松枯れ・空中散布にもどる
n00302#2017年の農薬散布の無人航空機の事故件数は前年3件増の65件、うち、ドローン型2件#18-06

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       2018年度 松枯れ対策等の農薬空中散布予定
【参考サイト】農水省:無人航空機の安全対策の強化・徹底に関する通知にある
           平成 30 年度の無人航空機利用における安全対策の徹底について(30消安第1553号)
       国土交通省:無人航空機の飛行ルールの頁にある2017年度事故一覧

 農水省植物防疫課は、6月15日に、2017年度の無人航空機による事故概要を公表しました。17年も前年と同じく、死亡・人身事故はありませんでしたが、総件数は3件増え、65件を数えました。同課の示した2017年に発生事故の一覧には、発生年月日と大まかな事故状況、被害状況、事故原因が開示されているだけで、私たちが開示要求している発生場所などは、明らかになっていません。

   表  2017年の無人航空機事故状況(農水省公表資料。事故概要一覧)

★無人航空機による農薬空中散布事故〜総機体数の1割が事故機
  2011年から17年の事故件数の推移を図1に示しました。7年間で333件、ここ数年、増加していることが明らかです。無人ヘリコプターの機体数は約3000機ですから、その約1割が事故を起こしていることになります。

 2017年には、発生月は8月が一番多く46、ついで7月14、4月と9月が2件、5月が1件で、水稲防除での事故が59件、麦3件、大豆防除が3件でした。マルチローターの小型機で墜落事故が2件ありましたが、農水省の報告では、発生年月は不明です。国土交通省に報告されている同時期の無人航空機事故は34件あり、そのうち、農薬散布は、無人ヘリコプター(4月20日、三重県松阪市で、隣接家屋に接触・墜落し、屋根及び窓ガラス等を破損)とマルチローター(6月23日、福島県喜多方市)の2件でしたが、後者は、水で散布訓練中であったためか、農水省の報告にはありません。

 図には、事故の被害状況を色分けして示しましたが、人身事故は2012-14年に各1件(2013年にオペレーターの死亡事故あり)、毎年物損事故、中でも架線被害が一番多く発生しています。2016年に6件あった農薬飛散による住民らの被害の報告なく、17年は、走行中の自動車にかかった1件でした。

★事故原因
 事故原因について、農水省は下記の6項目に分類しています。2011年以後の7年間の原因別件数(重複する原因を含む)の推移は、表2のようです。
  @事前の確認不足による障害物の見落とし
  Aオペレーターとナビゲーターの連携不足
  Bオペレーターの操作ミス、目測誤り
  C飛行の高度、方向等が不適切
  Dその他(通信機器の故障等)

      表2 原因別事故件数の推移
 年度  @障害物見落し  A連携不足 B操作ミス C高度・方向不適 Dその他
2011      21              27          19           22               7 
2012      12              21           9           20              10
2013      17              25          21           21               7
2014      17              25          23           33              15
2015      27              36          31           26               7
2016      23              42          39           20               7
2017      28              31          16           18               5
7年間の延べ総数は728件で、図2に、原因別の比率を示しました。
 Aオペレーターとナビゲーターの連携不足が28%と一番多く207件で、ついで、C、B、@が22〜20%ありました。無人航空機の技術指導指針では、ナビゲーター=補助員は必ず必要ですが、記事n00303のように、自動操縦やマルチローター型で、補助員をなくそうという動きがでてきおり、これが、危険物を輸送し投下する農薬散布に適用されると、事故の一層の増加懸念されます。

★毎年の通知では、事故減少につながらない
 農水省は本年度の植防課長の通知では、架線接触事故が、散布中の圃場内の旋回だけでなく、圃場間の移動の際にも多く発生していることにも、注意を払うべきでとして、事故防止ポイントを
   T 架線等への接触の防止
   U 農薬飛散の防止
   V 小型の無人航空機を用いた空中散布に係る安全対策について
   W 農薬の空中散布による蜜蜂被害を防止するための情報の提供
   X 事故報告について
 にわけて、留意点を挙げていますが、例年通りの内容です。

 私たちが求めている住宅地周辺での空中散布禁止、緩衝地帯の設置は、一向に実現しないどころか、事故機体や事故を起こしたオペレーターへのペナルティー規則もなく、 散布計画の周辺への周知も努力規定があるだけという有様では、事故件数の減少につながりません。早急に、無人航空機の機体認可やオペレーター認定、空中散布業者の取締などを含めて、農薬取締法の網をかぶせるべきです。


作成:2018-06-30