農薬空中散布・松枯れ

n00801#ドローンの農薬空散には、農水省「技術指導指針」を適用しない〜内閣府が省令改定を止めた#18-11
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 1年前の12月25日、農水省は、通知「農薬の使用方法における「無人航空機」の取扱いについて」(29消安第4974号)を発出し、『「農薬の登録申請において提出が必要な試験成績について(「無人ヘリコプターによる散布」関係)」(平成27年11月27日付け27消安第4481号消費・安全局農産安全管理課長通知)は廃止することとする。』としました。
 長年行われてきた散布の定義を根本的にかえるといった禁じ手です。すなはち、この通知で、通常の地上散布の要件を満たすなら、どんな登録農薬でも使用方法に散布とさえあれば、無人航空機による空中散布ができることになりました(記事t31801参照)。これによって、野菜・果樹や除草剤の空中散布の可能性が一挙にふえました。
 さらに、今度は、内閣府が、いままで、まがりなりにも、農薬空中散布を取締ってきた農水省とその所管である一般社団法人「農林水産航空協会」が主導している「空中散布における無人航空機利用技術指導指針」(以下、指導指針という)をドローン型には適用しないという、新たな禁じ手をうってきたのです。

★ドローン型の活用検討会での動き
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 無人航空機による農薬空中散布面積が100万ha前後で頭打ちの中、ドローンによる空中散布を拡大するため、動き出したのが、「農業分野における小型無人航空機の利活用拡大に向けた検討会」です。日本の人口減少、1人当たり米消費量減少の中、農産物の海外輸出強化をめざす「農業競争力強化支援法」を梃子にした改定農薬取締法の12月1日の施行と時を同じくして、目視飛行・補助員ありの無人航空機の農薬空散原則がにわかにあやしくなってきました。
 すでに、この動きの前兆を記事n00501で報告し、それ以前にも、無人航空機事故防止強化のため、目視飛行・補助員ありを維持するように、国交省のパブコメ「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」に意見をのべてきました(記事n00303)が。それが無になろうとういのです。

【第二回検討会での議論〜多くの問題点がだされた】
 検討会には、無人ヘリ利用関係者やドローンメーカーらが、参加しており、いわば、仲間内での論議で、以下がデーマになっていました。
  (1)農業分野における利用時の「補助者配置義務」について(目視内飛行)
  (2)農業分野における利用時の「目視外飛行」の基準について
  (3)最大離陸重量 25 kg 以上の機体にかかる追加基準について
 検討会には、農薬被害者や環境保護団体は出席していないため、ドローンの墜落・物損、人の接触被害にしか眼がいかず、農薬ドリフトによる非対象物や環境汚染、住民の被害防止についての議論は深まりません。いわば、ドローン推進派と無人ヘリ派による勝手な発言集ですが、本音もでているので、ここでは、(1)と(2)項について、気になった個所を抜粋しておきます。
(1)の「補助者配置義務」について(目視内飛行)
  ・200m 以上先でも人の存在を視認できる。例えば、車のクラクションのようなものを
  ドローンに付け、人を見つけた際に注意喚起するなどすれば補助者は不要と考える。
 ・補助者は、何か侵入があった場合には車ではなくて散布作業を止める必要がある。
  自動飛行の精度は GPS に依存するため、受信の不具合等、何かあったときに必ずし
  も精度は担保されない。さらに、モーター等に不具合が起き、機体をコントロール
  できない状況に陥った場合に、どうカバーするのか議論をすべきだと思う。
、・状況に応じた対応がとれれば、プログラムによって人がいないところだけを飛行と
  いう手段のみを考える必要はない。
 ・センサーで自動的に人を避けるといった技術の利用を議論するよりも、高度が低い、
  他のヘリや人が立ち入らないといった前提で議論した方が農業分野での利用場所の
  特性に沿った議論ができるのではないか。
 ・突風が吹いたときなど、オペレーターが即座に対応し、隣のほ場への飛散を防いで
  いるのが実態。何十m先の風が関知できるセンサーがあれば別だが、自動飛行で突風を
  感知できるような時代がやってくるのか疑問。
 ・従来農薬散布において安全対策はしっかり行われてきたが、全く農業に関わりのない
  周辺住民が、ほ場の上をドローンだけが飛んでいるのを見て受け入れられるのかどうか疑問
 ・日中にドローンに興味を持った子どもが近づいてくる可能性もあるため、こういった
  場合は補助者はいた方がよいと思う
 ・無人航空機の信頼性、安全性はまだ担保されているとは言えないのが現状であり、
  事故は起こり得るという前提で、墜落や暴走したときに被害がないようコントロールする
  ことができるかどうかを議論すべき。
 ・また、人の死傷リスク以外にも、農薬を誤って散布したりまき散らしてしまうリスクには
  どのようなものがあって、どの程度の重大性があるのかといったことも検討しなければならない。
 ・まずは物件や人に衝突するリスクについて議論すべき。

