**************************************************************** 我が国における農薬登録制度上の課題と対応方針(案)についての意見 **************************************************************** 2009年7月1日 農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室(農薬企画班)御中 住所:西東京市東伏見2−2−28−B 氏名:反農薬東京グループ 電話:042-963-3047 e-mail:mtsuji@jcom.home.ne.np 標記について、下記の意見を具申しますので、ご査収ください。 ************* 1)はじめに *************  07年12月に消費・安全局長が設置された私的な「農薬登録制度に関する懇談会」での論 議を踏まえ、今回のような案が提示されことは、いままでになかったことで、今後、農薬 取締法や登録制度が国民にとって、よりよい方向に改正されることを願っている。  同懇談会は、いままでに7回開催されており、別に農薬製造事業者及び農薬関係団体と の意見交換会が2回開催されている。しかし、消費者や農薬被害者との懇談会は開催され ていない。消費者に軸足を置いた農政を推進するには、懇談会のメンバーに生協や主婦連 の代表者をいれるだけでは不十分で、ぜひ、環境保護団体や農薬被害者等の意見も直接聞 いてもらいたい。  原案の第2節の『農薬をめぐる現状』や第3節の『我が国における農薬登録制度上の課題 と対応方針』には、私たちの考えからすれば、抜けている重要な個所がいくつも抜けてい る。その代表的なものを以下に示します。 (1)農薬の大気汚染による健康被害等が軽視されている  原案には「今回の見直しに当たっては、食の安全確保の観点のみでなく、当然その前提 となる農薬そのものの安全確保等についてもその観点に加え、幅広く検討を行うこととし た」とある。妥当な判断であるが、実際には、農薬による危害のうち食品汚染に重点が 置かれ、農薬の大気汚染による健康被害や散布による生態系の被害が軽視されている。 (2)農薬の受動被爆被害の認識がない  家庭での農薬被害を含む、農薬使用者の中毒や散布地周辺の住民などの受動被曝被害に は、触れられていない。第一、農薬使用者の大規模な農薬被害調査は、この30年間実施さ れていない。  「住宅地等における農薬使用について(以下「住宅地通知」)が発出されたことは触れ られているが、その背景に深刻な健康被害を訴える人がいるという認識が欠如している。 (3)農薬空中散布による被害  有人ヘリによる空中散布面積が減った代わりに、無人ヘリコプターによる空中散布が増 大し、住宅地の近くで、地上散布の10-100倍もの高濃度の農薬が散布されている。昨年の 出雲市での空中散布で、1200人以上が眼の異常などを訴えた件が記述されていないのは、 理解に苦しむ。 (4)揮発性土壌処理剤ほかによる被害  臭化メチルは地球温暖化ガスとして規制されたものの、クロルピクリンやD−Dなど土 壌処理剤の使用が増え、揮散した刺激性ガスによる住民被害が後を絶たない。無登録農薬 については、疑義資材の使用や非農作物用除草剤の農薬転用の規制が行われているが、農 薬を衛生害虫や不快害虫用殺虫剤や鳥獣毒餌としての使用が止まないことに対しても、規 制を考えるべきである。 (5)情報公開の徹底を  農薬の再評価制度の導入が挙げられてるが、いちばん大きな問題は、いくら毒性試験や 残留性試験を実施しても、その情報が国民に公開されないことである。  公開されている農薬抄録は、6月20日現在、66件にすぎず、しかも、試験に用いた成分 の純度すら非公開となっている。メーカーと消費者が対等の立場で、話し合えるには、情 報公開を徹底することが不可欠である。 (6)農薬使用者のに資格・免許制度を  02年度の農薬取締法改定で、農薬防除業者の届出制度をなくし、家庭での農薬使用者と 空中散布業者を同一に取扱っていることはどうみても納得できない。防除業者届出制度を 復活し、農薬使用者の資格・免許・登録制度を導入すべきである。 (7)用途別を改め、横断的な法規制に  現行農薬取締法のような用途別の縦割り規制ではなく、農薬と同じ成分が使用されてい る衛生害虫用殺虫剤、不快害虫用殺虫剤、動物用薬、非農作物用除草剤、シロアリ防除剤、 衣料防虫剤などを総合的に管理するあらたな視点の法律が必要である。 ********************** 2)原案に沿っての意見 **********************  (丸番号は、コンピュータの汎用文字でないというので、いちいち「丸番号として:」 とした。本来、使用できない文字は原案に入れるべきではない) 【p-1上から7行】『比較的順調に』を『登録申請内容を変更して、いままで』とする。 【p-4下から5行】『さらに』のあとに『環境保全型農業の推進をはかる「持続性の高い農 業生産方式の導入の促進に関する法律」が平成11年に成立したのにつづき、』を追加する。 【p-4文末】以下を追加する 『国や地方自治体、事業体、国民が、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構 築を図ることを目的に制定されているグリーン購入法の「特定調達品目」の役務の項に、 平成20年2月、「植物管理」が新たに追加され、その判断基準として総合的病害虫・雑草 管理の確保や、農薬の使用の回数及び量の削減が挙げられた。』 