★★農薬取締法第12条第1項に係る省令(案)の概要についての意見★★        2003年2月20日提出 *************************************************************  意見(総括的意見と個別条項についての意見にわけて記述する) ************************************************************* 【総括的意見】  「特定農薬」省令とともに、当該省令を含む、改正農薬取締法の3月10日からの施 行を凍結すべきである。その上で、農薬の農作物への残留のみならず、使用者や散布地 周辺の住民、自然及び生活環境汚染防止をも視野にいれ、防除業者の許可制度や使用者 の免許制度を導入した農薬取締法の抜本改定を行なうべきである。 【理由】 @「農薬使用基準」については、その「考え方」が提示されているだけで、省令の条文  とその運用や施行規則の具体的内容がどのようなものになるか見えてこない。このこ  とは、改正法によって罰則を科せられる農薬使用者にとって大問題であり、農薬使用  を指導する立場にある人にとっても戸惑いを与えるものである。   このまま3月10日に改正法を施行し、制定される省令を農業現場に周知徹底させ  ることは、実質的に不可能で、大きな混乱を招くに違いない。 A「農薬使用基準の考え方」では、自然及び生活環境の汚染防止が軽視されている。  防除業者届出制の廃止/農薬容器に表示されている具体的な散布上・使用上の注意が  遵守義務になっていない/非食用作物については適用遵守義務がない/適用病害虫に  ついては遵守義務がない/マイナー作物について適用外使用を認める等々は、従来以  上に安易な農薬使用の拡大につながる恐れがあり、生活環境での農薬汚染に苦しむ人  たちに、一層の苦痛を与えることになる。 B「考え方」は、農薬使用を前提として農業の育成に力を注いでおり、環境保全型農業  の推進を視野にいれていない。 C従来法にあった「防除業者」の届出制度に関する条文を廃止したにも拘わらず、省令  で、くん蒸、空中散布、ゴルフ場関連の使用者については、氏名・住所等の届けを義  務づけるという矛盾する法運用をしている。 D「防除業者」は多種・多量の農薬を委託者から請負い散布するから、一般農家や住民  の使用状況とは明かに異なり、従来法でも届出制度により都道府県の監督下におかれ  ていた。  届出制度が廃止に伴ない、都道府県が業者を特別に監督指導することはなくなったが、  農水省は、都道府県レベルの条例等で防除業者を取締まればいいと主張をしている。  地方条例の成立施行までには時間を要し、改正法の施行との間に、法的空白期間が生  ずる。 E農水省は、「考え方」案に示された経過措置について、本パブリックコメントが実施  中であり、省令の内容が確定しておらず、また、省令条文が公表されていないにも拘  らず、各農政局長らに対し、適用外農薬使用の仮申請作業をすすめるよう、都道府県  への指導を指示している。このことは、法改定が如何に拙速に行われたかを示すもの  であると同時に、パブリックコメント制度をないがしろにするものである。 ---------- 【個別条項に関する意見】  以下、省令の「考え方(案)」に沿って、個々の条項に関する意見及び提案を述べる。 【T】農薬使用基準が適用される農薬  省令の「考え方」では、(1)試験研究の目的で使用される場合。 (2)検疫有害動植物 に対し使用する場合。(3)輸入国の要求により使用する場合。使用基準は適用されない ことになっている。 【意見1】 (1)についていえば、空中散布や広範な森林でのフィールド試験などは、それだけで、 環境への影響も大と考えられる。一概に試験ということで、すべて認めてしまうことは 危険である。例えば、東京都が、杉花粉抑制剤使用計画では、10ha=2万本の杉に試験 されようとしていた。除外となる試験内容を決めておくべきである。 【意見2】 (2)についても同様に、検疫で有害動植物が見つかったからといって、どんな農薬を使 ってもいいわけではなく、残留基準に整合する適用が行われるべきである。 【意見3】 (3)については、ある農作物の輸入国が、これこれの農薬を使ってくれといってきた場 合に、国内の使用基準がなくても使っていいという意だが、使用した場合の国内での環 境への影響等を評価しないで、輸出用作物だから使用基準を守らなくてもいいとするの はおかしい。ケースバイケースで考えるべきで、農林水産大臣と環境大臣の権限で、判 断すべきである。  逆に、相手国から自国の基準にないから使わないでくれと要求があった場合は、どう するのか、また、日本への農作物輸出国に、日本に適用のないポストハ−ベスト農薬の 使用をしてくれるなと要求できるのか、について疑問が残る。 ---------- 【U−1】農薬使用者の責務 【意見4】 (4)項については、土壌汚染による環境・生態系への影響が無視されている。(5)(6) 項については、生態系への被害防止も謳うべきである。 【意見5】以下のような内容を追加することを求める。 @農薬に関する知識を自ら修得するとともに、農薬容器の表示ラベルに記載されている  散布上・安全使用上の注意及び適用に関する事項ほかを遵守すること。 A自然環境・生活環境の汚染防止をめざし、環境保全型農業を心がけ、農薬の使用量を  減らすこと。 B散布対象外(他の作物・有機圃場・住宅地など)への飛散防止措置を講ずること。 ---------- 【U−2】罰則を科す基準 【意見6】食用、非食用作物に拘わらず、すべての作物について、  農薬登録時に定められた (1)適用農作物等に含まれない農作物等に使用しないこと (2)単位面積当たりの使用量の最高限度を超えて又は希釈倍数の最低限度未満の希釈倍数 で使用しないこと。 (3)使用時期以外の時期に使用しないこと。 (4)総使用回数を超えて使用しないこと。 (5)使用方法以外の方法で使用しないこと。 (6)適用病害虫等以外の病害虫等に使用しないこと。  について、遵守を義務とする。 【理由】 @原案で適用遵守義務を食用農産物等に限っているのは、農薬の散布者への影響、自然  環境・生態系への影響、生活環境・散布地周辺住民への影響を軽視している証左であ  る。特に、松枯れ対策や住宅地周辺での樹木や芝、花卉など非食用作物への農薬散布  について、配慮が足りない。 A農水省は2000年7月に「街路樹等の病害虫防除における農薬の適正使用の徹底につい  て」という通知をだし「農薬の容器又は包装に記載されている表示事項に基づき、適  用作物、適用病害虫、希釈倍数等定められた使用方法を必ず遵守すること。」として  いる。この通知に違反しても、罰則が科せられないような省令は疑問である。 B原案のように適用病害虫等及び使用方法をいれないと、不適切な散布が行なわれる  恐れがある。  昨年、北海道旭川市では、カメムシ退治に適用のないスミチオンを散布するというの  で、追及したところ、いやあれは、カメムシでなくアブラムシでしたといい逃れした  例があった。   また、目的外使用(鳥獣の毒殺、家庭用殺虫剤への転用等)の防止につながる。 C本年2月に、総務省行政評価局が公表した「農薬の使用、管理等に関する行政評価・ 監視結果報告書」では、都道府県の「防除基準」や農協等の作成する「防除暦」には、 「安全使用基準」等に適合しない内容が多々みられ、不適合の多い順に、使用回数/ 適用病害虫/希釈倍率/適用作物/使用期間であった。 【意見7】(3)(4)(5)のくん蒸業者、航空機による散布業者、ゴルフ場使用者に関する 項目は削除し、下記【提案1】のように法条文で「防除業者」として、農林水産大臣や 都道府県知事がその業務を監督すべきである。 【理由】 @従来法でも、防除業者は、届出制度の下にあり、くん蒸業者や空中散布業者は、省令  で、農水省の監督下におかれていた。改定法で、廃止した制度を、省令で、復活する  ようなやり方は、法をもてあそぶものである。 A防除業者は、農家や一般使用者と異なり、多種・多量の農薬を扱い、中には、広範な  地域に散布するものもいる。そのため、法条文による管理下のおき、指導監督を厳し  くすべきである。 【意見8】農薬使用者に、農薬容器や包装に表記の事項や当該農薬に関するMSDS記 載事項を遵守することを義務をづける。 (1)容器に表示された最終有効年月を過ぎた農薬を使用しない。 (2)散布上・安全使用上の諸注意に反した使用をしない。 (3)廃棄についての諸注意に反した使用をしない。 (4)適用についての諸注意に反した使用をしない。 【理由】  農薬散布にあたっての具体的な注意事項は、散布上や安全使用上の注意として容器に 記載されている。これらの注意は、使用者や散布地周辺の住民を農薬の害から守るため 、また、環境汚染の防止や残留基準を超えないために、実行すべきこととして、遵守義 務にすべきである。 【意見9】省令でなく、法の帳簿の条項に、農薬使用者及び委託者の遵守義務として、 下記事項の帳簿への記載を追加する。 (1)使用した年月日 (2)使用した場所 (3)使用した農作物名 (4)使用した農薬の種類又は名称 (5)使用した農薬の単位面積当たりの使用量又は希釈倍数 (6)使用が委託された場合は、委託者名 【理由】 @いわゆるトレーサビリティーの実施は、食の安心・安全のために、必要である。 A防除業者に散布を委託した場合は、委託者も散布にあたって、使用者と同等の責任を  もつべきである。 【意見10】農薬使用者や委託者は、以下の事項を実施せねばならない。 (1)住宅の用に供する土地及びこれに近接する土地、不特定多数の人が出入りする場所  (公園、道路、学校、公共施設など)において農薬を使用する者及び委託者は、農薬  の使用をあらかじめ広報、掲示等で公表し、立入制限や農薬が飛散することを防止す  るための必要な措置を講じなければならない。 (2)農薬を使用する者及び委託者は、当該農薬の対象外農作物への飛散防止に必要な措   置を講じなければならない。 (3)別表1の止水を要する農薬を水田で使用する者及び委託者は、当該農薬の流出を防   止するための必要な措置を講じねばならない。 (4)別表2の被覆を要する農薬を使用する者及び委託者は、農薬を使用した土壌から当   該農薬が揮散することを防止するための必要な措置を講じねばならない。 (5)農薬使用者は、散布機械・器具を定期的に点検し、整備しておかねばならない。 【理由】 @農薬散布に関する責務については、委託者も使用者と同等とみなすべきである。 A人が日常的に生活する場での農薬汚染は、出来るかぎりなくすべきである。  前述の農水省通知「街路樹等の病害虫防除における農薬の適正使用の徹底について」  で「散布に当たっては、散布前に関係者に連絡し、必要に応じて立て札を立てること  などにより、子供その他の散布に関係のない者が作業現場に近づかないよう配慮する  とともに、居住者、通行人、家畜等に被害を及ぼさないよう注意を払うこと。」とし  ている。 B対象区域外への農薬飛散は、散布対象外作物の残留基準違反をひきおこしたり、有機  圃場の農作物に損害をあたえることがある。 C散布器具の不良は、散布者の農薬被曝だけでなく、散布地周辺の予期せぬ環境汚染等  につながる恐れがある。 【意見11】航空防除業者及び委託者は、以下の事項を実施せねばならない。 (1)農薬空中散布に関する使用基準やガイドライン等の記載事項を遵守する。 (2)当該年度に於ける農薬の使用計画を、毎年度使用する最初の日までに農林水産大臣   に提出する(変更の場合も同様)せねばならない。 (3)航空機を利用した農薬の使用をあらかじめ広報、掲示等により公表しなければなら   ない。 (4)農薬の使用を委託した区域(対象区域)の境界、住宅地等、河川、湖沼、浄水場及   び障害物の位置を明示した地図を作成しなければならない。 (5)対象区域及びその周辺の住民に、空中散布の可否についての意見を聞かねばならな   い。 (6)対象区域において風速及び風向を観測し、対象区域外への農薬の飛散を防止するた   めの必要な措置を講じなければならない。 【理由】空中散布は、広範囲に農薬を散布するため、遵守義務を強化すべきである。 【意見12】くん蒸業者、ゴルフ場での農薬使用者及び各委託者は、当該年度に於ける農 薬の使用計画を、毎年度使用する最初の日までに農林水産大臣に提出する(変更の場合 も同様)せねばならない。 【理由】一般使用者より、広範囲に又は大量に農薬を散布する使用者は、環境汚染防止 の見地から計画の届けが必要である。 【意見13】くん蒸業者、ゴルフ場での農薬使用者、無人ヘリ・大型散布機・スプリンク ラーによる農薬使用者、共同防除実施者等及び各委託者は、農薬の使用をあらかじめ広 報、掲示等により公表しなければならない。 【理由】一般使用者より、広範囲に又は大量に農薬を散布する使用者は、周辺住民への 周知が必要である。 【意見14】登録農薬の目的外使用(室内殺虫剤、鳥獣毒殺等)は禁止し、非農耕地用薬 剤(空き地、河川敷、道路、公園、鉄道敷地で使用される除草剤など)の使用について は、使用自粛を求める。 【理由】 @従来から、農水省は、非農耕地用除草剤については、登録を取得するよう指導してい  る。 A現に、非農耕地用に適用を限定した登録農薬がある。 B登録農薬と同じ成分を含む非農耕地用薬剤を取り締まる法律は現在、存在しない。 【提案1】農薬取締法を改定し、農薬使用者について、免許・許可制度を実施する。 一般使用者、農家、散布業者、大型散布業者、航空機による散布業者、大規模散布業者 などに区分した免許が適切である。特に、防除業者は、許可制度の下で一般使用者や農 家よりも厳しい資格取得条件を設け、農林水産大臣や都道府県知事の指導監督下におく。 【提案理由】 @使用者に対しては、罰則強化よりも、きちんとした教育・講習が必要である。それに  は、免許・許可制度が最適である。 A農薬使用を前提とした農業を推進しきた農薬業界団体や農業団体、行政官等による、  法的裏付けのない、従来のやり方には、限界がある。無登録農薬事件の発生や適用外  使用が防止できなかったことをみても、明かである。 B防除業者の届出制度をなくしたこともあって、都道府県による、業者の指導・監督が  困難になる。特に、都会地区では、街中や公園、住宅地等での、街路樹・芝生・花卉  ・庭木等に対する散布は監督が行き届かず、野放しになる恐れが強く、農薬健康被害  者にとっては、脅威となる。