産業用マルチローターの性能確認基準、オペレーター技能認定基準等を改正しました。 (性能確認基準の検査・試験項目と、技能認定基準の操縦方式に「自動操縦」を新設しました。 また、他社の機種の技能認定を受ける場合は、「拡張」扱いとし、当該機種の操縦に関わる 教習を受講すればよいこととしました。)無人航空機(無人ヘリコプター、ドローン)については、その飛行に関して、航空法に基づく「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」(以下、審査要領)があり、無人航空機の飛行を行う場合、国土交通省大臣へ申請し、その許可・承認を受けることが義務づけられています。
【1】技術指導指針の廃止 現行技術指導指針は、無人航空機(無人ヘリコプターとドローン*)の農薬空中散布に 関する指導指針であるが、無人航空機の(a)航空安全に関する事項と(b)農薬の安全使用に 関する事項がかかれている。この指導指針にある(a)を【2】の両局長通知に規定し、 (b)については新たに【3】ガイドラインを制定する。 【2】両局長通知の一部改正 @ ドローンに係る規定を廃止(無人ヘリコプターに係る規定のみ存続)。 A 本通知に基づく代行申請を行える者を、一般社団法人農林水産航空協会等から 消費・安全局長が 登録する登録認定等機関に変更。 B 【1】で廃止した技術指導指針に定められた事項のうち、無人ヘリコプターについての 以下の航空安全に関する事項について、両局長通知に追加。 ・登録認定等機関による代行申請 ・登録認定等機関の登録要件 ・散布計画及び散布実績の報告 【3】無人航空機による農薬の空中散布に係る安全ガイドラインの制定 【1】で廃止した技術指導指針に定められた事項のうち、農薬の空中散布の安全使用に 関する事項について、新たなガイドラインを策定。ただし、現行の制度のうち、 都道府県・地区協議会に係る規定は廃止し、無人ヘリコプターの散布計画及び散布実績に ついては報告事項を見直すとともに、オンライン報告(メール)を可能とするものとして規定★概要案では無人航空機事故や空中散布被害は防げない
(1) 登録認定機関による農薬空中散布の代行申請は増やすべきでない 指導指針では、2017年7月まで、国の法律規定がないまま、農水省所管の業界団体である 一般社団法人にすぎない「協会」が、機体認定や操縦者=オペレーターの認定を牛耳っていました。 その後の改定で、「協会」の名は消え、『登録認定等機関』(ただし、登録機関は「協会」のみ)と なりました。しかし、両局長通知では、まだ、「協会」名が残っており、 『申請は、一般社団法人農林水産航空協会や技術指導指針に基づき都道府県単位で整備されている 都道府県協議会等を代表者として、代行して行わせることができる。』と明記されたうえ、 「協会」の認定があれば、申請が簡素化できることになっているのです。これをあらため、 申請に伴う機体や操縦者の確認を、国交省での手続きに一元化しようとしています。 さらには、「協会」だけでなく、ドローン業界が、登録認定機関になれば、ますます、 代行申請がふえることになり、安易な空中散布の増加につながります。 一方、ドローンの普及・推進のための計画を策定する目的で設置を目論まれている「官民協議会」*が どういうものになるのかもわかりません。「民」に農薬空中散布の影響を受ける一般住民もいれ、 その意見を聞くべきでしょう。*:官民協議会設立会の開催案内(3/18日開催) (2) 散布計画の提出と散布の事前周知の徹底を 無人航空機に適用される審査要領では、飛行の許可・承認申請書には、様式2で、 空中散布計予定の記載が求められますが、これは、散布ごとの申請でなく、1年間も有効な おおまかな内容です。いつどこで、どのような農薬を、どの程度散布するかは全くわかりません。 現行の指導指針では、無人ヘリコプターもドローンも空中散布実施主体は、散布計画書を策定し、 実施の1ヶ月前までに、都道府県協議会に提出することになっています。 ドローン散布は地上散布の補完=地散同等ということで、計画書提出が免除されてはなりません。 