【p-5上から18行】以下を追加する 『 表 国産農作物の残留基準違反事例(08年8月〜12月) 判明月日 発表者   作物名    産地等   農薬名と検出値ppm(基準)   原因 08/08 秋田県  ミディトマト 鹿角市農家 ジクロシメット0.03(0.01)   e 08/08 JA土佐あき シシトウ   北川村   フルトラニル0.05(0.01)   b 09/02 福島県   モモ     県果樹研究所イミノクタジン残留値不明  a2 09/11 JAとさかみ オオバ     香美市   ピリダフェンチオン0.04(0.03)  d 10/03 山口県   チンゲンサイ 周南市   アセフェート10.9(5)、 a2                      メタミドホス2.7(0.5) 10/16 JA名取岩沼 チンゲンサイ 名取市   メタアルデヒドNAC剤粉末付着 a 10/17 JA当麻  ミニトマト 北海道当麻町 ジクロシメット0.05(0.01)   e 10/28 JA松本ハイランド セロリ 松本市   インドキサカルブ0.25(0.01)  a 10/31 青森県 ミズナ    十和田市での フルバリネート0.586(0.01)  c?                 ハウス栽培  エンドスルファン1.29(0.5) ワサビ菜   同上  フルバリネート0.196(0.01)と                        基準以下のエンドスルファン0.411 11/08 めいきん生協ホウレンソウ 尾張地方 プロチオホス2.6(0.01)     a 11/22 大阪府  コマツナ  泉佐野市   ダイアジノン0.38(0.1) e 11/26 東京都   むかご    茨城県鉾田市 ピラクロホス0.34(0.05)と   e                 笈芻竢、事 EPN 0.03(0.01) 12/14 浜松市 ホウレンソウ 市内温室農家 エトフェンプロックス12.3(2) a          ホウレンソウ 市内農家   クロチアニジン0.06(0.02) a  【原因の凡例】a:適用外使用 a1:県の防除基準誤記 a2:使用基準違反   b:近接からのドリフト又は流入 c:防除器具の洗浄不足 d:土壌残留 e:不明   』を追加する 【p-5下10行】以下を追加する。 『また、残留した農薬による着色粉や異臭を消費者に指摘され、回収される事例がみられ ことも看過できない。さらに、収穫後の作物や食品に農薬を混入する犯罪や農薬成分と同 類の成分を含むシロアリ防虫剤、衛生害虫用殺虫剤、衣料防虫剤ほかによる食品汚染も忘 れてはならない。』 【p-5文末】以下を追加する 『農薬の除草剤と同じ成分を含む非農耕地用除草剤が、無登録のまま、農業用に使用され ていたが、農薬取締法の改正により、平成16年6月から、販売・表示が規制された。』 【p-6上から19行】以下追加 『丸番号3として:農薬の他への転用  農薬を適用外農作物に使用することは、規制されているが、農薬殺虫剤を、衛生害虫や 不快害虫駆除に用いることの規制は農薬取締法の対象外となっている。  以下のような事故が多発していることを考えるとこれらも規制できるよう対策を考える べきである。  平成12年には、北海道静内町の特別養護老人ホームで、ゴキブリ駆除に用いられた農薬 くん蒸剤が用いられ、入所者と職員が、平成20年には北海道旭川市の中学校で、アリ駆除 に用いた農薬が原因で生徒が健康被害を受けた事例がある。  また、メソミルや有機リン剤ほかの農薬を混入した毒餌で、カラスやハト、その他の野 鳥、さらには犬、猫などの小動物を殺す事例が後を絶たない。  丸番号4として:農薬による危被害  農林水産省の統計によれば、農薬による人の死亡・中毒は、平成15〜19年で、 年間19件〜33件(34から56人、うち死亡0から6人)である。  (出典:http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_topics/higai_zyokyo.html )  一方、厚生労働省の家庭用品等に係る吸入事故等に関する報告では、家庭での農薬吸入 事故例(除く衛生害虫用殺虫剤や防虫剤)は、H15〜19年で、年間47から76件である。  農業者の農薬中毒の調査は、1977から78年に実施された全農中央会による2万7000人規 模のアンケート調査があり、約4分の1の使用者が農薬による健康被害を受けていたことが 判明した。しかし、その後、このような調査は実施されていない。  その他の危被害については、平成15〜19年で、農作物が年間4から16件、家畜0から1件、 蚕0件、蜜蜂が1〜4件、魚類が3から9件となっている。  最近の事例を新聞報道を参考に一覧すると以下のようである。 08/05/26 島根県出雲市   松枯れ対策のスミチオンMC剤で1200人以上健康被害 08/06/06 徳島県徳島市   リサイクル会社で、クロルピクリン廃容器をプレス中に、               残存薬剤のガス発生、30人被害 08/06/14 三重県四日市市  石原産業で、アタブロン乳剤タンクに穴、漏洩 08/06/28 東京都     焼き鳥のたれにグリホサート混入。10月に犯人逮捕 08/06   兵庫県福崎町  松枯れ空中散布で、住民の健康被害6人 08/07/01 長野県安曇野市 カラス8羽が、EPN入り毒餌で死亡 08/07/15 静岡県掛川市  菊川水系で魚大量死。農薬成分検出 08/07/15 北海道旭川市  中学校で、アリ駆除で農薬散布。生徒30人被害 08/07/18 愛媛県坂出市  日本ファインケムで、ナトリウム化合物発火 08/07/28 滋賀県高島市 空中散布中の無人ヘリコプター松に衝突・墜落 08/07/30 山形県三川町、 空中散布中の無人ヘリコプター小学校プールに墜落 08/08/08 福島県会津若松市 昭和電工東長原工場で、ホスゲン漏出。13人被害。 08/08/15 大分県九重町  石灰硫黄合剤や硫黄系製剤メーカー細井化学鰍フ倉庫から               出火し、 消防隊員8人眼・のどに痛み 08/08/16 熊本県錦町   鳴き声うるさいと毒餌で犬を殺害。犯人逮捕 08/08/18 奈良県桜井市  有機リン系農薬をボトル飲料に混入、2人被害。犯人逮捕 08/08/23 山形県三川町 空散の無人ヘリコプター制御不能で、行方不明に。 