2005年7月29日 厚生労働省大臣 尾辻 秀久 様 厚生労働省健康局結核感染症課 御中                                  特定非営利活動法人化学物質過敏症支援センー                  理事長 横田克巳                 サスティンナブル21                   代表 小沢裕子         連絡先 反農薬東京グループ     代表  辻 万千子                〒202-0021東京都西東京市東伏見2-2-28-B        電話/ファックス:0424-63-3027        E-mail:mtsujiアトマークjcom.home.ne.jp URL http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/     「ウエストナイル熱媒介蚊対策に関するガイドライン」に関する要望 --------       2005年7月29日 厚生労働省大臣 尾辻 秀久様 厚生労働省健康局結核感染症課 御中                                  特定非営利活動法人化学物質過敏症支援センー                  理事長 横田克巳                 サスティンナブル21                   代表 小沢裕子         連絡先 反農薬東京グループ      代表 辻 万千子                〒202-0021東京都西東京市東伏見2-2-28-B        電話/ファックス:0424-63-3027        E-mail:mtsuji@jcom.home.ne.jp URL http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/   私たちは、農薬をはじめとする化学物質による環境汚染・健康被害を出来るだけ減らそ うと運動している市民団体の反農薬東京グループ、サスティンナブル21、特定非営利活動 法人化学物質過敏症支援センターです。  去る7月22日、貴省は、「フェンチオンの鳥類に対する毒性調査の結果について」(健 感発第0722001号)で、鳥類に対する毒性の強い有機リン剤フェンチオン(MPP、商品名 バイテックス)をウエストナイル熱の媒介蚊対策に使用しないようとの通知をなさいました。  すでに、貴省は、2003年6月18日「厚生労働科学研究で取りまとめられたウエストナイ ル熱の媒介蚊対策に関する参考図書の配布について」(健感発第0618002号)の通知に、 「ウエストナイル熱媒介蚊対策に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という)を 添付して、地方自治体や関係団体に配布されています。  「ガイドライン」については、私たちは多くの賛同団体とともに殺虫剤散布を重視した貴 省と、その撤回を求め話し合いを持ちました。国会でも問題になり、結局、貴省は「ガイド ライン」から厚労省のクレジットを消し、『ウエストナイル熱の流行拡大が懸念される場合 であっても、安易な化学物質の空中散布等では十分な効果が期待できず、過剰な化学物質の 使用になることから以下に留意する必要がある』として、『(1)乳幼児等の家族を持つ住 民の不安や環境に十分配慮すること (2)感染症の蔓延防止の効果と化学物質のもたらす 健康危害や環境影響を十分に比較検討して対策を講じること』などのコメントをつけて、通 知を出された経緯があります(その詳細及びその後については【参考資料】をご覧下さい)。  その後、昨年6月より、貴省は、アメリカのCDCが作成した、一般向けのウエストナイ ル熱の啓蒙ビデオを翻訳し、「ウエストナイル熱対策啓発用CD−ROM」として、各方面 に配布されています。このCD−ROMは、幼虫対策を主とした水溜り除去や蚊に刺されな いための外出時の注意に重点がおかれた内容となっています。  ところで、7月14日には、東京都福祉保健局と産業労働局が、「東京都ウエストナイル 熱対応指針」を公表しています(下記HP参照)。 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kansen/news/westnileshishinn.pdf  その中には、  鳥類・蚊からのウイルス検出又は患者発生した場合の防除体制として、  ・保健所の指示に基づく蚊の駆除及び発生源対策の実施    発生地域中心に2km程度での薬剤による蚊成虫、幼虫の駆除    発生地域中心に10km程度での幼虫の発生源対策の実施     ※ 発生源対策では、昆虫成長制御剤(IGR)の散布が有効  と記されています。  