http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=095090430&OBJCD=&GROUP= ****************************************************************************** コリンエステラーゼ阻害作用を有する農薬の安全性評価のあり方について(案)について ****************************************************************************** https://form.cao.go.jp/shokuhin/opinion-0117.html のフォームより投稿 09/04/23 氏名 反農薬東京グループ 職業 市民団体 住所 西東京市東伏見2−2−28−B 電話番号 042-463-3027 mtsuji@jcom.home.ne.jp  提案はコリンエステラーゼ阻害の判断基準ですが、有機リン剤の他の毒性評価について、 意見を述べますので、ご査収ください。 【意見1】 サリン事件の被害者の症状をきちんとフォローし、有機リン農薬の中毒の診 断と治療に役立てることが望まれる。 【理由】  有機リン中毒の診断基準では、コリンエステラーゼ活性の低下がみられることが必須条 件とみなされている。しかし、松本サリン事件の被害者の調査結果から、中毒者の中には、 サリン被曝により眼の異常等の症状が出ているにもかかわらず、コリンエステラーゼ活性 値の低下がないケースもあることが判明した。  松本市地域包括医療協議会による『松本市有毒ガス中毒調査報告書』(95年)による と、サリン被曝による症状の重い入院患者を除いて、外来受診者の自覚症状は多い順に並 べてみると、 『鼻水、目の前が暗い、息苦しさ、頭痛、喉の痛み、咳、眼痛、目がチカチカ、ものがぼ んやり、視野狭窄、くしゃみ、吐き気、鼻声、脱力感、涙、四肢のしびれ、ものが二重に 見える、嘔吐、口が思うように動かない、歩行困難、身体けいれん、他。』(同報告書1 20頁)とある。  また、視野異常や視力低下感や縮瞳等、有機リン中毒特有の異常が出ているけれども、 コリンエステラーゼ値の低下は認められなかった、あるいは差がなかったと報告している。  視野異常については、『視野異常について調査票に記載のあった症例83例』『この中 で血漿コリンエステラーゼ値が検査してあった76症例について統計的検討をした結果、 視野異常「あり群」で有意に血漿コリンエステラーゼ値が低下していた。しかし「あり 群」の18症例では血漿コリンエステラーゼ値の低下は認められず、5名の患者では血漿 コリンエステラーゼ値が正常の50%であったにもかかわらず、症状の訴えはなかった』 と報告している。  視力低下については、『視力低下について記載のあった症例247例』『この中で血漿 コリンエステラーゼ値が検査してあった209症例を対象に検討すると「あり群」で有意 に血漿コリンエステラーゼ値が低下していた。しかし「あり群」のうち82症例では血漿 コリンエステラーゼ値の低下は認められなかった』と記載されている。  縮瞳については、『「縮瞳顕著群」のChE%(正常下限値を100%とする値)は、平 均値は84.3%であったが、「縮瞳中程度群」「縮瞳軽度群」「正常域群」ではChE% は100%を超えていた。この四群間で縮瞳の程度と血漿コリンエステラーゼ値との相関 について検討したところ、「縮瞳軽度群」と「正常域群」では血漿コリンエステラーゼ値 に有意の差は認められなかったが、他の群間では有意差を認め、瞳孔径が4mm未満の症 例では、血漿コリンエステラーゼ値の低下の程度と瞳孔径の間に相関があった。』と報告 されている。  農薬中毒の診断をする際、自覚症状を訴えるのにコリンエステラーゼ値が低下していな いことを理由に有機リン中毒が否定されることも多く、このような判定基準は見直される べきである。また、有機リン中毒に後遺症はないとの主張もいわれがないことである。  死んだり入院するほどではないにしろ、有機リン系農薬の被曝により眼の異常や頭痛等 をくり返し起こしているうちに、体内の生理機能が正常に働かなくなり、アレルギーや化 学物質過敏症等に移行する恐れがあることも否定できない。 【意見2】有機リン中毒では、アセチルコリンエステラーゼ阻害だけでなく、脂肪酸アミ ド加水分解酵素(FAAH)やカルボキシルエステラーゼ、ブチリルコリンエステラーゼ などの阻害作用を中毒の判断基準にとりいれるべきである。 【参考文献】 石川哲らによる、平成15年度及び16年度「厚生労働科学研究費補助金事業の 「微量化学物質によるシックハウス症候群の病体解明、診断・治療対策に関する研究」報 告書 【意見3】慢性中毒だけでなく、頭痛や眼の痛み、かゆみ、下痢などの一過性の軽度の症 状も有機リン中毒とみなすべきである。 【理由】環境庁航空防除農薬環境影響評価検討会が公表したH9年12月の「航空防除農薬 に係る気中濃度評価値」では、4種の有機リン剤の評価値が設定されている。  この評価では、担保すべき健康の範囲として、『観察された影響の可逆性が明らかでな いか、あるいは生体の恒常性の保持の破綻、疾病への発展について明らかでない段階」を 健康状態からの偏りと位置づけた上で、このような偏りが見いだされない状態』を採用し ており、一過性の症状は中毒とみなされていなかった。 【意見4】農薬登録の際に必要なウサギを用いた眼刺激性試験の見直しが必要である。 【理由】(1)出雲市では、H20年5月26日、松枯れ対策のため実施された有機リン剤スミチ オンMC剤空中散布直後に健康被害が発生し、1200人を超える児童・生徒ほかが眼の痛 み・かゆみほかの症状を訴えた。  同市が設置した原因調査委員会の報告書  http://www.city.izumo.shimane.jp/www/contents/1222228281746/files/9-24.pdf  では、11人の委員のうち、空散が原因の可能性を否定できない(7人)/空散が原因 (2人)/原因を特定できない(2人))となっている。  これを踏まえ、出雲市は、今年から10年間、空中散布によらない松枯れ対策をとること になった。  平成20年9月18日の 第8回健康被害原因調査委員会では、結膜や角膜等の異常は、眼 底カメラで検査できないと、現行の眼刺激性試験のあり方が問題となった。  議事録 http://www.city.izumo.shimane.jp/www/contents/1217307259448/files/8.pdf (2)動物実験で、人が感ずる眼のかゆみや痛みなどをどう判定するか明確でない。 【意見5】有機リン剤の経気毒性のデータが不足している。吸入慢性毒性試験を実施し、 毒性評価すべきである。。 【理由】(1)毒性評価で腸管吸収と肺吸収の違いが明確でない。 (2)フェニトロチオンの亜急性吸入毒性試験データから、経気毒性は経口毒性の4分の1 の濃度で出現するとされている。 (3)フェニトロチオン以外については、データがない。 【意見6】個々の有機リン剤の毒性の評価だけでなく、同類の作用機構を有する有機リン 剤総体としての毒性評価を行うべきである。