改定農薬取締法にもどる

n01305#農取法関連の施行規則、省令や告示の改定に関するパプコメ意見〜遵守省令では、再度、法規制の強化を求める#19-04
【関連記事】記事n01201
【参考サイト】農水省:農薬取締法施行規則及び特定試験成績及びその信頼性の確保のための基準に
       関する省令の一部を改正する省令案等に関する意見・情報の募集について


 農水省は、4月26日を締切として、上記のパブコメ意見募集をおこないました。提案の概要については、記事n01201で示しましたが、ここでは、当グループの提出した意見の一部を紹介します。反農薬東京グループのパブコメ意見全文はこちらです。
  パブコメ結果:結果概要意見詳細と農水省の見解、改定条文は以下
         農薬取締法施行規則及び農薬GLP省令の一部を改正する省令(条文)
         農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令の一部を改正する省令(条文)
         農薬取締法第四条第一項第五号に掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める件(条文)

 【補足】農水省は、上記につづくパブコメ農薬の登録申請において提出すべき資料についての一部改正案(改正農薬取締法の施行に伴う試験項目の追加等)に関する意見・情報の募集について募集を行いました(5月22日〜6月11日。概要新旧対照表)。
   反農薬東京Gの意見パブコメ結果概要意見詳細と農水省の見解改正・新旧対照表でした。  これらを踏まえた、登録申請に関する告示・通知等については、農水省の農薬登録の頁。登録申請書類については、FAMIC農薬登録申請の頁をごらんください。

★施行規則省令改定〜実施期間15年設定には反対
【参考サイト】農水省:パブコメ 農薬取締法施行規則及び特定試験成績及びその信頼性の確保ための基準に関する省令の一部を改正する省令案

 施行規則の改定には、条文にある 再登録の実施期間を「概ね15年」から「15年」とするもので、わたしたちは昨年のパブコ意見の【意見3】で、「概ね15年」に反対しており、15年にも反対です。その理由に以下を追加しました。  [理由2]農薬取締法第十四条(情報の公表等)及び 第十五条(科学的知見の収集等)は、農林水産大臣がなすべき責務のひとつであり、毎年、行政が調べたり、メーカーが入手した毒性等の新たな知見や報告を国民の前に明らかにし、その都度、評価についての意見を聞くべきである。
 あえて、15年と期限を区切る必要はなく、対象となる農薬ごとに、対応すればよい。

★特定試験成績及びその信頼性の確保ための基準に関する省令について
 現行基準に関する省令にある2個所に関する改定ですが、下記意見をのべました。
、   第二条二号にある『有効成分』を削ること、同条八号にある『水産動植物』を『生 活環境動植物及び家畜(蜜蜂に限る。)』 とすることは、改定農薬取締法に即したも のであるが、「蜜蜂に限る」とする必要はない。さらに、農薬製剤に添加されている補 助成分についての試験を強化し、また、試験成績が不足している、現行登録農薬につい ては、基準にあった試験の早急な実施が肝要である。
 理由は省略します。上記のパブコメ意見全文をみてください。

★遵守省令について
【関連記事】記事n00702記事n00805
【参考サイト】農水省:第19回 農業資材審議会農薬分科会配布資料にある遵守省令改定について
           パブコメ 農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令の一部を改正する省令案

 すでに、遵守省令は、2018年10月のパブコメ提案(記事n00702参照)でも改定され、2018年12月1日から新遵守省令が施行されていますが、これを、さらに3個所改定する提案がなされました。しかし、わたしたちが提出した前年改定時の意見の多くは無視されたので、今回の改定では、下記の意見をのべました。
 (3-1)省令第一条二号『人畜に危険を及ぼさないようにすること』を『人畜に被害が生じない
    ようにすること』と、同条五号『水産動植物』を『生活環境動植物』と改定されたが、
    同条の責務が果たされていないことに対して、使用者は農薬取締法違反で、罰則が
    科せられていないのは、問題である。