そのため、防除業者に対しては、法律条文で、より厳し  い規制を設けるべきである。 ---------- 【U−3】遵守の努力を要請する基準 【意見15】原案から、この項目を削除し、U−2の罰則を科する基準にまわす。 【理由】 @農薬取締法第12条(農薬の使用規制)の条文には「農林水産大臣及び環境大臣は、  農薬の安全かつ適正な使用を確保するため、農林水産省令・環境省令をもって−中略  −農薬を使用する者が遵守すべき基準を定めなけれならない。」とある。  「遵守義務」は罰則を伴うもので、同法の他の条文中では、罰則を伴わない「努力規  定」は「努める」という用語で表されている。「遵守」と「努める」は、厳然とした  区別があるにも拘わらず、「考え方」では、「遵守の努力を要請する」という遵守義  務とまぎらわしい造語で、実は「努力規定」を意味するというごまかしを行っている。 A列挙された6つの項目は、「遵守」という形容詞がついているものの、すべて「努力  規定」にすぎず、このような努力規定では、単なる行政指導に終わってしまい、今ま  でと変わらない。 ---------------- 【U−4】経過措置について 【意見16】原案のように、「食用農作物等」を当分の間「食用農作物等及び農林水産大 臣の承認を受けていない食用農作物等」とすることに反対であり、この項を削除する。 【意見17】  使用者に罰則を科することを猶予するために、違反を認めることはできない。  省令では、違反は違反とし、罰則適用の経過措置は、【提案2】のように、農薬取締  法の罰則の項でとるべきである。 【理由】 @従来から、適用外使用は不適切とされ、罰則はなかったものの、使用者への行政指導  が行われてきた。法改正を待たなくとも、2月7日には、総務省行政評価局が「農薬  の使用、管理等に関する行政評価・監視結果も基づく通知」の中で、都道府県の「防  除基準」や農協等の作成する「防除暦」に「農薬安全使用基準」等に適合しない内容  がみられたとして、農水省に対して、農薬使用の適正化を求めている。 A本省令(U)の(2)の(1)項において適用作物の遵守が義務付けられているにも  拘わらず、グループ化できないマイナー農作物について、適用外使用を容認すること  は、たとえ条件付きであっても、農薬使用の拡大につながるとともに、農薬製造者の  申請により登録された農薬を適正に使用するという現行の農薬登録制度の根幹を崩す  ものである。 【提案2】省令では、適用外使用は明確に農薬取締法違反とした上で、罰則の適用につ いては、下記の「罰則適用の猶予条件」に示すような権限・義務の下、農薬取締法条文 の罰則に、経過措置を設ける。 【使用者に対する罰則適用の猶予条件】 (1)農林水産大臣の権限と義務  @農薬とその適用作物についての都道府県知事からの申請を以下の承認基準に基づき   承認する    承認基準     (a)その農薬を使用できなければ農業生産の安定に著しく支障をきたすこと       を示す栽培データがある     (b)その作物が別紙の区分に含まれており、その区分にある他の作物で残留       基準がある     (c)使用が認められている作物の適用病害虫、使用方法、使用時期、使用濃度、       総使用回数の範囲内であること  A人畜等への危険性が判明した場合は、都道府県知事とともに農産物の出荷停止、   回収等の流通規制措置を実施する  B上記項目の内容については、すべて公開する (2)都道府県知事の権限と義務  @農林水産大臣に農薬とその適用作物を申請し、承認を受ける  A使用者からの作付け計画と適用外農薬使用申請書を受理し、審査し、承認する  B使用地域の自然及び生活環境への影響の恐れがあると判断される場合は、承認し   ない。  Cその農薬が使用された農作物について、必要に応じて農薬の残留の度合等を検査   し、その確認を行なうとともに、出荷先を把握しておく  D人畜等への危険性が判明した場合は、農林水産大臣とともに農産物の出荷停止、   回収等の流通規制措置を実施する  E自然及び生活環境汚染が判明した場合は、該当農薬の使用中止措置をとる。  F経過措置の期間内に、当該農作物の環境保全型栽培方法の開発を促進援助する。  G上記項目の内容については、すべて公開する。 (3)使用者の義務  @あらかじめ、作付け計画と適用外作物農薬使用届けを都道府県知事に提出し、   承認を受ける    適用外農薬使用申請書の記載例     適用農作物名/使用農薬名(登録番号)/使用方法/使用量/適用病害虫等     を記載するただし申請承認の有効期間は1年以内とする  A農薬の使用に際しては、使用履歴を記載する  B出荷する農作物については、当該農薬の残留分析を実施し、都道府県知事に届ける  C出荷する農作物には、農薬使用履歴を添付する  D出荷する農作物については、出荷日時、農薬使用履歴、出荷先、数量を都道府県   知事に届ける  E上記項目の内容については、すべて公開する 【提案理由】 @適用外使用の承認に際しては、自然及び生活環境への影響を評価が抜けているので、  都道府県知事の義務の中に追加する。  