(2)の「目視外飛行」の基準について
 ・農業場面では省力化が必要とされており、ドローンのような技術は魅力的だが、
  農薬散布に関する住民の抵抗感は大きく、安易な技術導入には懸念がある。
  便利さだけにとらわれるべきではない。不測の事故は起こる前提で、これに備えた体制を
  構築しなければならない。
  また、無人飛行時に、その場で苦情等の対応をする者がいなくてもよいのか検討が必要。
  散布前に周知することになっているが、どこまで周知をすれば責任を全うしたことになるのか
  判断が難しい
 ・適切に散布計画が周知されるか懸念。これがしっかりなされないと、住民の不安につながる可能性がある。
 ・現場は非常に期待している。ほ場に人が入ることはまずあり得ないが、ドリフトはあり得る。
  ただ、使う側に問題がある場合が多い。使用者への教育、機械性能の向上等は、トラクター
  で散布するのと同様、対応していくことが必要。
 ・ドローンによる農薬の空中散布を個人で行うのは未だ難しく、実現するには技術革新が必要。
  現在は、補助者が離れた場所の風の強さを感知し、その情報を受けたオペレーターが
  風による農薬の飛散を考慮して飛行位置を調整して散布を実施している。
  自動操縦ドローンの場合には、数十メートル先の風を感知して農薬が飛散しないよう調整して
  飛行することか可能なのか。
 ・自動操縦ドローンでの風速の感知は可能。突風が吹いた場合に、散布を停止する機能は既に
  実装している。また、農薬吐出の流量計をつけて、飛行速度に合わせた流量管理も可能。
 ・夜間にLEDを点灯させてある程度視認できる状態で散布したいというニーズもある。
  この点についても目視外飛行とともに夜間飛行についてもあり方を検討して欲しい。

【第三回検討会で、額縁状の緩衝帯の設置提案】
 補助員なしで空中散布する場合は、上に赤字でしめしたように、周辺に注意を喚起するため、警笛を鳴らしながら、散布している情景がうかんできます。たとえ、飛行プログラムでオペレーターによる操作ミスが回避できるとしても、墜落を含む飛行中のトラブルはつきものです。  わたしたちは、本年3月の農水省への無人航空機による農薬空中散布に関する緊急要望で、被害がでない墜落用地の確保を求めていましたが、その具体的答えが、第三回の検討会で出てきました。圃場周辺に緩衝区域を設置するとの提案です

【補助員なしのドローン型散布の要件】
 内閣府資料によると、『飛行区域(農薬散布区域+反転飛行区域)の外側に人や車両の立入管理のための「緩衝区域※」を設定する。※『緩衝区域は、接近する際の注意等を求めるもので、必ずしも立入りを禁止するものではない』『農地等の外側でも可』などとされており、ドローンの墜落やヒトとの衝突による被害防止対策の観点から考慮されたのは、散布高度5m以下の場合、緩衝帯幅は圃場周辺約4〜11m程度にするということです。
 検討会が提示した図は下記のようです。


 現在の農水省の指導指針では、『機体とオペレーターの距離は、−中略−、水平距離で150mを超えない範囲で機体の位置と向きが把握できる距離とすること。』とされ、図中、濃い青色矩形で示されて範囲です。それを、ドローンでは、薄い青色矩形の数百メードル範囲に拡大するわけですが、その際、赤色の緩衝域を設定するのが、補助員なしの要件とのことです。この幅は、機体が墜落しても、そこにいるヒトにぶづからないための安全距離にすぎず、機種や飛行条件による違いを考慮すると、制御を失ってから落下するまでの距離は4.42mから11.54mになるそうです。
 今回の案では、この額縁状緩衝地域を設置し、散布注意の看板を配置すれば、広い圃場でも、補助員なしで散布できることになりますが、道路も含め10m幅の緩衝地域となる圃場は、地上散布することになりますね。

