■特定農薬の指定(案)について意見         2003年2月20日提出 【意見】  3月10日からの改正法は、「特定農薬」条項の施行を凍結し、農薬取締法の抜本改 定で対処すべきである。抜本改定に際しては、物理的作用による病害虫防除方法や有機 栽培農家が自らの工夫で考案した病害虫防除方法(除草用生物や天敵を含む)について は、農薬取締法の適用除外とすることを明記し、他の法律で取締まるべきである。  「特定農薬」について、国民の理解が得られないまま、拙速に指定作業がすすめられ てきた。その結果、3種類の資材の指定がなされ、他の大部分の資材は薬効等が不明で 農薬取締法における農薬の定義に該当するかどうかの判断がつかないとして、指定保留 になった。  結局、本省令の施行によって、指定保留のものを農薬と謳って販売することは禁止さ れるものの、使用を規制されるものは、「使用される場所周辺以外で採取された天敵の み」ということになり、「特定農薬」は、農薬取締上、最悪の欠陥制度として、その指 定の段階で、事実上崩壊したといえる。 【理由】 @情報提供された約740種類の資材のうち、3種が「特定農薬」に指定され、679  種が、薬効が明確でない等の理由で、指定保留にされている。   指定保留の中には、「農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないこ  とが明かなもの」といえない原材料や登録農薬の活性成分や補助成分と同じものも含  まれている。   また、農薬の定義にあてはまらないとされる残りについては、すべての原材料名が  明かにされてはいない。   このような指定の仕方は、使用者、消費者に混乱を与える。 A「特定農薬」の名称について、通称名を「特定防除資材」とすることも考えていると  しており、法施行前から、用語についても問題があることを、自ら露呈している。 B「特定農薬」として、「使用される場所の周辺で採取される天敵」が指定されたが、  周辺の定義が明確でない。 C「今後の運用について」では、「短期間に得られた情報は、限られたものであり、各  資材の安全性はもとより、効果についての客観的な情報が不足している。」とし、自  ら拙速であることを認めている。 D「特定農薬」を、どのような基準で、どのようにして決めていくかについて「今後の  運用について」では「効果や安全性について、データ収集等により、順次評価してく  必要がある。」と記述されているだけで、具体的な審査基準や方法などについては、  何も触れられていない。   また、「農業生産に使用されている農薬的資材を調査し、効果と安全性の評価・確  認を行なうことにより、食の安全を確保する上で有効な仕組みとする」との記述があ  るが、まず、きちんとした制度をつくった上で、「特定農薬」を指定すべきものであ  るのに、指定してから、そのやり方・仕組みを考えようというのは、本末転倒である。 E「今後の運用について」の中で、指定保留された原材料について、「使用者が農薬的  に使えると信じて使う場合」は、取締りの対象としないとしており、安全性に問題が  あるなしに拘わらず、いわば玉石混淆のかたちで、多くの資材の使用が認められたの  は、何のための「特定農薬」制度かわからない。 F提供された約2900件におよぶ情報はその一部しか公開されていない。  公表された概要では、原材料名が明かされているだけで、それぞれについて、どのよ  うな情報が提供されたかも不明である。  個々の情報提供者に、判断理由や結果を通知もせず、このまま、省令を施行すると、  使用者や消費者に混乱を与える。 G農薬の原材料には、活性成分と補助成分があり、現行の登録制度では、農薬はこの両  者からなる製剤として登録される。  「特定農薬」に指定される原材料が、活性成分か補助成分かも明確でない。指定され  た「食酢」「重曹」は活性成分と考えられるが、たとえば、原材料に水が指定されて  いないことは、水を含有する資材は使用できないことになる。  補助成分についても、「その原材料に照らし、農作物等、人畜及び水産動植物に害を  及ぼすおそれがないことが明かなもの」を指定する必要があると思われるが、何も指  定されていない。また、「今後の運用について」でも、薬効のない補助成分をどのよ  うに取り扱うかの方針が示されていない。