街の農薬汚染・住宅地通知にもどる

n01603#習志野市の小学校でチャドクガ被害49人〜エトフェンプロックス散布後に#19-07

 6月17日に、千葉県習志野市の鷺沼小学校のHPに、「第1学年児童への発疹の出現について(お詫びとご報告)」との文書がアップされました。ツバキなどに発生するチャドクガの毒毛にやられたのかと思いきや根はもっと深いところにありました。

★害虫確認、即 業者に駆除依頼、農薬散布翌日に児童が立入・除草
 市への問い合わせと学校長のお詫び文書でわかった経緯をまとめると、以下のようになります。

 ・6月4日、住民より、小学校南側の市道にあるツバキに害虫発生の報告を受けた。
、街路樹は市公園緑地課が管理しており、委託防除業者に現地調査させ、その後、業者に農薬散布を依頼。業者は周辺へ『お知らせビラ』を配布したが、隣接住宅及び鷺沼小学校へは、6月4日の18時〜19時に知らされた。
 ・6日早朝,ツバキのチャドクガを駆除するため、トレボン乳剤(登録番号16758号。詳しくは囲み記事参照)を希釈倍率4000倍で散布した。散布予定の看板なし、散布中は監視員を配置、散布後は、立入禁止期間の明示もなし。
 ・7日に、学校はクリーン作戦(地域美化活動)を実施、1年生は同地の除草作業をした。
 ・8日から9日に、児童の発疹が出現。
 ・10日までに、14人の児童にチャドクガの毒によるとみられる発疹が出現、14日までに、47名に発疹、かゆみの症状がでた。
   6月10日発疹の出現14名、11日:19名、12日:47名、17日:49名、以降増減なし。
   6月25日現在、ほとんどの児童の出現は解消。
 ・14日に1年生の保護者会、17日(月)全校保護者会で、事情説明とお詫び。

 同校は児童数750名ほどの中規模校ですが、120名を超える一年生の三分の一以上に被害がでたことに対し、校長は『校内の情報伝達の不備が危機意識の欠落から生じてしまったものであり,その結果多くの児童たちが発疹や痒みなどの苦痛にみまわれ,保護者の皆さまに多大なご迷惑をおかけしてしまいました。心からお詫び申し上げます。』と述べています。
 この発言はどうしてでてきたのでしょうか。

★環境省マニュアル無視の安易な農薬散布だった
 樹木に害虫をみつけた日に、市は、散布業者に農薬による駆除を求めています。よほど、大量のチャドクガが発生していたのでしょうか。公園緑地課は、『病害虫発生報告を受けた段階で、防除業者へ樹木の消毒作業を委託しております。仕様書は、情報公開制度にて開示しておりますので、御確認ください。』とし、なんの説明もしてくれません。

 環境省の『公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル』には、チャドクガについて以下のような説明があります。
  『人への害等:毒のある体毛は非常に脱落しやすくふれると激しいかゆみを覚え発疹し、
    場合によっては1週間以上、激しいかゆみに悩まされる。この毒毛は幼虫のみではなく、
    成虫、卵塊、繭にも付着している。 
   防除方法  :家庭の庭等管理が容易な場所では、冬のうちにたんねんに葉裏の卵塊をさがして
    除去することも可能。また、幼虫のまだ小さいうちに葉を切り取って踏みつぶしたり、
    ビニール袋で覆って、枝や葉を切り取って袋に入れるのも効果的な防除法。駆除は
    風のないときを選び、毒針毛が直接皮膚に触れないようにして行う。
    また、集団に対して農薬をスポット的に散布することも可能。幼虫が大きくなると
    集団がいくつにも分かれ、被害が樹全体に及び、物理的な除去は毒針毛等が人へ付着し危険。
    ツバキ及びサザンカには生物農薬であるBT剤の適用があり、その他の農薬にも適用がある。
    使用する場合は、できるだけ飛散しないよう注意を要する。』

  『人に危害があるものとして、イラガ、チャドクガ等がある。これらの防除基準としては、
   害虫等による健康被害の防止を優先する。その場合、公園や街路樹等は不特定多数、
   特に子供が触れる可能性があるため、発生を確認した場合はまずその区域への立入りを
   制限する等被害防止のための措置を講じる必要がある。』

  『病害虫の物理的な防除等を講じ、病害虫が駆除されたことを確認後隔離措置を
   終了するなど、現地の状況により、適切な方法を選択する。』

  『農薬散布区域の近隣に学校、幼稚園、保育園、通学路、図書館等がある場合には、
   当該学校等を通じて子供の保護者等への周知を図るとともに、散布の時間帯に最大限配慮する。』 
 とし、さらに、エトフェンプロックスについては、公園や街路樹について、樹高に応じて、飛散するため、立入制限範囲は 3.5m〜5mと述べています。

 いままでに、当該樹木で、チャドクガの被害を受けた児童はいなかったかを尋ねましたが、『被害報告を受けていないことから、被害を受けた児童はいままでいなかったと認識しております。』『チャドクガのことについて特に取り上げて指導することはありませんでした。』との返事がありました。
 マニュアルでは、駆除した死骸から飛散する毒毛の害については、記述がありませんが、当然ながら、虫が死んでも毒毛は残り、飛散するわけです。ここに、思い到らなかった市や学校側の責任は大きいです。常日頃から、前もって剪定をしておき、虫の発生状況を観察していれば、チャドクガが成長し、広がる前に対処できたはずです。