  (3-2)非食用作物栽培に適用される省令第二条第二項は、農薬取締法第十六条第六号にある
    人畜に有毒な農薬については、その旨、使用に際して、講ずべき被害防止方法が追加される
    ことになっているが、この項は、第一項と異なり、努力規定にすぎず、違反しても、
    罰則が科せられないので、第一項にくりあげ、同項第六号とすべきである。

  (3-3) 第四条(航空機を用いた農薬の使用)第一項は、航空機だけでなく、無人航空機も
    対象とすべきである。また、第二項は努力規定でなく、遵守すべき義務規定とすべきある。
    さらに、両項目とも違反の場合は、農薬取締法の罰則を科するべきである。
   [理由]貴省は、「2018年パブコメ」で、『ドローンを含む無人航空機を用いて農薬を使用しよう
     とする場合には、農薬使用計画書を提出しなければならないこととする。』としていたが、
     この案は実現しなかった。
     なお、わたしたちは、無人航空機による農薬飛散や飛行事故防止のためには、無人航空機に
     よる機体認定や操縦者認定は、国が実施すべきであるとしている。

  (3-4)第五条(ゴルフ場における農薬の使用)の第二項、第六条(住宅地等における農薬の使用)、
    第七条(水田における農薬の使用)、第八条(被覆を要する農薬の使用)、第九条(帳簿の記載)
    にある努力規定は、遵守すべき、義務規定として、違反すれば、農薬取締法の罰則を科する
    べきである。
   [理由] 有効期限を超えて農薬を使用しないことを含め、上記については、貴省の「2018年パブコメ」
     でも、農薬取締法違反による農薬使用者の罰則強化を求めている。
     なかでも、第六条にもとづく、通知「住宅地等における農薬使用について」が遵守されず、
     周辺への周知義務も満足になされていない。第七条のクロピク使用については、一般住民の
     農薬受動被曝による健康被害があとを絶たず、わたしたちは、使用免許制度も求めている。
     第九条の農薬使用履歴の記載は、食用作物の残留農薬違反の防止につながるにも拘わらず、
     義務化されていない。
★農薬使用者や家畜保護に関する告示について
【参考サイト】農水省:評価法に関する検討会の頁
           第19回 農業資材審議会農薬分科会配布資料にある農薬使用者への影響評価法蜜蜂への影響評価法
            農薬取締法第4条第1項第5号に掲げる場合に該当するかどうかの基準について

           パブコメ:農薬取締法第四条第一項第五号に掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める告示案

  この告示案は、使用に際して、被害防止方法を講じても、なお人畜に被害を生ずるおそれがあるときに、農水大臣が登録拒否する根拠となる基準に関する重要なものです。
 農薬使用者の被害防止に関する基準と、家畜の被害防止に関する基準にわけて、意見を述べました。

  (4-1)第一項は、農薬使用者の被害防止に関する事項だが、基準となる農薬使用者暴露許容量と
    使用者の暴露量が十分検討されているといえない。
    まず、経過措置では、「健康に著しい影響」を「健康に影響」とするべきであり、
    さらに下記の意見を述べる。

  (4-1-1)農薬使用者は、日常的に食品や水から農薬を摂取しており、これに散布作業による
     経気や経皮による暴露量を加算すると、ADIを超えるおそれもある。反復的に農薬を
     暴露する使用者について、ARfDの考え方のみで、暴露許容量を設定すべきでない。
     繰り返しのARfDなみの暴露が、使用者の健康に与える影響が不明なままであることが、
     一層、懸念を強くする。

  (4-1-2)使用者の暴露許容量は、ARfDをもとに設定されるが、食品安全委員会が決めたARfDには、
     妊娠中又は妊娠可能の女性について、一般区分より低い値が設定されている農薬もある。
     使用者の性差は考慮されていない。個体差の安全係数10だけで、十分といえる根拠を示し、
     妊娠中の女性が農薬を散布しても、影響がない暴露許容量を設定すべきである。
     たとえば、IARCが発がん性ランクを2Aとしているグリホサート系除草剤は、
     女性が散布しているケースもある。

