改定農薬取締法にもどる

n00901#生活環境動植物一次案へのパブコメ〜生態系・生物多様性保持の立場から#18-12
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      反農薬東京グループ;農薬の登録申請時に提出する試験成績及び資料に係る関係通知の改正案に関する意見(2014/03)
【参考サイト】環境省:
        「生活環境動植物に係る農薬登録基準の設定について(第一次とりまとめ)(案)」に対する意見の募集について
           第一次取りまとめ案参考資料
        パブコメ結果生活環境動植物に係る農薬登録基準の設定について(第一次答申)(2/07公表)

 わたしたちは、改定農薬取締法の<生活環境動植物>が、個々の生き物のイメージが強く、食物連鎖や生物多様性保持をも含めた生態系全体を、表記の中に含めるべきと考え、<生活環境動植物・生態系>として意見をのべました。反農薬東京グループのパブコメ意見全文はこちらですが、おわりには、強調したい要望として、下記の3項目をあげ、2冊の書籍からの引用資料で締めくくりました。

  (1)新規登録農薬の登録申請者には、フィールド調査(環境汚染実態調査や生物相調査など)を
   登録後2,3年以内に、既存登録農薬については、毒性に関する補充試験とフィールド調査を
   期限を限って実施させる。

  (2)生活環境動植物・生態系への影響評価には、個々の生物種ごとの毒性試験データとともに、
   一定面積以上の圃場で、圃場内の生物相を調査することを登録申請者に義務づけるべきである。
   この際、農薬を使用しない圃場を対照区と、農薬使用圃場と比較できるようにする。

  (3)申請者が提出した生活環境動植物・生態系への影響試験データやその他の調査結果は、国民が、
   メーカーの主張の正当性が検証できるよう、原則、データをすべて公表する。
**** 反農薬東京グループの主なパブコメ意見です ****

【意見2】法条文にある<人畜><天敵>と<生活環境動植物>との関連について
 <生活環境動植物>のあいまいな定義だけでなく、<人畜>と<天敵>との関連も不明
確であり、以下をきちんと説明されたい。

(2-1)農取法でも条文に<人畜>という用語が使われ、農水省は、いままでも、現実に問
題となっているネオニコチノイド類によるミツバチの被害防止について、<畜>として
の養蜂蜜蜂を対象として調査し、対策を提示し、指導してきた。一方で、野生の蜜蜂は
環境省の問題だとしてきた。
 新農取法で、養蜂蜜蜂及び野生ミツバチは、それぞれ、<人畜>、<生活環境動植物
>のいずれで、どのように対処するかを、明確にすべきである。

(2-2)農取法では、『防除のために利用される天敵は、この法律の適用については、これ
を農薬とみなす』とあり、登録された天敵昆虫、天敵線虫や微生物などを有効成分とす
るいわゆる生物農薬らが該当する。
 また、農水省、環境省告示第一号(平成十五年三月四日)では、法第三条にある<特
定農薬>の中に天敵を含めており、『天敵:昆虫綱及びクモ綱に属する動物(人畜に有
害な毒素を産生するものを除く )であって 使用場所と同一の都道府県内採取』とある。
 これら天敵等が、農薬として使用されなくとも、自然界で活動し、作物保護に役立っ
ている。

 農薬を使えば、天敵生物への影響を避けられないことについて、貴省の見直し案では、
有害な農薬の使用量を減らして、環境中の生き物を保護しようとする姿勢が希薄である。
 天敵を<生活環境動植物>として、どのように位置づけるかを、明確にすべきである。