【目視外飛行の要件】
 目視外飛行では、ドローンに搭載したさまざまな感知装置で周辺の状況を観察しながら農薬を散布することになり、対象となるのは大規模圃場や一部が林などの陰になって見えない個所での散布が想定されています。
 航空法での承認・許可が得られることが要件であり、プログラムによる自動操縦をすれば、山林のように目視できない個所や夜間にも散布は可能になるとしています。
 農薬のドリフトの目視は全く考慮されていないことはいうまでもありませんから、夏の夜には、地上散布より10-100倍高い濃度で散布された農薬が、風に乗って、漂ってくる恐れもあります。
 しかし、いくら注意していても、事故はおこります。愛知県西尾市で、農薬散布の無人ヘリコプターが、走行中の自動車に接触・墜落したのは、今年の9月のことです。
  本件事故について、国土交通省の報告にあり、農水省植物防疫課に問い合わせたが、
  回答では、事故報告は、事故原因を分析し実施主体に再発防止を指導するためで、
  国に報告を求めているが、個々の詳細情報を公表していない。個人情報保護の観点
  からも、その内容を伝えることは困難。

 わたしたちは、住宅地通知の遵守を念頭におき、あくまで、散布農薬のドリフトによる散布地周辺の住民の健康被害防止を第一に考えます。散布禁止する緩衝地帯の設定をを求めていますが、これは、墜落による被害防止対策しか念頭にない検討会委員の発想とは全く違います。
 航空法では、障害物との距離が30mを超えないと無人航空機は飛行できないため、空中散布でなくても、申請・許可・承認が義務づけられているのです。農薬散布の場合は、危険物の輸送と投下ですから、補助員が必要なのです。。
 長野県のように、松くい虫防除の無人ヘリ空中散布では、家屋等人の生活圏から30m以上離すとし、水田等の散布の場合、住宅地等からの距離については、「安全対策マニュアル」に記載のオペレーターや作業者等からの距離(20m以上)を基本にする。となっているところもあります。さらに、千葉県印西市では、散布除外地域をHP上で知らせるだけでなく、空散除外を求めたヒトには、連絡もされます(印西市の無人ヘリ水稲空散実施情報)。

★内閣府が、農水の省令改定に待ったをかけた
 いままで、無人航空機事業を推進してきたのは、農水省所管の農林水産航空協会で、 設立当初は、人が操縦する航空機=有人ヘリコプターによる事業を担ってきましたが、その後、有人の補完としての無人ヘリコプター事業に軸足を移し、機体の認定・保守点検、オペレーターの研修・認定を行うようになりました。
 一方、無人航空機の新参者であるドローン型による農薬空散は、当初、小回りがきき、小規模の水田や圃場での散布が出来、価格も数十万円と個人所有が可能であることが宣伝されていました。散布高度も低く、無人ヘリのように長時間散布もできないため、どちらかというと、地上散布を補完するという位置づけとみなされます。
 しかし、いまやドローン型は、GPSを搭載し、ピンポイン散布も可能な自動操縦機種や大規模面積の散布できる機種の開発も行われ、価格も一機数百万円となってきました。個人所有で、年に数回の農薬散布だけでなく、除草剤で草の繁茂を防ぎ、種子を播いたり、写真をとって、圃場での生育状況や病害虫の発生状況を調べるなど多用せねば、メリットはでません。
 農業技術革新として、高機能のドローン型を農業に参入させようとしているのが、内閣府規制改革改革推進会議です。
 新農取法に伴う農水省の遵守省令の改定で、航空機散布に関する条文に。無人航空機を含める案が提示されながら、当該条文がそのままにされたのは、内閣府とドローン業界の画策の結果でしょうか(記事n00805参照)。

