松枯れ・空中散布にもどる
n00303#国交省「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」改定へ〜農薬散布は目視外飛行・補助員無しにしてはならない#18-06
【関連記事】記事31801記事t31802記事n00102記事n00302
【参考サイト】国土交通省;無人航空機の飛行ルールの頁
             「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」(以下、審査要領という)
             「審査要領」の改正に関するパブリックコメントの募集について(5月28日〜6月26日)と改定案
        反農薬東京グループ:パブコメ意見

 農水省は。無人航空機による空中散布の拡大を画策、適用農薬に散布とあれば、無人航空機での空中散布に使用可能とし(記事t31801)、さらに、「空中散布における無人航空機利用技術指導指針」(以下、指導指針という)を改訂して、自動操縦による空中散布の指針を追加しました(記事n00102)。
 一方、航空法を所管する国土交通省は2015年11月に「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」を制定し、無人ヘリやドローンの飛行には、国交大臣による許可・承認を義務付けましたが、昨年12月と今年の1月に、申請手続きの簡素化や事故防止対策のための運航の要件の追加を実施しました(記事t31802)。さらに、6月26日に締切られたパブコメ意見募集では、離島や山間部への荷物配送を想定した自動操縦による目視外飛行での補助者による監視を不要とする要件を提案しました。

★農薬散布には目視飛行・補助員配置が゙必要
 提案中の(2)現行の補助者の役割 と(3)目視外補助者無し飛行の要件 では、 当然のことながら、(2)役割として、@第三者の立入管理 A有人機等の監視 B自機の監視 C自機の周辺の気象状況の監視 が挙げられています。また、(3)については、補助者の役割を機体、地上設備等で代替することが必要としながらも、現在の技術レベルでは補助者の役割を完全に担うことが困難だとされています。
 農薬散布は、まさに、この困難なケースにあたります。
 すなはち、水田、畑地など農耕地、森林、ゴルフ場などで、散布地内や周辺に突然ヒトがはいって来たことをすぐに認知し、散布をやめても、気象条件や地形により散布域外に飛散した農薬の被曝を、あらかじめ組み込んだプログラムで、防げるような技術はありません。
 補助員の配置と目視飛行とセットにした審査要領が不可欠です。

 農薬の場合、無人航空機による撮影や一般の物品輸送とは異なり、航空法第132条の2 にある 『爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与えるものを輸送し、地上又は水上の人又は物件に危害を与え、又は損傷を及ぼすものの投下』に該当します。さらに、農薬取締法、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令による法規制があり、農水省局長通知「指導指針」、農水省・環境省局長通知「住宅地等における農薬使用について」(以下、住宅地通知という)で指導されています。
 わたしたちは、このことを踏まえ以下の【意見】を述べました(主な理由も掲載しておきます)。
              *** パブコメ意見  ***
【意見1】無人航空機による農薬散布は、目視飛行でなければ実施できない。今回の要領改定は、
     目視外飛行に適用される要件の緩和であるが、農薬による危被害防止には、目視飛行と
     補助員=ナビゲーターの配置は不可欠である。
     一方、無人航空機業界では、マルチローター型の小型機の普及が図られ、その際、
     自動操縦型による農薬散布について、補助員がいなくても使用可能とすることが求められている。
     改定案で「目視外補助者無し飛行の要件」に記載されている内容は、目視飛行をする農薬散布にも
          必要な事項である。
     無人航空機による農薬散布においては、「目視か目視外かにかかわらず、補助員あり」であることを
     要領に明記すべきである。

  [理由1]農薬は、一般の物品と異なり、ヒトの健康や生態系に影響を与える化学物質であり、
     散布後も液滴状、粒子状又は気化した農薬成分が、域外に飛散するため、危被害防止には、
     飛行経路直下だけでなく、広範な散布周辺地での立入規制、障害物の確認、ドリフト規制、
     などが必要で、非散布地域を標識で区分するだけでなく、補助員の存在が不可欠である。

  [理由2]農水省の指導指針に『ナビゲーターを機体毎に1名以上配置するとともに、
      必要に応じて作業補助者を配置すること。また、オペレーター、ナビゲーター及び
     作業補助者は互いに連携し、一層の周囲の安全確保に努めること。』と指導されている。

  [理由3]農林水産航空協会の検討会による「マルチローター式小型無人機による農薬散布の
      暫定運行基準」にも。ナビゲーターとの連携として、
      『・ ナビゲーターを必ず設置する。
       ・ オペレーターとナビゲーターは、実施主体と協力して現地確認を実施する。
       ・マルチローターは小型かつ低空を飛行するので、オペレーターとナビゲーターの連携を
        特に密にし、安全飛行の徹底を図る。』となっている。

  [理由4]内閣府が公表している「規制改革推進に関する第3次答申」(規制改革推進会議 2018年6月)には、
     農林分野での規制改革の推進の項目に、小型無人航空機の農業分野における利活用の
     拡大についてとして、
      『農薬散布でドローンを使用する場合には、人の立入りが想定されない耕作地において、
       散布する農薬が拡散しないよう地上2メートル程度を低空飛行させながら、作業を行うことが
       一般的である。このようなケースにおいて、補助者を配置することによって初めて
       回避できるリスクは、「危険物の輸送」、「物件投下」に該当する様々なケースの中でも、
       かなり小さいものであると推察される。』
   とあり、人の立入りが想定されない耕作地では、ドローン型無人航空機による農薬散布に補助者は
   不要であるかのような方針が示されているが、これは、真逆であり、当該個所の多くは、小規模な
   耕地であり、短時間で広範囲に。農薬散布ができる無人航空機を利用するメリットはない。また、
      『オペレーターと補助者の役割等を再検証し、それを踏まえて、補助者の配置等の各種規制が
       リスクの回避に寄与する程度を速やかに分析評価した上で、その結果に基づき、
       農業分野における利用時の補助者配置義務、目視外飛行時の基準、最大離陸重量 25kg
       以上の機体に要求される機能・性能基準を含めた各種規制の妥当性や代替手段を、
       規制の緩和等による安全リスクとその効果との比較衡量の観点も含めて検討し、
       結論を得次第、速やかに、必要な措置を講ずる。』
   とし、自動操縦散布を想定した目視外飛行による散布も提案されているが、その技術は
   いまだ未熟で、散布地やその周辺にある孤立した障害物の認識、刻々変化する気象条件への
   対応など、解決すべき課題は多い。

【意見2】いままでのパブコメ意見(下記参照)で、無人航空機の事故報告の届出の義務付け、
     事故機や事故を起こした実施団体、防除業者、オペレーターにペナルティーを科し、
     申請認可しないよう求めたが実現していない。機体やオペレーターの認定業務も含め、
     事故管理に関する法規制の制定を再検討されたい。
  [理由] 省略

作成:2018-06-30