空中散布の農薬濃度は地上散布の10-100倍も高い上、個別圃場だけでなく、広範囲な地域で 短期間で、実施されるのが普通です。複数の無人ヘリやドローンが同時に飛び交う場合、 散布が安全・適正に行えるよう地域で調整することが必要です。 無人ヘリの散布計画もドローンの計画も協議会などに集約した上、散布の妥当性を合わせて、 検討することが不可欠です。 今回の改定案には、『無人ヘリの散布計画や実績の報告は両局長通知に追加する』とありますが、 ドローンについては、記載がありません。また、新ガイドラインでは 『都道府県・地区協議会に 係る規定は廃止し、無人ヘリコプターの散布計画及び散布実績については報告事項を見直す』、 とあり、ここにも、ドローンについての記載がありません。 空散実施主体には、無人ヘリコプターもドローンも実施計画を提出した上、地域住民や農業者。 養蜂者、学校等の公共施設に散布の事前周知を義務付ける必要があります。 なお、提出すべき現行の様式は、指導指針では、次ぎのようになっており、、現在でも 無人航空機の機種が明記されていません。@散布事業計画書、A散布事業報告 新ガイドラインに、散布計画及び散布実績について『オンライン報告(メール)を可能とする ものとして規定』とありますが、無人航空機の空中散布については、無人ヘリもドローンも すべての散布計画を、地図入りで、インターネット上に、公表・周知すべきです。 (3) 都道府県協議会に,農薬被害者や環境保護者をいれ、役割を明確に 現行指導指針では、都道府県協議会は、実施主体が無人航空機の散布計画を提出する窓口に なっており、そこには、地元の状況をよく知る地区別協議会もメンバーにはいります。 また、無人航空機の事故報告書は、まず、都道府県協議会へ提出されることにもなっています。 今回の改定で、現行指導指針にある都道府県協議会や地区別協議会を存続させ、その役割を 明確にした上、実施主体や農業関係者、行政関係者以外に、農薬の影響を受けやすかったり、 環境保護を訴えるヒトや団体を加え、その意見を聞くようにあらためるべきです。 (4) 目視飛行・補助員ありを堅持し、広い緩衝地帯設置を 無人航空機の新たなに策定される【3】のガイドラインで運用されることになりますが、 散布地域周辺に額縁状の狭い緩衝区域を設置することにより、無人ヘリコプターにしろ ドローンにしろ、目視飛行(操縦者から150m以内)・補助者ありを免除し、目視外飛行を含め、 補助者なしで、日中だけでなく、夜間散布も可能にすることが、おりこまれようとされている ことには、住民の受動被曝を増大させるものとして、反対します。 わたしたちは、農薬成分やその粉じんの吸入による健康被害防止のため、緩衝地帯の設置を、 求めてきました。今回の通知改定では、ほね抜きにされ、せいぜい、補助員なしでの 10m以下の額縁状緩衝帯(墜落による、ヒトや物の被害防止のためだけ)を設定するわけですが、 住宅地等との間にはもっと広い緩衝地帯を設定すべきです。 (5) 無人ヘリコプターもドローンも危害防止の規制義務の強化を 現行の指導指針には、無人ヘリコプーとドローンの区別なく、危害防止対策の留意点として、 以下の記載があります。 ・周辺住民、周辺の作業環境に留意した実施計画の策定 ・学校・病院等の公共施設、周辺住民等に対する実施計画の事前周知の徹底 ・風速・風向等を考慮した、適切な条件下での実施 ・実施区域への立入防止対策、農薬飛散低減対策の徹底 ・機体等の保管管理の徹底 これらの遵守は、地域のヒトや環境が農薬の影響を受けないようにするには、最低限の、 あたりまえのことですが、指導は単なる努力項目であり、無人ヘリコプターやドローンの 空中散布では遵守されているとはいいがたく、散布事故もあとをたたないのです。 後述するように、実施を義務づける法規制が必要です。 (6) 無人航空機事故報告は一元化すべき 現行指導指針では、報告書が都道府県協議会や農水省へ提出されても、公表されるのは、 限られた内容で、発生場所や機体の機種名さえも伏せられています。