 [理由2]貴省が取締対象にしている個別の天敵農薬については、放飼地域における定
着性の有無と元々生息している生物への影響(寄生・捕食、競争、交雑)が懸念される。
 天敵類が外来種の場合、在来種が影響を受けるし、外来種が作物生育に有害な場合、
その天敵が存在しないと、あらたな被害につながるなど、生態系は複雑であり、対応策
が不明確のままでは、病害虫、天敵、ただの虫、外来種の生活環境動植物・生態系の位
置づけに混乱をきたす。
 [理由3]農薬要覧によると生物農薬は、殺虫剤46種、殺菌剤21種ある。また、農林水
産政策研究所は、国の生きものマーク米一覧で、水稲に利用される生き物のをあげて
いる。ちなみに、これらは、生活環境動植物・生態系で影響を評価すべき生き物の参考
になる。
 <参照2>農林水産政策研究所;環境プロジェクト研究資料第2号(2010年12月)
    生物多様性保全に配慮した農業生産の影響評価とその促進方策【意見3】予防原則の適用について
 貴省は、生活環境動植物・生態系の影響について、毒性試験、ばく露評価及びリスク
評価の内容を検討するとのことだが、これらは、予防原則の立場で、実施すべきである。

 環境に悪影響を及ぼす農薬使用を減らすには、予防原則が重要である。特に、生殖系
や神経系、免疫系などへの影響、内分泌系撹乱作用による不可逆的な影響が懸念される
場合、ヒトや生態系への影響メカニズムが完全に科学的に究明されてから、規制するの
では遅すぎる。
 [理由3]予防原則の手法では、毒性試験データや環境調査などの情報がすべて公開さ
れていることが必須条件であり、ものいわぬ自然界の生き物をできる限り守ることを目
指すべきである。
 ちなみに、2009年の「我が国における農薬登録制度上の課題と対応方針(案)につい
ての意見」で、私たちは、情報公開の徹底を求めたが、公開されている農薬抄録は、201
8年12月12日現在255成分であり、多くの試験データの数値は隠され、試験に用いた成分
の純度すら非公開となっている。メーカーと一般国民が対等の立場で、話し合えるには、
情報公開を徹底することが不可欠であり、農薬の毒性及び作物残留性等のデータについ
ては、いままでのように、守るべき企業の財産として、公開を拒むことは、許されない。
国民への情報公開を原則とし、企業秘密の保持に関しては、別途の法的制度で守ればよい。

【意見4】生活環境動植物・生態系への影響評価について
 生活環境動植物・生態系への影響云々を論議する必要性がでてきたのは、規模の大き
な単作圃場で、同一作物の連作をつづけ、病害虫の発生状況を科学的に調べずに、農薬
を定期的かつ予防的に使い続けたことにより、生物多様性が妨げられてきた結果である。
 日本では、まず、水産動植物への影響が重視されてきたが。これは、水田除草剤によ
る魚介類の被害が顕著であったからである。現在でも、水稲用農薬は全農薬出荷量の30
%を占めている。
 環境生物への農薬の影響は、農業生産第一主義をとる日本では、軽んじられ、被害が
顕著になってからの事後処理として、適正な使用をすればよいという観点でなされてき
た。
 そんな中、貴省は、現行に類似した登録保留基準をいろいろな生き物に拡大すること
に、眼を向け、野生のハチやトンボをターゲットにしたり、長期ばく露による影響評価
の導入も必要だとしている。具体的には、藻類、水草等の感受性差に係る知見を収集し、
除草剤の水産植物の影響評価試験の実施があげられている。