★住宅地通知の周知は?
 もうひとつ、大きな問題は、「住宅地通知」の遵守や農薬危害防止運動の連絡が、不十分なことです。次ぎの問いへの回答をみてもわかります。
  ・市の広報や回覧等で、住宅地通知で農薬使用者が遵守せねばならない事項について、
   市民に知らせたか⇒ [回答]していない。

  ・ 学校側が防除業者からの散布周知を、教職員に知らせなかったのは、なぜか。
    ⇒ [回答]連絡等を周知するにあたり、確固たる取り決めがなかったため

  ・いままでも、職員、保護者、児童ら学校関係者には、散布実施の連絡をしたか
    ⇒ [回答]職員には、掲示板・口頭で周知し、担任から児童に
      口頭で、事前に注意喚起を促していた。保護者に連絡したことなし。

  ・住宅地通知では、農薬散布しない方法をとるよう指導されているのに、なぜ、安易に
   農薬散布を認めたのか。⇒ [回答]農薬取締法に基づいて適正に実施している。

  ・ 児童による地域美化活動を散布翌日に実施したのは何故か。⇒ [回答]
   活動は5月に実施予定だったが雨天のため延期となり、当初からの予備日に行った。

★管理者も学校も無責任すぎる
 学校のすぐ近くの街路樹に農薬散布したことは、『住宅地通知』を無視したことになります。散布周知された学校側が、職員や保護者に知らせなかったことは、何をか言わんやです。前述の「適正に実施している」いうのは、何を意味するかわかりません。  今後について、下記の要望をしましたが、そこでも「適正」の連発です。
  ・ 学校や公共施設等では、樹木の病害虫対策や除草には、農薬を使用しないでください。
   ⇒  [回答]法令に準じて適正に管理してまいります。
  ・ チャドクガの発生するような樹木は、樹種変更で対応してください。
   ⇒  [回答]引続き検討してまいります。

  ・住宅地通知を遵守し、病害虫防除の殺虫剤・殺菌剤、雑草への除草剤の使用を出来るだけやめ、
   他の方法とること、万一、使用する場合は、周辺住民や施設利用者に散布等の周知を徹底する
   ことなどを、市の広報や自治会回覧などで、市民によびかけてください。⇒ [回答]
   法令に準じて適正に管理してまいります。
 散布翌日に農薬散布した場所を子供たちに除草させるなど、傷害罪で訴えてもいいくらいです。  そもそも、チャドクガの被害と認定した根拠について、市は『皮膚科医の診察を受けた数名の児童保護者から、医師よりチャドクガによる被害の疑いがあると診断されたことが報告されたことから、学校では死滅したチャドクガの毒毛に触れたことにより被害を受けたものと考えております。』と答えているのもおかしいことです。つまり、診察した皮膚科の医師の言葉を保護者から聞いただけで、直接その医師に確認したわけではなく、また、他の医療機関に問い合わせたわけでもないのです。
 小学校の児童が50人近く被害を受けたというのに、その原因を伝聞だけで判断するというのは科学的とは言えません。しかも、医師は「被害の疑いがある」と言っただけです。本来なら、散布した農薬について、中毒センターやメーカーに問い合わせることも必要なのに、『散布後24時間以上経過していることから、農薬に児童が触れてないと認識しております。』と、根拠もなしに、述べているだけです。

 今回の事例を踏まえ、市は、再発防止については、「法令に準じて適正に管理してまいります」ととおり一片の回答しかできないようでは、心もとない限りです。わたしたちは、農水省、環境省、文科省に、再発防止として、農薬に頼らず、「住宅地通知」や環境省のマニュアルを実践するよう訴えていきたいと思います。

*** 使用された農薬 トレボン乳剤(登録番号第16758) について ***
  製造メーカー 三井化学アグロ株式会社の製品情報安全データシート

 成分
   有効成分はエトフェンプロックス:20.0% 合成ピレスロイド系
   溶剤として、キシレン:33 %、エチルベンゼン:45 %、
   いずれもシックハウス問題に関する検討会が。室内濃度指針値を定めているVOC(揮発性有機化合物)

 適用表
   樹木類(つつじ類、ポインセチア、ソテツを除く)の毛虫に4000倍希釈、使用液量100〜700L/10a、
   幼虫発生期に6回以内の散布

 使用上の注意事項
  ・本剤は眼に対して強い刺激性があるので、散布液調製時には保護眼鏡を着用して
   薬剤が眼に入らないよう注意すること。眼に入った場合には直ちに十分に水洗し
   眼科医の手当を受けること。
  ・原液は皮膚に対して刺激性があるので皮膚に付着しないよう注意すること。付着
   した場合には直ちに石けんでよく洗い落とすこと。
  ・使用の際は農薬用マスク、手袋、長ズボン・長袖の作業衣などを着用すること。
  ・作業後は手足、顔などを石けんでよく洗い、洗眼・うがいをすること。
  ・街路、公園等で使用する場合は、散布中及び散布後(少なくとも散布当日)に小児や
   散布に関係のない者が散布区域に立ち入らないよう縄囲いや立て札を立てるなど
   配慮し、人畜等に被害を及ぼさないよう注意を払うこと


作成:2019-06-30