その上、 指導指針による報告とは別に審査要領による国交省への報告との二本立てになっています。 わたしたちは、報告は一元化して実施すべきであり、共通の立場で、事例漏れがないよう、 厳密に行い、原因を科学的に解明し、結果をきちんと公表すべきと考えます。 (7) 無人航空機による農薬散布業者の認定制度も必要 無人ヘリコプターは一機一千万円を超え、自動操縦ドローンは数百万円です。とても農家が 個人所有できませんし、その操作技術を習得するには教習費用もかかります。 そこで、防除業者の出番となりますが、農薬取締法では、防除業者は、一般の農薬散布者と 同等で扱われています。防除業者に届出を求めているのは、兵庫県防除業者に関する指導要綱 ぐらいです。無人航空機の空中散布は、地上散布よりも、高濃度の散布液を使用します。 ヒトや環境への影響が大きいので、高度の飛行技術だけでなく、農薬やその散布についての 知識も必要です。多くの圃場で散布する防除業者は責任も重く、個人の操縦認定者と区別して 扱うことが重要であり、国が無人航空機による防除業者の認定制度をつくるべきです。無人ヘリコプター、手動操縦ドローン、自動操縦ドローンをひっくるめて、次節のように、無人航空機飛行のすべてに自動車免許並に国による法規制、たとえば、無人航空機飛行法のような法律での網をかけることはできないのでしょうか。
・国が法律で、無人航空機の機体を認定し、オペレーターを認定すること ・指導指針記載事項を遵守しない又はしなかった申請者、実施団体、防除業者 やオペレーター(以下申請者等)には、飛行の許可や承認を規制又は禁止する。 ・空中散布等の実施に関して、事前の周知を行わない申請者等も上と同じ。 ・無人航空機の制御が不能になったり、制御者がミスして、万一墜落させても、 ヒトの被害、農作物被害、物損、火災事故等が発生しない場所が確保出来ない 地域での、飛行を許可・承認しない。 ・農薬散布の事故として、機体やヒト、農作物等の被害、物損はもちろん、不時着や 接触事故、域外への散布のような事例も含め、すべて、国交省へ事故報告を提出することを 申請者等に義務付ける。 ・上記事故報告を提出しない申請者等には、飛行の許可や承認を規制又は禁止する。 ・事故を起こした機体(撒布装置を含む)について、その後、飛行の許可や承認を 規制又は禁止する。 ・事故を起こした実施団体、防除業者やオペレーターには、その後、飛行の許可や 承認を規制又は禁止する。★無人ヘリに農薬飛散防止技術の導入をしない業界
こちら(2/06の質問主意書と2/15の答弁書) 【川内議員の質問3】 現在、ドローンでの農薬空中散布が急速に進められようとしている。その中には、 空中散布で許可される農薬の種類を拡大し、さらに、希釈倍数の基準を大幅に緩和する 内容が含まれている。 平成三十年十一月八日付の政府の規制改革推進会議による「農業用ドローンの普及拡 大に向けた意見」には、「わが国では、一九八〇年代に無人ヘリコプターで農薬散布を 行う際の航行と農薬に関する安全を確保するためにつくられた仕組みが、今や最新型ド ローン活用の阻害要因となっている。農業の成長産業化に向け、ドローン技術の進歩に 遅れることなく、スピード感を持った規制・制度の見直しが必要」と記載されている。 安全性の規制緩和、すなわち、経済を優先して安全を犠牲にするということは決してあ ってはならないと考えるが、政府の見解はいかがか、回答を求める。 <政府答弁書3> 御指摘の「ドローン」(以下単に「ドローン」という。)を用いて散布する農薬である か否かにかかわらず、農薬の登録に当たっては、科学的知見に基づく評価の結果、安全 性その他の品質に問題がないものに限って登録をすることとしており、御指摘のように 「経済を優先して安全を犠牲にする」ということはない。 【川内議員の質問4】 平成三十年十一月八日付の規制改革推進会議の意見では、ドローンによる農薬の空 中散布には、航空法に基づく規制、農薬取締法に基づく規制、電波法に基づく規制、の 三つが関係するとし、それぞれの現行制度と問題点及び実施すべき事項を指摘している。 @政府は、ドローンによる農薬の空中散布について、航空法、農薬取締法、電波法それ ぞれに基づく規制のどこに問題点があり、それらをどのように、どのような方法で変 更・実施すべきと考えているのか、具体的かつ詳細な説明を求める。 A特に、農薬取締法に基づく規制について、規制改革推進会議は、「陸上散布において 認められている 農薬のドローン散布に当たっては、希釈倍数要件の緩和が不可欠である。このような 農薬の希釈倍数の変更にも、あらためて農薬メーカーの登録・表示が必要とされ、その ために独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)による検査が必要と なる」「この検査においては農薬残留データを一から取り直すことが求められるため、 数千万円のコストがかかり、ドローンで利用可能な農薬の種類の拡大を阻んでいる」と 指摘している。政府は、数千万円のコストのために、安全性を確認するための農薬の作 物残留試験を不要とするつもりなのか、明確な説明を求める。 <政府答弁書4> 農薬のドローンによる散布については、政府としては、「規制改革推進に関する第四 次答申」(平成三十年十一月十九日規制改革推進会議答申)の「地方創生の強化のため の規制・制度改革」の「ドローンの活用を阻む規制の見直し」の「航空法に基づく規 制」、「農薬取締法に基づく規制」及び「電波法に基づく規制」の各項目において掲げ られた「基本的考え方」において指摘されたような課題があるものと認識しており、こ れらの項目の「実施事項」で示された方向で必要な措置を講じていく考えである。なお、 農薬をドローンを用いて高濃度かつ少量で散布する場合であっても、単位面積当たりの 農薬の有効成分の使用量が同じであれば農作物への残留は同程度となるため、作物残留 試験の追加実施を省略しても安全性への影響はないものと考えており、御指摘のように 「数千万円のコストのために、安全性を確認するための農薬の作物残留試験を不要とす る」というものではない。 【川内議員の質問5】 一方、ドローンによる農薬空中散布により、ドリフトの影響を調べる調査は全く無 視されている。農薬の空中散布は大気中にドリフトを起こし、害虫以外の生態系や人間 へ予想外の暴露を起こすことが懸念されている。経口で農薬を暴露した場合、肝臓で解 毒作用を受けるが、経気経路で暴露すると、血中に農薬がそのまま入り、全身に送られ てしまうので危険性が高まる。ましてや、国土の狭い日本では農地の周囲に必ず人家や 保育園、幼稚園、学校などがある。国土交通省の発表では、ドローンの落下事故も多く 報告され、その中には農薬散布のドローンも含まれる @政府は、ドローンによる空中散布を行った際の経気経路での暴露による影響および農 薬散布用のドローンの落下時の環境および健康影響についてどのような評価を行ってい るのか、具体的かつ詳細に説明されたい。また、経済を優先して、安全性についての規 制を緩和し、生態系やヒトの健康に悪影響を与える危険性が高い、ドローンによる農薬 の空中散布は推進するべきではなく、禁止すべきものと考えるが、政府の見解はいかが か、回答を求める。 A特に、ミツバチの大量死・大量失踪の原因となり、浸透性・残効性・神経毒性が強く、 ヒト、特に子どもの発達神経毒性が懸念され、予防原則のもと、EUなど世界で厳しい規 制が進行しているネオニコチノイド系農薬の、ドローンによる空中散布は、即刻禁止す べきと考えるが、政府の見解を求める <政府答弁書5> ネオニコチノイド系農薬を含めた農薬のドローンによる散布については、「空中散布に おける無人航空機利用技術指導指針」(平成二十七年十二月三日付け二七消安第四五四 五号農林水産省消費・安全局長通知)により、防除実施者に対して、ドローンの飛行高 度を農作物から二メートル以下に保持するよう求めてきたところであり、当該飛行高度 の保持については引き続き求めていく考えであるが、これに従って散布した場合の農薬 の飛散の程度は、通常の地上散布の場合と同程度であると考えられることから、御指摘 のように「禁止すべきもの」であるとは考えていない。 |