■食品安全委員会のリスク評価の手順についてのパブリックコメント■  5月29日から実施された農薬等の残留基準のポジティブリスト制度について、わた したちは、厚労省一次案、二次案、最終案についてパブリックコメント募集で意見を述 べてきました。その際、農薬等の成分ごとのADI(不明のものはその旨)、理論最大 摂取量を明示するよう求めましたが、実現しませんでした。  貴委員会におけるリスク評価に関しては、その根拠となる情報をすべての国民が共有 できるよう、公開が原則であり、貴委員会と国民の双方向コミュニケーシヨンが重要と 考えます。この観点から以下の意見を述べます。 【意見1】農薬等の評価順位を決めるため、以下の情報を厚労省に求めて、その内容を   公開してください。  1、残留基準が設定された農薬等のすべて(従来基準のあるものも含む。物質群で基   準が設定されているものは、群に含まれる個別各成分を含む。)について、判明し   ているADIの数値をあげる(国内だけでなく、コーデックス、外国のものを含む)。   ADIが設定されていないか不明のものは、その旨明らかにし、その理由もあげる  2、残留基準が設定された農薬等のすべてについて、算出された理論最大一日摂取量   を明かにする。(算出にあたっては、暫定残留基準及び一律基準0.01ppmを適用する)  3、残留基準が設定された農薬等のうち、日本で摂取量調査がなされたものについて、   その数値を明らかにする。  4、残留基準が設定された農薬等のうち、日本で残留調査がなされたものについて、   その検出率と検出範囲を明らかにする。  5、残留基準が設定された農薬等のうち、日本で使用されているものについて、それ   ぞれの年間生産量又は出荷量をあげる。また、海外で使用されているものについて   も、可能なかぎり、食品輸出国での該当農薬の使用状況を調べ、その結果を公表し   てください。 【意見2】リスク評価とは別に、以下のものについては、早急に残留基準を見直してく   ださい。  1、上記、理論最大一日摂取量がADIの80%を超えるもの  2、加工食品の基準で日本の食習慣を無視したもの(たとえば、米ヌカのカルバリル   の基準は170ppmとなっており、ヌカ漬け利用が考慮されていない)  3、ミネラルウオーターの基準で、日本の水道水の水質管理目標設定項目における農   薬評価値を超えるもの。 【意見3】リスク評価の順位の決定について  1、ADIの設定されていないものをまず、評価してください。  2、意見1の結果を公表し、国民にリスク評価の順位についての意見を聞いてくださ   い。  3、国民の意見を参考に、リスク評価の順位を決定し、公表してください。 【意見4】リスク評価の根拠となる情報の公開について  1、既にADIを決定しているものと同様、そのリスク評価の根拠となるデータを公   開してください。   以下関連   ・農薬抄録の内容で、伏字になり、公表されていない項目は何か。   ・伏字にする理由は何か   ・伏字がないようにするには、どのようにすべきと考えるか。   ・抄録内容に疑点がある場合、試験成績報告そのものを公開すべきでないか。  2、国外でリスク評価がでているものは、その根拠となった報告・文献を明かにし、   内容の概略を報告してください。特に、リスク評価の根拠となったデータが何時、   どの機関で作成されたかがわかるようにしてください。  3、国外のADIをそのまま採用するか、再評価するかを明かにし、その根拠を公表   してください。  4、試験データが不足している場合は、どのようなデータが不足しているかを公表し   た上、国民からそのデータに関する情報を公募してください。  5、貴委員会が独自に公表文献のDBで調査された結果は公表してください。  6、国民から貴委員会へ申出ることにより、リスク再評価ができるような申出制度を   設けてください。  7、残留基準が設定された農薬等のすべてについて、リスク評価の進捗状況(現在何   が判明していて、何が不明であり、どの段階まで評価がすすんでいるかがわかるよ   う)、最終評価結果であるADIとその根拠になった無毒性量、安全係数、理論最   大一日摂取量等がわかるデーターベースを構築し、国民にが利用できるようにして   ください。 【意見5】貴委員会での毒性評価の考え方について  1、食品の残留基準を設定する場合、ADIの割り振りを食品80%、水10%、そ   の他10%とされている根拠を示してください。   今後とも、この比率を残留基準の設定の判定基準に用いますか。  2、農薬散布地周辺の空気や、農薬と同じ成分が使用されている害虫駆除やシロアリ   防除用殺虫剤等による街中や室内空気などの農薬汚染も考慮する必要があると考え   ますが、   空気中の濃度基準がない現在、大気からの農薬摂取をどのように評価されますか。  3、発がん性リスクを評価す場合、非遺伝毒性メカニズムの場合は、いき値があると   して、ADIが設定されますが、この場合、無毒性量評価はどのような数式で推定   され、発がんリスクを何人にひとり認めることにしていますか。  4、子どもの脳・神経系への毒性等を懸念して、有機リン剤のADIを成人の10分   の1にすべきとの考えがあり、シロアリ防除剤クロルピリホスの使用規制を決める   際には、この点が配慮されていますが、貴委員会のお考えをお示しください。