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n00704#シックハウス検討会の規制値変更案〜パブコメは可塑剤ら既存3物質を対象#18-10
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【参考サイト】厚労省シックハウス問題に関する検討会21回検討会資料(2017/04/19)と議事録22回検討会資料(2018/08/23)と議事録
       パブコメ意見募集:室内空気中化学物質の指針値案について(2017/6/05〜7/04)。今回の募集(2018/09/11〜10/10)

 室内空気を汚染する化学物質の指針値を設定する厚労省のシックハウス問題に関する検討会は、昨年第21回の開催後、7物質の指針値案についてのパブコメ意見の募集を行いましたが、是を踏まえて、今夏、開催された第22回の後には、新たな見直しの指針値案がだされ、再度、パブコメ意見募集が行われました。

★昨年提案の7物質中、3物質の指針値を再提案
 昨年の見直し案では、既存4物質と新規3物質の指針値案でしたが、今回の案では、既存3物質(キシレン、フタル酸ジ-n-ブチル=DBP、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル=DEHP)の指針値がそのまま再提案されました。
 提案内容は、下記のようで,いずれも、昨年の提案値のままです。<
 物質名   現行指針値     ⇒ 改定案 
 キシレン  870 μg/m3(0.20 ppm) 200μg/m3(0.05 ppm)
 DBP  220 μg/m3(0.02 ppm) 17μg/m3(1.5 ppb)
 DEHP  120 μg/m3(7.6 ppb) 100μg/m3(6.3 ppb)

 昨年、エチルベンゼンは、現行指針値3800μg/m3(0.88 ppm)を58 μg/m3(0.01 ppm)に変更する案がだされましたが、これは、動物実験でのLOAEL(最小毒性量)を参考にしていたためです。海外では、78μg/m3との意見があり、再評価することになり、決定には到りませんでした。
 また、昨年提案された新規3物質(2-エチル-1-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート及び 2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートに)の指針値については、検討会内での意見がまとまらず、ヒトに対する影響評価の検証が十分であるか疑義がある/海外の状況等を考慮してほしい/代替物質がない/現実的に室内空気中濃度を管理できないなどの理由で、再検討されることになりました。この中で、2-エチル-1-ヘキサノールは、DEHPが使用後時間がたってから、加水分解して、汚染することも問題となりました。
 検討会事務局は、『見直しの物質については、当然、(指針値設定を)もうやめましょうということではなく、引き続き検討するものとして誤解がないような形で説明させていただきたいと思っています。』としました。こんなありさまで、指針値をきめても、現実に汚染があり、その化学物質で苦しんでいる人を救うことになるのでしょうか。

 わたしたちは、数値一辺倒の検討会の指針値規制を批判し、以下のようなパブコメ意見を提出しました(全文は>こちら)。
    *** 反農薬東京グループのパブコメ意見より ***

 【意見2】わたしたちは、前回パブコメで、各物質の規制値の設定にあたり、
  (1)大気等からの摂取を食品安全委員会評価並のADI=TDIの10%以下にすべきである。
  (2)人の個体差に関する不確実係数は、人種、年齢などを考慮し、一律に10を採用することは、
   改めるべきである。
   化学物質に過敏な人への影響、さらには、環境ホルモン作用のように、被曝時期によっては、
   微量でも不可逆的な影響をあたえる化学物質についての評価は、不確実係数10では、
   個体差の評価に十分ではない。
  (3)単一化学物質だけでなく、その代謝物(熱分解、化学分解、光分解、微生物分解など)を含め、
   化学構造や作用が類似している物質を、まとめた規制が必要である。
  などの意見を述べたが、この点について、検討会から明確な回答がない。
  [理由]、事務局のまとめでは、「特に指針値改正案に大きく影響する意見はなかった」としか
   記載されていない。


