改定農薬取締法にもどる
n01201#2018年農取法関連の省令や通知改定でパプコメがつづく#19-03
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2018年農薬取締法の12月1日施行に伴い、農水省は「登録申請に係る試験に関する通知の改訂案へのパブコメ募集」(2月22日〜3月14日)につづき、3月28日からは、「"農薬取締法施行規則及び特定試験成績及びその信頼性の確保のための基準に関する省令”の一部を改正する省令案等についてのパブコメ意見募集」(4月26日締切)をはじめています。
★2月の登録申請資料についてのパブコメ
【参考サイト】農薬の登録申請において提出すべき資料について(案)についての意見・情報の募集について
(2019年02月22日−締切日3月14日)。
パブコメ案にある概要では、現行の農薬の登録を申請する者が提出すべき資料についての4通知を廃止し、これらの内容を統合して、新たな通知が定められることになりました。おもな通知の内容は、以下です。
【試験項目の追加】.
発達期の神経毒性を評価するため、発達神経毒性の試験項目を追加する。
【試験項目の提出要件の変更】−省略−
【試験方法】
1)国際的(OECD 及び CIPAC)に採択された試験方法に従う
2)国際的に採択された試験方法がない以下の試験については、本通知に試験方法を示す。
・農薬原体の組成に関する試験、・適用病害虫又は適用農作物等に対する薬効、
・適用農作物に対する薬害、 ・環境中予測濃度算定
わたしたちの提出した意見全文はこちらですが、その主なものや情報公開や補助成分に関する事項をを下記に示します。
なお、農水省がまとめたパブコメ結果概要と結果詳細と農水省の見解及び決められた登録申請で提出すべき資料はこちらです。
【意見1】農薬登録に関する通知の大幅な変更に繋がるにも拘わらす、新旧の記載が
明示されないまま、平成31年4月1日より適用するとされており、短期間のパブコメ
意見募集では、詳細な検討ができない。また、既に登録されている農薬について、
補足データ提出期限も示されていない。
わたしたちは、いままでの、下記のようなパブコメなどで、さまざまな意見を述べてきたが、
その内容の多くは、本件案では反映されておらず、旧態依然とした個所もみられる。
『ヒトの健康や環境・生態系・生物多様性保持に有害である農薬の使用を出来るだけ減らす、
すなはち、ヒトもミツバチにも優しい農業』というのが、わたしたちの基本的姿勢であり、
2018年改定農薬取締法が「農業競争力強化支援法」にもとづき、農薬の安定な供給や
農薬登録制度の国際調和を図ることを第一にめざしている点を批判してきた。
このことは裏を返せば、日本国内で農薬汚染を増やすし、輸出相手国にポストハーベスト農薬や
自国内使用のない農薬の摂取・被曝を増やすことに繋がる。
安全な農薬というものの、その実は、有機リン剤、クロルピクリン、グリホサート、
ネオニコチノイドほかのヒトやミツバチに被害を与えている農薬の使用をそのままにし、
農薬登録を簡素化し、使用を減らすどころか、増やそうとの方向性がみられるからである。
まず、いままで、当グループがパブコメ等で述べてきた意見のURLをあげた(案件番号は
パブコメの番号である。一部、目次や意見を記した)ので、その主張を参照願いたい。
さらに、【意見2】以下に本件提案の概要及び資料についての意見を述べる。
−14件のパブコメと1件の要望へのリンク 略−
【意見2】登録農薬制度下での基本事項として、一番重要なのは、情報の公開である。
、 行政が保持する情報や申請者が提出した毒性・残留性試験成績等の資料は、抄録や評価書として、
その一部が公表されているに過ぎない。すくなくとも、申請者には、評価書に、参照として
あげているすべての資料の開示を義務づけるべきである。
特に、(2-2)以下の公開も重視されたい。
(2-1)わたしたちは、いまままでの主張は『農薬の毒性及び作物残留性等のデータについては、
守るべき企業の財産として、公開を拒むのではなく、すべてのヒトが共有すべき科学的データ
として。国民への情報公開が原則であり、企業秘密の保持に関しては、別途の法的制度で
守ればよい。』である。
(2-2)後発(ジェネリック)農薬で、原体の成分及び毒性の強さが同等なものでは、一部の資料に
ついて登録申請時に提出を省略することができるとされているが、申請者は、
省略された試験成績、代替の対象とした試験成績をすべて公開する。
(2-3)農薬製剤は原体と補助成分からなっているが、申請者は、原体及び原体以外の成分の
同等性を明らかにする試験成績を実施し、公開する。
