*** 無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン案 *** 【第1 趣旨】 ドローン農薬空中散布は、防除作業の負担軽減及び生産性の向上に資する技術として 期待されており、近年、当該散布の実施面積は、増加傾向にある。 農薬を使用する者は、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令に基づき、 農作物や人畜、周辺環境等に危被害を及ぼさないようにする責務を有するとともに、 安全かつ適正な使用に努める必要がある。 【第2 空中散布の実施】 1 空中散布の計画 (1)実施主体(防除実施者及び防除を自らは行わずに他者に委託する者)は、空中散布の 実施区域周辺を含む地理的状況(住宅地や公共施設に近接しているかなど)、耕作状況等の 作業環境を十分に勘案し、実施区域及び実施除外区域の設定、散布薬剤の種類及び剤型の選定 (粒剤、微粒剤等の飛散の少ない剤型)等の空中散布の計画について検討を行う。 なお、3に規定する対応により危被害を防止することができないおそれがある場合は、 空中散布の計画を見直す。 (2)空中散布の作業を他者に委託する場合は、防除委託者は、防除実施者と十分に連携して 空中散布の計画を検討する。 [コメント]遵守省令では、航空機による空中散布計画の農林大臣への提出が義務付けられ、 『対象地域において、風速及び風向を観測し、対象区域外に農薬が飛散することを防止するために 必要な措置を講じるよう努めなければならない。』となっていますが、ドローンを含む無人航空機には、 この条項は適用されず、地上散布並の注意を払うだけで、良いとなってしまいます。 また、いままでは、「空中散布における無人航空機利用技術指導指針」により、実施主体・散布者が 都道府県や地域協議会に計画書を提出し、指導を受けることになっていましたが、これでは、地上散布と 同じことで、実施主体・散布者が、勝手に計画を立て、勝手に散布をしてよいということになりかねません。 しかも、地散より、高い濃度の農薬散布液を短時間で広い範囲に散布することになるのに、散布者自からの 個人圃場での計画しか眼中になく、地域での散布状況を総括的にみることができなくなります。 いままで、協議会が担ってきた役割をどこが行うか明確ではなく、地域での一斉散布で、個人の 地上散布よりも、広い範囲の生活環境や自然環境への農薬汚染拡大が危惧されます。 2 空中散布の実施に関する情報提供 (1)空中散布の実施区域及びその周辺に学校、病院等の公共施設、家屋等がある場合実施主体は、 当該施設の利用者、居住者等に対し、農薬を散布しようとする日時、農薬使用の目的、 使用農薬の種類及び実施主体の連絡先を十分な時間的余裕を持って情報提供し、必要に応じて 日時を調整する。 (2)天候等の事情により空中散布の日時等に変更が生じる場合、実施主体は、変更に係る事項について 情報提供を行う。 (3)空中散布の実施区域周辺において人の往来が想定される場合、実施主体は、作業中の 実施区域内への進入を防止するため、告知、表示等により空中散布の実施について 情報提供を行うなどの必要な措置を講ずる。 [コメント]この項も、実施主体・散布者に任された場合、地域でのドローン散布状況を知りたい人は 個々の散布者に尋ねることになります。散布隣接地だけでなく、他所から往来する人や通行車両に 散布情報を周知させるには、地域協議会などが情報をとりまとめて、適切で完全な周知を 実施すべきです。 実施主体が、周辺施設の利用者、居住者等に対し、散布情報を知らせよということは、散布者と 受動被曝を受ける人が、個々に情報を共有すればいい考えで、納得できません。 実施主体・散布者には、指定した非散布地域に、農薬が飛散したり、大気汚染で、健康被害が 発生しないことを義務づけるべきで、散布情報の周辺への周知を怠った場合や人や農作物、 自然環境に被害を与えた場合には、当該者の空中散布を禁止することも必要です。さらに、 ミツバチや人の散布地域からの退避が必要な場合は、実施主体・散布者の責任で、実施すべきです。 また、いままでのような補助者がいなくなると、ひとりの散布者がどこまで、散布地域への 侵入を防止できるか疑問です。たとえば、ドローンに警笛をつけて飛行させるのでしょうか。 3 実施時に留意する事項 (1)実施主体は、オペレーター等の関係者及び周辺環境等への影響に十分配慮し、風下から散布を 開始する横風散布を基本に飛行経路を設定する。 (2)オペレーターは、あらかじめ機体等メーカーが作成した取扱説明書等により、無人マルチローター 及び散布装置に関する機能及び性能について理解する。 (3)オペレーターは、第4の3(1)により機体等メーカーが取扱説明書等に記載した散布方法 (飛行速度、飛行高度、飛行間隔及び最大風速。別添1参照。)を参考に散布を行う。 (4)なお、機体等メーカーによる散布方法が設定されておらず、取扱説明書等に記載がない場合は、 当面の間、「マルチローター式小型無人機における農薬散布の暫定運行基準取りまとめ」 (平成 28 年3月8日マルチローター式小型無人機の暫定運行基準案策定検討会)において、 無人マルチローターの標準的な散布方法として策定された、以下の散布方法により実施する。 ・飛行高度は、作物上2m以下。 ・飛行時の風速は、地上 1.5mにおいて3m/s以下。 ・飛行速度及び飛行間隔は、機体の飛行諸元を参考に農薬の散布状況を随時確認し適切に加減する。 (5)オペレーターは、散布の際、農薬の散布状況及び気象条件の変化を随時確認しながら、 農薬ラベルに表示される使用方法(単位面積当たりの使用量、希釈倍数等)を遵守し、 ドリフトが起こらないよう十分に注意する。 (6)ドリフト等を防ぐため、架線等の危険個所、実施除外区域、飛行経路及びオペレーター等の 経路をあらかじめ実地確認するなど、実施区域及びその周辺の状況把握に努めるとともに、 必要に応じて危険個所及び実施除外区域を明示しておく。 (7)実施主体は、散布装置については、適正に散布できること(所定の吐出量において間欠的では ないことなど)を使用前に確認するとともに、適時、その点検を行う。 (8)周辺農作物の収穫時期が近い場合や学校、病院等の公共施設、家屋等が近い場合など、 農薬の飛散により危被害を与える可能性が高い場合には、状況に応じて、無風又は風が弱い 天候の日や時間帯の選択、使用農薬の種類の変更、飛散が少ない剤型の農薬の選択等の対応を 検討するなど、農薬が飛散しないよう細心の注意を払う。 (9)強風により散布作業が困難であると判断される場合には、無理に作業を続行せず、 気象条件が安定するまで待機する。 (10)オペレーター等の農薬暴露を回避するため、特に次の事項に留意する。 ア オペレーター等は、防護装備を着用すること。 イ 空中散布の実施中において、ナビゲーター等は農薬の危被害防止のため連携すること。 (11)空中散布の実施により、農業、漁業その他の事業に被害が発生し、又は周囲の自然環境 若しくは生活環境に悪影響が生じた場合は、直ちに当該区域での実施を中止し、その原因の 究明に努めるとともに、適切な事後処理を行う。 [コメント]これらの注意事項を遵守するには、目視飛行、補助員の配置が不可欠です。 夜間や傾斜地・高所など目視出来ない個所での散布を規制すべきなのに、この点の記載がありません。 安全性確保には、目視で架線や障害物を避けるだけでなく、散布域のプログラム制御導入も必要です。 さらには、散布域に隣接した緩衝域の設置を義務付けるべきです。これは、ドローンの墜落被害だけ でなく、農薬飛散や大気汚染被害を防止するためにも役立ちます。 農薬散布に係る飛行速度、飛行幅などを気象条件と合わせて、プログラムによる自動制縦は、 ドローンだけでなく、無人ヘリコプターにもつければよいでしょう。 たとえば、2m以上の高度を飛んだり、風速が強かったり、あるいは、学校、病院等の公共施設、 家屋等あるいは有機圃場や対象外圃場が風下になる場合、散布装置から農薬が噴出できないよう プログラムによる自動操縦を義務付ければよいと思います。 万一、ドローン飛行や農薬散布による危被害が発生した場合の医療機関を実施主体・散布者が 熟知していることも重要です。散布地周辺に農薬による危被害を与えた実施主体・散布者には、 報告を義務付け、飛行禁止等のペナルティーを科すことも忘れてはなりません、 【第3 事故発生時の対応】 空中散布を実施した場合の事故発生時の対応については、次のとおり実施する。 1 事故の類型は、以下のとおりとする。 (1)農薬事故 空中散布中の農薬のドリフト、流出等の農薬事故 (2)その他 無人マルチローターの飛行による人の死傷、第三者の物件の損傷、飛行時における 機体の紛失又は航空機との衝突若しくは接近事案 [コメント]整備不良、異音、不時着、架線や障害物への軽微な接触も、事故と認識すべきです。 農薬の住宅地。公共施設、非対象作物への飛散、通行者・車両の被曝、ミツバチなど 有用生物。水産生物や土壌生物、生活環境動植物、生物多様性・生態系への影響なども 危被害として。報告される必要があります。 また、原因となった実施主体・散布者にペナルディーを科するだけでなく、機体製造メーカー、 プログラム製作者の責任も明確にすべきです。 2 1の(1)に規定する事故が発生した場合は、実施主体は、別添2の事故報告書を作成し、 実施区域内の都道府県農薬指導部局に提出する。 3 事故報告書は、事故発生後直ちに第1報(事故の概要、初動対応等)を、事故発生から1ヶ月以内に 最終報(事故の詳細、被害状況、事故原因、再発防止策の策定)をそれぞれ 作成すること。 なお、空中散布の作業を他者に委託した場合は、防除委託者は、防除実施者と十分連携して 当該事故報告書を作成する。 4 都道府県農薬指導部局は2により事故報告書の提出があった場合は、記載に不備がないことを 確認し、地方農政局消費・安全部安全管理課(北海道にあっては直接。沖縄県にあっては 内閣府沖縄総合事務局農林水産部消費・安全課。)を経由して、農林水産省消費・安全局植物防疫課 (以下「植物防疫課」という。)に当該事故報告書を提出する。 5 植物防疫課は、4により事故報告書の提出があった場合は、これを取りまとめ、都道府県等の 協力を得て、空中散布における安全対策を検討する。また、関係機関との間で、当該検討結果に 係る情報を共有するとともに、実施主体に対し、再発防止を図るよう指示する。 