 【意見3】DBPやDEHPなどの可塑剤については、更なる評価を行いもっと低値にすべきである。
  [理由]1、上述【意見2】に述べた評価をすべきである。
   2、環境省は、毎年「日本人における化学物質のばく露量について」のパンフレットを
    発行しているが、可塑剤類に由来するフタル酸モノエステル類(MBP、MEHP、MEHHP、MEOHP)が
    ヒトの尿中に検出されている。
   3、国立環境研究所の高木麻衣さんほかは、、第27 回環境化学討論会(沖縄;2018 年)でも
    「24 時間尿中の代謝物分析に基づくフタル酸エステル類の曝露評価」の報告を行っている。
   4.食品安全委員会第24回 器具・容器包装専門調査会資料(2013年9月19日)
     「DBPの摂取量について」には、以下の記載がある。
    ○環境媒体からの積算による試算:20.5〜44.5μg/人/日(0.889〜0.410 μg/kg 体重/日)
    ・体重 50kg の成人が 1 日 2 kg の食品、2 L の飲料水、20 m3の空気、50mg の
     ハウスダストを摂取すると仮定。また、空気からの吸入暴露を経口摂取と同等とみなした。
    ※DBP 摂取割合:食品 54.6〜85.3%、空気 10.6〜39.1%、ハウスダスト 1.6〜5.0%、
     飲料水 1.8〜3.9%(表の数値の各種組み合わせについて計算)
    ○MBP 尿中濃度からの推定 DBP 摂取量:61.0〜75.0μg/人/日(1.22〜1.50μg/kg 体重/日)

   5、上述のように、50kg体重の成人の場合、一日20m3の空気を吸うと仮定すれば、改定後の
    DBPの規制値17μg/m3では、大気だけで、一日摂取量は0.0068mg/体重/日となり、
    食品安全委員会が設定したTDI0.005 mg/kg 体重/日を超えてしまい、食品摂取安全の
    目安であるADIの80%以下をクリアできない。又、ハウスダストからの摂取が
    考慮されていない。体重のわりに呼吸量が多い子どもの場合は、さらに危険である。

   6.国立医薬品食品衛生研究所安全情報部による資料
    「NTPヒト生殖リスク評価センター(NTP-CERHR):フタル酸ジ-n-ブチルのヒト生殖発生影響に関する
     NTP-CERHRモノグラフでは、『DBP はヒトの生殖あるいは発生に影響を及ぼす可能性があるか?
     回答:おそらく。』となっている。
 
   7,DEHPとともに、分解して発生する2エチルヘサノールの室内汚染のヒトへの影響も同時に
    評価すべきである。


 【意見4】わたしたちが、いままでに、喫緊の対策をもとめて要望し、かつ2017年7月のパブコメ意見で
  とりあげたその他の身の回りの化学物質による室内汚染への対策が遅遅として進まない。早急な対応をのぞむ。

  [理由]1、2012年に。環境省が実施した「今後の揮発性有機化合物(VOC)排出抑制対策の在り方について」
   へのパブコメ意見で指摘した、
   (1)フタレート系・アジペート系可塑剤、(2)リン系可塑剤・難燃剤、(3)ピレスロイド系殺虫剤、
   (4)ネオニコチノイド系殺虫剤、(5)身の回りのポリウレタン樹脂製品に含まれるイソシアネート化合物、
   (6)香料をはじめとするPPCP(ファーマシューティカル・アンド・パーソナルケア・プロダク
    =医薬品や個人用ケア製品)らの殆どの規制はまだ、実現していない。
 
  2、貴検討会に対しては2013年2月に、シロアリ防除剤・木材保存剤、畳などの防ダニ剤、
   家庭用衛生害虫殺虫剤、不快害虫用殺虫剤、衣料防虫剤、トイレ用品など農薬類似製品や
   洗剤・柔軟剤、芳香・消臭剤、および、さまざまな家庭用品に含まれる香料類について、
   年間出荷量の調査を求めるとともに(厚労省への要望)、接着剤や塗料業界の意見だけでなく、
   健康被害者や治療にあたる医療関係者からのヒアリングを求めたが、実現には程遠い。

