室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる

n01003#厚労省のシックハウス検討会は、業界にしか眼をむけないのか〜3物質の指針値改訂のみ#19-01
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          2017年度の反農薬東京グループの意見
      記事n007042018年度意見の募集について概要
          2018年度の反農薬東京グループの意見

【参考サイト】厚労省:第23回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会(2018年12月27日)の配布資料
        中間報告書第23回までのまとめ(1月17日公表)と 第21回および第22回検討会後に行ったパブリックコメントに関する回答

 厚労省は、年末に開催された第23回シックハウス問題に関する検討会(以下、検討会という)を経て、2019年1月7日に、2018年のパブコメ提案にあった室内空気を汚染する3物質の指針値の強化(可塑剤フタル酸ジ-n-ブチル:17μg/m3、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル:100μg/m3、有機溶剤キシレン:200μg/m3)を原案どおり告示しました。7物質が提案されていた2017年の当初案から4物質(エチルベンゼンの指針値強化、新規3物質の2-エチル-1-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートの新指針値設定)が除かれました。

★規制物質が減ったのは業界の意向
 検討会が指針値を示した7物質が減ったのは、パブコメ意見募集の結果です。2017年の意見募集では、132件の意見がありましたが、その内容は公表されないまま、3物質にして、2018年のパブコメが行われました。この時は、47件の意見がありました。
 12月の検討会では、両パブコメの意見を事務局がまとめなおし、2017年分30と2018年分14として、公表しました。いくつかの意見を以下に紹介します(文中は、厚労省の回答の概要であり、⇒△は、『参考にする』との答えを意味する)。
【2017年度のパブコメ意見】
  ・指針値案は。ヒトに対する影響評価の検証が十分であるか疑義がある
  ・海外の状況等を考慮してほしい
  ・室内空気中濃度を低減するにあたり、代替物質がない
  ・現実的に室内空気中濃度を管理できない
  ・新規3物質の測定濃度測定が問題なく行えるかどうか不明である
  ・2-エチル-1-ヘキサノールはTVOC の構成化学物質としての管理する⇒△
  ・4VOC(トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン)指針値を改定するまでに猶予をいただきたい。
   ⇒△一定期間の経過措置等を設けることは指針値の趣旨に馴染まない。
    関係者においては、公衆衛生の観点から化学物質の不必要な曝露を低減させ、それらが健康影響の
    危惧を起こすことなく安全かつ適正に使用されることを目的に、シックハウス対策に取り組むにあたって
    参考にされたい。
  ・壁紙の約90%が塩ビ樹脂で、DEHP使用している。産業界等の実態調査を行い、慎重な議論をお願いしたい。
   ⇒2-エチル-1-ヘキサノールの指針値については、「ヒトへの安全性に係る情報」、「代替物の情報」等を
    引き続き集積し、国際動向も踏まえながら再検討する。
  ・最近シックハウス症候群等の健康被害が特に増えたという話を聞かない中で、規制が強化されることに違和感がある。
    根拠を示して欲しい。
   ⇒指針値は、濃度基準を超えた場合の健康被害の訴え等を根拠としているのではなく、住宅における
    化学物質の濃度の実態やヒトへの安全性に係る科学的知見に基づいて設定することとしている。
    指針値は「一生涯その化学物質について指針値以下の濃度の曝露を受けたとしても、健康への有害な影響を
    受けないであろうとの判断により設定された値」であり、室内濃度指針値を一時的かつわずかに超えた
    としても直ちに健康への有害な影響を生ずるものではない。
  ・過敏症の方に合わせたような基準であるならば過剰規制のような気がする。現実的な数値の設定をお願いしたい。
   ⇒同上のようで、現状において入手可能な科学的知見に基づき導かれた値であり、すべての人を対象としている。
  ・製品からの放散速度の科学的測定方法が確立出来ていない。
   ⇒放散速度等に係る測定等は必要ない。
  ・リスク評価については検討会の中で個別の物質ごとに審議・決定されており、統一性がない
   ⇒△統一的な判断基準の設定が難しいと考える。
  ・現在の指針値設定における評価法は不確実係数等の観点からより安全側に立った評価をすべきではないか⇒△
  ・長期曝露時と短期曝露に分けた指針値にする
   ⇒指針値は「一生涯その化学物質について指針値以下の濃度の曝露を受けたとしても、健康への有害な影響を受けない
    であろうとの判断により設定された値」であり、分けることは指針値の趣旨に合致しない。
  ・指針値が事業者に対する規制となるのでやめてほしい。
   ⇒法的規制の性質を持つものでなく、正しく伝わるよう努める。
  ・建材メーカーはその下流にあたる 上流(原材料・メーカ)側で規制強化を
   ⇒物質の使用を規制するものではなく、正しく伝わるよう努める。
  ・指針値の適用範囲を明確に
   ⇒個別の製品に適用されるものではなく、総合的な室内空間における物質の濃度である。
  ・オフィスや公共施設等の室内濃度指針値の適用範囲における室内大気濃度を測定した調査結果も踏まえて候補を検討⇒△
  ・実態調査対象施設での築年数分布、築年数が浅い物件も追加⇒△
  ・実態調査は、構法、建築資材のバリエーションをそろえるべく追加⇒△
  ・業界として指針値への対応に時間的猶予、指針値運用に経過措置を
   ⇒経過措置等を設けることは指針値の趣旨に馴染まない。
  ・対象物質を増やすだけでなく、消費者の負担とならない対策を、
   ⇒関係省庁等との連携や情報提供に取り組む
  ・パブリックコメントとは別に関係業界の意見を聞く場を設ける⇒△
  ・指針値の概要とその意味を説明し、その内容を事業者や一般消費者に周知⇒努める
  ・事業者が対応できるように、関係省庁等とも連携して対応⇒情報提供に取り組む