(4-1)ある農薬に感受性の高い日本在来の個別生物に対して、急性毒性の観点に加え、繁
殖に影響する農薬は、使用を規制することは、いうまでもないが、これに加え。生物多
様性保持につながる生態系総体への影響評価も導入すべきである。
 たとえば、農薬を使用しない場合と、使用した場合の圃場の生物相調査(生き物の種類
及びそれぞれの生息数と分布パターン、花粉媒介植物では訪花昆虫などの調査)やこれに
基づく生物多様度指数のような考え方を取り入れ、圃場や周辺自然界での生物相の貧困
化を抑制すべきである。
 [理由]種類の多い陸域や土壌生物については、直接被曝だけでなく、食物連鎖の上位
にある鳥類に対しては、食べ物に残留する農薬の繁殖への影響評価は必要である、
 取組み案には、以下のようないままでの主張も引用されている。
 ・環境省「農薬生態影響評価検討会」の2002年の第二次中間報告
  今後の検討課題として、『農薬の散布方法等によっては、ミツバチや鳥類など陸域
生態系を構成している生物に直接影響を与えるおそれのあることや、蓄積のおそれのあ
る農薬については、その影響が食物連鎖を通じてより高次の生物の生息にも関与する可
能性もあることから、陸域生物等についても、幅広くその影響の可能性を検討する必要
がある。』
 ・2018年4月に閣議決定された第5次環境基本計画
  環境影響が懸念される問題については、科学的に不確実であることをもって対策を
遅らせる理由とはせず、科学的知見の充実に努めながら、予防的な対策を講じるという
「予防的な取組方法」の考え方に基づいて対策を講じていくべきである」とされ、農薬
については、「水産動植物以外の生物を対象としたリスク評価手法を確立し、農薬登録
制度における生態影響評価の改善を図る」とされたところである。

(4-2)農薬メーカーに、登録申請しようとする農薬が、自然界でどのような影響を与える
かを判断できるフィールドでの生物調査データ(せめても、一定面積以上の圃場やバイ
オトープでの試験データ)を提出させ、専門家だけでなく、国民の手で、登録や適用の
可否を決めることを求める。
 [理由1]生活環境動植物・生態系への影響評価には、個々の生き物に対してだけでな
く、農薬が使用されていない自然環境に、農薬が散布されたら、当該地の生物相はどの
ように変化するかの調査が必要である。
 従来説では、農薬が散布された直後は、環境中の生き物はその生息に影響を受けるが、
徐々に回復し、もとにもどる。従って、致死毒性があっても、蓄積性が顕著でないかぎ
り、大きな影響を受けないとうものである。しかし、このような結論は、農薬を散布さ
れた地域で、生き残ったものが、再び、繁殖するか。農薬が使用されていない他の地域
からの生き物の流入するかを調べなければ出てこない。
 農薬の生活環境動植物・生態系への影響は、その農薬を使用したことにより、不使用
の対照区と比較して、その地の生物相がどのような影響を受けるかの調査が、基本事項
である。
 [理由2]現実のフィールドでは、複数の農薬−殺虫剤、殺菌剤、除草剤その他−が使
用され、昆虫も植物も微生物もそこに生息するすべての生き物が複合的な影響をうける
ことは。はっきりしている。実験室での個別農薬を用いた、個別生物の毒性試験は圃場
の実態を反映しないことに留意すべきである。。
 [理由3]わたしたちは、水生生物、ただの虫、クモ、ミミズ、土壌微生物などを含む
生態系全体への農薬影響の評価には、農薬を使わない圃場と使用する圃場の生物相の比
較が重要であり、有機農作物の圃場でのいままでの実績、虫見板を用いた水田でのフ
ィールド調査の経験が役立つ、と考える。

(4-3)貴省は、水産動植物の登録保留基準設定に際して、環境中の予測濃度が算定されて
いるが、これはあくまで、予測濃度であり、フィールドでの実態濃度とは異なるため、
登録メーカーには、期限を設けて、自然環境やフィールドでの農薬環境汚染調査を義務
付けるべきである。
 [理由1]ヒトが病害虫とする個別の生き物の生息状況を調べて、農薬を使用すること
もあるが、多くの場合、予防的に壊滅させようとするのが農薬であり、いったん使用さ
れれば、標的とされる生き物だけでなく、その天敵となる生き物やただの虫が影響を受
け、耐性種が生き残り、新たな病害性の生き物が出現することを防ぎえない。過剰使用
にならないよう。農薬の環境汚染の実態を知ることは基本である。
 [理由2]低濃度で、個別生物の個体数を減らし、繁殖に影響を与える農薬を使用しな
いことは、もちろんだが、水域と陸域生物にわけて、現在の水産動植物のように、理論
計算による推定数値との比較で登録保留基準を決めることを最終目標にすること、すな
はち、数値第一主義で規制することで、生態系への影響、生物多様性の保持がどこまで
できるか疑問である。