6 植物防疫課は、5により取りまとめた事故報告を地方航空局保安部運用課に提供する。 7 1の(2)に該当する事故が発生した場合は、直ちに飛行の許可等を行った地方航空局保安部 運用課又は事故発生地を管轄する空港事務所(別表)に報告する。 [コメント] 事故原因は、専門家を含む第三者機関で、科学的に調査すべきです。 事故機体や原因者である実施主体・散布者は、空中散布を禁止させ、認定証の剥奪、操縦禁止など ペナルティーを科すべきです。また、ペナルティー該当者は、散布禁止後、再教育を義務付ける ことが、必要です。 さらに、事故や危被害を報告しなかった実施主体・散布者には、散布は禁止を含むペナルティーを 科すべきです。 【第4 関係機関の役割】 空中散布に関係する機関は、次の役割を果たす。 1 植物防疫課 (1)「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」(以下「官民協議会」という。)等を通じ、 空中散布の安全かつ適正な実施のために必要な情報及び資料の収集及び提供を行うこと。 (2)空中散布の円滑な実施及び事故発生時における迅速かつ的確な対応のため、関係機関との間で 連絡体制を整備すること。 2 都道府県 (1)実施主体に対し、1(1)により提供を受けた情報及び資料その他空中散布に関する 技術的情報を提供すること。 (2)実施主体から事故に関する情報が提出された場合には、安全かつ適正な空中散布の 実施のための指導及び助言を行うこと。 3 機体等メーカー (1)機体・散布装置の使用条件(対象農作物、農薬の剤型等)ごとの散布方法に関する情報に ついて、取扱説明書等に記載するなど、使用者が把握しやすい手段により情報提供すること。 散布方法の設定にあたっては、落下分散性能の把握、ドリフト状況の把握等の結果から 設定するとともに、その根拠となった試験結果(試験条件を含む)を Web サイト等で 公表するよう努めること。 (2)1(1)により提供を受けた情報及び資料その他空中散布に関する技術的情報を使用者に 提供するとともに、使用者からの照会に対応する窓口を整備すること。 [コメント]官民協議会のメンバーは、農薬使用を推進する団体で構成され、農薬を食品や水から 摂取したり、受動被曝を受ける一般国民、有機農業団体、環境保護団体らの 声が届きません。 都道府県ヤ市町村で、散布現場の状況を知るもの、地元の農薬被曝者や環境保護団体などを 含めて、散布計画の内容を検討すべきです。 機体等メーカーには、農薬散布に関する試験結果の公表を義務付けるべきです。また、 機体や飛行・散布のプログラムを点検する第三者機関も必要です。 【第5 情報管理】 本ガイドラインに基づく情報提供に当たっては、個人情報の保護に関する法律(平成15 年法律第 57 号)、 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 58 号)、 各都道府県が定める個人情報保護条例等に留意する。 [コメント]農薬空中散布による危被害防止のために、散布に関する情報開示が重要です。 散布周知情報が、個人情報保護の対象にはならないと考えます。実施主体の散布計画は、地図入りで HPなどで、公開することを義務付ける必要があります。 また事故情報は、農水省と国土交通省が別個に報告していますが、その内容は異なります。 特に、農水省は発生場所すら開示していません。個人情報保護の名目で、事故状況の詳細報告を 開示しないことがあってはなりません。それでは、再発防止につながりません。 【第6 改訂】 本ガイドラインは、無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る技術の開発状況等を踏まえ、 必要に応じて見直すこととする。 【附則】 このガイドラインは、令和元年7月1日から施行し、同日付けで、「空中散布における無人航空機 利用技術指導指針(平成 27 年 12 月3日付け 27 消安第 4545 号消費・安全局長通知)」は廃止する。 [コメント]廃止予定の指導指針は無人ヘリコプターもドローンも対象となっていたが、 今後どうなるかは、不明では、 意見も述べられない。 その上、今年度の空中散布時期の途中で、新ガイドラインを施行すべきでなく、ドローン及び 無人ヘリコプターを含む無人航空機全体に係わる通知やガイドラインは、2020年度の施行とし、 その間、使用者だけでなく、環境保護団体を含め、農薬空中散布の影響を受ける住民に対し、 十分な説明や研修などを実施すべきです。 これは、農薬取締法第二十七条(農薬の使用に関する理解等)、第二十八条(農林水産大臣、 環境大臣及び都道府県知事の援助)に基づくものです。 また、すべての空中散布実施者に係わる「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」の 努力規定を義務化や通知「住宅地等における農薬使用について」の遵守も必要です。 以下、別添略 <散布方法と薬剤の拡散状況の関係> 無人マルチローターによる空中散布に伴う事故報告書 別表略 国土交通省地方航空局保安部運用課及び地方空港事務所の連絡先及び管轄区域
質問と植物防疫課からの回答 ドローン・無人航空機による 農薬空中散布ついて |