松枯れ・空中散布にもどる 2018年の松枯れなど空中散布状況
n01005#松枯れ防除剤は効果があるのか〜マツグリーン液剤2の空中散布防除効果についての検討 植村振作#19-01
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【参考サイト】日本曹達:Top Page、ニッソーグリーン社にあるマツグリーン液剤2(農水省登録第20838号:アセタミプリド2%含有)
1.はじめに
1977 年4月に、松くい虫 * 防除と称した農薬の空中散布を推進するために、「松くい虫防除特別措置法」が制定された。法律成立後、同法が防除効果についてねつ造・改竄されたデータを基に制定されたことが新聞や国会でも明らかにされた。しかし、廃止されることなく名称を「松くい虫被害対策措置法」と変更して5年毎に繰り返し延長され、最終的には、1997 年 3 月 31 日に失効した。現在は「森林病虫害防除法」に基づいて全国各地で空中散布が実施されている。
*:行政文書では”松くい虫“なる呼称が用いられるが、本文では、固有名詞に使用されている
場合はそのまま“松くい虫”と記載し、それ以外では、松くい虫と呼ばれる虫がいるわけではないので
“松枯れ”と称する。
松枯れ被害によって松林がなくなってしまった地域もある。全国的には、枯れるべき松林が少なくなり、現在は最も被害量の多かった 1980 年頃の約 1/6 まで減少している。2017 年の全国の被害材積量は約 40 万 m3である。県別では、長野県が最も多く、全国の約 2 割(7.6 万m3)を占めている。
長野県は、岩手県と首位を競うほど松茸生産量が多い。同県では松茸産地の赤松林の保全が強く求められていることもあって、2018(平成 30)年度の長野県松枯れ防除計画によれば、ネオニコチド系の「エコワン3フロアブル」(有人ヘリコプター散布)または「マツグリーン液剤 2」(無人ヘリコプターおよび地上散布)の2剤の何れかが多くの自治体で散布されている。
今回、マツグリーン液剤2が空中散布用農薬として登録された際の登録申請用資料の
うちの防除効果にかかる資料を入手し、マツグリーン液剤 2 の空中散布松枯れ防除効果
について検討したので、その結果を報告する。
2.検討対象資料
農薬は農薬取締法に基づき農水省に登録される。その際、当該農薬の薬効試験成績書
が提出される。今回、日本曹達が「農薬の登録申請に係る試験成績について」(平成 12年 11 月 24 日付け 12 農産第 8147 号農林水産省農産園芸局長通知)に従って提出した「マツグリーン液剤2」(農水省登録 第 20838 号)の登録申請用試験成績書の中の松枯れ防除効果にかかる部分を、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法)に基づいて農水省へ情報開示請求して入手した。
本来、農薬登録薬効試験成績書は国民に対して、誰が、何処でいかなる方法で試験したか明らかにされるべきである。しかし、151 枚の開示資料のうち試験実施機関や試験実施者名、試験地等 118 個所が黒塗りされていた。因みに、不開示部分はほとんど不当・違法であり、現在、開示を求めて国の「情報公開・個人情報保護審査会」に審査請求をしている。
今回開示された資料 14 件の試験成績書のうちの 4 件の成績書(下表)だけが、マツグリーン液剤 2 を松林に航空機(無人ヘリコプター)を用いて散布した時の防除効果についての報告であった。残りの 10 成績書は、供試木を植栽した網室内にマツノマノダラカミキリを放虫し、噴霧器等で薬剤散布した時のマツノマダラカミキリ生存率、マツノマダラカミキリの後食面積、枯損率等についての調査、或いはマツグリーン液剤 2 と異なる薬剤を散布した対照区をセットにした調査報告であり、松林にマツグリーン液剤2を空中散布(は無人ヘリコプター)した場合の松枯れ防除効果に関する試験成績ではなかった。
本報告は、マツグリーン液剤2の無人ヘリコプター空中散布の松枯れ防除効果について試験した下表の 4 試験成績書について検討した結果の報告である。
*** 防除効果検討対象とした試験成績書 ***
No 試 験 名 出 典 実施機関名/実施者名
1 産業用無人ヘリコプターによるマツ 平成15年度農林水産航 不開示(黒塗り)
グリーン液剤2の松くい虫防除試験 空協会受託試験成績書 同上
〈林業編) P64
2 同上 同上 P79
3 同上 平成17年度農林水産航 同上
空協会受託試験成績書
〈林業編)P38
4 同上 平成18年度農林水産航 同上
空協会受託試験成績書
(林業編)P42
以下は目次ですが、3 以下を読む場合は、こちらへ
3.防除効果についての検討
3-1 平成15年度農林水産航空協会受託試験成績書(林業編)64 頁
3-2 平成15年度農林水産航空協会受託試験成績書(林業編)79 頁
3-2-1 報告書記載の調査方法では得られない枯死率が報告されている
3-2-2 試験結果データ間の整合性がない
3-2-3 薬効試験データに推定値が用いられている
3-2-4 摘要に薬効の記載がない
3-3 平成17年度農林水産航空協会受託試験成績書(林業編)38 頁
3-3-1 本試験書記載の枯死率は実測値とは考えられない
3-3-2 薬効試験データに推定値を用いてはならない
3-4 平成18年度農林水産航空協会受託試験成績書(林業編) 42 頁
4. おわりに
「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」を利用して、マツグリーン液剤2の
登録申請用試験成績書の中の無人ヘリコプター散布による松枯れ防除効果にかかる
部分の試験成績書を農水省へ情報開示請求して得た。入手した試験成績書の結果から、
松枯れ防除効果があるかどうかを検討した。その結果、マツグリーン液剤2の登録申請用
試験成績書には、
1) マツグリーン液剤2の防除効果を検証しようとする試験であるにもかかわらず、
設定されている無散布区の結果についての報告がない
2) 試験成績書記載の調査方法では得られない調査結果が記載されている
3) 年度別の成立木数に整合性がない
4) 調査結果に実測値ではない推定値が使用されている
5) 不適切な無散布区の設定がされている
等があり、マツグリーン液剤2の無人ヘリ空散に松枯れ防除効果があるとは判断できなかった。
以下本文を
作成:2019-01-29