  (4-1-3)使用者の年齢差についても、同様のことがいえる。成長途上の若年者や解毒機能や
     免疫機能が低下する高齢者への影響がないといえる暴露許容量を設定すべきである。

  (4-1-4)わたしたちは、農薬散布地周辺の一般人の受動被曝による健康被害防止のため、
     さまさまな使用規制を求めている。貴省は農薬使用者への安全性が強化されれば、
     住民にも反映されるとしているが、農薬に過敏な人も安心して暮らせる暴露許容量を
     設定すべきである。
     また、クロルピクリンのように、使用者よりも周辺住民が受動被曝による健康被害を
     多く受けている実態を看過してはならない。

  (4-1-5)農薬使用者は、複数の農薬を反復的に使用し、その都度、被曝することになるが、
     暴露許容量は、単一農薬でしか評価されていない。この理由を明らかにしてほしい。
     また、同一作用機構で影響を与える農薬類は、単独でなく、同一種類の農薬群としても
     暴露許容量を設定すべきである(たとえば、有機リン系、ネオニコチノイド系など)。
     さらに、複数農薬の暴露についても、科学的に評価すべきである。たとえば、水道水の
     農薬についての水質管理目標設定項目は、総農薬方式が採用されている。

  (4-1-6)農薬使用者の暴露量について、散布状況の実態調査を充実させ、使用者が体内に
     取り入れている農薬やその代謝物の数量を尿、血液、毛髪、母乳などから調査し、
     暴露量算出に反映させるべきである。

  (4-1-7)農薬取締法第二十七条 (農薬の使用に関する理解等)で、『農薬使用者は、農薬の使用に
     当たっては、農薬の安全かつ適正な使用に関する知識と理解を深めるように努める』とある。
     使用者が使用する農薬の暴露許容量や暴露量の情報、自らの農薬汚染度を知ることは、
     自身の安全意識を向上のためにも重要である。

  (4-2)第二項は、家畜に対する被害防止に関する事項だが、家畜は「蜜蜂に限る」とされている。
    農薬については、蚕も家畜とされるが、この号が蚕に適用されない理由を明確にすべきである。
    また、経過措置では、『当分の間』とされ、人の暴露許容量に対応する暴露量を「蜜蜂の群の
    維持に支障を及ぼすおそれがある程度の量である」と表記にするのは、科学的とはいえない。
    「当分の間」と『程度のの量である』を削除するよう、すみやかに、試験方法等や
    暴露基準と暴露量の関連等を明確にすべきである。
    ここでは、家畜をミツバチとして、以下の意見を述べる。

   (4-2-1)成虫接触及び経口毒性。幼虫経口毒性が指標とされるが、巣内に持ち込まれた農薬の
     女王蜂、女王蜂体内に蓄えられた精子、産卵された卵への毒性も暴露基準に反映させるべきである。

   (4-2-2)外勤蜂が巣に持ち込む花粉、花蜜、水分や溢液などに含まれる農薬量と毒性指標との
     関連を明確にすべきである。

   (4-2-3)巣内の蜂数の減少を農薬の致死毒性を指標とするだけでなく、蜂群の行動異常や病害虫に
     対する抵抗力も指標にすべきである。

   (4-2-4)自然界での農薬の暴露は単一ではなく、蜂は、複数の農薬に暴露し、巣にもちこむ。
     農薬使用者と同様、ミツバチでも複合毒性も考慮すべきである。

   (4-2-5)ミツバチに被害を与えることが明らかで、使用上の注意事項に暴露を避けるよう記載がある農薬
    (たとえば、欧米で使用禁止がすすみ、日本では、斑点米カメムシや果樹等で使用されている
    ネオニコチノイドや有機リンほか)の評価を促進すべきある。

  (4-3)告示の実施は、平成三十二年四月一日となっているが、既存登録農薬への適用を含め、
    早急に実施すべきである。

作成:2019-05-01、更新:2019-10-01