********************************************** 2件の残留農薬基準超えと農薬の土壌残留について **********************************************    2007年5月8日 農林水産大臣 松岡 利勝 様 農薬対策室  鈴木伸男  様  反農薬東京グループです。いつもお世話になっています。  2月初めに、栃木県産のイチゴでホスチアゼートが、4月には、高知県産のオオバで、 クロルベンジレートとピリダフェンチオンの残留基準超えが明らかになりましたが、その 原因について、両県等に問い合わせた結果、いくつかの疑問が生じましたので、残留基準 違反の原因について、貴省で調査し、その結果を6月10日までに下記へ回答ください。  同時に、土壌及び後作物残留性試験についての質問についても回答ください。     =================================================       ★★★反農薬東京グループ★★★ 代表:  辻 万千子       〒202-0021東京都西東京市東伏見 2−2−28−B        電話/ファックス:042-463-3027        E-mail:mtsujiアトマークjcom.home.ne.jp URL http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/      ================================================== 【1】栃木県のイチゴの事例  イチゴのホスチアゼート残留についての概要は以下のようです。  詳細は添付した機関誌「てんとう虫情報」188号の記事を参考にしてください。  ・ホスチアゼートの残留基準超えたのは4人であり、県が立ち入り調査したのはこの4 人だけである。  ・4人のうち一人は、県認定の農業士であり、農薬取締法違反の使用をしていた(3月 に農業士辞退)。  ・使用時期、使用回数、使用方法で違反があった。特に、12月には、ネマトリンエー   ス粒剤を水に溶かし、潅水使用したとしている。ホスチアゼート剤には液剤としてア   オバ液剤が登録されており(イチゴの適用なし)、粒剤を水に溶かす使用方法は、極 めて不自然な使い方である。アオバ液剤の使用について問い合わせたところ、JAか みつがは『県の発表以外承知しておりません』、県は『ありません』と回答した。  ・他の3人は、ネマトリンエースを適正に使用していたにもかかわらず、残留基準超え   があった。メーカーの「適正に使用すれば残留基準超えることはない」との言に反す   る。  ・にもかかわらず、県は、原因究明を行わず、適正使用や農薬使用履歴の記帳強化で、   再発は防止できるとしている。  ・残留基準超えのなかった農業者については、農薬取締法違反の有無を調査していない。  そこで、貴省には、以下の点を調べて、残留基準超えの原因を究明し、その結果を教え てください。 1)残留基準を超えた4人について、農薬取締法違反行為がなかったかを、アオバ液剤の  使用の有無を含め、厳密な再調査をしてください。  ネマトリンエース粒剤をどの程度購入し、例年、どのような使い方をしているか。  その数量はどうか。違反使用者はなぜ、粒剤を水に溶かして使用したか。  アオバ液剤を購入したことはないか。保有していないか。使用していないか。使用  したとすれば、何時、何の目的でどの程度使用したか。 2)ホスチアゼート剤を使用し、残留基準超えのなかった農業者についても、1)と同様、  農薬取締法違反の有無を厳密に調査してください。 3)ホスチアゼート剤の土壌残留試験結果と後作物残留試験結果を明らかにしてください。  ホスチアゼートの土壌残留性試験でえられた、施用時の土壌濃度及び10%減少期間、半  減期は示されたい。  後作物残留性試験は、どのような農作物について行われているか。その時の農作物の  残留値はどの程度か。 4)ホスチアゼートについて、土壌残留濃度とそこで栽培された農作物の残留濃度の関係  がわかるデータをお示しください。 5)ホスチアゼート剤の原因不明の残留基準超えや後作物への残留がみられます。メー  カーである石原産業が農薬登録時に提出した試験成績を精査し、問題点がないかを調べ  直し、結果を教えてください。 6)ホスチアゼートは適正に使用しても残留基準を超えたり、後作物に残留する例がみら  れるため、農薬危害防止運動の中で、その使用について農業者に注意を喚起してくださ  い。 【2】高知県のオオバの事例  高知県のJA南国市の自主検査の結果、オオバにクロルベンジレートとピリダフェンチオ ンがそれぞれ1検体で0.08ppm(残留基準0.02)、2検体で0.05ppm(残留基準0.03)検出され ました。また、 高知県農業技術センターの調査では、クロルベンジレートとピリダフェ ンチオンの土壌残留値がそれぞれ、0.03ppm、0.02ppmあり、それぞれに対応するオオバで の残留値は0.07ppm、0.03/0.06ppmでした。  両剤は、オオバに適用はなく、新聞報道によれば、当該農業者は平成15年以前に使用し たことがあるが、今季の使用はない、とのことですが、使用後、4年を経ても、土壌中に 残留している農薬がオオバに移行し、残留基準を超えるのが事実ならば、ディルドリンの キュウリ、ヘプタクロルのカボチャについで、土壌残留した農薬が後作物に移行・残留す ることが判明したことになります。  そこで、以下のことを調べて、残留基準超えの原因を究明し、その結果を教えてください。 1)クロルベンジレートを含む製剤は1994年6月26日に、ピリダフェンチオンを含む製剤  は、2007年2月28日に登録失効していますが、南国市の当該農業者は、現在、これらの  農薬を保持しているか。