08/09/09 千葉市      野球場の芝生に、グリホサートが撒かれて、枯れる 08/09/12 京都府八幡市   ダイアジノン盗難 08/10-11 西東京市東大農場 水稲に水銀剤ら使用判明、その他販売禁止農薬所持、 08/10/15 長崎県雲仙市  隣接農地からクロルピクリンで、大根被害、長崎地裁へ提訴 08/10/18 京丹後市     タバコ圃場からのクロルピクリンで住民11人被害 08/10/  東京都大田区   野良猫退治に殺鼠剤混入餌 08/11/03-10北海道室蘭市  カラス16羽死亡、有機リン系殺虫剤混入餌 08/11/05 長野県安曇野市  ハト13羽死亡、MPP検出 08/11/17 福岡県もち吉   MEPを餅菓子に混入。犯人は自殺。 08/11/21 山梨県甲州市   農薬メーカー「おぎはら」で石灰硫黄剤流出 08/11-12 大阪府寝屋川市  府の施設で実施された農薬試験米盗難。犯人逮捕 08/12/07 岡山大学     ESP製剤を生活排水系に廃棄。准教授処分  08/12/24 倉敷市まきび公園 クロルピクリン漏洩で、従業員2人被害 09/01/03 奈良県明日香村  戒外川で魚のへい死。エンドスルファンほか検出 09/01/17 愛知県豊橋市   クロルピクリン剤盗難 09/02/05 神戸市西区    メソミル付着餌で犬が中毒 09/04/03 佐賀県唐津市  玉島川水系で、トルフェンピラドによるアユ大量死 09/04/03 山梨県笛吹市内の河川に、果樹園等で使用された石灰硫黄合剤が流出、水白濁 09/04/09 神奈川県相模原市で土壌処理剤テロン92が蒸散して、住宅地に異臭 09/04/14 東京大学農場(西東京市)で、水銀剤新たにみつかる 09/04/28 富山県入善高校で、保管中のクロルピクリン剤容器破損 平成20年5月、島根県出雲市で、松枯れ対策のスミパインMC剤空中散布直後に起こった眼 の異常などの健康被害は、1200人以上におよび、同市は、松枯れ農薬空中散布健康被害原 因調査委員会が出した報告書(11人の委員のうち、空散が原因の可能性を否定できない (7人)/空散が原因(2人)/原因を特定できない(2人))を踏まえ、2009年から10 年間、空中散布によらない対策をとることになった。また、平成21年からは、長野県上田 市、坂城町、青木村や岡山県浅口市は空中散布を中止した。また、群馬県では、松枯れ対 策に農薬空中散布・地上散布ともにやめた。  また、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(以下「農薬使用安全基準省 令」という)で、被覆を要する農薬に挙げられ、適正使用を指導されているにもかかわら ず、土壌殺虫剤クロルピクリンによる健康被害が、例年のように、各地で起こっている。  さらに、農薬による蜜蜂被害は年間1〜4件であるが、ネオニコチノイド系農薬による 被害も報告されており、08年には、全国的な蜜蜂不足により農作物の生産に影響を与えて いることが明らかになり、その原因と対策が問題となっている。 丸番号5として:残・廃農薬の問題  POPs系農薬や2,4,5-Tは、使用中止となった後、昭和46、47年ごろ、農林水産省や林野 庁の指示で、土中埋設された。前者は、平成16年5月に、POPs条約(ストックホルム条約) が発効したのを契機に、その埋設農薬の処理が本格的に行われることとなった。  後者はダイオキシン類を含むが、POPs条約の対象でないため、埋設個所の目視調査が実 施されるだけで、放置されている。 同じく、登録失効し、ダイオキシン類を含有するPCNBとPCPは農林水産省の指示により、 メーカーが平成14年4月に、回収センターを設立し、自主回収にあたった。  平成15年の農薬取締法改正で、無登録農薬や販売禁止農薬の販売が行われた場合に、販 売者に対して、農林水産大臣が当該農薬の回収命令を出せることになった。しかし、農薬 使用者が所有する販売禁止農薬や有効期限切れ農薬の回収については、努力規定しかない。 不要となった残・廃農薬は農協や農薬販売業者が主体となって、自主回収がなされている のが現状である。  また、過去において、POPs系や重金属系の販売禁止農薬を製造していた工場跡地の土壌 や地下水汚染が、各地でみられるが、これら工場跡地やその廃棄物処分場などの環境調査 や浄化処理の実施を義務付ける法令がなく、放置されることによる環境汚染が懸念される。   丸番号6として:化審法及び化管法(PRTR法)と農薬  難分解性で有害な化学物質の製造・使用等を規制する化審法は、農薬を対象外としてい るが、昭和45年の同法公布以前に製造・使用されていたものは、既存化学物質とされ、分 解性や生物濃縮性試験が実施されつつある。化審法試験の結果、平成15年10月に、ジコホ ールの難分解性かつ高濃縮性が判明し、平成17年4月に第一種特定化学物質に指定された。 これに先立つ、平成16年3月にジコホールを含む農薬製剤が販売中止となり、メーカーに よる自主回収がなされた。  さらに、平成19年から、化審法の第一種特定化学物質であるHCBをBAT評価の対象 として、顔料などについてその含有規制が実施され始めた。現在、農薬登録のあるフサラ イド、TPNなどの物質は、HCBを含むが、含有量規制の対象となっていない。  化管法(PRTR法)では、有害な化学物質の環境中への排出削減を目的に、平成11年7 月公布された法律で、一定の生産量の農薬成分も指定物質となっている。  平成20年11月、指定物質を見直した施行令が公布され、第一種指定化学物質は354から4 62物質に、第二種指定化学物質は81から100物質に増えた。農薬活性成分関連の化学物質 については、PRTR制度による排出量届とMSDSの交付が必要な第一種が156、MS DS交付のみが必要な第二種が31となり、平成21年10月から施行され、排出量等の把握は 平成22年4月以降に、届出は平成23年4月以降からとなる。』 【p-6下から1-6行】『しかしながら、・・・つながっている。』を以下に差し替える 『農薬の基準値超過事案が生ずると、保健所等は、あり得ないような量を食べても安全で あると公表する一方、マスコミは基準値の何倍と報道する。