★ドローン利用を阻むのは、農水省の指導指針だと
 内閣府は11月開催の2回の規制改革改革推進会議で、はっきりとドローン利用を妨げるのは、目視飛行と補助員配置を義務づけている農水省の指導指針だと名指しで、主張しました。
 それは、農業用ドローンの普及拡大に向けた意見規制改革推進に関する第4次答申で明白です。
 ここでは、第4次答申にある<(2)ドローンの活用を阻む規制の見直し>の部分の概要を紹介します。

 答申では、ドローンの活用を阻む規制の見直し、農薬空中散布をやり易くするため、、4項目にわけて、実施事項を挙げています。特に、航空法、農薬取締法について、記載されている主な点を、下記にあげます(当該答申本文はこちらにあります)。
 ・ 最新型ドローンについて、現在の技術指導指針を廃止する。
 ・ 農水協が直接行うオペレーター認定、機体認定は、農水協の自主事業であって、
  これを取得する義務はない旨、農林水産省より地方自治体等関係者への周知を徹底する。
 ・ 従来からの無人ヘリコプターについては、現場の混乱がないよう十分な配慮を行いながら、
  当面、次の措置を講じる。
  - 航空安全に係る事項は、国交省の「審査要領」、又は国交省と農水省の共管による通達により規制する
  - 農薬安全に係る事項は、農水省が新たなガイドラインを策定する
  - 都道府県・地区別協議会等への報告は、必要最小限に限定
 ・自動操縦の農業用ドローンについては、飛行経歴要件を不要とする。
 ・最新型の農業用ドローン活用が拡大するよう、ディーラー、メーカー等に対し、
  顧客の代行申請を行うよう促す。
 ・ 既存の(地上)散布用農薬について希釈倍数の見直しを行う変更登録申請の場合、FAMICの検査において
  作物残留試験を不要とし、薬効・薬害に関する試験のみとすることにより、検査コストの大幅な削減を図る。
 ・ 農林水産省は、民間事業者のニーズをくみ取りながら農業用ドローンの普及を拡大するために、
  経済産業省の協力も得て官民協議会を立ち上げる。最新型ドローンについて技術指導指針に基づく
  都道府県・地区別協議会は廃止し、ドローン推進のための地域組織が必要な場合は、官民協議会の下に
     新組織を立ち上げる。
 赤字で示したように、最新ドローン型については、農水省の指導指針を廃止する/農水協が直接行うオペレーター認定、機体認定を取得する義務はない/最新ドローン型について、ディーラー、メーカー等に顧客の代行申請を行うようにする(注;いままでは、農水協しか代行申請できなかった)ことになります。
 わたしたちが求めていた、機体の認定やオペレーターの認定は国が行う/一括申請や代行申請をやめる/指導指針の内容を法条文化し、努力規定を義務規定にすることとは、真逆の提案です。
 さらに、空中散布効率を高めるため、現行の地上散布濃度をあげる必要があるとしていますが、このために、本来なら登録に際して提出が必要な、薬効・薬害試験・作物残留試験の三点セットのうち、コスト削減のため、残留試験は不要とする、となります。
 試験もなく、地上散布濃度を空中散を効率よくするために引きあげることなどとんでもありません。いままでの農薬取締法や食品衛生法の規制手法を破壊するものです。
 検討されている提案は、無人航空機空散を一層やりやすくすることでしかなく、そのため、農薬成分の環境への放出量が増え、環境汚染の危険性が高まることにつながります。これに対して、規制改革推進会議の中で、環境省などから歯止めの声が聞こえないことも気がかりです。

★無人航空機の論議に抜けていること
 農薬空中散布の危被害について、行政や関連団体が。散布する農薬によるヒトの健康被害や環境被害防止でなく、散布手段である無人航空機そのものが事故を起こさないことに重点をおいていることを指摘してきましたが、今までの議論の中で、決定的にぬけているのは、危被害を起こした機体や散布主体、散布者の責任をどうするかという論議です。