いるとすれば、その農薬登録番号(又は製剤名)は何か。  その中に無登録農薬はないか。  当該農業者が、オオバと同じ又は近接圃場で、各剤を使用したのは、何時のことか。  過去及び直近の使用について、使用した農薬登録番号(又は製剤名)と使用時期、使用  目的、使用量等を調べてください。 2)残留基準を超えた3人について、農薬取締法違反行為がなかったかを、厳密に調査し  てください。 3)DDTに化学構造が類似したクロルベンジレートおよび、有機リン剤ピリダフェンチ  オンの土壌残留性試験結果及び後作物残留試験結果を教えてください。  クロルベンジート及びピリダフェンチオンの土壌残留性試験でえられた、施用時の土壌  濃度及び10%減少期間、半減期は示されたい。  両農薬の後作物残留性試験は、どのような農作物について行われているか。その時の農  作物の残留値はどの程度か。 4)クロルベンジレートとピリダフェンチオンについて、土壌残留濃度とそこで栽培され  た農作物の残留濃度の関係がわかるデータをお示しください。 5)両農薬はすでに登録失効していますが、農家手持ちの農薬がいまだに使用されている  可能性があります。農薬危害防止運動の中で、農業者に、これらの使用に対する注意、  及び過去にクロルベンジレートとピリダフェンチオンの使用された圃場について、後作  物に対する注意を喚起してください。 【3】土壌残留性試験及び後作物残留性試験について  土壌の登録保留基準の見直しでは、従来の容器試験は廃止され、圃場試験のみの実施で、 判定基準は土壌半減期を従来の1年から、180日とするとなっています(私たちは、環境省 のパブコメ募集の際、ヨーロッパ諸国並みの、土壌中半減期が3ヶ月以上、かつ90%消失 期間1年以上を登録しないとする基準を求めましたが採用されませんでした)。  食品安全委員会農薬専門委員会の「土壌残留に係る農薬登録保留基準の見直し」の資料 (http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_dojyouzanryu170331.pdf)には、『現行の告示 に従って、ほ場試験及び容器内試験結果のいずれかの土壌中半減期が1年を超える農薬は 392剤中13剤である。今回の見直しにより、ほ場試験結果の土壌中半減期が180 日を超え る農薬は18 剤である。』と記されているのみで、農薬名を伏せられています。 また、後作物残留性試験について『提出されている全23農薬(のべ95 作物)のすべての 試験結果が検出限界以下であり、検出限界が0.05 mg/kg であるHZ 農薬の「小麦」の一つ の例を除いて全て検出限界は0.001〜0.01mg/kg である。このことから、現時点では後作 物への残留の問題は生じていないものと考えられる。』と述べられていますが、 資料の表をみると、ここでも農薬名は伏せられている上、わすか23種類の農作物デー タが提示されているにすぎません。  集約的な農耕地の利用や施設栽培が盛んな日本では、土壌に残留した農薬が後作物に移 行・残留し、残留基準や一律基準を超えるケースが増える恐れがあります。そこで、以下 の要望・質問をします。 1)いままでに登録された農薬成分で、容器内試験及び圃場試験のいづれかで、半減期が  180日を超える農薬名(失効農薬も含む、前記の食品安全委員会資料に記載された農薬  についてはその旨を示す)を教えてください。  農薬名/圃場試験での半減期/容器内試験での半減期/備考 の一覧でお願いします。 2)圃場試験といっても、栽培状況はいろいろです。特に、土壌殺菌された圃場や施設栽  培では、農薬の分解の進行が遅いと考えられます。  環境省はパブコメ結果(http://www.env.go.jp/info/iken/result/h160914a.pdf)の中  で『(農薬の)使用条件については、登録保留基準に照らした登録検査の中で必要に応じ  て考慮されることになると考えています。』としています。  露地での圃場試験結果を施設栽培に適用するのでなく、施設栽培に適用する農薬につい  ては、施設圃場で試験を実施すべきと思いますが、貴省はいかがお考えですか。 3)後作物残留性試験の実施は、水田施用では、麦、大豆、根菜類から異なる2種類以上、  畑地施用では、想定される農作物1種以上、となっていますが、農作物の種類をもっと  増やす必要があると思います。食品安全委員会も『後作物残留試験成績の集積に努める  こと』としています。  貴省は、どのような農薬、どのような農作物について後作物残留性試験をすべきかの実  施計画をたて、データを集積し、結果を公表すべきと思いますが、いかがお考えですか。  また、農薬メーカーや農業試験場などが実施して、登録保留基準をクリアーできなかっ  たり、土壌残留により薬害が生じて、適用拡大に至らなかった農薬-農作物の組合せに  ついてのネガティブな情報を収集し、公開すべきと思いますが、貴省はいかがお考えで  すか。 4)環境省は同上パブコメ結果の中で『残留性の高い農薬のリスク管理措置であるイ号に  おける「汚染の程度が微弱であること」の判定に関しては、食品規格における「おそれ  のない量」と同じ基準により運用することが適当であると考えています。』、『土壌中  半減期が180日を超える農薬により「汚染されることとなる場合」の判断基準としてこ  の「人の健康を損なうおそれのない量」を活用することとしたいと考えております。』  と述べています。  その農薬を使用していないにも拘わらず、後作物に「人の健康を損なうおそれのない  量」を超える残留が認められ、原因が土壌汚染によると判明した場合は、当該農薬製剤  について、その使用方法を見直したり、当該作物の栽培を禁止すること(たとえば、デ  ィルドリン汚染地では、キュウリを止め花卉等の栽培が指導されている)を検討すべき  と思いますが、 貴省はいかがお考えですか。