***政府提出「食品の安全性の確保のための農林水産省関係法律の整備に関する法律案」***    政府案にある農薬取締法に関する条文は以下のようになっています。 『第三条 農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)の一部を次のように改正する。   第九条の次に次の一条を加える。   (回収命令等) ★第九条の二 農林水産大臣は、販売者が前条第一項若しくは第二項又は第十四条第三項の 規定に違反して農薬を販売した場合において、当該農薬の使用に伴つて第三条第一項第二号 から第七号までの各号のいずれかに規定する事態が発生することを防止するため必要がある ときは、その必要の範囲内において、当該販売者に対し、当該農薬の回収を図ることその他 必要な措置をとるべきことを命ずることができる。 ★ 第十三条第一項中「第九条第一項及び第二項」の下に「、第九条の二」を加える。 ★ 第十四条第二項及び第四項中「第二項」の下に「、第九条の二」を加える。 ★ 第十六条の二の見出しを「(協議等)」に改め、同条に次の三項を加える。  2 環境大臣は、第三条第二項(第十五条の二第六項において準用する場合を含む。次項 において同じ。)の規定により第三条第一項第四号又は第五号に掲げる場合に該当するかど うかの基準を定め、又は変更しようとするときは、厚生労働大臣の公衆衛生の見地からの意 見を聴かなければならない。  3 環境大臣は、第三条第二項の規定により同条第一項第四号又は第五号に掲げる場合に 該当するかどうかの基準を定め、又は変更しようとするときは、厚生労働大臣に対し、資料 の提供その他必要な協力を求めることができる。  4 農林水産大臣及び環境大臣は、第十二条第一項の農林水産省令・環境省令を制定し、 又は改廃しようとするときは、厚生労働大臣の公衆衛生の見地からの意見を聴かなければな らない。 ★ 第十七条中第四号を第五号とし、第三号を第四号とし、第二号の次に次の一号を加える。   三 第九条の二の規定による命令に違反した者 ★ 第十九条第一号中「又は第二号」を「、第二号又は第三号」に改める。』  ***** 「食の安全と農薬問題連絡会」2003年5月12日 発表の対案は以下のようです*****           農薬取締法改正案(対案) ★1 特定農薬制度の廃止と農薬定義の改正  アブラムシを牛乳スプレーで固める方法、てんとう虫やクモがたくさん生息するよう に農業環境を整える方法。これらはみな、「化学合成農薬」を使わないで、安全で安心 できる食べ物づくりをめざす有機農家の、長年にわたる知恵と工夫と努力のたまもので す。このような有機農業で使われる病害虫防除の技術や資材などを、「特定農薬」と名 づけ、「農薬取締法」で取り締まろうとするのは、農家の努力と誇りを無にするばかり か、踏みにじるものです。また、農薬の使用を前提とする防除技術体系と有機農業のよ うに農薬を使用しない防除技術体系とは根本的に異なります。  このため、私たちは、有機農業で使う病害虫防除資材や天敵などは、一括して包括的 に農薬取締法の適用除外とし、別途、有機農業を全体的に見渡す視点に立って範囲づ け、運用管理すべきことを主張してきました。  したがって、私たちは、次の対案を提示します。 (1)特定農薬制度を直ちに廃止する。 (2)農薬取締法における農薬の定義を、次のとおり、改正し、@有機農業に   おいて使用される薬剤(農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすも   のを除く)と、A天敵であって、当該天敵を使用する場所と同一の都道府   県内(特定の離島にあっては当該離島内)で採取されたものは、一括し   て包括的に農薬取締法の適用から除外し、別途、有機農業を全体的に見   渡す視点に立って運用管理する。   @農薬定義第1条の2第1項において、ただし書きとして「農業の自然循環機能の    維持及び増進を図るため化学的に合成された薬剤を使用しない方法により農産物    を生産する場合において用いられる薬剤(農作物等、人畜及び水産動植物に害を    及ぼすものを除く。)として農林水産大臣及び環境大臣が指定するものを除く」    を追加し、この範囲のものを農薬取締法の対象から外す。   A農薬定義第1条の2第2項において、「その天敵を使用する場所と同一の都道府    県内(農林水産大臣及び環境大臣が定める離島にあっては当該離島内)で採取さ    れたものを除く」を追加し、この範囲の天敵を農薬取締法の対象から外す。    