【事故責任と罰則】ドローン本体や制御装置、散布装置の故障をなくすのはいうまでもありませんが、万一事故−人の傷害や物損はもちろん、農薬に過敏な人の健康被害、非対象作物への飛散、環境生物への被害、残留基準違反なども含む−を起こした場合、機体メーカーやオペレーターに科する罰則がないことです。
 民間団体が認定した機体で、安全に農薬を散布する能力ありとされたヒトが運航しているのですから、事故をおこした場合、たとえ、過失であっても処罰をうけるのがあたりまえにも拘わらず、事故の補償、罰則をどのようにするかの検討は、みられません。
 地上散布でも、散布者には、住宅地通知の遵守、散布作業前日には、飲酒を控え、十分な睡眠をとることも指導されます。車の場合は、事故をおきさなくとも、道交法に違反すれば、免許停止や罰金となりますが、無人航空機の場合、認定の取消しの話も聞きません。

【犯罪防止と監視社会】もうひとつ、想起するのは、2002年ワールドカップサッカー大会の際、警察、国土交通省及び防衛庁とも連携して、農水省が、テロ防止のため、競技場周辺での無人ヘリコプターの飛行禁止を徹底するよう各地方農政局などに通知したことです。そもそも、無人航空機の規制に関する航空法の条文ができたのは、ドローンが首相官邸に落ちたことで、テロ・犯罪防止の名目で一気に、処罰条文もできたのです。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会にからみ、無人航空機による犯罪や無人航空機をねらう犯罪(自動操縦プログラムをねらうサイバーテロや電磁波テロもあり得ますね)を防ぐため、警察によるドローン使用者や農薬散布者への監視が一層厳しくなるでしょう。
 オリパラは東京だけでなく、事前合宿地は全国におよびます。2020年の夏は、きっと各地で、農薬空中散布に大きな監視の網がかかること必定でしょう。
 ドローンのような新たな技術は、新たな監視社会を生むことを忘れてはなりません。

*** 囲み記事:小型無人航空機の利活用拡大に向けた検討会と内閣府規制改革推進会議より*** 

【農水省】農業分野における小型無人航空機の利活用拡大に向けた検討会の頁
     第2回(平成30年9月25日)配布資料 議事次第 資料第2回検討会概要
     第3回(平成30年11月5日)配布資料 議事次第 資料これまでの議論と対応案

【内閣府】規制改革推進会議情報の頁
     第39回会議議事次第議事概要記者会見。
      農業用ドローンの普及拡大に向けた意見
     第40回会議議事次第議事概要記者会見、
      第四次答申にあるドローン活用を阻む規制の見直し)。

*** 囲み記事:内閣府規制改革推進会議第四次答申
   (2)ドローンの活用を阻む規制の見直し *** 

【 航空法に基づく規制】
 <基本的考え方>
  ・技術指導指針においては、一般社団法人「農林水産航空協会」(以下「農水協」という。)が
  航空法上の代行申請を行うことのできる登録認定等機関として唯一認められており、代行申請に
  加えてオペレーターや機体の認定事業も実施している。
 ・技術指導指針は、具体的な法的根拠は明確ではなく、特に航空法上の義務を課したものではない
  にもかかわらず、農業の現場では、農水協によるオペレーターや機体の認定が義務であるとの誤解や、
  農水協が航空法に基づく許認可権限を有しているとの誤解が存在する。
 ・最新型ドローンの自動操縦機能、カメラ機能等は、ドローンの航法精度を上げ、安全性を
  確保するのに有効な手段であり、国土交通省も審査要領で安全確保策として認めているにもかかわらず、
  農水協はこれら機能を備えた最新型ドローンの代行申請は受け付けていない。
 ・ドローン利用の際は、国土交通省に対する報告に代え、技術指導指針に基づく都道府県・地区別協議会への
  事前の事業計画書と事後の事業報告書の提出が求められており、これが農業従事者への負担となり、
  農業用ドローンの導入を阻害している。
 <実施事項>
  a 最新型ドローンについて、現在の技術指導指針を廃止する。
  b 農水協が直接行うオペレーター認定、機体認定は、農水協の自主事業であって、
   これを取得する義務はない旨、農林水産省より地方自治体等関係者への周知を徹底する。
  c 従来からの無人ヘリコプターについては、現場の混乱がないよう十分な配慮を行いながら、
   当面、次の措置を講じる。
    - 航空安全に係る事項は、国土交通省の「審査要領」、又は国土交通省と農林水産省の共管による
     通達により規制する
    - 農薬安全に係る事項は、農林水産省が新たなガイドラインを策定する
    - 都道府県・地区別協議会等への報告は、必要最小限に限定し、オンライン報告を可能とする
  d 国土交通省の審査要領は、自動操縦、手動操縦にかかわらず、一律に10時間の飛行経歴要件を課している。
   しかし、自動操縦の農業用ドローンについては、機種ごとの機能・性能に応じたルート設定などの
   基本操作や、不具合対処など、必要事項についての講習を受けた実績がある場合には、
   この飛行経歴要件を不要とする。
  e 農林水産省は、審査要領に基づく代行申請制度を通して最新型の農業用ドローン活用が拡大するよう、
   ディーラー、メーカー等に対し、顧客の代行申請を行うよう促す。これによって、自動操縦機能、
   カメラ機能等を搭載した機体の申請実績を作る。