(4-4)貴省は、取組み案の「2 海外における取組」で、すでに実施されているEUでの
生活環境動植物・生態系の影響評価項目をあげているが、本年末で、開放系での使用が
禁止されることになっているネオニコチノイド類について、EU加盟諸国ごとに、どの
項目が適用され、使用規制状況がどうなったかをおしえてほしい。

(4-5)EUでは、ネオニコチノイド規制の前に、神経毒性の強い有機リンなどが問題にな
り、再評価がおこなわれ、登録が取消されている。
 しかし、日本では、いまだ、有機リン系農薬はネオニコチノイドの4倍以上の年間
約1880トンも出荷されている。
 日本でよく使われる農薬のうちEUで登録がないの農薬成分は約160(*注)あり、代表
的な成分は、下記のようである。これらの29農薬について、それぞれ、どのような生活
環境動植物・生態系の影響評価が実施され、登録取消しにつながったかを明らかにされ
たい。たとえば、期限までにどのようなデータの提出が要求されたが、提出できないた
め、登録失効した農薬については、その旨明らかにする。

  BPMC、CAT、D-D、DEP、DMTP、EPN、IBP、MEP、MPP、
  NAC、PAP、アセフェート、アトラジン、アレスリン、エチプロール、
  エチルチオメトン、カスガマイシン、クロルピクリン、クロルフェナピル、
  ジノテフラン、シペルメトリン、ダイアジノン、トリフルラリン、パラコート、
  フィプロニル、フェンバレレート、プロシミドン、ベノミル、ペルメトリン 

 <参照3> 注* 機関誌てんとう虫情報 記事t31601


【意見5】個別生物に対する意見:水産動植物について
(5-1)水系における生物相の調査を実施し、これをもとに、毒性評価すべき生き物を選定
すればよい。水系の底質中に残留している農薬(活性成分、不純物、補助成分を含む)や
その代謝分解物についての影響評価も十分に行う。

(5-2)水系登録保留基準が設定された農薬は、メーカーに環境汚染状況の調査を義務づけ、
 2、3年以内に基準の見直しを実施する再評価の制度に役立てるべきである。


【意見6】個別生物に対する意見;ミツバチやポリネーターについて
(6-1)花粉媒介昆虫への影響試験を義務づけ、毒性に応じて、ランク付けを行い
「蜜蜂等危害性農薬」(仮称)を指定する。

(6-2)ミツバチをはじめ花粉媒介昆虫は、農作物の生産に大きな影響をあたえるにもかか
わらず、その個体数減少を防止するための法令はない。「養蜂振興法」で農薬使用を規制
できるようにすべきである。
 [理由1]1955年、最初に提案された養ほう振興法案には、第五条(農薬使用の規制)
に『農林大臣は、農薬の使用がみつばちに著しい被害を与えるおそれがあると認めると
きは、当該農薬を使用する者に対し、その使用を制限し又はその使用の時期、方法等に
ついて必要な措置をとるべきことを命ずることができる。』とあったが、条文化されず
に、今に到っている。
 [理由2]2012年の養蜂振興法施行規則の改定のパブコメ意見募集の際に、毒性の強い
農薬の使用規制に関する条項を作るべきであるとしたが、実現しなかった。