また、蚊の駆除 の項には、   公園や道路側溝などの公共場所への散布が考えられるが、駆除薬剤の人体や環境への   影響や蚊の駆除効果などについて、関係機関と十分検討した上で、必要に応じて実施する。  なお、薬剤による蚊の駆除については、人体への影響や環境汚染問題を考慮し、手法等に  ついては、慎重な対応を行うこととする。  とあるものの   蚊の駆除は、ウエストナイルウイルスの早期発見と同じく最も重要な対策である。   蚊の駆除には、成虫対策と幼虫対策とがあるが、成虫対策は一時的な効果しかないこと   から、速やかに幼虫対策を実施する。   ○公共施設及び公共水域(河川等)は、保健所の助言を得て、原則、区市町村が実施す    る。   ○民間の施設についてはその管理者が、個人の住宅等についてはその所有者が、    保健所の助言を得て、蚊の駆除及び防除を行う。   ○身の回りに蚊が発生する恐れのある水たまり(庭先の人口容器等)の除去等に    ついて、都、保健所、区市町村は、ホームページ等で都民に協力を呼びかける。   [幼虫駆除のための薬剤]    有機リン系化合物を有効成分とする乳剤、粒剤、油剤、水和剤、発泡製剤が    ある。また、昆虫成長制御剤(IGR )の懸濁剤、粒剤、水和剤がある。   [成虫駆除のための薬剤]    有機リン系等の薬剤のULV (超微量散布)・煙霧等による処理  と、有機リン剤等の使用が推奨されており、相変わらず、貴省の「ガイドライン」の内容 が踏襲されています。  今回の通知にしても、タンチョウの死亡原因となったMPP剤の使用自粛が求められてい るだけで、2年前に反農薬東京グループが緊急要請した殺虫剤リストからのダイアジノン、 DDVPの削除は、残念ながら、実現していません。このままでは、万一、ウエストナイル ウイルスが検出された場合、広範な地域で、殺虫剤汚染による人の健康被害や野生生物への 影響が広がるのではないかと危惧いたします。  ウエストナイル熱の媒介蚊対策が薬剤散布一辺倒にならないよう以下の要望をいたします ので、8月15日までに、回答くださるようお願いします。    なお、大臣宛てには、同様の内容の要望書を郵送しています。          *************  要望  **************  ウエストナイル熱対策として、以下の要望を行います。 「厚生労働科学研究で取りまとめられたウエストナイル熱の媒介蚊対策に関する参考図書」 を撤回し、以下の趣旨を汲んで、あらたに厚労省の責任でウエストナイル熱媒介蚊対策を作 成し、貴省をはじめ関係省庁担当部署、地方自治体、関係諸団体に周知させることを求めま す。 【1】蚊対策について  1)平常時の蚊対策は発生源対策を主として、蚊が発生するような水たまりなどをなく    すことを徹底するよう指導を強化する。    蚊が発生しそうな水たまり(生活環境に放置されたタイヤ、ビン・缶、植木鉢の下の    水受け、廃容器、その他のゴミ、ところによっては墓地の花立てほか)を具体的にあ    げて注意を喚起する。  2)河川、排水路などに水がよどまないよう改良工事をしたり、密閉フタをつける。    また、「浸透性雨水ます」や「浸透性U字溝」に付け替えるなど、雨水の滞留が    ない構造に順次移行する。    これらの対策実施のため、自治体ごとに住民の意見を聞き、政策として、きちん    とした計画を立てるよう、指導を強化する。    3)幼虫(ボウフラ)対策として、防火用水、水槽、池、掘りわり、遊水池などには、     ボウフラを食べる魚や天敵昆虫を飼育する。  4)ボウフラの生息場所を確認したら、殺虫剤を使用しないで、水除去、捕捉、食用油    油膜などで退治する。   5)アメリカで主流になっているBTi菌に類する生物農薬の開発を行う。  6)平常時の有機リン剤の使用禁止を明確にし、殺虫剤使用にかわる手法の実施を推奨    する。    MPPについては、7月22日の貴省新通知を周知させることはもちろんだが、    すでに、東京都環境局は 「化学物質の子どもガイドライン(殺虫剤樹木散布編)    の策定について」で有機リン剤(DEP=トリクロホン、MEP=フェニトロチ    オン、イソキサチオン等)の毒性に注目し、その使用を減らすよう指導している。        東京都都生活文化局の調査で、DDVP=ジクロルボスを含有する蒸散型    殺虫剤の使用による空気汚染が明らかになり、貴省の薬事行政に一石が投    じられた。    