■化管法対象物質見直し合同会合報告(案)への意見■   2008年5月26日提出  PRTR法指定物質の見直しに関し、農薬及びその関連物質について意見を 述べますので、ご査収ください。 【氏名】反農薬東京グループ 代表 辻万千子 【住所】東京都西東京市東伏見 2−2−28−B 【電話番号】 042-463-3027 【FAX番号】042-463-3027 【電子メールアドレス】 mtsuji@jcom.home.ne.jp 【T】総括的意見 【意見1】農薬、衛生害虫・不快害虫用殺虫剤、シロアリ防除剤、非農作物用除草剤(以  下、「農薬等」という)は生理活性があり、自然環境や室内生活環境中に直接放出=散  布するという使用形態をとるため、生態系に影響を与えるだけでなく、使用者や使用個  所近くの第三者が受動被曝により健康被害を受けるケースが絶えない。  地域住民が最も知りたいのは、どこで、どのような毒性をもつ、どのような物質がどの  程度、製造・使用・輸送・保管・廃棄されているかの情報である。  「農薬等」の毒性情報と地域別「農薬等」排出・移動量の情報が第一に求められる。  PRTR制度では、年間1トン以上の取り扱い事業者に届出が義務付けられているもの  の、現状では個々の「農薬等」の指定物質の排出量は、正確につかめていない。  そこで、「農薬等」の製剤を総量で年間1トン以上取り扱う販売業者に指定物質を含む  製剤の販売量の届出を義務づけることを提案する。 【理由】  1、現行の事業者からの届出をもとめている移動・排出届量と、他の統計からの推計量   との差がおおきい場合がある。、   2006年度の農薬のPRTR排出量調査結果では、届出排出量として把握されているの   は、全排出量のごくわずかである。また、PRTR統計にある届出外排出量(推計   値)との合計量を、農薬要覧の生産量統計(原体の生産量+輸入量−輸出量)と比較し   ても、その差が大きいものがある。   いくつかの例を下表に示す。PRTRの項の()内%は、PTRT合計量のうち届出   排出量の比率である。   農薬名      PRTR集計*1  農薬統計*2   D-D      9874トン(0%)  9757トン   MEP      841トン(0%)  1321トン   TPN      415トン(0%)  2565トン   イプロベンホス   93トン(0%)   239トン   クロルピクリン  8173トン(0%) 5510トン   シハロホップブチル  56トン(0%    911トン   ダイアジノン   418トン(0%) 298トン   ベノミル   125トン(0%) 101トン   ベンチオカーブ  381トン(2%)  591トン  *1の出典:経済産業省のHPより下記URL  http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/PRTR/h18kohyo/pdf/3-1.pdf  から届出外排出量(推計値)と届出排出量(集計値)の合計量  *2の出典:農薬要覧2007年版の農薬原体国内生産量+輸入量−輸出量の合計量  2、農薬要覧における都道府県別出荷量・生産量は、必ずしも、当該都道府県での   使用・排出量に対応していない。  3、農薬と同じ成分が、衛生害虫や不快害虫用殺虫剤、シロアリ防除剤、動物用医薬品、   非農作物用除草剤として、使用・排出されているが、その地域別数量が正確に把握で   きていない。  4、エコケミストリー研究会は、「農薬の排出量(使用量)」については国の推計方法   には根本的に改善すべき点があります。」として、横浜国立大学大学院の浦野・亀屋   研究室が,より適切な独自の方法で調査・推算した値を採用している。     http://www.ecochemi.jp/PRTR2005/imi.html#国の情報と加工の必要性     http://www.ecochemi.jp/PRTR2005/shiyoryo.htm  5、地域別の排出量を正確に知るには、農薬については、農薬取締法で届出をしてい   る販売者から農薬製剤ごとの取り扱い量データを得る必要がある。   