(2-4)農薬原体の再評価に際して、登録を継続する場合、申請者はいままでに提出されている
資料のすべてを公開する。
(2-5)農水省は、農薬原体の再評価のために、毎年。新たな知見などを収集するとしているが、
入手した資料・情報等を公開する。また、申請者が提供した新たな知見も公開する。
さらに、公開だけでなく、国民から、当該成分についての知見を公募する。
(2-6)農水省は、申請者が農薬製剤の登録を取消す旨の報告があった場合、その理由とともに公表する。
また、農薬原体の廃止が確認された場合は、申請者から提出されていた毒性・残留性試験成績等
をすべて、公開する。
【意見3】登録された農薬は、使用地域での一般環境汚染(大気、水、土壌)調査及び、
市場に流通する食品中の残留農薬調査を、期限をきって、申請者に義務付ける。
【意見4】登録された農薬は、使用地域での圃場や一般環境中の生物相調査(生き物の
種類及びそれぞれの生息数と分布パターン、花粉媒介植物では訪花昆虫などの調査)し、
これに基づく生物多様度指数を評価することを、期限を切って、申請者に義務付ける。
さらに、天敵やただの虫、雑草、水産植物への無毒性量や無影響量を明らかにする試験を、
申請者に義務付けるべきである。
【意見5】人体への影響についても、申請者に、登録後3年のあいだに、当概農薬使用者、
その家族、農村や都市居住者、男女、年齢に区分して、ヒトの尿や血液などに検出されないかの
分析調査の実施を義務付ける。検出された場合は、疫学調査も必要である。
【意見6】農薬製剤の補助成分についての毒性等の評価を申請者に義務付ける。
試験においては、農薬成分を含まない製剤の補助成分のみの試料で、いわば、対照区の毒性試験として、
現行の製剤に科せられている試験(急性経口毒性/急性経皮毒性/急性吸入毒性/皮膚刺激性/
眼刺激性/皮膚感作性)を追加すべきである。→【意見9】参照
【意見9】原案p13 表5 人に対する影響に関する試験成績 ロの(2)製剤の評価に
用いる試験成績被験物質:製剤
(9-1)農薬登録は製剤ごとになされるのに、主たる評価は原体についてである。
製剤の毒性試験だけでなく、補助成分の毒性試験を申請者に義務づけるべきである。→【意見6】参照
(9-2)『誘引剤等、有効成分等が封入された状態で使用される場合は、上記の試験成績の提出を
要しない。』とされているが、カプセル封入剤には、必要である。さらに、封入剤と
その分解物の毒性評価も必要である。
【意見14】原案p25 第3 試験方法について
製剤、補助成分の同等性を示す資料を申請者に提出させ、補助成分の産出地、成分製法。
成分中の不純物等のデータから、科学的に同等性を判別すべきである。
→【意見6】、【意見9】参照、
【意見15】原案p28 第4 提出すべき資料の代替について、
前述の【意見2】の(2-2)で述べたように、本文中にあげられている(1)から(7)の項目は、
すべて、公開されていなげれば、提出を省略してはならないとする。
【意見16】原案p40 農薬原体の同等性 について
同等性を証明するには、当該農薬ともとの農薬について、その物理的化学的性状だけでなく、
組成や毒性の判断基準となるデータが、それぞれ公開されていなければならないとする。
【意見17】原案p56 <適用病害虫又は適用農作物等に対する薬効>及び p64 <農作物等に
対する薬害>適用農作物に対する薬害については、
(17-1)圃場等での使用により、散布地内外での生物相への影響、食物連鎖による生態系への影響を
評価出来る試験、生物多様度指数、申請者に実施を義務付ける。→ 【意見4】を参照。
(17-2)作物中の病害虫の生息率と被害の関係を登録申請者に明示させることを義務付ける。
(17-3)薬効を重視するあまり、対象病害虫の100%駆除がめざされ、過度の農薬が散布され、
耐性菌や昆虫、草の発生につながることの対策が配慮されていない。
病害虫への影響量と防除率の関係及び耐性種の発生防止策の明示を申請者に義務付ける。
(17-4)農作物等に有害な原因となる病害虫、ウイルス等の対策について、農薬と農薬以外の方法を
対比させて、メリット、デメリットを明示することを申請者に義務付ける
(17-5)病害菌やウイルス、その他を感染させる媒介者*については、その生息率と病害虫発生防止の
関連を明示することを申請者に義務付ける。
*たとえば、松枯れでは、マツノザイセンチュウを媒介するマツノマダラカミキリやウメなどの
ppvを媒介するアブラムシなどをいう。
【意見19】原案p144 鳥類への影響及びミツバチへの影響については、
鳥類やミツバチは経口急性毒性試験や成虫単回接触・経口毒性試験のみでは、十分でない。
野鳥については、直接被曝だけでなく、食物連鎖の下位にあり、餌となる生物、繁殖・
