************************************** フェンチオンの食品健康影響評価   **************************************    2009年11月24日 「農薬(フェンチオン)の食品健康影響評価」意見募集担当 様  表記について、意見を述べますので、ご査収ください。 氏名 反農薬東京グループ 住所 西東京市東伏見2−2−28−B 職業 環境保護団体 電話番号 042-463-3027 FAX番号 042-463-3027 メールアドレス mtsuji@jcom.home.ne.jp 【意見1】フェンチオンの毒性試験データの詳細が公開されることなく、ADIを現行の 0.0005mg/kg体重から0.0023mg/kg体重に緩和することには反対である。 【理由】 1、ADI算出の際、毒性試験によって得られた最低無毒性量0.07 mg/kg 体重/日の根拠と なる、ヒトにおける4 週間反復投与試験(以下人体試験という)及びサルの2年間慢性毒 性試験(以下サル試験という)のデータが公開されていない。 2、人体試験とサル試験について、農薬評価書案には、以下の参照資料  (8)農薬抄録 MPP(殺虫剤)(平成21 年8 月3 日改訂):バイエルクロップサイエ ンス株式会社、一部公表予定  (9)JMPR:895_Fenthion(Pesticide residues in food:1995 evaluations Part II Toxicological & Environmental)  があがっている。しかし、(8)は、公表されていないし、  (9)の資料は、http://www.inchem.org/documents/jmpr/jmpmono/v95pr07.htm で公表 されているが、人体試験、サル試験は、それぞれ下記の1979年と1980年の文献で、メー カーのモーベイ社未公表報告、親会社のバイエル社がWHOに提出したものとなっているた め、試験データを確認することができない。。  Griffin, T., Rosenblum, I. & Coulston, F. (1979) Safety evaluation of fenthion in human volunteers. Unpublished Mobay report No. 68790 from the Institute of Comparative and Human Toxicology and International Center of Environment Safety, Albany Medical College, New York, USA. Submitted to WHO by Bayer AG, Wuppertal, Germany Rosenblum, I. (1980) A safety evaluation of fenthion (S 1752) in rhesus monkeys (Macaca mulatta). Unpublished Mobay report No. 68789 from Albany Medical College, New York, USA. Submitted to WHO by Bayer AG, Wuppertal, Germany. 3、安全係数のヒトの個体差を30としたことについて、例数が少なく、女性のデータが欠 如しているとの記載だけで、その根拠が明白でない。しかも、人体試験の対象者の人種 や年齢も不明である。たとえば、有機リン剤のクロルピリホスでは、子どもの場合、大 人の安全係数の10倍として評価が行われている(すなはち、大人100、子ども1000)。 4、サル試験で、供試された動物の年齢が明らかになっていない。 5、約30年前に実施された人体試験及びサル試験をもとに、血漿や赤血球ChE活性阻害が みられないとの理由で、無毒性量が推定されているが、近年、問題になりだした発達神 経毒性、環境ホルモン作用などは不明である。 6、同じ毒性試験を評価しながら、アメリカは無毒性量0.02mg/kg体重で安全係数300、 オーストラリアは無毒性量0.02mg/kg体重で安全係数10、JMPRは無毒性量0.07mg/kg体重 で安全係数10、食品安全委員会は無毒性量0.07mg/kg体重で安全係数30となっており、無 毒性量を安全係数で除した数値、すなはちADIは、0.00007〜0.0023mg/kg体重/日と大 きなバラツキがみられる。 【意見2】ChE活性を阻害するのは、フェンチオンだけでなく、有機リン剤やカーバメー ト剤の一般的特性である。このように同じ作用機構を有する農薬は、個々の成分だけで なく、たとえば、有機リン剤総体としての健康影響評価とADIの設定が必要である。 【意見3】フェンチオンは農薬として、07年度は約101トンの出荷があるほか、防疫用殺 虫剤(パイロンなど)や動物用医薬品(犬猫用ノミ駆除剤チグボン)などとして薬事法で 承認されている。また、畳の防虫紙に0.7〜1.0g/平方メートル使用されている場合もあ り、比較的身近にある薬剤である。07年度PRTR法届出外排出量は、家庭用や防疫用殺虫 剤として、年間約14トンある。今後の残留基準の設定に際しては、農薬以外から摂取も 十分考慮することが必要である。