このような表記のギャップは、 情報の受け手の消費者を混乱させることになる。中国餃子事件などのように急性中毒が起 こるような高濃度の農薬が検出されない場合、他の食品や空気、水からの摂取を合わせて も、ADIを超えないことを説明する必要がある。また、妊婦、乳幼児、老人、農薬等に 過敏な人への注意もなされるべきである。』 【p-7上から5行】『ことにより』を『とともに、農薬の毒性及び作物残留性試験情報を開 示することにより』とする。 【p-7上から20行】以下を追加する 『さらに、平成15年の改正農薬取締法施行により、それまで、事後届出が必要であった防 除業者の届出が不要になり、一般家庭の農薬使用者と同等に扱われるようになったため、 業者の把握ができなくなり、業者への注意、啓発が不十分になっている。』 【p-10上から3行】以下を追加する。 『一方、これらの経過措置は消費者の意向を反映したものとはいえず、個々の作物と農薬 の組み合わせについて、残留性試験なしに登録を拡大することへの不信・不安感を生じさ せた。』 【p-10上から18行】以下を追加する。 『鉄道線路や道路に散布された除草剤や樹木用殺虫剤が近隣の農作物へ飛散したり、薬害 が生じた事例がある(たとえば、平成16年にJR東日本磐越東線や水郡線での除草剤散布、 平成19年に、青森県つがる県道での除草剤散布、同年鳥取県米子市国道での殺虫剤散 布)。』 【p-10上から25-27行】『また、・・・・発出し、』を以下に差し替える 『また、農薬の飛散や大気中の農薬を原因とする住民、子ども等の健康被害の訴えの事例 が多く聞かれるようになっていることから、平成15年9月16日付け農林水産省消費・安全 局長通知15農安第1714号として、「住宅地等における農薬使用について」が発出さ れた。平成19年1月31日に、同通知は農林水産省消費・安全局長、環境省水・大気環境局 長二局長連名通知として、改定発出され、』 【p-10下から7行】以下を追加する 『また、環境省は 同省に設置された農薬飛散リスク評価手法確立検討会での論議を踏ま え、平成20年6月、「公園・街路樹等病害虫・雑草管理暫定マニュアル〜農薬飛散による リスク軽減に向けて」を公表し、総合的病害虫・雑草管理(IPM, Integrated Pest Management)を推奨するとともに、『人への健康被害の発生が懸念される害虫が発生しや すい植物は極力植栽しない』ことも記載されている。 丸番号5として:有機リン剤の使用について  欧米では、発達神経毒性のある有機リン剤の使用規制がすすんでいる。  一方、日本での、有機リン系登録農薬の数は減少傾向にあり、原体総生産量も昭和62年 の13010トンから平成15年5049トンと減少しているが、一部の有機リン剤では、出荷量が 増大している。  特に、高濃度で散布する有機リン系農薬の空中散布後に、健康被害を訴える事例が見ら れることを踏まえ、群馬県は、平成18年6月、県内農業団体等に、有機リン剤の空中散布 を自粛するよう要請をだした。  農水省は、平成18年に「有機リン系農薬の評価及び試験方法の開発調査事業推進検討委 員会」を設置し、有機リン系農薬の大気環境中における挙動についての知見を得ることを 目的に平成19年から調査事業を実施している。』 【p-10下から5行の文頭】以下を追加する 『 BHCの稲わら残留による牛乳汚染が、同剤の使用禁止につながったことからわかる ように、飼料の農薬汚染は1960年代からの大きな問題となった。』 【p-11上から5行】以下追加する。 『国内で登録のない農薬が残留した輸入飼料が家畜に供給され、その糞を利用した有機肥 料に当該農薬移行して、作物に薬害を与えたクロピラリドの事例もある。』 【p-11上から13行の文頭】以下を追加する 『いままでも、水田除草剤PCPやCNPによる魚毒事件や飲料水、魚介類の農薬汚染が、 問題となっていた。水質汚濁性農薬の指定や水質汚濁に係る登録保留基準や水産動植物に 対する毒性に係る登録保留基準の設定で、規制が加えられてきた。  平成18年からのポジティブリスト制度の導入で、魚介類に一律基準0.01ppmが適用され ることになった。』 【p-11上から15-16行】『農林水産省では、』を『農林水産省は、「一義的 には、農家等の農薬の使用現場において止水管理等が適切に行われることが重要であり、 不適切な農薬の管理による河川等への流出を前提に魚介類の残留基準等を策定することは 適切でない。」として、』とする。 【p-11上から19行】『厚生労働省では魚介類に対する』を『厚生労働省は、本来、水系汚 染がなければ、残留農薬が検出されるはずのない魚介類に対して、汚染状況を調査するこ となく、魚介類を食品として流通さすことを目的に、』とする。 【p-11下から1行】『登録内容の見直しや残留基準値の設定依頼を行うことも急務となっ ている。』を『登録内容を見直し、農薬の水系汚染をなくすことを第一番に実行する必要 がある。』とする。 【p-11の文末】以下を追加する。 『 さらに、水産動植物に対する毒性に係る登録保留基準は、平成17年5月から、強化さ れ、水田用農薬だけでなく、すべての農薬に基準が適用されることになった。 水道水中の農薬については、平成15年5月の水道法水質基準の改定で、個々の農薬につい ての水質基準や監視項目などは廃止され、平成16年年4月からは、任意測定の「水質管理 目標設定項目」に組み込まれ、101農薬を対象に総農薬方式で管理されることになった。 丸番号3として:土壌汚染への対応  農薬が圃場に残留し、後作物等へ移行することを規制するため、土壌残留性農薬指定や 土壌残留に係る登録保留基準があるが、前者は、平成15年施行の改定農薬取締法で、廃止 され、食品衛生法による残留基準規制に包含されることになった。また、土壌残留に係る 登録保留基準は、平成18年8月から、半減期をそれまでの1年から180日未満とした改正が なされた。  しかし、登録失効して30年を超えるディルドリンがキュウリで、ヘプタクロルがカボチ ャで、残留基準を超えて検出される事例がいまだにみられ、汚染土壌での食用作物の栽培 を中止するよう指導がなされている。 