2006年2月1日 千葉大学長     古在 豊樹 様 千葉大学園芸学部長 菊池 眞夫 様                反農薬東京グループ        代表 辻 万千子               〒202-0021東京都西東京市東伏見2-2-28-B           電話/ファックス:0424-63-3027          E-mail:mtsujiアトマークjcom.home.ne.jp    URL http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/ 園芸学部本山直樹教授の農薬による健康影響調査に関する質問  つねに、より高きものをめざして研究、教育活動を続けられておられることに敬意を 表します。  私たちは、農薬や化学物質の乱用に反対して運動している市民団体です。詳しい活動 内容はホームページをご覧ください。  さて、貴大学園芸学部の本山直樹教授は、農薬の専門家として農水省の審議会などで 活躍しておられます。最近、本山教授が発言している農薬の飛散と健康影響に関する調 査について疑問に思うことがございますので、貴大学の見解をお聞きしたく、質問する ものです。 【健康影響調査の背景】 −略− 【フェニトロチオン(別名:MEP、スミチオン)の毒性】 −略− 【スミパイン乳剤について】  −略− 【本山教授の調査の概要】 2005年10月4日に林野庁が設置した「第1回無人ヘリによる松くい虫防除に関する運用 基準作成のための検討会」で本山教授は「静岡県新居町における無人ヘリコプターによ るスミパイン乳剤散布に伴う薬剤飛散状況ならびに健康影響調査結果(概要)」  http://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h17-10gatu/1007-b01.pdf を発表しました。  それによると、本山教授は2005年5月25日と6月9日の2回、静岡県新居町で無人ヘリコ プターによるスミパイン乳剤散布時に、現場に研究室の学生らを引率し、農薬の気中濃 度、落下飛散量の測定、イエバエを使用した殺虫効果試験を実施すると同時に、調査メ ンバー及び散布者に対し、同町のクリニックで健康診断(散布前後の2回)を受けさせ ています。検査項目は、血圧、瞳孔直径、心電図、採血検査です。  報告書には「被験者は、第1回目散布が A:男性42才、B:男性45才、C:男 性62才、D:男性21才、E:男性25才、F:女性22才、G:男性25才であり、 第2回目散布は H:男性21才、I:男性21才、J:男性25才の計10名であっ た。」と記されています。  上記林野庁検討会当日の議事録 (http://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h17-10gatu/1026-h3.pdf)には、本山教授の 言葉として、「一番大事なのは健康影響調査です。新居町で散布されたのは有機リン剤 ですのでラットを持っていって、各地点に置いて経時的に採血してどれぐらい酵素が阻 害されているか調べようと思ったんですけれども、しょせんラットと人間は種が違うと いう問題が起こりますので、私たち自身が被験者になりました。学生諸君は危ない目に 合わせられませんので松林の周辺部でずっとポンプを動かす作業をしていたわけです。 私自身は散布直下の松林の中にも入ったりしました。」 と書かれています。学生たちは散布区域直下ではなく、周辺にいさせたとしていますが、 同じ議事録で「必ずしも松林の散布直下のところの気中濃度が高いということでもなく、 散布直下のところにもポンプ置いたんですけれども、むしろ周辺部の方がちょっと高i ということもありました」とあり、100メートル地点が一番気中濃度が高かったと言っ ております。  さらに、尿検査について  「問題は3日間現場にいて松林の周辺でトイレがないんです。そうすると女子学生も いたものですから、散布の前日のコントロールの値をとるためにおしっこするたんびに それを集めてメスシリンダーで量をはかって、そのうち一部をとってアイスボックスに 入れなさいと。それを前の日と当日と次の日と3日間やりなさいと言ったら、嫌だと言 われてしまったんです。」との発言もあります。  本山教授は、ラットを用いる代わりに、自分たちが「被験者」となったとしています。 健康影響が懸念される農薬散布現場に、教授とは必ずしも対等な立場に立ち得ない学生 を連れて行き、健康影響の程度を調べる目的の調査を行っていること、また、調査参加 の女子学生に結果的には拒否されていますが、排尿採取を求めたことは人道的に問題で す。 以下、質問いたしますので、2月20日までにご回答下さいますようお願いいたします。                  質 問 1、貴大学には、学生や研究者が自ら被験者となる健康影響調査に関する倫理規定や個   人情報保護規定はありますか。あるとすれば、その内容をお示しください。 2、医学研究の場合、「ヘルシンキ宣言」なる倫理的原則   ( http://www.med.or.jp/wma/helsinki02_j.html )がありますし、 文部科学省・厚生労働省は「疫学研究に関する倫理指針」   ( http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/12/s1211-9e.html )を発表しています。   学生や研究者が自ら被験者となる健康影響調査の実施についても、研究計画の段階   から結果の報告にいたるまで、独立機関で審査すべきだと思いますが、貴大学はど   のようにお考えですか。 3、万が一、健康影響調査に協力した学生や研究者に健康被害が出た場合、大学として   どのように対応なさいますか。 4、本山教授が行なった上記の健康影響調査ついて、貴大学はどのように考えますか。   貴大学の倫理規定や個人情報保護規定があれば、それに即してお答ください。