農薬販売業者はいろいろの指定物質を含む多種類の製剤を取り扱うため、個別の指定   物質ごとに1トン以上取り扱うという条件をはずして、PRTR制度を適用すべき   である。 【意見2】「農薬等」の地域での排出量=使用量を正確に知るためには、「農薬等」の使  用者が使用する「農薬等」の種類と数量を知る必要がある。  1、防除業者は、一般使用者よりも、多種多量の薬剤を取り扱っているが、農薬取締法   で散布計画の届出が義務づけられているのは、空中散布業者、ゴルフ場での使用者、   くん蒸剤処理業者しかない。ほかにも、農薬地上散布防除業者、無人ヘリコプター散   布業者、造園業者、建築物衛生法による登録防除業者、しろあり業者などがある。こ   れら防除業者に「農薬等」の使用・排出量の提出を義務付ける、法律・制度が必要で   ある。  2、個人の農薬使用者にも、農薬使用履歴の帳簿で、使用量の記載が求められているの   で、これを報告し、集計する制度が必要である。 【理由】  1、水道事業者は、水源周辺での農薬成分別使用量のデータ収集を行わねばならない。  2、「農薬等」の受動被曝で、健康被害を受ける事例では、防除業者による散布が原因   となる場合が多い。  3、農薬取締法では、個人・業者の区別なく、農薬使用者には農薬使用基準の遵守が求   められている。 【意見3】MSDSの公布は、製造・輸入業者、加工業者、卸売業者、小売業者までで、  一般購入者に提供する必要はない。また、一般消費者用の製品(殺虫剤、防虫剤、家庭  用洗剤など)には、MSDSを提供する必要はないことになっている。  しかし、農薬や殺虫剤などで、健康被害をうけるのは、使用者だけでなく、受動被曝の  第三者であることを思えば、だれでも、MSDSを容易に入手できるようにすべきであ  る。  少なくとも、指定化学物質を含む「農薬等」の製品のラベルには、MSDSの入手先を  明記すべきすべきである。 【U】報告案についての意見 【意見1】p4<有害性の情報源>の項の優先順位1の情報源として、  食品安全委員会による食品健康安全評価を追加する。 【理由】食品安全委員会は農薬ほかの毒性試験データを評価している 【意見2】p4<環境での存在に関する判断基準>に追加する  PRTR届出の実績がなくとも、生産・出荷実績があるものは、引き続き指定化学物質  として残すこととする。 【理由】たとえば、農薬については、毎年発行される「農薬要覧」に、成分や製剤毎の生  産量や輸入量、出荷量の統計があるので、これを利用すべきである。 【意見3】p5 今後の課題にある『このような物質については、登録失効農薬等を除  き』を『このような物質については、登録失効農薬を含め』とする。 【理由】  1、登録失効農薬は、販売はされないが、回収命令が出されないかぎり、使用は規制さ   れない。使用者は手持ちのものを、使いつづけることになり、そのため、環境汚染や   人の被害が登録失効後も発生している。  2、農薬登録失効しても、同じ成分が家庭用殺虫剤やシロアリ防除剤ほかの用途で使用   される場合があるので、失効したからといて、指定物質から削除するのは早計である。 【意見4】p5 今後の課題にある『さらに、このような物質については、事業者による  自主的な取組として、今後ともMSDS の提供を継続することが望まれる。』を  『さらに、このような物質については、今後とも、事業者に、MSDS の提供を継続  することを義務付けるべきである。』とする。 【理由】  1、一旦登録失効した農薬が、また、ふたたび登録されることもある   たとえば、除草剤オキサジアゾンは1995年4月に登録失効したが、2003年8月に新たな   製剤として登録された。  2、農薬使用者の健康被害、受動被曝による第三者の健康被害がおこった場合、MSD   Sは、貴重な情報源となるから提供を継続することを法律で義務づける。 【V】、個別物質についての意見 【意見1】有害性が確認されないとして、指定リストから削除された登録農薬グルホシ  ネート、チフェンスルフロンメチル、ピラゾレートはPRTR指定物質としてそのまま  残すべきである。 【理由】  1、食品安全委員会での健康影響評価が終わっていない。