****** 林野庁長官への国有林での松枯れ対策空中散布に関する要望   ******                               2007年11月7日  林野庁長官 辻 健治 様         要望団体          赤とんぼの会糸島/農薬空中散布反対全国ネットワーク/          反農薬東京グループ/山口みどりの会                 要望書前文  国民の財産であり、また、野生動植物の住みかである森林の保全のために、平素より御 尽力頂きありがとうございます。私たちは、健康・生態系・環境への悪影響から、松枯れ 対策としての農薬散布の中止を求めて活動している団体です。  1997年、松くい虫被害対策特別措置法は森林病害虫等防除法に吸収されましたが、その 審議の中で衆参両院は付帯決議として「特別防除(空中散布)を実施する必要がなくなる ような条件を整備しつつ、伐倒駆除、樹種転換等の方法を可能な限り選択するとともに、 松林の健全化のため適切な森林施業を併せて推進すること。」と条件をつけました。  また林野庁は、昨年度の松枯れ被害対策を、「周辺環境に配慮した、適切かつ確実な防 除を推進するための樹幹注入剤の施用等、環境に配慮した松林保全対策」を重点の一つと しました。そして、「空散をなくするために努力している」としています。  しかし、国有林においては、松枯れ防除の空中散布の総面積が2006年3639ha、 2007年3225haと、その減少ははかばかしくありません。  地方自治体では、空散による被害の申出を受けたり、防除効果に疑問を持ったりして、 空散を中止した自治体が14都府県になります。今年度は広島県が、空散の補助金をカッ トして伐倒駆除で対処する方針を示し、結果的に県内の空散は秋の緊急防除(1町で実 施)を除き、中止になっています。  こうした対応は、1997年の附帯決議実現のためにも、国レベルで率先して行われ、 地方自治体へも空散縮小・中止の指導をされるべきではないでしょうか。  平成15年9月16日には「住宅地等における農薬使用について」農水省通知(旧通 知)が、そして、今年1月31日には同通知が、農水省・環境省連名の新通知となって出 されました。この通知は病害虫の発生や被害の確認をせずに定期的に農薬を散布すること はやめるよう、記されています。これは松枯れ防除でいえば、マツノマダラカミキリが確 認されなければ農薬散布はやめるように、ということです。この通知に添った対応も求め られます。  ところで、福岡県では今年度も、民有林と国有林で空中・地上散布が行われています。 そのため、民有林での空散・地散中止を求めて、市民団体が連名で県に要望書を提出した ところ、10月29日付のFAX回答に次のように記されていました。「現在、福岡県内 の民有林では、〜略〜周辺の国有林とも連携し事業を実施しています。これらのことから 事業の中止は考えておりません」  国有林があるために、県の行う空散・地散の中止・縮小ができないなどということは、 あってはならないと思います。  よって以下、要望を致します。御回答は項目ごとに文書で11月30日までに、御多忙 中恐縮ですがよろしくお願い致します。             要望事項と回答(07年11月30日) 1.国有林における有人・無人ヘリ等による空中散布と地上散布は、来年度から中止して   下さい。 【回答】   特別防除や地上散布は、松くい虫被害に対する総合的な対策を推進する上で引き続き   必要な防除方法のひとつと考えています。   なお、特別防除を行うに当たっては、防除実施基準に従って、自然環境及び生活環境   の保全に配慮し、薬剤の安全かつ適正な使用を確保するなどの措置を講ずることとし   ています。 2.松枯れには、松林の健全化・伐倒駆除・樹種転換・抵抗性松植樹などの環境保全型の   対策で対処して下さい。 【回答】   松くい虫被害対策については、被害松林の立地条件等を勘案しつつ、伐倒駆除や薬剤   による防除等による的確な防除の推進、樹種転換による保護樹林帯の造成や松林健全   化の促進、松くい虫被害の早期発見や防除耐性の整備、防除手法の多様化等の措置を   適切に組み合わせた総合的な対策を実施しています。 3.伐倒駆除の際は極力、焼却・チップ化などの方法で対処して下さい。特に住宅地周辺   では、非薬剤化を徹底して下さい。 【回答】   松くい虫が付着している樹木を抜刀し破砕又は焼却する特別伐倒駆除の実施は、通常   の伐倒駆除以上に森林所有者に与える影響が大きく、立地条件や労働力の制約も受け   ます。このため、駆除の実施に当たっては、松林の被害状況や立地条件など現地の実   態を勘案し、その手法を選択することが重要です。なお、伐倒駆除における薬剤の散   布等に当たっては、農薬取締法に定められた使用基準を遵守するとともに、「住宅地   等における農薬使用について」(平成19年1月31日付け。18消安第11607号・環水大   土発第070131001号)を踏まえ、適切に実施すよう指導しているところです。 4.樹幹注入や伐倒駆除時の薬剤処理など、やむを得ずの農薬使用時は農水省・環境省連   名通知「住宅地等における農薬使用について」(H19年1月31日付)に添って、   事前周知や立入禁止措置など徹底して対処して下さい。 【回答】   伐倒駆除における薬剤の散布等に当たっては、農薬取締法に定められた使用基準を遵   守するとともに、「住宅地等における農薬使用について」(平成19年1月31日付け。   18消安第11607号・環水大土発第070131001号)を踏まえ、適切に実施すよう指導して   いるところです。 5.人の手入れが期待されず、利用の少ない松林及び広葉樹が混在している松林は、広葉   樹への自然転換を促し、「守るべき松林」からははずして下さい。 【回答】   高度公益機能森林等については、利用の多少や広葉樹の混在に関わらず、地域におい   た松林として、その有する機能を確保する必要があると判断された松林が定められて   いるものと考えています。 6.海岸林の本来の植生は広葉樹林です。海岸保安林の樹種転換を促進し、広葉樹との混   交林育成を積極的に推進して下さい。 【回答】   被害拡大防止森林や地区被害防止森林では、高度公益機能森林への著しい被害の拡大   を防止するため、高度公益機能森林と一体的な対策を講ずることとし、計画的な樹種   転換を推進するとともに、樹種転換が完了するまでの間、必要な伐倒駆除等の防除を   行うよう指導しているところです。   また、海岸林では、他の樹種では生育が困難な海岸の砂地でもマツがよく生育するこ   とから、古くより海岸後背地の保全を目的として植栽されてきたものであり、その点   も十分踏まえた上で、その有する機能を確保するため、的確な防除や樹種転換等を実   施するよう指導しているところです。   なお、海岸林は、一般の森林と比較して環境整備が著しく悪いことから、植栽樹種は   植栽地の環境条件を十分に検討して選定することが必要と考えています。 7.地方自治体に前項1.〜6.を積極的に指導してください。 【回答】   都道府県等における松くい虫防除については引き続き、農薬取締法等関係法令を遵守   するなど適切な防除を実施するよう指導して参ります。 8.国有林で実施されている薬剤防除自然環境等影響調査の、今年度分の調査結果の詳細   資料(地図等含む)全部の福岡県分をお示し下さい。 【回答】   福岡県内では、遠賀郡岡垣町の国有林において実施されており、現在、調査結果のと   りまとめが行われているところです。 9.貴省は薬剤飛散距離は最長200mになると言いますが、その根拠となるデータを示   してください。 【回答】   特別防除による薬剤の飛散する範囲については、散布地域の立地条件や気象条件等に   よって異なるものであることから一律に定めることは困難と考えています。しかしな   がら、目安というものが必要だということで、200m程度を考えておりますが、実際   に特別防除を実施する場合には、地域の実情などを勘案して個々の検討が必要と考え   ております。