受精卵への影響の評価も必要である。ミツバチでは、幼虫、産卵への影響、繁殖への影響、
帰巣への影響を調べるべきである。詳細は下記に示した。
【意見20】原案p148 環境動態(土壌残留、水中残留)については、
登録保留基準の設定の根拠になるが、現行では十分でないことは下記の参照で指摘した。再考を求める。
また、【意見3】に述べたが、環境中の実測データによる影響評価も加えるべきである。
【意見21】概要の文末には、『また、動物愛護の観点から、実験動物を用いない代替法が
確立している場合は、当該試験方法を積極的に採用する。』とあるが、具体例は示されていない。
たとえば、発達神経毒性にかわっては、ラットの新生仔の小脳神経細胞を用いた木村-黒田論文記載の方法
を代替とすればよい。
★3月の施行規則や省令についてのパブコメ
【参考サイト】農薬取締法施行規則及び特定試験成績及びその信頼性の確保のための基準に
関する省令の一部を改正する省令案等に関する意見・情報の募集について
(開始日2019年03月28日−締切日4月26日)。
今月のパブコメ案の概要は下記のようになっています。
【農薬取締法施行規則の改定】省令案では、現行施行規則の6つの条文に改定がなされています。
1)登録申請者が提出すべき資料にある「水産動植物に対する影響に関する試験成績」を
「生活環境動植物に対する影響に関する試験成績」に改める。
2)農薬製造者や輸入者が、毎年。農林水産大臣に報告することとなっている農薬の安全性に関する情報で、
報告事項にある「水産動植物への害の発生に関する情報」を「生活環境動植物への害の
発生に関する情報」に改める。
3)再評価の実施期間を、「概ね15年」から、「15年」とする
【特定試験成績及びその信頼性の確保のための基準に関する省令の改定】現行省令の改定案では、農薬GLP基準に
よるべき試験成績が必要なものが追加・変更されました。
1)原体以外についても物理的化学的性状に関する試験成績を加える
2)「水産動植物への影響に関する試験」を「生活環境動植物への影響に関する試験成績」に変更する
3)2020年4月1日から、蜜蜂への影響に関する試験成績を加える
【農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令の改定】現行省令の改定案では、
1)省令第一条(農薬使用者の責務)にある二号『人畜に危険を及ぼさないようにすること』を
『人畜に被害が生じないようにすること』と改定する。
2)同条五号『「水産動植物」の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとならないようにすること』
で、「水産動植物」を「生活環境動植物」と変更する。
3) 省令第二条(表示事項の遵守)で、使用者は、法第十六条第四号:登録に係る適用病害虫の
範囲及び使用方法。第九号:農薬の貯蔵上又は使用上の注意事項、第十一号:農薬の貯蔵上
又は使用上の注意事項に、第六号:人畜に有毒な農薬については、その旨、使用に際して、
講ずべき被害防止方法を追加する。
【農薬取締法第4条第1項第5号*に掲げる場合に該当するかどうかの基準】この条項で、農林水産大臣は、
「農薬の使用に際し、被害防止方法を講じた場合においてもなお人に被害を生ずるおそれがあるとき」に
該当すると認められれば。農薬の登録を拒否しなければならないとされていますが、その基準の告示案です。
1)農薬使用者に対する暴露量が、当該農薬の毒性に関する試験成績に基づき農林水産大臣が定める
基準に適合しないものとなること。
2)蜜蜂に対する暴露量が、蜜蜂に対する影響に関する試験成績に基づき当該蜜蜂の群の維持に
支障を及ぼすおそれがある程度の量であると認められるものとなること。
3)施行日は2020/04/01
このパブコメにある再評価制度や農薬使用者及び蜜蜂への影響については、下記にあげた「評価に関する検討会の頁」や「農薬の再評価の頁」、「第19回 農業資材審議会農薬分科会の頁」にある資料もを参考にして、パブコメ意見を投稿してください。
なお、このパブコメへの反農薬東京グループの意見、農水省がまとめた結果概要と意見詳細と農水省の見解、及び改定された省令等の条文は、以下です。
農薬取締法施行規則及び農薬GLP省令の一部を改正する省令(条文)
農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令の一部を改正する省令(条文)
農薬取締法第四条第一項第五号に掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める件(条文)
作成:2019-03-31