たとえば、昨年長野県では、わさび田で使用された適用外農薬が、下流の養魚場に被  害を与えた例がある。 A経過措置期間に、都道府県が積極的に取り組むべきなのは、農薬を使用削減した環境  保全型農業であり、そのことが、食の安心・安全につながる。 B生産者からの申請がないと、適用外使用の実態が把握できない。 Cどの農作物で農薬の適用外使用が行なわれているかを、消費者が知るために、すべて  の情報は公開される必要がある。 ******************************************************************************  すでに、当グループでは、「農薬使用基準」に関して、意見・質問・提案を農水省に 対し、昨年12月と本年1月の2度にわたって、提出しており、上に記述しなかった内 容も含んでいる。  資料として、下記の2文書(いずれも、使用基準関係の部分)を添付するので、参考 にされたい。 【T】2002年12月に、農薬取締法省令に関する質問と意見として、農水省に提出した文 書(抜粋) 【U】2003年1月、農水省「食の安全・安心のための生産資材等につき講ずべき措置に ついて」の意見募集で提出した文書(抜粋) ********  資料 ******** 【T】2002年12月に、農薬取締法省令に関する質問と意見として、農水省に提出した文 書(抜粋) ★第十二条関連:農薬使用基準について  改定農薬取締法では、自然環境や生活環境における農薬汚染防止を目的とする条文強  化はなく、農薬使用基準の省令の中に、折り込んで規制する必要があります。  そこで、次のような対応を求めます。 (1)適用外使用してはならない(登録申請され、ラベル表示にある適用病害虫・適用    作物・適用方法以外の使用をいう)   【理由】@農作物への残留が問題となるだけでなく、散布者・周辺住民、自然環境        ・生活環境へ悪影響を及ぼします。       A防除業者の中には適用病害虫を特定できず、単に「害虫」「毛虫」と、        ひとくくりにした結果、用法・用量を誤った散布で、効果がなかったり        疑わしかったりする例が跡を絶たず、人への健康被害や環境汚染の原因        となっています。 (2)目的外使用してはならない(農薬を鳥獣退治に用いたり、室内での殺虫剤として    使用することなど)   【理由】@メソミルなどで、ハトなどの野鳥や犬猫を殺す事件も頻繁に起こってい        ます。       A農薬DDVPくん蒸剤をゴキブリ退治に室内で使用した例もありました。 (3)ラベルに非農耕地適用記載のある農薬以外を非農耕地で使用してはならない。   【理由】@農水省は、非農耕地用で使用する除草剤も登録するよう指導しています。       A登録農薬でも非農耕地での適用のある農薬もあります。 (4)ラベルにある使用上の注意、毒劇農薬については、添付されるMSDSの諸注意    を守ることを省令で義務づける。    動物実験で発ガン性・催奇形性・生殖毒性等が認められたものはその旨を記載し    て、注意を促す。    農薬のラベルには、使用上の注意があるが、現状では、同種の製剤でもその内容    はメーカーによってまちまちである。これを、統一した注意書きにあらためる。    保護具の着用、散布の事前事後通知の実施、夜間や降雨時又は降雨が予測される    ときの散布禁止、周辺への飛散防止対策、散布後の立入制限期間、縄囲いなどに    よる立入制限、残液や廃容器の処理方法、を含めたラベル表示をし、省令として    義務づけるべきである。   【理由】@保護具の着用は自己の責任と考えてはなりません。車のシートベルト着        用義務と同じく、散布者自身の被害防止にも重要ですし、中毒被害は社        会的損失になります。       A農薬散布地に、人や犬猫が知らずに入って被爆する事故が跡を絶ちませ         ん。   B法には降雨時の使用禁止規定がなく盲点となっています。行政は「雨で        流れてしまうような農薬ムダ使いを、農民はしないだろう」といいます        が、請負防除業者は散布スケージュルをこなさねばならず、また「まく        ことで金が入る」ため、雨天の散布が横行しているのが実態です。とく        に、法改定で防除業者に対する指導がなくなることが気懸りです。       