蒸する場合は、少なくとも3日前までに事前通知し、 薬剤使用後3日までは当該場所入り口に掲示しておく。また、捕獲機、粘着剤やベイト剤 の場合は、設置場所を表示しておき、回収ミスがないように注意すること。  注:衛生害虫等とは、薬事法でいう衛生害虫(ハエ、チョウバエ、蚊、ゴキブリ、イエ ダニ、ノミほか)、その他人に有害な害虫(スズメバチ、有害外来昆虫ほか)をいう。 4 樹木・花卉・芝生、学校農園等の植栽管理においては、農薬使用を削減したIPM (総合的病害虫・雑草管理)の導入をはかり、グリーン購入法の役務「植栽管理」や農水 省・環境省通知「住宅地等における農薬使用について」、環境省の「公園・街路樹等病害 虫・雑草管理暫定マニュア」に沿って対処する。  病害虫やそれによる被害の発生の早期発見に努め、物理的防除を優先的に実施する。万 一農薬を使用せざるを得ない場合にあっては、生徒等の健康及び周辺環境に影響がないよ うに薬剤の含有成分、その残留性等の性質や毒性等特徴をあらかじめ確認した上で、出来 るだけ散布以外の方法で、休日等に実施する配慮が必要である。さらに、近隣農家へ配慮 した、周辺農作物への飛散防止対策が必要である。 5 建築物の木材防蟻・防腐においては、シロアリ等の発生状況・被害状況を調査し、 早期発見に努め、物理的防除を優先的に実施する。万一、殺虫剤等を使用せざるを得ない 場合にあっては、生徒等の健康及び周辺環境に影響がないように薬剤の含有成分、その残 留性等の性質や毒性等特徴をあらかじめ確認した上で、出来るだけ散布以外の方法で、休 日や夏休み等の長期休暇に実施する配慮が必要である。 6 3〜5について、生息調査の結果や害虫駆除等の実施方法(農薬、殺虫剤等について は、使用目的、使用薬剤名と使用量)を記録した上、5年間保存すること。』 【p11への意見】「第4 水泳プールに係る学校環境衛生基準」に、以下を追加する。 『3 プール水の塩素等による消毒に際しては、消毒年月日、使用薬剤名、使用量を記録 し、5年間保存すること。 4 塩素処理に際しては、塩素化合物の環境中への放出に注意し、健康被害や水系汚染事 故を防止すること。 5 高濃度の塩素に対し過敏症等の傾向がある生徒等に対して、注意を払うこと。』 【p13への意見1】「第5 日常における環境衛生に係る学校環境衛生基準」の表の  検査項目にある『及びネズミ、衛生害虫等』と『(9)ネズミ、衛生害虫等』と基準にあ る『校舎、校地内にネズミ、衛生害虫等の生息が見られないこと。』を削除する。 【p13への意見2】「第5 日常における環境衛生に係る学校環境衛生基準」の表の欄外 2項の後に、以下を追加する  『3 ネズミ、衛生害虫等については、毎授業日ごとにその存在を目視点検すること。   注:衛生害虫等とは、薬事法でいう衛生害虫(ハエ、チョウバエ、蚊、ゴキブリ、イ  エダニ、ノミほか)、その他人に有害な害虫(スズメバチ,有害外来昆虫ほか)をいう。   4 樹木・花卉・芝生、学校農園等の植栽管理については。病害虫等の発生時期に状 況を目視点検すること。 5 建築物の木材防蟻・防腐については、シロアリ等の生息状況や被害状況を年1回 以上、定期的に点検すること。』 【p13への意見3】「第6 雑則」 に以下を追加する。 『5 化学物質に過敏な生徒等に配慮し、環境負荷を減らすため、農薬や殺虫剤、殺菌剤、 除草剤ほかの化学物質に頼らないIPM(総合的有害生物管理)を推奨しているグリーン 購入法による「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」にある「植栽管理」「害虫防 除」の役務を遵守すること。  6 農薬、殺虫剤等、洗浄剤、ワックス類を使用する場合、学校管理者は、あらかじめ、 メーカーからMSDS(製品安全データシート)を取り寄せ、その成分、毒性、特徴、使 用上の注意、危害防止対策等を把握しておくこと。』 【意見15】学校環境衛生基準の通知に際しては、以下の参考資料を添付してください。  ・建築物における衛生的環境の維持管理について(健発第0125001号)    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei09/pdf/02a.pdf   にある「建築物環境衛生維持管理要領」の第6ねずみ等の防除  ・建築物における維持管理マニュアルについて(健衛発第0125001号)    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei09/03.html   と、第6章 ねずみ等の防除    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei09/pdf/03g.pdf  ・住宅地等における農薬使用について(18消安第11607号、環水大土発第070131001号)    http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=9076&hou_id=7969  ・公園・街路樹等病害虫・雑草管理暫定マニュアル(環境省2008年)    http://www.env.go.jp/water/noyaku/hisan_risk/manual1/full.pdf  ・グリーン購入法による環境物品等の調達の推進に関する基本方針(2008年2月)    http://www.env.go.jp/policy/hozen/green/g-law/archive/bp/h20bp.pdf 【意見16】上記意見については、「学校環境衛生管理マニュアル」にも取り入れてくださ い。