*** 公共施設室内での殺虫剤の使用に関する陳情 ***               平成20年7月28日 議会議長殿 郵便番号 202-0021                  住所 東京都西東京市東伏見2-2-28-B               連絡先 電話/ファックス 042-463-3027                      反農薬東京グループ                      代表  辻万千子   印 陳情の趣旨又は要旨  厚生労働省は、平成15年4月に、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(略 称:建築物衛生法)」関連政省令の改定を行い、その中で、ねずみ・昆虫対策としてIP M(総合的有害生物管理)の手法を取り入れることにしました。これは、殺そ剤及び殺虫 剤の乱用や不適切な使用によって人の健康被害の訴えが後を絶たなかったからです。  その後、平成20年1月25日に、厚生労働省健康局長通知「建築物における衛生的環境の 維持管理について」が出され、「建築物環境衛生維持管理要領」を改定、IPMの具体的 方法を示したマニュアルが発表されました。  衛生害虫防除については、定期散布を止め、まず生息調査をした上で、出来る限り薬剤 を使用しない方法で対処することになります。建築物衛生法は特定建築物が対象になりま すが、これに準ずるものとして、庁舎や公共施設で室内殺虫剤散布が定期的に年2回繰り 返されてきた経緯があります。そのもとになる省令が改定されているわけですから、区市 町村が管理する建築物でのねずみ・昆虫駆除もIPMで実施していただきたいと思います。  そこで以下の陳情をいたしますのでよろしくお願いいたします。 陳情事項 1、貴自治体が管理する公共施設で、直近の年度における、ねずみ・衛生害虫駆除のため に使用されている殺虫剤等の使用状況を各施設ごとに調査し、公表してください。 2、貴自治体において、厚労省の「建築物における維持管理マニュアルの第6章 ねずみ等 の防除― IPM(総合的有害生物管理)の施工方法 ―」の内容を周知徹底するため、殺 虫剤を極力使用しないで害虫防除を行うための指針やマニュアルを策定してください。 ***** 参考資料 IPM(Integrated Pest Management:総合的病害虫管理)  従来の化学農薬に依存した方法による病害虫の撲滅ではなく、化学農薬以外の防除方法、 例えば、輪作体系や抵抗性品種、熱による消毒や機械などを用いた物理的な防除、天敵や フェロモンの利用なども組み合わせる総合技術です。こうすることで、化学農薬をできる だけ用いずに、農作物の被害が経済的に許容できる水準以下になるように病害虫の密度を 低く保ちます。 (以上、出典は農林水産省農林水産技術会議 農林水産研究開発レポート No12 「病害虫の総合的管理技術−化学農薬だけに依存しない病害虫の防除−」(2005年))  病害虫だけでなく、雑草管理にも、除草剤に頼らず、被覆植物の利用、水管理、機械除 草などを組み合せたIPM手法があり、この場合、IWM(Integrated Weed Managemen t:総合的雑草管理)といいます。  衛生害虫防除においても、殺虫剤などで虫を撲滅するのではなく、生息調査を実施し、 害虫の侵入経路を絶つ、生息・繁殖場所をなくす、餌をあたえない、トラップや粘着剤な どで捕獲するなどの手法により、害虫の生息密度を減らす手法をIPMといいます。  IPM手法の導入により、化学農薬や殺虫剤の使用回数や使用量を減らすことは、薬剤 耐性の病害虫を作らず、人の健康への影響や他の生物を含む生態系への影響を減らすこと につながります。 1、厚労省の建築物衛生法維持管理要領とマニュアルでは、ねずみ、ゴキブリ、カ、その 他(ハエ、ダニ)について具体的な IPM手法が示されています。  たとえば、ゴキブリの防除については、生息調査方法、環境調査方法が記され、駆除の 目標水準を3段階にわけ、防除計画をたてることになっています。実際の防除作業は、以 下のようです。   (6)防除作業    ()環境的対策(餌となる野菜や厨芥の管理、ゴミ箱などの清掃管理)    ()防除作業     @吸引掃除機によるゴキブリの吸引      a)生息場所が比較的わかりやすく、掃除機のノズルの先が届くところでは、       生息ポイントをはずさないように掃除機でゴキブリを吸い取る。      b)観察して、まだ残っているようであれば吸引を繰り返す。    ()殺虫剤による防除      @事前通知      薬剤を処理する場合は、少なくとも3日前までに使用薬剤名、実施場所、      においの程度、化学物質などの利用者への注意などを記載した事前通知書      を作成して提示し、少なくとも実施3日後まで当該場所入り口に掲示しておく。     A食毒剤(毒餌剤)の配置  a)食品類など餌になるものを整理した後、発生予防的効果を期待する場所も 含めて、少量ずつ各所に毒餌を配置する。   