松枯れ・空中散布にもどる

n01701#空中散布ガイドラインは安全とは名ばかり〜農薬使用拡大路線は農業革新につながらない#19-08
【関連記事】記事n01601
【参考サイト】農水省;無人航空機(無人ヘリコプター等)に関する情報
            「無人ヘリコプターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」
           、無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドラインの制定について(2019年5月)と
            「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」

            通知 蜜蜂被害軽減対策の推進についてにある令和元年度通知 元消安第912号(19年6月21日)

            住宅地等におけるぬ農薬使用について「平成30年度 農薬危害防止運動」の実施について

       Viva-Ddrone (ドローン業界の総合情報サイト):ドローンにおける農薬散布の規制緩和と今後の展望【2019最新版】

★無人ヘリコプターと無人マルチローターのガイドライン
 前号では、通知についての本文へのリンクを示しただけでしたが、無人ヘリコプターと無人マルチローター(以下、ドローンという)による農薬の空中散布に係る安全ガイドラインの違いを下段の囲み記事にまとめました。
 一番大きな違いは、第2の『空中散布の実施 1 空中散布の計画』にあるように、無人ヘリは空中散布実施計画を書式に基づいて記載し、都道府県農薬指導部局へ届出ることが義務づけられているのに、ドローンは、計画の記載指示も、届出も必要がないことです。さらに、第2の4にある『空中散布の実績報告』の提出も、無人ヘリのみに義務付けられています。それでも、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」で、有人ヘリ空中散布計画が農林水産大臣への提出が義務づけられていることに比べると、雲泥の差があります。
 このことは、空散が地散よりも高濃度・広範囲の散布にも拘わらず、無人ヘリ空散は有人ヘリ空散の代替であり、ドローン空散は地上散布の代替であると農水省が考えていることを意味します。

★空中散布の実施に関する情報提供〜ドローンの周辺への周知義務は緩くなる
 わたしたちば実施計画の提出義務は、通知「住宅地等における農薬散布について」(以下、住宅地通知という)や養蜂者への空中散布計画の周知を求める通知「蜜蜂被害軽減対策の推進について」にあるように、必須のものと考えます。
 第2の2 にある『空中散布の実施に関する情報提供』では、無人ヘリもドローンも、実施主体が散布情報を『学校、病院等の公共施設、家屋、蜜蜂の巣箱等がある場合、施設の利?者、居住者、養蜂家等に対し、十分な時間的余裕を持って情報提供すること』になっていますが、あくまで、実施主体がみずから周知するようにになっています。
 しかし、上述のように、無人ヘリは、実施計画を都道府県農薬指導部局へ届出するので、同部局で地域での散布状況が掌握でき、散布計画の問い合わせに答えることもできます。しかし、ドローンは実施主体が計画をださないので、いわば、住民は個々の散布主体から情報を入手せねばなりません。ドローンの場合は、飛行高度が作物上2m以下で、一回の飛行時間が短く散布面積が少ないので、飛散や大気汚染範囲が狭いと考えてはなりません。地域によっては、複数のドローンで一斉散布するところもあり(たとえば、宮城県登米市では、防除業者が10台のドローンで、水田100haに空散しています)。また、散布高度が2mよりもっと高い果樹園や樹木、林地などでは、農薬の飛散範囲が広がります。わたしたちは、先のパブコメで、このような農薬飛散・大気汚染の危険性を訴えましたが、農水省は聞く耳をもちませんでした。
 自治体の条例や要綱などで、無人ヘリもドローンも空中散布計画届を提出させ、行政が責任をもって散布周知をする制度をつくることが必要です。

★「実施時に留意する事項」について〜補助員は必要だが
 この項は、全部で12項ありますが、無人ヘリとドローンで、その内容は殆ど違いません。
 ガイドラインで、実施主体は、『操縦者と補助者(飛行状況、周辺区域の変化等を監視し、的確な誘導を行うとともに、飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行い、操縦者を補助する者)等の関係者及び周辺 環境等への影響に十分配慮し 風下から散布を開始する横風散布を基本に飛行経路を設定する。』とされており、下図のようなイラストが添付されていますが、ドローンと無人ヘリのイラストの違いはわかりますが、はたして、この図をみて、操縦者は、飛行速度と高度と散布幅を調整して、域外へのトリフトや作物での散布ムラをなくし、単位面積あたりの農薬成分量を適用登録の範囲内に納めるような散布ができるのでしょうか。
【実施時に留意する事項」から消えた項目】
 空中散布等における無人航空機利用技術指導指針は、2018年7月の改正を最後に廃止されました。下記のように、指導指針の「空中散布等の方法」にあった事項のうち、ガイドラインの「実施時に留意する事項」に継承されない赤字のような個所もみられます。このような場合、飛行速度や散布幅、飛行高度、風速・風向、住宅・道路や障害物の検知を、ヒトの操縦で対処するのでなく、自動化し、散布装置と連動して、農薬噴射をとめたり、制御するシステムの搭載を無人ヘリやドローンに義務付ければ、ある程度、農薬の域外飛散の危険性は減るのですが、そのような技術的対策はとられないまま、留意点から削除されているのです。
    *** 空中散布等の方法から削除されている事項 ***
     空中散布等の方法は、次のとおりとする。
    (1) 風下から散布を開始する横風散布を基本とし、オペレーター及び周辺環境等への影響等に
      十分配慮して、作業効果の確保に努めること。