【2018年度のパブコメ意見】
  ・新規3物質の指針値を設ける必要性について、詳細リスクの内容等が適切かどうかについて、時間をかけて議
   論していただきたい
   ⇒科学的知見のさらなる収集が必要であり、また技術的観点から実効性に疑義のある値が提案されている
    などの点が指摘され、「ヒトへの安全性に係る情報」「代替物の情報」等を引き続き集積し、
    国際動向も踏まえながら再検討する。
  ・当初案の通り指針値を定めて頂きたい。⇒同上
  ・エチルベンゼンについて、合理的な根拠に基づいて充分に再検討してもらいたい。
   ⇒海外のリスク評価の状況等を踏まえ、再検討する。
  ・エチルベンゼンについて、当初案の通り指針値を改定して頂きたい。⇒同上
  ・個人差等の観点から、指針値を再検討してもらいたい。
   ⇒新たな知見が得られた場合に、科学的な妥当性を担保した上、改めて評価実施を検討する。
  ・フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル 低値にすべき⇒同上
  ・人体への影響が認められる物質については、より一層安全側に立った指針値の設定を⇒△
  ・有害性の比較的低い新たな対象物質を追加するより、有害性のより高い物質の室内濃度低減施策、
   および TVOC の低減を図るべきではないか⇒今後も引き続き検討する。
  ・関係者が対策を講ずるに当たり、実効性のある範囲であるか否かについて、事業者の考えを聴取する機会をいただきたい。
   ⇒△関係業界と情報共有に努める。
  ・事業者が対応できるように、関係省庁等とも連携して対応していただきたい
   ⇒関係省庁等との連携や情報提供に取組む
 これらの意見の多くは、規制に反対する業界側の意見であることが、よくわかります。特に赤字の意見は何を根拠の発言か気になります。厚労省の回答も化学物質の健康被害を受けている人や環境保護を訴える人に対する心のこもったものとはいえません。

★厚労省は、健康被害者の声を真摯に聞くべき
 さまざまな身の回りの製品から放出され、室内大気を汚染する有害物質で健康被害を受けている人たちは、検討会が示した7物質だけでなく、他の物質についての規制を求めているのですが、厚労省の回答の前書きには、『いただいた御意見のうち、今般御意見を募集した内容に関するもののみ、その意見の要旨と回答を記載します。』とされ、『その他の御意見等については、お答えすることを差し控えさせていただきましたが、貴重な御意見として承らせていただきます。』とかたずけられました。
 わたしたちが、提案値よりももっと低値にすべきであり、他のいろいろな化学物質の規制を求めても、改善には程遠いわけは、検討会が、23回までのまとめとして公表した中間報告の記述からも明らかです。
 ・居住者に未だ発生の仕組みがわからない症状を含めた様々な体調不良が生じ、それがなんらかの居住環境に
  由来するのではないかと推測される場合が「シックハウス症候群」と便宜的に総称されている
 ・多くの場合、現状の研究では指針値が策定された物質と体調不良との間に明確な対応関係は証明されていない
 ・関係者がシックハウス対策に取り組むにあたって参考にしていただきたい値として、個別物質について
  客観的な評価を行い、指針値を策定している
 ・指針値は、現状において入手可能な毒性に係る科学的知見に基づき、ヒトがその化学物質の示された濃度以下の
  曝露を一生涯受けたとしても、健康への有害な影響は受けないであろうと判断される値を算出したものである
 ・指針値を超えた場合に必ずしもヒトに有害な影響を与えることを意味するのではない
 このような検討会の見解の下で、規制値すら決められず、業界の主張に沿って、現状が維持されるとすれば、シックハウス被害者は増えるばかりとなります。
 わたしたちが、2018年度に提出し、厚労省のパブコメへの[回答]から無視された内容について、記事n00704にリンクしておきますので、参考にしてください。


作成:2019-01-28