C夜間に公園や街路樹などに農薬散布している実例があります。       D現在は、急性毒性についての注意しかしめされていません。 (5)空中散布・地上散布の別なく有機圃場への農薬飛散防止に関する通知等を省令化    する (6)空中散布による水源地、その他生活環境への飛散防止に関する通知等を省令化す    る   【理由】すでに、農林水産航空事業の実施についての通知、農林水産航空事業実施       ガイドラインがでています。その内容を使用上の注意として、実施を義務       づけるべきです。 (7)生活環境汚染防止のため住宅地周辺での農薬散布については、住民との話し合い    を義務づけ、住民への散布告知などのガイドラインを作り、省令化する。    生活環境で使用できる農薬の種類を規制する。    景観保持を目的とした農薬は使用できなくする。    農薬に過敏な人に対する保護措置を講ずる。   【理由】@空中散布だけでなく、農住接近のため、住宅地周辺の農耕地で使用する        農薬が飛散して、人や物に被害を与える例が増えています。       A松枯れ対策空中散布の場合は、散布協議会が作られ、住民が異議申立て        することができます。       B公園、道路、学校、公共施設、公衆衛生関係施設(空散の実施基準にあ        る用語で、保育園、駅、病院)など不特定多数の人があつまるところの        樹木や花卉、芝などへの農薬散布は、農薬に過敏な人がいるので、使用        規制が必要です。       Cクロルピクリンのように刺激性ガスによる被害がしばしばおこる農薬は        、住宅地周辺での使用を禁止すべきです。例えば、住宅地周辺200m以        内では使用不可など。       Dカナダでは、生活環境での、景観保持のための農薬散布を規制する自治        体もあります。 (8)農薬による水・空気・土壌など自然環境汚染防止についても、環境省の登録保留    基準を強化し、安全使用基準として省令化する。   【理由】@生態系に対する影響評価は、現状では不十分であり、評価試験を強化す        る必要があります。       A水道水源や地下水の基準も現状では、不十分です。       B季節変動のある魚介類汚染、魚介類の繁殖への影響の評価も不十分です。       C農薬の大気基準もきちんときめるべきです。       D土壌残留性農薬の指定はなくなりましたが、農薬やその分解代謝物の残        留性についても、きちんと評価すべきです。       E以上のような評価強化に基づき、省令の内容も厳しくすべきです。       (9)非食用作物(樹木、花卉、芝、ほか)については、残留基準がないため適用がル    ーズになりがちである。使用基準遵守の徹底を促すべきである。   【理由】@無登録農薬事件でも、花卉用の輸入農薬が相当数ありました。       A食用作物への適用のないダミノジットのような発ガン性農薬が、花卉用        に登録されたままになっているのは、使用者の健康への影響を軽視して        いることになります。 (10)個々の農薬使用基準を遵守するだけでなく、多種類の農薬を個別に順次使用する    ことを規制する。  【理由】@農薬の複合汚染を防止する必要があります。  A同種の農薬は総農薬使用回数で規制すべきです。例えば、有機リン剤は        何回までとして。 (11)農薬の混合については、容器表示にその可否を記載して、勝手な自家混合は禁止    する。   【理由】@JA全農肥料農薬部が農薬混用適否表をつくっているが、これは、薬効        ・薬害の観点で作成されており、毒性についての評価がなされていませ        ん。混合は、急性毒性等の評価が必要な複合製剤と同等に扱うべきです。       A公園で、複数の劇物農薬が、環境ホルモンであるAPE系展着剤と混合散        布された例もありますが、何の規制もありません。 (12)農薬は、病害虫の発生状況を調べた上で、使用するようことを義務づける   【理由】病害虫の発生状況に応じた散布が、過度の農薬使用を防止します。 (13)省令を使用者に周知徹底する体制を確立する。   【理由】@農家だけでなく一般使用者にも、マスメディア、自治体広報、農薬販売        店や農薬容器包装等で省令違反が罰則を伴うこと周知させる必要があり        ます。       A現在届けのある散布業者は、監督者である都道府県が別途、文書や講習        会等で法施行前に罰則化を周知させるべきです。 (14)都道府県が作成する防除基準や農協等が作成する防除暦に省令違反がないようチ    ェック体制を確立する   【理由】総務省の行政監察では、農家が頼りにしている防除基準や防除暦に農薬       安全使用基準に不適合なものが、みつかっています。 (15)省令についての疑義や省令違反の相談窓口を作る   【理由】自治体ごとに窓口を設け、疑義の相談や違反事例の報告、農薬飛散による       健康被害や環境分析についての相談も受け付けるべきです。 ★マイナー作物のグループ化と農薬適用拡大について  貴省は、12月3日の参議院農林水産委員会でのマイナー農作物に関する質疑の中で 「現在、約三百作物の適用拡大要望が出ております。これを私どもはできるだけ早く、 十二月中にデータに基づく農薬適用作物のグループ化等の検討をしたい、そして来年の 一月中には登録の変更の申請の受付を開始したいということで、改正法の施行に向けて 農薬の適用拡大促進というのを努めていきたいというふうに考えておるところでござい ます。」と述べておられます。  貴省は、食の安全・安心をめざす中で、いままでの生産者に眼を向けた農政から、消 費者に眼を向けた農政にするとされていますが、マイナー作物のグループ化と適用拡大 問題は、生産者からでてきたものであり、残留農薬を摂取する消費者および農薬を被曝 する散布地周辺の住民に対しては、何の説明もなされていません。  貴省には、消費者・住民に対し、十分に説明する責任があるのではないかと思います 。  つきましては、以下の質問をしますので、お答え願えれば幸いです。 (1)約三百のマイナー作物とはなにですか。  品名と生産量をリストでお示しください。 (2)それらのマイナー作物は、いままで、どのような栽培方法がとられてきましたか。  農薬を使用していたとすれば、どのような農薬が使用されていましたか。  その中で適用外使用は、どれですか。  マイナー作物それぞれについて、適用外使用の実態を、一覧表(作物名/適用農薬名 /適用外使用農薬名/無農薬栽培の場合はその旨記載)のかたちで、明かにしてくださ い。 (3)農薬適用拡大するには、個々の農作物についての薬効・薬害・残留性試験などが 必要です。経営上の都合でメーカー単独で出来ない場合、生産者・農薬メーカー・流通 業者などで、会社をつくり、登録拡大の申請もできたはずですし、いままでも、農水省 や地方自治体により、個々の農作物についてきちんとしたデータを作成して、適用拡大 の申請をはかるよう支援策がとられてきたと聞いてもいます。  適用外使用に罰則が科せられる段階になって、急に約三百もの農作物について、いっ きに、あらたな農薬適用拡大をはからねばならない理由はなにですか。 (4)マイナー作物について、いままで農薬を使用しない栽培方法がどの程度検討され てきましたか。  作物毎に、それが困難である理由を明かにした上、どのような対策のために、どのよ うな農薬が必要かを具体的に説明してください。 (5)いままで適用のための試験がなされた結果、薬害や残留性に問題があり、適用拡 大にいたらなかった農薬についてのネガティブデータがあるはずです。これらの情報を データベース化して、使用してならない例として公表してください。 (6)作物をグループ化する場合、薬効・薬害・残留性などが、グループ内で同等であ るとする科学的根拠を消費者に示して、納得を得ることが必要と思いますが、いかがお 考えですか。使用基準の省令の策定に際して、グループ化の根拠となるデータを示して、 消費者の意見を聞いてください。 (7)農作物をグループ化した場合、農作物毎に設定されている食品衛生法による残留 基準との整合性については、どうお考えですか。 (8)マイナー作物への農薬適用拡大が実施された場合、農薬使用量はどの程度増加す ると考えられますか。 (9)外国では、作物のグループ化と農薬適用の関係はどうなっているかを教えてくだ さい。 ---------- 【U】2003年1月、農水省「食の安全・安心のための生産資材等につき講ずべき措置に ついて」の意見募集で提出した文書(抜粋) 8:防除業者には資格免許制度にする。 9:農家・一般の使用者も資格免許制度にする。 10:非農耕地用薬剤に農薬取締法適用。 11:自然環境汚染防止、生態系保護の観点から農薬使用規制。 12:生活環境での農薬使用規制。 13:登録失効農薬や期限切れ農薬の販売・使用禁止。 14:安全使用基準と適用方法の遵守の義務づけ(第十二条関連:農薬の使用の規制)  改定法では、規定の表示のある農薬と特定農薬以外は使用禁止になるとともに、省令  で定めた使用基準違反も規制されることになります。かりに、現在の農薬安全使用基  準や登録保留基準がそのまま省令となり、適用外使用も禁止されるようになっても、  今のままの体制で、監督指導がきちんとできるかどうかは疑問です。使用者に対する  罰則強化にたよらず、上述の免許制度の中で、講習・研修をしっかりしていくことが  大切と思います。  