【意見7】個別生物に対する意見;鳥類について
(7-1)鳥類に関する試験を義務づけ、毒性に応じて、ランク付けを行い「鳥類等危
害性農薬」(仮称)を指定する。
 
(7-2)机上の想定とフィールドでの農薬汚染実態が異なることもあるので、新たに登録さ
れた農薬について、生態系での農薬汚染調査を申請者に義務づけるとともに、既存の登
録農薬については、再評価制度において、期限きって、調査データを提出させるべきで
ある。また、フィールドで異変が見られたときは、再評価制度により、使用禁止措置に
つなげる必要がある。


【意見8】個別生物に対する意見;土壌動植物、その他の陸域動植物
(8-1)陸域生物への影響評価の前に、現行の土壌残留の判定基準を改め、ヨーロッパ諸国
で実施している、土壌中半減期が3ヶ月以上、かつ90%消失期間1年以上の農薬を登録
しないことを、登録保留基準にすべきである

(8-2)圃場の土壌残留試験は、土壌の性質・成分、土壌中の生態系・微生物相、天候、散
布むらなどの条件をどう評価するかが問題となるし、代謝分解物の残留もきちんと評価
されねばならない。土壌殺菌剤で処理し、生き物のいなくなった土での試験と試験農薬
のみを使用した土では、残留状況も異なる。また、生態系保護の視点からいえば、ミミ
ズや土中の昆虫・微生物への影響も評価する必要がある。
 そのため、以下の試験を義務付けるべきである。
 (1)土壌残留について、人畜への影響だけでなく、土壌中の細菌やかびなど微生物や昆
虫類、ミミズらの生息への影響を評価する
 (2)農薬成分だけでなく、その代謝分解物や不純物についての土壌残留性を調査して、
保留基準に反映さす
 (3)寒冷地で使用される場合/多雨地で使用される場合/水田で使用される場合/
  土壌処理剤で殺虫・殺菌した場合/マルチで被覆やハウス・温室での栽培の場合
  など、すべての使用条件に適用できる保留基準を設定する

(8-3)陸域動植物総体の生態系の影響の評価に資するため、土壌中の生物相調査の手法を
確立する(たとえば、土壌中の生物多様度指数の考えでもよい)

(8-4)ヒトが病害虫とする個別の生き物を農薬で殺したり、繁殖を抑える最小濃度(a)と、
非対象生物が影響を受ける濃度(b)の関連を明確にしておくべきである。
 [理由] (a)については、現行の薬効試験で得られた病害虫に対する毒性試験結果が利
用できるし、(b)については、有用生物や天敵に対する毒性試験結果が利用できるので、
農薬ごとに一覧表化しておけばいい。
 新たに追加すべき、生き物の選定には、農薬を用いない地域の生物相調査などが役立
つであろう。

(8-5)土壌生物その他の陸域生物への影響に関する試験の結果に基づき、毒性に応じて、
ランク付けを行い「陸域生物等危害性農薬」(仮称)を指定する。
 上記、(a)が(b)よりもあまりに大きい場合は、ランクの毒性順位は高くなり、指定す
ることになる。


【意見9】個別生物に対する意見(意見5から8)については、以下のことを実現すべきである。

(9-1)ランク付けの場合、最も毒性が強い区分に該当する農薬は登録しないとする。
 かわりに、農薬を使用しない耕種的防除、物理的防除及び生物的防除などを実践する。
ちなみに、農薬を使用しない有機農作物の栽培面積比率0.1%(国の目標は1%)というの
が農業の現状であり、この比率を高めることが、根本にある。

(9-2)指定農薬については、以下の取締り体制を確率すべきである。
 ・当該指定農薬の使用について、都道府県知事に届け、その許可を得る
 ・許可なく当該農薬を使用した者に罰則を科する
 ・登録後、当該農薬の使用によって、生活環境動植物・生態系被害が起これば、
    再評価制度により、当該農薬の使用を規制したり、登録を取り消す