その結果がでて判断すればよ   い。  2、グルホシネートの動物実験で、ラットへの皮下注射で易興奮性が見られた/妊娠ラ   ットへの皮下注射で、仔が易興奮性を示したとの報告がある。 【意見2】生産量の面から指定を解除された農薬の中うち、下表の13の登録農薬について、  PRTR指定物質として生産・使用量・環境調査などを継続すべきである。 【理由】06年の製剤の国内出荷量は、下表のようで(出典農薬要覧2007年版)である。   農薬名 06年出荷量(トン)   イミベンコナゾール単+複合製剤 39.4   エスプロカルブ   複合製剤 1176   シアノホス    単製剤 221   ジクロフェンチオン  単製剤 127    シクロプロトリン    単製剤 127   シペルメトリン   単製剤 136   シメトリン 複合製剤 2986   テニルクロール 複合製剤 132   ピリミジフェン    単製剤  8.1   フェンバレレート 複合製剤  79   フルスルファミド 単製剤 4074   フルバリネート 単+複合製剤  29.6   プロパニル      単製剤  34.6 【意見3】衛生害虫・不快害虫用殺虫剤(以下家庭用殺虫剤という)やシロアリ防除剤  (含む木材防腐剤)として身近で使用されている以下の物質は、室内汚染、環境汚染の  恐れがあり、指定物質として検討すべきである。特に、ピレスロイド系の物質が多いが、  これらは、ピレスロイド系殺虫剤としてひとまとめにしての法適用を求める。   殺虫剤成分名          用途ほか   アミドフルメト  家庭用殺虫剤   イミプロトリン         ピレスロイド系家庭用殺虫剤   オクタクロロジプロピルエーテル(S-421)                   家庭用殺虫剤、シロアリ防除剤、                   ピレスロイド系殺虫剤の共力剤としての用途                   母乳汚染がみられる   シフェノトリン         家庭用殺虫剤、シロアリ防除剤   ディート(ジエチルトルアミド) 虫よけ剤、山ビル   ヒドラメチルノン        家庭用殺虫剤   フェノトリン          ピレスロイド系家庭用殺虫剤   フタルスリン          ピレスロイド系家庭用殺虫剤   フラメトリン          ピレスロイド系家庭用殺虫剤   プラレトリン           ピレスロイド系家庭用殺虫剤   フルトリン、メタフルトリン、トランスフルトリン、プロフルトリン                   ピレスロイド系家庭用殺虫剤   メトキサジアゾン        家庭用殺虫剤   メトプレン           ハエ・カ殺虫剤や動物用医薬品としての用途あり                   カエルの過剰肢の原因のひとつである。 【意見4】農薬だけでなく、その他の用途でも使用されている下記物質は、家庭用殺虫剤  やシロアリ防除剤、非農作物用除草剤として身の回りで使用されており、その有害性が  懸念されるため、指定物質とすべきである。   農薬名     農薬生産又は出荷量とその他の用途など   アレスリン   農薬単製剤と複合製剤の出荷量60トンのほか家庭用殺虫剤用途あり。                 食品安全委員会の健康影響評価結果がまだでていない。   アセタミプリド 農薬原体生産* 1587トン ほかにシロアリ防除剤用途あり   イミダクロプリド農薬原体生産・輸入 113トン ほかにシロアリ防除剤用途あり                 ドイツやフランスでミツバチ被害が問題となっている。   カスガマイシン 農薬原体生産 18トン          抗生物質系の殺菌剤で空中散布も実施されている。   キャプタン   農薬原体輸入 355トン                 卵巣細胞培養試験で変異原性あり。発ガン性の疑い。   グリホサート   農薬原体輸入 1167トン ほかに非農作物用除草剤として使用あり                 デンマークでの地下水汚染が報告されている。   