個々の農薬の使用基準の他に以下のような全般的な基準を明記し遵守義務とする。  @「この使用基準は、最低限の遵守事項を定めたものであるから、農薬の使用者は物   理的な防除等を優先して適期に防除を行い、農薬使用量の低減に努めること。」を   前文として新設すること。  Aラベル表示にある安全使用上の注意、適用についての記載事項を遵守を義務付ける。  B適用外使用をしてはならない(登録申請され、ラベル表示にある、適用病害虫、適   用作物、適用方法以外の使用をいう)  C目的外使用してはならない(農薬を鳥獣退治に用いたり、室内での殺虫剤として使   用することなど)。  Dラベルに非農耕地適用記載のある農薬以外を非農耕地で使用してはならない。  Eラベルにある安全使用上の注意や該当農薬成分のMSDSの諸注意を守ることを省   令で義務づける。   動物実験で発ガン性・催奇形性・生殖毒性等が認められたものはその旨記載し、注   意を促す。   農薬のラベルには、使用上の注意があるが、現状では、同種の製剤でもその内容は   メーカーによってまちまちである。これを、統一した注意書きにあらためる。   保護具の着用、散布の事前事後通知の実施、夜間や降雨時又は降雨が予測されると   きの散布禁止、周辺への飛散防止対策、散布後の立入制限期間、縄囲いなどによる   立入制限、残液や廃容器の処理方法、を含めたラベル表示をし、省令として義務づ   けるべきである。  F生活環境、公衆衛生関係施設、水道水源、有機圃場、散布対象外作物への農薬飛散   防止の義務付け。  G空中散布・地上散布の別なく有機圃場への農薬飛散防止に関する通知等を省令化す   る。  H空中散布による水源地、その他生活環境への飛散防止に関する通知等を省令化する。  I生活環境汚染防止のため住宅地周辺での農薬散布については、住民との話し合いを   義務づけ、住民への散布告知などのガイドラインを作り、省令化する。   生活環境で使用できる農薬の種類を規制する。   景観保持を目的とした農薬は使用できなくする。   農薬に過敏な人に対する保護措置を講ずる。  J農薬による水・空気・土壌など自然環境汚染防止についても、環境省の登録保留基   準を強化し、安全使用基準として省令化する  K非食用作物(樹木、花卉、芝、ほか)については、残留基準がないため適用がルー   ズになりがちである。食用作物と同様に、使用基準遵守の徹底を促すべきである。  L個々の農薬使用基準を遵守するだけでなく、多種類の農薬を個別に順次使用するこ   とを規制する。  M農薬の混合については、容器表示にその可否を記載して、勝手な自家混合は禁止す   る。  N農薬は、病害虫の発生状況を調べた上で、使用するようことを義務づける。  O使用者に、散布器具の定期的点検を義務づける。  P省令を使用者に周知徹底する体制を確立する。  Q都道府県が作成する防除基準や農協等が作成する防除暦に省令違反がないようチェ   ック体制を確立する。  R省令についての疑義や省令違反の相談窓口を作る。 16:帳簿については、農薬使用履歴の記載の義務づけ。 17:国・地方自治体の役割について。  @国及び地方自治体は、合成化学農薬をできるかぎり使用しない、農作物育成の技術   を推奨し、その研究から実践までをサポートする責務を負う。  A農薬取締法による検査等を行う部署は営農指導部署とは区分する。  B国は、地方自治体が条例等で、農薬取締法よりも厳しい規制を求めた場合、これを   妨げてはならない。 19:マイナー作物のグループ化と農薬適用拡大について  貴省は、食の安全・安心をめざす中で、いままでの生産者に眼を向けた農政から、消  費者に眼を向けた農政にするとされていますが、マイナー作物のグループ化と適用拡  大問題については、残留農薬を摂取する消費者および農薬を被曝する散布地周辺の住  民に対しては、十分説明されていません。そこで、私たちは、貴省には、消費者・住  民に対し、十分に説明する責任があるのではないかと考え、昨年12月半ばに質問をし  ました。   しかし、その回答はいまだなされていないどころか、貴省がHPで明かにしている農  薬使用基準では、グループ化できない多くの作物について、条件付で適用違反を是認  するような経過措置が検討がなされていることがわかりました。   従来法でも、適用外使用は違法であり、農薬使用基準等を遵守することをきちんと  行政指導してきたならば、昨年のような無登録農薬の使用はおこらなかったはずです。   違法は違法とし認識することが重要で、違法の適用を捻じ曲げるような経過措置に  は絶対反対です。このことと、違法に罰則を科することとは、別問題と考えて、農薬  取締法の更なる改定をお願いします。