    (5) 空中散布等の実施は、気流の安定した時間帯に、かつ、地上1.5 mにおける風速が3m/s以下の
      場合に限ること。
      なお、風速が3m/sを超える場合は空中散布等を実施しないことを徹底するとともに、
      超えない場合であっても風向きを考慮した散布を行うよう努めること。
★事故報告及びその他の事項について
 ガイドライインでは、空中散布の実績報告は、無人ヘリのみで、ドローンは不要となりました。事故報告についてはどちらの場合も、域内の都道府県農薬指導部局⇒地方農政局消費・安全部安全管理課⇒本省の植物防疫課⇒国土交通省地方航空局保安部運用課 へという流れです。
 関係機関の役割では、指導指針にあり、地域の空中散布計画を検討・指導していた「都道府県協議会」「地区別協議会」が削除され、本省の植物防疫課が「ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」を通じて、情報や資料の収集と提供すること、都道府県が、安全かつ適正な空中散布実施のための指導・助言を行うこと。さらに、機体メーカーが、『散布方法の設定に当たっては、落下分散性能の把握、ドリフト状況の把握等の結果から設定するとともに、その根拠となった試験結果(試験条件を含む)をWebサイト等で公表するよう努めること。』が求められています。
 おわりの情報管理の項では、個人情報保護に留意するようになっていますが、なにが保護されるべき情報なのか不明です。いまでも、たとえば、農水省は、事故を起こした実施主体も発生した場所も開示されないままです。

★国土交通省のガイドラインは飛行についての注意のみ
【参考サイト】国土交通省:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルールにある
                無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領
               無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン許可・承認手続きについて
               農薬空中散布については
                飛行マニュアル(DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下)〜空中散布を目的とした申請について適用

 上述の農水省のガイドライインとともに、無人航空機の飛行について、所管の国土交通省が「無人航空機ガイドライン」を発出しました。これは、農薬散布にかかわりなく、無人ヘリコプターにもドローンにも、適用されているものですが、その中で、特に、農薬空中散布に適用される重要な項目については、「空中散布を目的とした申請について適用されれる飛行マニュアル」としてまとめられ、別途、文書が提されました。

 無人航空機による農薬散布は、航空法第132条で規制されている「人口集中地区=DID」、第132条の2による「日没以降」「目視外飛行」「人また物件から30m未満の距離」「イベント上空」「危険物の輸送」「物件を投下」に該当し、国土交通省の許可・承認なくしては、実施できません。
 いままで。農薬空散の主力であった無人ヘリ業界に対抗すべく、新参のドローン業界の狙いは、内閣府の規制改革路線に乗っかって、農水省や農林水産航空協会が牛耳ってきた無人ヘリコプター業界に楔をうちこむことであり、その際の目標は、補助員なしの目視外飛行の実施でした。そのせいか、国土交通省が提示した空散適用のガイドラインも、以下に述べるように、農薬の散布域外への飛散によるヒトや作物、その他環境への被害を防止するには、程遠く、飛行体制に限定するものでした。

 飛行マニュアルのうち、一般的事項以外の、とくに、農薬空中散布に関する内容をみていきましょう。

 1.無人航空機の点検・整備
    (1)飛行前の点検:・各機器や散布装置は確実に取り付けられているか
             ・散布装置の取り付け ,機能に問題はないか
  (2)飛行後の点検:・機体や散布装置にゴミ等の付着はないか

 2.無人航空機を飛行させる者の訓練及び遵守事項
   2−4  空中散布のための操縦練習 
   空中散布等の前後及び最中で機体重量が変化する状況下においても、
   2−2*に掲げる操作又は自動操縦が安定して行えるよう、また、
   飛行操作を行いながらの散布を円滑に実施できるよう5回以上の
   空中散布の実績を積むため、訓練のために許可等を受けた場所
   又は屋内にて練習を行う。
   (空中散布の訓練は実際の農薬ではなく危険物に該当しない水などを散布する。) 
    *基礎的な操縦技量を習得のうえ、対面飛行、飛行の組合、8の字飛行操縦練習実施

  2−8  無人航空機を飛行させる者が遵守しなければならない事項 (全15項目あり、その一部を示す。)
    (4)アルコール等の影響により、無人航空機を正常に飛行させることができないおそれがある間は、
     飛行させない。
    (6)飛行前に、周辺のほ場において飛行中の他の無人航空機を確認した場合には、
     飛行日時、飛行経路、飛行高度等について、他の無人航空機を飛行させる者と調整を行う。
   (8)飛行中に、周辺のほ場において飛行中の他の無人航空機を確認した場合には、
     着陸させるなど接近又は衝突を回避させ、飛行日時、飛行経路、飛行高度等について、
     他の無人航空機を飛行させる者と調整を行う。 