b)毒餌の残量を数日ごとにチェックし、なくなるようであれば追加配置する。 ジェルベイトでも同様に実施する。   B環境整備、掃除機の吸引や毒餌配置で十分な効果が出ないときは、水性乳剤 や懸濁剤(MC剤)などリスクのより少ない剤型を選択し、安全に十分配慮 しつつ、隙間などを重点に散布処理を行う。   C環境的対策が併せて行われたかどうかをチェックし、必要な事項をアドバイ スする。 2、劇場、公衆浴場、旅館などに対しては「興行場等における衛生環境の維持管理につい て」で、 病院・医院などに対しては「医療機関における衛生的環境の維持管理につい て」で、飲食店、食品加工・調理などに対しては「食品事業者が実施すべき管理運営基準 に関する指針(ガイドライン)に係るそ族及び昆虫対策について」などの文書で、上記建 築物衛生法のIPMマニュアルを周知又は留意・参考にするようとの通知がなされました。 3.学校については、建築物衛生法の対象となる建築物ではなくても、これに準ずるとし て、いままでも、同法の省令を守るよう指導がなされてきました。 また、文部科学省が学校保健法に基づいて出した「学校環境衛生管理マニュアル」には、 『ネズミ、衛生害虫等の発生を見た場合は、駆除する必要がある。駆除に際しては対象と なる衛生動物の生活史、習性等から、その発生源の除去あるいは対策を講じる必要がある。 その際安易に薬剤による駆除を行わない。また、薬剤による駆除を実施せざるを得ない場 合にあっても、児童生徒等の健康及び周辺環境に影響がないように薬剤の残留性等の性質 や毒性等特徴をあらかじめ確認した上で休日や夏休み等の長期休暇に駆除を行う等の配慮 が必要である。』として、IPM導入等を求めています。 4、グリーン購入法は、国、地方公共団体、事業者や国民の責務として「環境物品等を選 択するよう努めるものとする」とあります。  東京都下の自治体の56.1%は、すでにグリーン購入法に基づく調達方針を策定しており、 15.6%は今後策定を考えるとしています。  同法の「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」には、役務として、平成20年2月 の改訂で、下記のような「害虫防除」の項が追加され、まず、生息調査を実施し殺そ剤や 殺虫剤の乱用を避けて、IPM法をとることが謳われています。 ■害虫防除 【判断の基準】 @害虫防除において使用する物品が特定調達品目に該当する場合は、判断の基準を満たし ている物品が使用されていること。 A殺そ剤及び殺虫剤の乱用を避け、生息状況等の調査を重視した総合的な防除措置が講じ られていること。 B害虫等の発生・侵入を防止するための措置が講じられていること。 C防除作業にあたり、事前計画や目標が設定されていること。また、防除作業後に、効果 判定(確認調査、防除の有効性評価等)が行われていること。 D殺そ剤又は殺虫剤の使用に当たっては、薬事法上の製造販売の承認を得た医薬品又は医 薬部外品を使用し、使用回数・使用量・使用濃度等、適正かつ効果的に行われていること。 【配慮事項】 ○生息状況等に応じた適切な害虫防除方法等を提案するよう努めていること。 (備考) ・本項の判断の基準と対象とする「害虫防除」は、建築物における衛生的環境の確保に関 する法律を基本に、庁舎等のねずみ・昆虫、外来生物等その他人の健康を損なう事態を生 じさせるおそれのある動物等の防除とする。 5、名古屋市は、市有施設における薬剤散布状況を把握し適正な使用を促進するために、 平成17年度の薬剤散布状況に関する調査し、その詳細を平成19年6月に公表しました。こ の結果を踏まえ、平成20年1月、『市が率先して薬剤の適正使用を推進することにより、 環境への負荷の低減を図り、人の健康と安全を確保するため』として「名古屋市の施設等 における農薬・殺虫剤等薬剤の適正使用に係る基本指針」と適正使用マニュアルを策定し ました。その中では、「病害虫等の生息状況に関らず、一律に薬剤を使用することは、原 則として行わないこととする。」されています。 6.愛知県は、平成18年度県有施設における害虫等防除の状況についての調査結果を平成 20年3月に公表し、同時に「県有施設における農薬・殺虫剤等適正使用ガイドライン」を 策定しました。ここでも『病害虫、ねずみ・昆虫等の防除を実施するに当たっては、物理 的防除などを優先し、定期的に薬剤を使用することはしません。』とされています。 また、『県有施設における農薬、殺虫剤等の薬剤の適正使用を図るため、施設の管理者、 病害虫等防除の責任者、薬剤使用者等を対象に、研修会等を実施し、このガイドラインの 周知徹底をはかります。 また、県内市町村等へもこのガイドラインの普及・啓発に努め ます。』 7、岐阜県は、平成20年4月、県有施設における害虫駆除や植栽管理などの病害虫等防除 時に、できる限り薬剤を使用しない方法を推進することにより、環境への負荷の低減を図 り、人の健康と環境に配慮した公共施設とするため、「県有施設における病害虫等防除に 関する基本方針」を定めています。