***** 「殺虫剤指針の改訂」についての意見 (2007年11月19日提出) ***** 厚生労働省医薬食品局審査管理課 御中 「殺虫剤指針の改訂」について、以下の意見を述べます。ご査収ください。 反農薬東京グループ 代表:  辻 万千子 〒202-0021東京都西東京市東伏見 2−2−28−B 電話/ファックス:042-463-3027 E-mail:mtsujiアトマークjcom.home.ne.jp 【意見1】殺虫剤指針は根本的に見直すべきである。  たとえば、(1)毒性試験の種類と方法(特に吸入毒性は急性・慢性を入れるべき)、 (2)殺虫剤を使用した際の気中濃度(気体、溶剤中に分散したもの、粉塵・埃に吸着したも の等を含む)、壁・床、じゅうたん、カーテン、家具、プラスチック製品等への付着残存 量、食品等への移行量、 (3)殺虫剤を使用した際の人体への影響、(4)用法用量を守らない場合の罰則、(5)再審査 の制度等 【理由】  1,薬事法で承認する医薬品・医薬部外品の殺虫剤(以下「殺虫剤」)に関する規定は 殺虫剤指針しかないが、現在の殺虫剤指針は、薬剤規格及び試験方法に関するものであり、 使用者や居住者、入室者の安全を守る役割を果たしていない。衛生害虫駆除に使用される 殺虫剤は、生活環境で使用されるものであり、毒性評価は農薬よりも厳しくあるべきなの に、それが示されていない。  2,2002年8月の第1回殺虫剤指針等の改訂に関する検討会では、規格、効能・効果、 用法・用量以外に根本的な見直しをすることが議論されている。にもかかわらず、今回の パブコメで出された案は、従来の殺虫剤指針から12種の製剤を削除し、新たに22種を追加 しただけで、居住者や入室者の健康リスクが一切入っていない。  3,建築物衛生法では、室内で殺虫剤を使用する場合、入室者等の健康被害をなくすた めに、薬事法で承認された殺虫剤を使用するよう義務づけている。しかし、現在の殺虫剤 指針では、健康被害は防げない。建築物衛生法と整合性を持って、殺虫剤を室内で使用し ても、健康被害が起きないような規制をすべきである。 【意見2】殺虫剤の承認は基準と承認経過、承認リストを公開すべきである。 【理由】  1,医薬品・医薬部外品の殺虫剤の承認は、医薬品医療機器総合機構が実施していると いうが、その根拠が示されていない。殺虫剤は人が直接使う薬とは枠組みが違うため、殺 虫剤指針で公開すべきである。  2,承認された殺虫剤の全商品リストが公開されていないのは問題である。 【意見3】メーカーに対して、商品名、成分、適用、用量・用法、使用上の注意、毒性情 報等を調べることのできるよう医薬品医療機器総合機構のDBに登録するよう義務づける。 【理由】  現在 医薬品医療機器総合機構のDBにある一般公衆衛生用薬には91件しか掲載されてい ない(うち殺虫剤は10件)のみで、商品に含有される成分等を調べることができない。 【意見4】殺虫剤指針の存在理由がはっきりしない。消費者にどのようなメリットがある のか明らかにされたい。 【意見5】指針案のT:通則に医薬部外品もいれる。殺虫剤指針の医薬品、医薬部外品の 適否は、薬剤毎にその成分(活性成分だけでなく、補助成分も含む)の毒性試験、生活及び 自然環境汚染に関する試験で判定する。さらに、天敵の利用やIPMの利用も有効である ことに触れる。 【理由】  1,医薬品だけでなく、同じ成分を含み、用途も類似する医薬部外品についても医薬品 と同等にあつかうべきである。  2,人体に対する影響は、補助成分(増量剤、溶剤、乳化剤、誘引剤、共力剤、香料、 噴射剤ほか)についても評価すべきである。  3,衛生害虫の繁殖抑制や防除には、天敵類の利用も考慮すべきである。  4,建築物衛生法のねずみ等の対策では、IPMの採用が挙げられている。 【意見6】指針案のU:製剤総則の剤型として以下のものをいれる。  (1)殺虫剤・忌避剤を含有する塗料、印刷インク(これらは、うちわや鋼板等に使われ る)  (2)小型ファンつき器具として、戸外で用いる人体装着型の殺虫剤器具  (3)殺虫剤や忌避剤を含有する繊維や樹脂を用いた製品 (網戸、蚊帳、衣服など)  (4)粘着型(ハエトリ紙、棒状製品)、  (5)トラップ型(誘引剤等を用いた製品やモスキートマグネットなど) 【理由】  1,これらの効力や人の健康への影響の評価方法が明確でない。  2,特に、人体に接触しやすい、蚊帳や衣料や器具への評価を早急にされたい。 【意見7】指針案のU:製剤総則の中に、「溶剤,補助剤又は香料などは,効力又は試験 に支障を来たすものであってはならない」「被覆に用いる高分子物質,懸濁化剤又はその 他の適当な添加物などは,効力又は試験に支障を来すものであってはならない.」とある が、「人の健康や環境・生態系に影響を及ぼすものであってはならない」を追加する。 【意見8】指針案のV:一般試験に関するものとして、くん煙剤、全量噴射エアゾール剤 について、火災事故防止のために、高圧ガス取締法や消防法に適合しているか否かの試験 (たとえば、火炎試験など)の実施を義務づける。 【理由】 1,特に、ジェット式噴射剤の火災事故がみられる。 2,バルサン氷殺ジェット製品はメーカーが回収している。 【意見9】殺虫剤の室内空気中濃度測定方法ガイドライン(薬食審査発第0728001号、平成 15年8月1日以降に行われる承認申請に適用)を新たに行うようになったが、それ以前に承 認された殺虫剤に関して行うべきである。その結果によって、承認された殺虫剤でも取り 消すべきである。 【理由】 1,ガイドライン告示以前に承認された薬剤についても、同等の試験が必要である。 【意見10】指針案のW:医薬品各条に関し以下点が不明であるので、教えてほしい。  (1)12製剤が削除されたが、それぞれについてその理由を明らかにされたい。  (2)22製剤が追加されたが、それぞれについてその理由を明らかにされたい  (3)有機リン剤について、一部削除されたが、新たに追加された薬剤を含め、まだ、リ ストに掲載されたままになっているものがあるのはなぜか。  (4)ウエストナイルウイルスを媒介する蚊対策で、アメリカでは幼虫用に適用されてい るBT剤などの生物農薬があげられていないのなぜか。  (5)成分リストにあるのは、活性成分だけで、補助成分(増量剤、溶剤、乳化剤、誘引剤、 共力剤、香料、噴射剤ほか)がはいっていないのはなぜか。 【理由】  1,リストから削除されたり、新たに追加された薬剤があるが、その理由が不明である。  2,有機リン剤について、欧米では使用規制されつつある。日本でも、すでに、シロア リ防除剤のクロルピリホスが建築基準法で使用禁止になっている。農薬でも、群馬県が有 機リン剤の無人ヘリコプターによる空中散布の自粛を求めている。また、MPPの使用自 粛も要望されている。  3,厚生科学研究費補助金による「微量化学物質によるシックハウス症候群の病態解明、 診断、治療対策に関する研究」で、原因物質のひとつとして、有機リン剤による健康への 影響が論ぜられている。  4,日本鳥学会が、蚊対策に有機リン剤MPPの使用を止めるよう求めている。  5,アメリカのCDCは蚊幼虫対策に、BTi剤を推奨している。  6,補助成分そのもの及び活性成分との混合剤で、人の健康への影響が不明である。 【意見11】殺虫剤指針等の改訂に関する検討会の作業部会は公開すべきである。検討会 は本委員会しか公開されていないが、作業部会で出された結論の経緯が不明である。作業 部会の結論を本委員会で議論せず、直接パブコメにもってくるのは手続き的におかしいの ではないか。 【意見12】上記検討会は2002年度中に中間とりまとめをしたいとのことであったが、5 年も経過した理由を明らかにされたい。