また、土壌処理剤ホスチアゼーがダイコンなどの作物に吸収されたり、水田育苗箱に使 われた殺菌剤ジクロシメットが後作物に移行し、残留基準を超える事例がみられ、適正な 使用をするよう指導がなされている。 丸番号4として:大気汚染への対応〜有人及び無人ヘリコプターによる空中散布  農業用(ミバエ用を除く)の有人ヘリによる農薬空中散布は、水田が主で、水稲用散布面 積のピークは昭和63年の174万haであったが、その後、減少に転じ、平成17年には29万ha、 平成21年の計画では5.8万haとなった。代わりに増加したのは、無人ヘリコプターによる 空中散布であり、農業用散布面積は、平成16年に、66.3万haとなり、有人ヘリと逆転、平 成20年には90.6万haとなった。これに伴い、無人ヘリコプターの機体数や日本農林水産航 空協会が認定したオペレーター数も増加の一途をたどり、平成19年には2330機、1万2550 人となっている。  林業については、松枯れ対策として、昭和52年に松くい虫被害対策特別措置法が制定さ れ、特別防除として有人ヘリコプターによる空中散布が本格的に実施されるようになった。 同法は、5年ごとに延長され、平成9年3月に廃止されたが、その後、森林病害虫等防除法 に基づき、空中散布が継続している。散布面積(国庫圃場事業対象分のみ)は昭和56年の13. 6万haがピークで、昭和62年に10万haとなり、以後減少して、平成16年3万、平成21年計画 で2.4万haとなっている。 (出典:http://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h16-11gatu/1125s.pdf )  有人及び無人ヘリによる空中散布は、短期間に、広範囲で実施される上、農薬散布濃度 は、地上散布の10〜100倍以上であり、散布地周辺では、人や自然環境の被害が報告され ている。環境庁(現環境省)は、平成9年年12月、10農薬について、航空防除農薬に係る気 中濃度評価値を策定されたが、この評価では、一過性の目のかゆみ、頭痛、下痢などの 症状は農薬の影響とみなされていない。 「農林水産航空事業の実施について」( 平成13 年10 月25 日付け13 生産第4543 号農 林水産事務次官依命通知) 及び「農林水産航空事業実施ガイドライン」( 平成16 年4 月20 日付け16 消安第484 号農林水産省消費・安全局長通知)、「無人ヘリコプター利用 技術指導指針」( 平成3年4月22日付け3 農蚕第1974 号農林水産省農蚕園芸局長通 知)で、農水省による指導がなされているほか、林野庁からは「無人ヘリコプターによる 松くい虫防除の実施に関する運用基準」(「松くい虫被害対策について」(平成9年4月7 日付け9林野造第105号林野庁長官通知)や事務連絡「松くい虫特別防除等の適切な実施に ついて」が発出されているが、平成20年5月、島根県出雲市で起こったような、有人ヘリ 空中散布による健康被害の発生を防げなかった。  注:有機リン剤の空中散布については、(6)の丸番号5参照』 【p12下から12-13行】『国際的な動向を見ながら』を『国際的に実施されている毒性及び 作物残留性試験の手法についても新たな科学的知見に基づいた検討を加え、』とする。 【p12の文末】以下を追加する 『さらに、日本の農薬取締法は、輸出農薬については、適用が除外されている。国内で、 使用規制のある農薬や登録失効した農薬を海外へ輸出することには、何の規制もなく、過 去においては、POPs系農薬やダイオキシン含有農薬が輸出されたこともある。  国内で登録のある農薬も含め、輸出相手国には、当該農薬の国内での規制状況、毒性、 作物残留性、適用作物、使用上の注意、残留基準等の情報を提供すべきである。』 【p13の下から12行】以下を追加する 『丸番号3として:予防原則の導入  生殖系や神経系、免疫系などへの不可逆的な影響が心配される内分泌系撹乱作用の場合、 ヒトや生態系への影響がが完全に科学的に究明されてから、規制するのでは遅すぎる。 「予防原則」に基づいた規制がとられるべきである。  従来の評価手法は、(a)環境汚染についていえば、自然の力によって回復する、(b)ヒト についていえば、化学物質の作用は摂取量が低いほど小さくなり、多くの場合、ある量以 下になると作用を及ぼさない、という二つの大きな仮定の上になりたっている。 さまざまな不確実な要素を評価の対象からはずされ、毒性評価モデルの単純化と数値化が 行なわれる。そのため、複数の化学物質を比較するには一見便利だが、得られた数値が絶 対視されてしまう恐れもある。 たとえば、農薬のヒトに対するADI(一日摂取許容量)についていえば、動物実験を行ない、 その無毒性量を求め、ヒトと動物の種差、ヒトの個体差を考慮した安全係数を乗じて、数 値を決めることになる。まず、動物実験の内容そのものが果たして、ヒトに対する毒作用 の指標になるかどうかという点で、不確実性がある。次に、無毒性量をどのようにして決 めるか、さらに、ヒトに対する安全係数の値をどうとるかで、不確実性が生ずる。このよ うな不確実性があるにもかかわらず、設定されたADI数値はあたかも確実な数値である かのよう理解され、さらに、現実には複数の農薬や化学物質を摂取しているのに、そのこ とは全く無視して、これこれの農薬の基準をクリアーしているから安全だとの主張の根拠 に使われる。  また、従来の評価手法はリスク-ベネフィット(危険性-便益)比較に結びつき、リスク削 減のための経費(コスト)に数値化されて、コスト-ベネフィット(費用-便益)比較として、 行政や企業の主張に取り入れられることが多い。  リスク-ベネフィット比較では、発がん性のある農薬を使用せず収穫量が減少すると果 実や野菜が食べられなくなる人もいる。それより、その農薬が多少残留した野菜や果物を 食べた方が多くの人にベネフィットとなるとの論理がまかり通っている。