クロチアニジン 農薬原体生産 158トン ほかにシロアリ防除剤用途あり                 岩手県などでミツバチ被害があった。   ジノテフラン   農薬単製剤出荷 4936トン ほかに家庭用殺虫剤や                          シロアリ防除剤用途あり   シプロコナゾール農薬単製剤出荷 4トン ほかにシロアリ防除剤用途あり   シラフルオフェン農薬原体生産 46.6トン ほかに家庭用殺虫剤や                           シロアリ防除剤用途あり   チアメトキサム 農薬原体輸入 5.2トン ほかにシロアリ防除剤用途あり   ビフェントリン 農薬原体生産 3トン ほかに家庭用殺虫剤や                           シロアリ防除剤用途あり、   フェノブカルブ 農薬原体生産 118トン ほかにシロアリ防除剤用途あり   プラレトリン  シロアリ防除剤   プロポキスル  農薬登録は失効したが、製品の回収が実施されたわけでなく、     家庭用殺虫剤などとして使用されている   ヘキサコナゾール農薬原体輸入 5トン ほかにシロアリ防除剤あり    注:原体生産は国内生産量−輸出量 (出典農薬要覧2007年版) 【意見5】以下に示す農薬は、環境省の実施した「農薬残留対策に関する総合調査」  (2003-05年度)で、水質や魚介類に検出されており、登録農薬でもあるので、指定物質  とすべきである。   農薬名       生産量(06年度)    環境汚染データ*   エスプロカルブ   複合剤出荷 1176トン  水質0.92μg/L(北海道夕張川)   クロメプロップ   原体生産 131トン   水質1μg/L(同酸2μg/L,青森県岩木川)   シメトリン   複合製剤出荷 2986トン 水質3.2μg/L(埼玉県大谷川)   ダイムロン      原体生産 75トン 水質4.24μg/L(兵庫県杉原川)   テニルクロール    複合製剤出荷 132トン 水質1.07μg/L(北海道夕張川)   ピラゾスルフロンエチル 原体生産 27トン  水質0.65μg/L(茨城県久慈川)   ピリミノパックメチル 原体生産 16トン  水質0.8μg/L(兵庫県杉原川)   ピロキロン      単製剤出荷 2746トン 水質7.1μg/L(兵庫県杉原川)   プロシミドン   原体生産 241トン  水質0.12μg/L(北海道売買川)   プロベナゾール    原体輸入 1476トン 水質1.9μg/L(秋田県岩見川)   ブロモブチド   原体輸入 497トン 水質6.01μg/L(北海道夕張川)、                       コイ肝臓0.05ppm(大阪府佐備川)   ペンシクロン  原体輸入 143トン  水質0.3μg/L(北海道売買川)   ベンスルフロンメチル 原体輸入 104トン 水質6.9μg/L(兵庫県杉原川)   ベンタゾン   原体輸入 858トン  水質1.22μg/L(北海道夕張川)   ベンフレセート  原体輸入 24トン   水質3μg/L(北海道夕張川)   ペントキサゾン 単製出荷 149トン  水質0.59μg/L(兵庫県杉原川)   メタラキシル    原体輸入 39トン  水質0.06μg/L(北海道夕張川)   メトミノストロビン 原体生産 85トン  水質0.22μg/L(兵庫県杉原川)   レナシル     単・複製剤出荷 112トン 水質0.77μg/L(北海道売買川)    注:原体生産は国内生産量−輸出量 (出典農薬要覧2007年版)    * :http://www.env.go.jp/water/dojo/noyaku/report2/index.html 【意見6】HCB(ヘキサクロロベンゼン)はそれ自体は使用されていないが、他の物質  の不純物や焼却による非意図的生成物であり、ダイオキシン類と同じ位置づけで、指定  物質にすべきである。 【理由】  1、化審法で第一種特定化学物質に指定されている。  2、HCBを不純物として含有する赤色顔料などは、化審法でその含有規制がある。  3、HCBは、登録農薬であるフサライドやTPNに含有されている。 v