なお、食品安全基本法が制定されることになったため、上記@の農林水産大臣及   び環境大臣の薬剤の指定及びその変更においては、食品安全委員会及び農業資材審   議会の意見を聴かなければならないものとします。 ★2 登録農薬に関する試験成績の公表の新設  登録農薬の薬害、毒性及び残留性に関する試験成績を公表させる必要があります。こ のため、「農林水産大巨は、第2条第1項の登録をしたとき又は第6条の3第1項の規 定により変更の登録をしたときは、遅滞なく、当該登録農薬の薬害、毒性及び残留性に 関する試験成績を公表しなければならない」との規定を新たに設けるものとします。 ★3 申出制度の新設 (1)登録保留基準(第3条第1項第4号〜第7号関係)に対する申出  「何人も、第3条第2項において環境大臣が定める基準が適正でないと認めるとき は、環境省令で定める手続に従い、その旨を環境大臣に申し出て適切な措置をとるべき ことを求めることができる」ことを規定し、この申出があったときは、環境大臣は、 「必要な調査を行い、その結果必要があると認あるときは、食品安全委員会及び農業資 材審議会の意見を聴いて、当該基準の変更を行うことができるものとする」との規定を 新たに設けるものとします。 (2)農薬の使用基準(第12条第1項)対する申出  「何人も、第12条第1項において農林水産大臣及び環境大臣が定める基準が適正で ないと認めるときは、農林水産省令・環境省令で定める手続に従い、その旨を農林水産 大臣又は環境大臣に申し出て適切な措置をとるべきことを求めることができる」ことを 規定し、この申出があったときは、農林水産大臣又は環境大臣は、「必要な調査を行 い、その結果必要があると認めるときは、農業資材審議会の意見を聴いて、当該基準の 変更を行うことができるものとする」との規定を新たに設けるものとします。 ★4 最終有効期限を経過した農薬の回収命令の新設  使用期限を過ぎた農薬については、薬効が保証されておらず、薬害を生じさせる恐れ があり、保存中に有害な分解物を生じさせる恐れがある等の問題があります。現行で は、省令において使用しないよう努めるとされていますが、回収が義務づけられていな いため、農家が処理に困っています。また、不適切に廃棄されたり、長年月保存してい る期間中に適用範囲が変わり、適用外の違反使用される恐れがあります。  このため、農林水産大臣は、最終有効年月を経過した農薬について、農薬の使用に 伴って第3条第1項第2号から第7号までの各号のいずれかに規定する事態が発生する ことを防止するため必要があるときは、その必要の範囲内において、販売者に対して回 収を命じることができるとする規定を新たに設けるものとします。 ★5 防除を業とする使用者の届出制度と記帳義務 (1)届出制度  防除業者は、一般使用者と異なり、取り扱う農薬の種類や数量も多く、無人ヘリに よって地上散布よりも高濃度の農薬を散布したり、住宅街や公園、学校等の公共施設な ど、不特定多数の人が出入りする生活環境での散布を業とするものも多数存在します。  防除業者については、昨年12月の改定前の旧法では、届出制度があり、省令で都道 府県知事への届け出が義務づけられ、その名簿に基づいて監督指導されていました。し かし、届出制度が廃止されたため、多くの都道府県は、困惑している実情にあります。  多種多量の農薬を取り扱う防除業者は、農薬散布に係る環境汚染の防止や人体被害の 防止について責任をより強く問われて然るべきであり、販売者と同様に届出制度をとる べきです。 (2)記帳義務の新設  防除業者の責任の重さに鑑み、防除を業とする使用者は、販売者等と同様に、帳簿を 備え付け、これに次の事項を真実かつ完全に記載し、少なくとも3年間その帳簿を保存 しなければならないとする記帳義務を課すべきです。   一 農薬を使用した年月日   二 農薬を使用した場所   三 農薬を使用した農作物等   四 使用した農薬の種類又は名称   五 使用した農薬の単位面積当たりの使用量又は希釈倍数   六 使用方法   七 委託者の住所氏名  すでに現行の省令では、使用者について、一から五の項目について、帳簿記載するよ う努力規定が設けられています。一般使用者よりも、多種多量の農薬を取り扱う防除業 者にあっては、農薬散布委託者を含め、農薬の使用状況をきちん記載し、保存しておく べきです。また、委託者が農薬散布に関する責任を問われる場合も想定されるので、そ の氏名住所の記載も必要です。