しかし、その農 薬を身近かで散布されている人にとっては、農作物に残留する農薬より切実なのは、空気 から取り込む農薬であり、このような場合、従来の評価手法はみんなのためにがまんしろ という、受忍強要に手を貸すことになる。  従来の評価手法は、毒性試験データや環境データなど科学的な要素を含むものであるが、 実際は、多くの不確実ないくつもの仮定の上に成り立った、いわば砂上の楼閣的側面があ ることを念頭におかねばならないし、リスクとベネフィットの双方を受け入れねばならな い一般の人に対して、それぞれの内容が恣意的に解釈されないよう、きちんと説明されて いなければ、科学を装ったまやかしの手法に終わってしまう。  「予防原則」の手法は、(a)ヒトの活動は、環境になんらかの影響をあたえるので、環 境への負荷をできる限り減らす、(b)ヒトに対する化学物質の 作用には不確実なものがある、という立場にたち、ヒトの健康や生態系に被害を及ぼすお それのある行為は、因果関係が科学的に完全に立証されていなくとも予防的措置を講ずる べきであるという原則である。  「予防原則」の手法では、従来の評価による数値も利用されるが、その根拠となるすべ ての情報がリスクを被る一般の人に公開されていることが必須条件であり、マイナーな弱 者−ヒトだけでなく、ものいわぬ自然界の生き物をもできる限り守ることがめざされる。  地球温暖化ガスとしてフロンガスや炭酸ガスの排出規制が行われているのも、「予防原 則」に則ったものである。  「予防原則」の手法では、ゼロリスクすなはち、使用中止措置につながることもありう るが、従来の評価手法では、基準値が決められ、部分的な規制にとどまることが多い。 本来なら、化学物質を世に出す際、製造業者は可能な限りの試験をして、安全であること を確認しておくべきなのに、そのようなことを行なわず、しかも、より安全な代替品があ るにもかかわらず、自己の利益のために、その物質の利便性のみを強調して製造販売して きた。そのため、ヒトの健康や生態系に被害を及ぼした例はいくつもある。その際、製造 業者は必ず、有害性の科学的証明を、有害だと主張する側に要求してきた。 「予防原則」の手法ではこのようなことは許されない。ヒトや生態系に不当な危害を及ぼ すことはないという証明はすべて、その化学物質を製造販する業者に課せられることにな る。もし、証明ができなければ、製造販売の禁止措置がとられることにつながるわけであ る。  化学物質の内分泌撹乱作用説は、毒性発現機構として、細胞や遺伝子を傷つけず、無毒 性とされていたよりも低い量で、種の保存や生命維持、成長、行動等に影響をあたえる (不可逆的な影響が、ずっと後に出現する場合もある)ケースがあることを示唆している。  従来の毒性試験だけでは、化学物質がヒトや野生生物にどのような影響を及ぼすかを予 測するのに十分でない。  国連環境開発会議での”環境と開発に関するリオ宣言”(1992 年)には「環境を守るた めに、各国はその能力に応じて予防的アプローチを広く採用する。重大なあるいは回復不 能な損害の脅威がある場合、充分な科学的根拠がないことを理由に費用対効果の高い環境 悪化防止策が先延ばしされてはならない」との原則がある。』 【p14下から16行】以下を追加する 『なお、上記懇談会とは別に、農薬製造事業者及び農薬関係団体との意見交換が実施され た。ここに参加したのは、農薬工業会、農薬製造事業者(31社)※ 、(社)日本植物防疫 協会、(社)農林水産航空協会、(財)日本植物調節剤研究協会、(社)日本くん蒸技術協会、 (財)残留農薬研究所、全国農薬協同組合、全国農業協同組合連合会である。 今後、環境保護団体及び農薬による健康被害者、有機農業者との意見交換も必要であ る。』 【p14下から9行】『急性参照量(』を『ADI評価に加えて、ARfD(急性参照量、』とする。 【p14下から7行】以下を追加する。 『さらに、同じ作用機構を有する農薬類を一つのグループとしての毒性評価すること や、複数の農薬を摂取した場合の複合毒性の評価も、検討する必要がある。』 【p15上から11行】以下を追加する 『さらに、農薬の毒性及び作物残留性のデータについては、従来のように、守るべき企業 の財産として、公開を拒むことは、許されない。国民への情報公開を原則とし、企業秘密 の保持に関しては、別途の法的制度で守ればよい。』 【p15下から12行】以下を追加する。  『現在、人や環境に影響があることが懸念されている農薬や、新たに登録され使用され ることになった農薬は、その使用地域において、作物への残留や大気・土壌・水系汚染状 況、使用者や散布地域周辺の住民など人の健康への影響、生態系への影響などを、集中的 に調査し、データ収集することを義務づけ、再評価に資するべきである。』 【p15下から4行】以下を追加する 『さらに、関連機関や農薬メーカー等から得られた情報は、国民に公開するとともに、再 評価すべき内容については、広く、国民の意見を求めるべきである。』 【p16上から16行】以下を追加する。  『試験成績の種類や数については、国民の意見を聞くことが不可欠である。』 【p16上から22行】以下を追加する。 『(オ)農薬使用者の資格・免許制度と防除業者の事前届出登録制度の導入  農薬は、人をはじめとする生物に毒作用を有する化学物質であるため、多くの毒性・作 物残留性試験の実施が義務づけられた上で、使用が許されている。また、使用に際しては、 で、表示事項の遵守が義務づけられており、これを守らなければ、安全性の保証がないと されている。  農薬使用者には、一般家庭から、農業者、さらには無人及び有人ヘリコプターによる防 除業者まで、おおきな幅があり、適用外作物に使用したり、使用時期や希釈倍率を誤る事 例が後をたたない。  農薬使用者には、農薬や植栽管理についての研修を義務づけ、資格・免許を得たもので なければ、使用できないようにし、違反には罰則も科するような資格・免許制度の導入を すべきである。  また、多種多量の農薬を扱う防除業者には、より厳しい農薬についての知識が求められ る。防除業者には事前届出登録制度、資格免許制度を導入すべきである。無人ヘリコプ ターのオペレーターについても公的な免許が必要である。』 