  3.ネオニコチノイドについては、すでに、ヒトの尿中にその代謝物を含め、ネオニコチノイド類が
   検出されているが、第27回環境化学討論会(沖縄;2018 年)でも、北海道大学の池中良徳さんほかが、
   「ネオニコチノイド系殺虫剤のヒト健康影響評価問題点の整理と今後の研究課題」を報告している。

  4、リン酸エステル系難燃剤については、第27回環境化学討論会(沖縄;2018 年)では、摂南大の
   中尾晃幸さんほかが、「ヒト母乳中に検出されたリン酸エステル系難燃剤とその汚染源の解明」を報告している。

  5、イソシアネートについては、厚生労働科学研究費補助金による「家庭用品から放散される
   揮発性有機化合物/準揮発性有機化合物の健康リスク評価モデルの確立に関する研究」が実施されており、
   国立医薬品食品衛生研究所の田原麻衣子さんほかが、
   「家庭用品から放散される揮発性有機物」(同研究所報告、2017)、
   「ウレタン製品から放散されるイソシアネート類の分析」(室内環境学会学術大会、2016)で。
   身近で使用されるポリウレタン製品から、室内にイソシアナート類が放出されることを報告している。
   さらに、第27 回環境化学討論会(沖縄;2018 年)では、化学物質による大気汚染から
   健康を守る会の冨田重行さんほかは、「直読分析器によるイソシアネート環境汚染の観察」を報告している。
   イソシアナート類を用いるポリウレタン製品だけでなく、ポリウレタン系マイクロカプセル
   (未反応モノマー、オリゴマーが含まれ、分解生成したイソシアナート類が放出される)を
   用いた製品にも留意すべきである。

【意見5】香料による健康被害を防止するようその使用規制の強化を検討されたい。
  特に、周辺への影響を規制できない柔軟剤などへの添加はやめるべきである。
 [理由]1、わたしたちは、2017年8月24日、日本消費者連盟ほかの団体とともに、
   「香害をもたらす製品の規制を求める要望書」を消費者庁、国民生活センターに
   送付している。
  2、学校や職場ほかに。香料が衣料などに付着して、持ち込まれ、健康被害をあたえていることも、
   無視できない。

【意見6】建材や身の回りで使用する家庭用品の素材に含まれる化学物質が、日常的な室内汚染につながり、
  ヒトの健康へ影響を及ぼす恐れがあることはいうまでもなく、その有害性を評価するのは当然である。
  しかし、現状では、当該物質と健康被害の因果関係が科学的に厳密に証明されないかぎり、
  使用禁止にはつながらない。さらに、疫学調査も実施されないまま、動物実験結果を理由に、
  ヒトへの影響はみられないとされている。
  動物試験結果から得られる生体への影響評価にはヒトの場合と種差がある上、化学物質に
  対する感受性には、個人差があることを考えれば、被害を与えないことを科学的証明を
  第一義的に行うのはメーカーである。
   上市しようとするか、すでに上市しているメーカーには、消費者を対象として、
  上市の可否についてのアンケート調査を実施させ、数%から10%以上が健康影響の恐れあり
  とした場合に、製造販売を行わず、より詳細なヒトに対する疫学調査をすべきである。
  さらに、当該化学物質を使用しなくても、生活ができるような製品は、メーカーがより多く
  売ることを目的にした製品は駆逐すべきである、
 [理由]1、いままでの、パブコメには「他に代替品がない」とか「技術上、低減させることは
   困難である」などの理由で、規制値以下なら問題ないとして、製品の製造販売を継続することを
   求める意見がみられる。
   また、製品中に未反応の化学物資が、さらに、経時変化によりあらたな分解物が生成することが
   避けられないにもかかわらず、それらの化学分析が実施されていないものが多い。
   被害を受ける消費者の立場を優先し、そのような物質は製造販売すべきでない。

作成:2018-10-29