建築物衛生法省令改正(2003年4月1日施行)で、ねずみ等の防除方法等見直しが実施    され、その後、2004年には、「医療機関におけるねずみ及び昆虫等の防除における安    全管理について」 (医政指発第1117001号)や「食品等事業者が実施すべき管理運営    基準に関する指針(ガイドライン)について」(食安監発第1015001号)等でも、従    来、定期的な薬剤散布が実施されていたものを、害虫の等の生息調査を事前に行なう    ことや、駆除法も薬剤のみに頼るものでないことを明示した通知がだされた。    最近の国立環境研究所等の研究では、東京都が規制に乗り出しているディーゼル車    排出微粒子中に含有される3−メチル−4−ニトロフェノールの有害性が指摘されて    おり、この物質は、MEPの代謝物でもある。  7)成虫対策として有機リン剤等の殺虫剤の散布にかわり、物理的方法に    よる実用的な蚊の捕集方法を開発・普及させる。    蚊の捕集網、誘引トラップ方式や農業現場でとりいれられている害虫吸引方式をと     るべきである。  8)緊急時における蚊駆除に際しては、有機リン剤等の殺虫剤使用を最小限にするよう、    きちんとした具体的なマニュアルを作成して、関係省庁、地方自治体、関係諸団    体に周知させる。     万一、殺虫剤を使用する場合も、最小限の区域にとどめ、住民への周知方法や薬剤     名、使用方法、注意事項、使用薬剤の毒性、殺虫剤散布による健康被害とその対策     の明記。などを細かく決める。  9)空港を利用する航空機については、搭乗口や出入口にエアカーテンを設置し、    蚊が侵入しないように対策をとる。  10)虫除け剤については、国民生活センターの下記資料「虫よけ剤−子供への使用につい    て−」を周知させる。 http://www.kokusen.go.jp/cgi-bin/byteserver.pl/pdf/n-20050603_1.pdf  11)住宅等における網戸の設置を推進する政策をとる。 【2】サーベイランスについて  1)蚊のサーベイランスは、自治体ごとに計画をたてて、実施するよう指導を強化    する。  2)カラス等の野鳥のサーベイランスを強化し、野鳥の繁殖防止のために、エサとなる    生ゴミの放置をやめるよう指導を強化する。  3)競馬馬のサーベイランスを強化する。  4)各自治体が実施している、サーベイランス結果は、毎週まとめて、貴省ホームページ    で、公表する。 【3】その他   1)患者が発生した場合に、住民がパニックに陥り、殺虫剤散布一辺倒にならないよう    現行「ガイドライン」の内容を改訂した厚生労働省指針をつくる。  2)各省庁、地方自治体だけでなく、アメリカ軍基地、各国大使館等からウエストナイ    ルウイルスの侵入がないよう連絡を密にする。  3)ウエストナイル熱ワクチンの開発をすすめる。 【参考資料】 【参考資料】  1)機関誌「てんとう虫情報」の記事より *アメリカ:学校での農薬使用規制と西ナイル脳炎   http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/kiji/t09606.htm *ニューヨーク:西ナイル脳炎対策のスミスリン散布と州法 http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/kiji/t11107.htm *厚生労働省の西ナイル熱対策ガイドラインに抗議〜蚊対策として 薬剤散布を奨励・空中散布まで検討  http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/kiji/t14101.htm *西ナイル熱媒介蚊対策ガイドラインに対するその後のアクション    http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs//kiji/t14203.htm *ウエストナイル熱対策の航空機での殺虫剤散布−当局の指示に従うと航空 会社回答    http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/kiji/t14303.htm *感染症予防法改定とウエストナイル熱−媒介蚊対策で殺虫剤散布命令も可能に    http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/kiji/t14701.htm *ウエストナイル熱、媒介蚊対策はどうなった    http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/kiji/t15600.htm#t15603  2)資料集「脱農薬Ж蚊対策のすすめ      〜厚労省の殺虫剤主体のウエストナイル熱対策批判〜 」  http://www5e.biglobe.ne.jp/~ladymine/kiji/wnvall.pdf