【p17上から1行】以下を追加する。 『農業者については、農薬についての研修の受講を義務づけ、農薬使用資格・免許制度を 設けることも検討すべきである。』 【p17上から8-9行】『登録農薬』を『有機JAS法で、使用が認められている登録農薬』 とする 【p17上から16行】『が必要である。』を『とともに、防除業者の事前届出登録制度の導 入を検討すべきである。また、防除業者は、一般農薬使用者よりも厳しい免許制度を導入 すべきである。』とする。 【p17上から18行】『農薬については』を『農薬が開放系で使用される殺生物剤で あり、ラベル通り使用しなければ、安全性が保証されないにも拘わらず、』とする。 【p17上から20行】『このことが、』を『このこと及び農薬の大気汚染等による受 動被曝の結果、散布地周辺の住民や通行者の健康被害、さらには、農薬を使用した自殺や 野鳥・魚介類・小動物の死亡事故が報告されていることが、』とする。 【p17下から7-9行】『一般市民・・・・必要がある。』を『一般市民に対しては、 出来るだけ農薬を使用しない総合的病害虫管理法や耕種的防除、物理的防除又は生物的防 除を基本とした栽培方法を薦めるとともに、住宅地では、グリーン購入法による「植栽管 理」を義務づけるべきである。また、農薬そのものや農薬残留に対する正しい知識、農薬 の安全使用に関する基礎的な知識のない人には。農薬を使用しない栽培方法を指導する必 要がある。』とする。 【p17の下から7行】以下を追加する。 『化管法の指定物質にある農薬成分については、MSDSの作成が義務付けられているが、す べての農薬製剤について、MSDSや毒性、作物残留性情報、その他使用上の注意を、誰でも 調べることができる農薬データーベースの構築が望まれる。』 【p17下から2行】『農薬の』を『農薬の毒性や作物残留性情報や環境への影響に関する情 報、農薬の』とする。 【p18上から5行】『について」(』を『について」(平成15年9月16日付け農林水産省消 費・安全局長通知15農安第1714号と』とする。 【p18上から8行】以下を追加する。 『特に、登録された製剤の地上散布よりも、高濃度の農薬を含む希釈液を散布することに なる、現地混用や有人・無人ヘリコプターによる空中散布、短期間の広域散布、揮発性の 高い土壌処理剤の使用は、住宅地近隣ではやめるべきである。』 【p18の上から18行】以下を追加する。 『(キ)地域防除協議会の設置  農薬の広域散布による人の健康被害や環境汚染を防止するため、農薬防除業者、空中散 布実施主体、無人ヘリコプター使用者等をはじめとする農薬使用者とともに、農薬散布に より健康被害を受ける恐れのある人や養蜂、養蚕、養鶏、養豚、家畜飼育業者、漁業関係 者、水道事業者、環境保護団体らを含む防除協議会を設置し、地域の農薬散布計画を検討 することが必要である。』 【p18上から20行】『より安全な農薬を適正に使用することにより、』を『総合病害虫管 理法を導入し、より安全な農薬を適正に使用することで、過度の農薬依存から脱却した』とする。 【p18の下から1行】以下を追加する。 『 とはいうものの、 単作連作により収穫量の拡大を図り、日本の風土に合わない海外 作物品種を導入した結果、農薬を使用せざるを得ない状況を生み出し、かつ、多様な食文 化を善として、マイナー作物の栽培を儲かる農業として推進してきた現在の農政にメスが 入れられるべきである。  また、マイナー作物の栽培は農薬に依拠した栽培方法をやめ、耕種的防除、物理的防 除又は生物的防除を基本とした栽培方法をとるべきだとの意見も取り入れるべきであ る。』 【p19下から18行】以下を追加する。 『このような農業のあり方〜農薬使用を前提とした施設栽培を見直し、農薬使用に頼らな い作物の栽培技術を開発、普及すべきである。』 【p19下から11行】以下を追加する。 『また、根本的には、施設栽培の加温に石油資源を用いることは、地球温暖化と資源の枯 渇につながるため、日本の風土にあい季節感のある作物栽培をめざすべきである。』 【p20上から1行】以下を追加する。 『 作物グループ化によって、メリットがあるのは、農薬登録に必要な薬効・薬害・作物 残留性試験数を減らせる農薬メーカーと、使用可能な農薬数が増える農業者であり、残留 農薬を取り込むことになる散布地域の住民や消費者にはメリットはない。  国民には、作物グループ化により、個々の農作物の残留性がただしく評価できることを、 また、大気汚染や作物に残留した農薬の摂取量をどれだけ減らすことができるかを科学的 に示す必要があるが、これも出来ていない。  また、同じ作用機構を有する農薬類を一つのグループとしての毒性評価が提案されてい るにも拘わらず、実現していない。作物のグループ化とセットに、農薬成分をグループ化 した残留基準の設定を検討すべきである。個々の農薬成分だけについて設定するのでなく、 たとえば、総有機リン系農薬の残留基準、さらには、総農薬についての残留基準を設定す べきである。』 【p20上から15行】以下を追加する。 『外国の登録申請資料を利用する場合、作物残留性試験については、日本の風土や使用状 況が異なることを認識すべきである。  現行の食品衛生法による残留基準は、輸入農作物の流通を円滑にするためとして、海外 の高い基準をそのまま採用したケースもある。海外の残留基準の中には、散布1日後の高 い残留値をクリアするような値が設定されているものがあり、国内基準として採用するこ とを改めるべきである。また、ポストハーベスト農薬や遺伝子組換え作物と対になる農薬 の残留基準を高く設定していることも見直すべきである。』 【p20下から8行】以下を(キ)として追加、(キ)を(ク)とする。 『(キ)残留農薬の摂取量を減らすために  消費者が形や色のよい。規格化された農作物や季節はずれの農作物を求めることは、過 度の農薬使用を惹き起こし、農薬による環境負荷を高め、ひいては残留農薬の摂取量の増 加につながる恐れがある。  また、国内自給率が低いため、輸入農作物に依存している現状も、国民の食品からの農 薬摂取量を増加させている。  