松枯れ・空中散布にもどる

n01601#二分割された無人航空機の農薬空中散布ガイドライン〜1ヶ月遅れで発出すぐに実施とは#19-07
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【参考サイト】国土交通省:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルールにある
              無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン許可・承認手続きについて
                農薬空中散布については
                    飛行マニュアル(DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下)〜空中散布を目的とした申請について適用

 無人航空機の空中散布について、7月1日から「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」を廃止し、あらたなガイドラインで運用しようとしていた農水省の意図は、思い通りにいかず、やっと、7月30日に、先の2つのパブコメ結果(下記の表にある@とAを踏まえ、「無人ヘリコプターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」を同時に発出しました。
 国土交通省は、7月26日に無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領を改定、7月30日に無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン 空中散布飛行マニュアルを発出しました。

 7月中は、従来の農薬空中散布に関する技術指導指針で運用されていたものが、なんと、二つのガイドラインが出されたその日から、いままで共通であった指導内容が、一斉に切り替わるというのです。わたしたちの拙速に実施するなというパブコメ意見は無視されました。

 両ガイドラインから、農林水産航空協会、都道府県協議会、地域協議会の名称が消えていますが、無人ヘリコプターとドローンの大きな違いは、飛行高度と実施計画書及び実績報告書の届けです。ドローンは、作物上2m以下の飛行で、無人ヘリコプターは、作物上3〜4m以下となっています。
 無人ヘリコプターは『空中散布計画書を、空中散布を実施する月の前月末までに、空中散布の実施区域内の都道府県農薬指導部局に届け出ること。』となっており、『実績報告書 』をも作成・届け出る必要がありますが、ドローンは、実施主体が、自ら空中散布計画をたてるだけで、計画報告も実績報告も届け出る必要はありません。この点、地上散布とかわりません。
 昨年秋、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」の改定案で、有人ヘリコプターなみに、無人航空機空中散布の農薬使用計画書届けの義務付けを目論んでいた農水省の影はみじんもみえません(記事n00805)。

 どちらの農薬散布でも、実施主体は、空中散布計画の情報を、地域の農業者や養蜂者、水道事業体、住民、学校や公共施設等に周知せねばなりませんが、ドローンについては、実施主体や防除業者まかせになり、行政の担当部署に聞いても「わかりません」との答えが返ることになります。このままでは、知らないうちに散布されることになります。自治体の条例や要綱などで、計画届を提出させ、行政が責任をもって散布周知をすることを制度化すべきです。

 ドローンの飛行高度が2mと無人ヘリコプターより低いものの、使用される農薬の希釈倍率が地上散布よりも高濃度になることは確実で、農薬の散布地域外飛散(対象外作物・有機農作物の汚染、住宅地域等での大気汚染、水田や畑地、林地からの水系や自然環境汚染)やダウンウォッシュにより作物への残留農薬量が増すことにつながるわけです。これらの負の面の検証がどのように行われているかわからないまま、散布が無制限に行われる懸念を払拭できません。

 スマート農業を標榜し、ドローン推進のための「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」は、農薬による健康被害者や環境保護を求める人たちの空中散布反対の声を排除して、「農業分野における補助者なし目視外飛行実証プロジェクト」実証プランの募集を実施しています。その顔ぶれを会員名簿でみてください。団体100会員 個人44会員がすらっと並んでいます。 

 今回のガイドラインでは、地上散布の代替と位置付けられたドローン農薬空中散布が、やりやすくなることは、目に見えています。農薬の使用量を減らし、作物への残留量を減らし、散布地域外や住宅地域、自然環境への農薬飛散を防止することに目標をおかない農薬依存のスマート農業政策に歯止めをかける必要があります。
 なお、■印をつけた新ガイドラインなどの詳細な内容については、今号で紹介することはできませんでしたが、次号以降で、解説していきます。


パブリックコメントのタイトル
B「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」の一部改正に関するパブリックコメントの募集について
提案内容募集時画面 概要
 【募集開始日】2019年7月4日 【募集終了日】2019年7月22日 【結果公示日】2019年7月26日
意見結果公示画面 概要
【意見数】50件 【提案変更の有無】無  反農薬東京グループは提出せず
公示内容 無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(7/26改定)
 無人航空機を飛行させる際には飛行情報共有システムに、飛行する日時、場所等を入力する旨などを追加した
備考東京オリンピック・パラリンピック大会までに、全ての許可承認を受けた無人航空機が本改正を適用したものとするための改定で、農薬空中散布用無人航空機も規制強化になる
A無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン(案)についての意見・情報の募集について
提案内容 募集時画面 概要 ガイドライン案
 【募集開始日】2019年5月9日 【募集終了日】2019年6月7日 【結果公示日】2019年7月30日
意見結果公示画面 結果概要意見に対する考え方
 【意見数】26件 【提案変更の有無】有  反農薬東京グループの意見
公示内容 無人マルチローターガイドライン(7月30日施行)
備考「空中散布における無人航空機利用技術指導指針」を廃止し、ドローンによる空中散布部分をガイドラインとして、運用。
 無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドラインの制定について(2019年5月)
@ドローンの農業利用の拡大に向けた規制改革に係る関係通知の整備に関する意見・情報の募集について
提案内容 募集時画面 関係通知の整備の概要
 【募集開始日】2019年2月10日 【募集終了日】2019年3月11日 【結果公示日】2019年7月30日
意見結果公示画面 結果概要意見に対する考え方
【意見数】153件 【提案変更の有無】有  反農薬東京グループの意見
公示内容 「空中散布を目的とした無人ヘリコプターの飛行に関する許可・承認の取扱いについて」新旧対照表
登録代行機関の登録等実施要領  無人ヘリコプターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン参照)
備考「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」において、ドローンの部分は廃止され、空中散布は上述の「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」の適用となり、無人ヘリコプター空中散布の取扱いに関する部分が本通知の適用となる。
 7/30には、国土交通省:無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン が発出されている。
また、飛行マニュアル(DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下)〜空中散布を目的とした申請について適用がある。

作成:2019-08-01