(9-3)新たに登録される農薬については、メーカーに、圃場で使用後の一般環境汚染実態
やフィールドでの生物相調査を義務づけ、2,3年以内に登録保留基準の見直しができ
るデータを収集して、再評価制度に役立てる。
 [理由]クロチアニジンによる日本でのミツバチ被害が判明したのは、2003年5月に、
熊本県ミカン畑での散布、2005年8月に、岩手県水稲カメムシ駆除で、食用作物に同剤が
最初に登録されたのは、2002年4月であった。登録農薬が圃場で使用される初期に被害の
発生を把握することが重要である。

(9-4)既存農薬については、期限を限り、毒性試験を補充し、一般環境調査や生活環境動
植物・生態系への影響調査をメーカーに義務付け、期限までに、データを提出出来ない
場合は、登録を取消すことにする。


レイチェル・カーソン 「生と死の妙薬」 青樹簗一訳(新潮社1964年)

 新潮社: 沈黙の春(新装版はこちら
「沈黙の春」 三<死の霊薬>より
 草木に浸透性殺虫剤の処置をほどこす、やがて、蜜蜂がとんできて、 毒の入った花から蜜を集める。すると、どういうことになるだろうか。  −中略− 薬品を散布したのは、まだ、花が咲くまえだったのに、花の蜜には毒が 混じっていた。そして、思ったとおり、蜜蜂がそこから集めた蜜にも、 シュラーダンの残留物が検出された。
「沈黙の春」六<みどりの地表>より
 ただ野生の花は美しい、という理由だけで、道ばたの草木を守れ、 といっているのではない。 −中略− このような植物は、また、 野生の蜂や、そのほかの授粉昆虫の棲息場所だ。そして、私たちは、 ふつう考えているよりも、どんなに多くの授粉昆虫のおかげをこう むっていることか。農夫さえも、野生の蜂がどんなに大きな働きを しているのかよく知らず、みずから自分の味方をほろぼすような 愚かなことをしている。野生の植物はもちろん、農作物でも、 授粉昆虫のおかげをこうむっているものがある。

信濃毎日新聞偏 「新たな恐怖〜 農薬禍はしのびよる」 (1965年刊行)

国会図書館の 蔵書案内


p-18〜p-20 引用
訪花コン虫、8年間で20分の1に
 さらに訪花コン虫激減を物語つているのがつぎに示す統計である。
二十九年といえば、まだ、ハチ類の減少がほとんど問題とならず、
したがって当時の実情を伝える資料もほとんどない。
ところが、なんとなく実施したこの観察が、はからずもその一端を
のぞかせた。全国でもめずらしい貴重な資料となった。この観察は
二十九年四月、長野県園芸試験場内のアンズ満開時に、三十秒間に
一本の枝へ飛来したハチ、アプ類を数えたものである。
 それによると、上図のように最も多い正午にはざっと九十五匹が
訪れている。
 ところが三十七年の満開期には、対象にした訪花コン虫がミツバチ、
ハナバチなどのハチ類だけだったとはいえ、五分間で最も多かったとき
でもたった十八匹だけ。アブ類などがくるのはほぼ同比率だといわれる
のでこれを加えても四十匹たらずにすぎない。しかも、三十七年の研究
は、五分間に飛来した数なので、たった八年間に実に二十分の一前後に
激減したのである。なぜこんなことになったのか。なるほど開花期には、
コン虫たちはある程度農薬禍から免れた。
 <だがコン虫が果樹園にいるのは開花期だけではない。翌年の開花期
に再び成虫となって飛び立つ日まで卵や幼虫、サナギの姿で、果樹園や
果樹困の周囲に生活をつづけている。
 ところが人類がえてしてそうでありがちなように、 果樹生産者たちは
用のなくなってしまったコン虫を忘れ、開花期がすぎるとともに、再び
雨あられと強力な殺虫剤をふりそそぐ。畑地は農薬のためにコン虫の
住めない″死の土地”に変わっていく>
 と同試験場の広瀬健吉病害虫部長は語る。

作成:2018-12-28、更新:2019-02-10