すなはち、国内ではみられない農薬のポストハーベスト使用、輸入農作物の円滑な供給 のために、海外の高い残留基準をそのまま援用していることを改める必要がある。また、 特定の農薬に耐性を有する遺伝子組換え作物は、その農薬の残留基準を高めることによっ て市場流通が図られていることも、見逃せない。  また、農薬は食品だけから体内に摂取されるのではない。成人の食品摂取量は1日あた り摂取量は食品1kg、水2kg、空気20kgであり、それぞれに含有される農薬を取り込むこと になるのに、残留規制は食品に偏重されている。水や大気中の農薬汚染についても、その 規制を強化すべきである。さらに、農薬と同類のシロアリ坊城剤や衛生害虫用殺虫剤、家 庭用殺虫剤、衣料防虫剤ほかが食品を汚染し、農薬の摂取量を増加させている現状を改め るべきである。 (ク)関係府省との連携の推進 以下まま』 【p20下から1行】以下を追加する。 『(ケ)行政による立入検査の強化と検査結果の情報公開  農薬取締法や毒劇法、食品衛生法では、国や都道府県ほかの行政機関が、農薬製造者・ 輸入者・販売者・使用者や食品製造・販売者等に立入検査したり、指導する権限を有して いる。これら法に基づく検査を強化し、法令順守を強く求めるべきである。また、その検 査結果を国民に公表することで、法令違反事例の再発を防止することに役立てるべきであ る。』 【p21の下から1行】以下を追加する。 『さいごに、今後の農薬登録制度及び農薬取締法改定に際して不可欠と考えられる事項を 列挙しておく。 (1)農薬使用量の減少傾向がつづいているものの、単位耕地あたりの農薬使用量はOEC D諸国の中で第一位にある。今後とも、環境保全型農業、有機農業を推進するとともに、 見かけ重視の農作物の生産や地球温暖化につながる施設農業を減らす、食糧の自給率を高 め、地産地消に徹するなど、食のあり方の根本を考え直すことも肝要である。  また、都市緑化や芝生化・屋上や壁面緑化による省エネがすすんでいるが、これらを農 薬使用の増加に結びつけてはならない。さらに、国や地方自治体など行政機関は、農薬を 出来るだけ使用しない農法の開発と普及に力を注ぐべきである。 (2)農薬の毒性や作物残留性試験内容を厳しくし、再評価制度を導入しても、国民への情 報公開がきちんと行わなければ、意味がない。  農薬抄録として公開されている農薬の活性成分は、6月20日現在、66件にすぎない。 試験に使った成分の純度すら企業秘密保護の名のもとに非公開となっている。  農薬に含まれる補助成分やダイオキシン類、その他の有害不純物については、「農薬の 登録申請等に添付する資料についての運用について」(平成14年1月10日付け13生産第39 88号農林水産省生産局生産資材課課長通知)で提出が義務付けられているが、これも、非 開示である。  メーカーに作物残留性試験の詳細を尋ねても、農水省に立入検査の結果を公開するよう 求めても、拒否されるという現状を改める必要がある。  行政、メーカーと消費者が対等の立場で、話し合えるには、情報公開を徹底することが 不可欠である。 (3)農薬取締法の公定規格として、ダイオキシン類や有害不純物の含有量規制を実施すべ きである。 (4)農薬に関する情報のデータベース化を促進すべきである。現在公開されている農林水 産消費安全技術センターのデータベースでは不十分である。  農薬の登録情報、物理化学的性質、製剤成分、MSDS、毒性や作物残留性試験結果、農薬 に危被害事例、農薬の環境汚染調査結果、作物の残留農薬調査結果などがDBの対象とな る。 (5)、農薬による危被害事例を収集すべきである。報告様式を決め、遺漏のないよう報告 を義務づけるべきである。 (6)農薬使用者や散布地周辺の住民の農薬による健康被害の大規模な調査を実施すべきで ある。 (7)農薬登録が厳しく実施されても、「農薬使用安全基準省令」を遵守しなければ、安全 は保証されない。同省令の努力規定をすべて罰則を伴う義務規定とすべきである。また、 適用作物が食用か非食用かに拘わらず、安全使用基準違反及び適用外使用は、明確に農薬 取締法違反とすべきである。 (8)上述の「農薬使用安全基準省令」の強化により、同省令条文に基づく、「住宅地通 知」の遵守を義務付けるべきである。 (9)農薬使用者、防除業者には、資格・免許・届出登録制度を導入すべきである。 無人ヘリコプターオペレーターの免許として、自動車免許に準ずる制度をつくる。 (10)農薬販売業者は、事前届け制度とし、ネット販売は禁止すべきである。 (11)住宅地周辺では、揮発性土壌処理剤、農薬の現地混用、有人や無人ヘリコプターによ る空中散布、大型散布機による地上散布をやめるべきである。特に、有機リン系農薬やク ロルピクリンについては厳しい使用規制を求めるべきである。  また、散布地と住宅地の間に緩衝地帯の設置も必要である。 (12)広域農地の農薬散布に際しては、農薬健康被害者、地域住民、環境保護団体、農畜産 水産業者、水道業者等が参加した地域坊城協議会を設置し、農薬使用計画を検討すべきで ある。 (13)農薬取締法や毒劇法に基づく、行政の立入り検査を厳しく行い、その結果を情報公開 する。 (14)輸出用農薬については、農薬取締法には、適用除外条文がある。国際化をめざすには、 この条文を撤廃すべきである。 (15)廃・残農薬、期限切れ農薬、登録失効農薬などの回収を義務づけた上、廃農薬の回 収・処理制度を設ける。 (16)農薬製造工場跡地の環境調査等を実施し、汚染地を登録管理し、浄化計画を策定すべ きである。 (17)非農作物除草剤については、農薬取締法に準じた新たな法規制を行う。 (18)農薬と同じ成分を含むシロアリ防除剤、衛生害虫駆除剤、殺鼠剤、不快害虫駆除剤、 家庭用・防疫用殺虫剤・殺菌剤、外来有害生物駆除剤、動物用薬、防汚剤、衣料防虫剤、 非農作物用除草剤、などの製造・販売・使用を横断的に規制する新たな法規制が必要であ る。 (19)以上のような意見を詳しく説明するため、農薬被害者、有機農業団体、環境保護団体 などから意見を聞く会を開催し、議論を深める。』