【農薬取締法に基づく規制】
 <基本的考え方>
  ・農薬を効率的に使用するにはドローンの活用が効果的である。
  ・農薬取締法により、農薬メーカーには農薬の希釈倍数などについて登録・表示する義務が、
      農薬使用者には、希釈倍数、使用時期などの基準を遵守する義務が課されている。
  ・陸上散布で認められている低い希釈倍数では、ドローン散布の際は散布液量が多くなり過ぎ、
   ドローンを活用できない。そのため、ドローンで活用できる農薬は、約 500 種類にとどまる。
   品目ごとに見れば選択肢はさらに少なく、例えば「かんきつ」については、わずか2種類である。
   ドローンで活用できる農薬の品目拡大が必要であるが、陸上散布において認められている農薬の
   ドローン散布に当たって、希釈倍数要件の緩和が不可欠である。
   しかし、農薬の希釈倍数の変更に当たっても、改めて農薬メーカーの登録・表示が必要とされ、
   そのためにFAMICによる検査が必要となる。この検査においては農薬残留データを一から取り直す
   ことが求められるため、数千万円のコストがかかり、ドローンで利用可能な農薬の種類の
   拡大を阻んでいる。
 <実施事項>
  a 農薬取締法上、いかなる散布機器を用いるかは農薬を使用する者が遵守すべき基準に含まれていない。
   農林水産省は「散布」、「雑草茎葉散布」、「湛水散布」、「全面土壌散布」等の使用態様に
   おいてドローンを使うか否かは、農薬使用者の自律的な判断に任せる旨、解釈を明確化し、
   関係者に通知する。
  b 既存の(地上)散布用農薬について希釈倍数の見直しを行う変更登録申請の場合、FAMICの検査において
   作物残留試験を不要とし、薬効・薬害に関する試験のみとすることにより、検査コストの大幅な削減を図る。

【電波法に基づく規制】 概要は以下です。
  ドローン航行に携帯電話の電波利用が必要となり、現在では、ドローンが陸上移動局として、
  電波法上認められていない。そのため、ドローンの携帯電波利用を拡大させるために必要な制度改正を行う。

【農業用の最新型ドローンの普及に向けた取組】
 <基本的考え方>
  ・ドローン分野のイノベーションを農業分野に取り込むことは極めて重要であり、
   そのために国が果たすべき役割は大きい。データに基づいたスマート農業を促進するには、
   マルチローター型を中心とした航行の安定性の高いドローン導入を強力かつ集中的に促進する必要があり、
      以下に述べる改革を行うべきである。
 <実施事項>
  a 次の要素を含む「総合的な農業用ドローン導入計画(仮称)」を農林水産省が中心となって策定する。
   - 最新型ドローン導入の目標値
   - 導入促進のための地方説明会の開催回数の目標値
   - 実質的に「ドローン用農薬」と位置付けられる農薬品目数の目標値
   - 農業用ドローンの普及拡大に向けた規制点検や先端技術に関する情報共有の枠組み
  b 農林水産省は、民間事業者のニーズをくみ取りながら農業用ドローンの普及を拡大するために、
   経済産業省の協力も得て官民協議会を立ち上げる。最新型ドローンについて技術指導指針に基づく
   都道府県・地区別協議会は廃止し、ドローン推進のための地域組織が必要な場合は、官民協議会の下に
      新組織を立ち上げる。


作成:2018-12-02、更新2018-12-08