 3.安全を確保するために必要な体制 (この中では、補助者の配置が重要となる)
  3−1  無人航空機による空中散布を行う際の基本的な体制
    ・飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。 
   ・補助者は、飛行範囲及び散布範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。 
   ・補助者は、飛行経路及び散布範囲全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況、
    散布状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう
    必要な助言を行う。
   ・第三者の往来が多い場所や学校、病院等の不特定多数の人が集まる場所の上空やその付近は飛行させない。 
   ・高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない。 
   ・高圧線、変電所、電波塔及び無線施設等の施設付近では飛行させない。 
   ・飛行場所付近の人又は物件への影響をあらかじめ現地で確認・評価し、補助者の増員、
    事前周知、物件管理者等との調整を行う。 
   ・人又は物件との距離が30m以上確保できる離発着場所及び周辺の第三者の立ち入りを
    制限できる範囲で飛行経路及び散布範囲を選定する。 
   ・飛行場所に第三者の立ち入り等が生じた場合には、直ちに散布を中止しかつ速やかに
    飛行を中止する。 
   ・人又は家屋が密集している地域の上空では夜間飛行は行わない。 
   ・人又は家屋が密集している地域の上空では目視外飛行は行わない。 
   ・夜間の目視外飛行は行わない。 
   ・農薬の空中散布にあたっては、その安全な使用のため、農薬取締法等関連法令に基づくとともに、
    「農薬の空中散布に係る安全ガイドラインの制定について」(令和元年7月30 日付け元消安第1388号)等
    関連通知に留意して実施する。 
   ・操縦者は、空中散布のための操縦訓練を修了した者に限る。 
 
  ※3−1に加え、飛行の形態に応じ、3−2から3−5の各項目に記載される必要な体制を適切に実行すること。 
  
  3−2  人又は家屋の密集している地域の上空における飛行又は地上又は水上の人又は物件との
   間に 30mの距離を保てない飛行を行う際の体制 
   ・飛行させる無人航空機について、プロペラガードを装備して飛行させる。装備できない場合は、
    第三者が飛行経路下及び散布範囲に入らないように監視及び注意喚起をする補助者を必ず配置し、
    万が一第三者が飛行経路下に接近又は進入した場合は、操縦者に適切に助言を行い、飛行を中止する等
    適切な安全措置をとる。 
   ・無人航空機の飛行について、補助者が周囲に周知を行う。 

  3−3  夜間飛行を行う際の体制 
   ・夜間飛行においては、目視外飛行は実施せず、機体の向きを視認できる灯火が装備された
    機体を使用し、機体の灯火が容易に認識できる範囲内での飛行に限定する。 
   ・飛行高度と同じ距離の半径の範囲内に第三者が存在しない状況でのみ飛行を実施する。  
   ・操縦者は、夜間飛行の訓練を修了した者に限る。 
   ・補助者についても、飛行させている無人航空機の特性を十分理解させておくこと。 
   ・夜間の離発着場所において車のヘッドライトや撮影用照明機材等で機体離発着場所に十分な
    照明を確保する。 

  3−4  目視外飛行を行う際の体制 
   ・目視外飛行は、目視内農地と接続する農地の範囲内でのみ実施し、第三者の立ち入りを
    制限できない公道、住宅地等に隔てられた飛び地では実施しない。
   ・飛行の前には、飛行ルート下及び散布範囲に第三者がいないことを確認し、双眼鏡等を
    有する補助者のもと、目視外飛行を実施する。  
   ・操縦者は、目視外飛行の訓練を修了した者に限る。 
   ・補助者についても、飛行させている無人航空機の特性を十分理解させておくこと。 

  3−5  危険物の輸送を行う際又は物件投下を行う際の体制 
   ・3−1に基づき補助者を適切に配置し飛行させる。 
   ・危険物の輸送の場合、危険物の取扱いは、関連法令等に基づき安全に行う。 
   ・物件投下の場合、操縦者は、物件投下の訓練を修了した者に限る。 

  3−6 補助者を配置せずに空中散布を行う際の基本的な体制 
    各飛行形態において補助者を配置しない場合には、以下に記載された必要な体制を追加して適切に行う。
   ・飛行高度は空中散布の対象物上 4m以下とする。 
   ・3−3(夜間飛行)及び3−4(目視外飛行)の場合には、自動操縦による飛行のみに
    より行い、飛行範囲を制限する機能(ジオ・フェンス機能)及び不具合発生時に危機回避機能(
    フェールセーフ機能)が作動するよう設定して飛行させる。 
   ・飛行場所に接近する可能性のある人や車両への衝突リスクを回避するため、飛行の精度に
    由来する「位置誤差」と、物体としての危険性に由来する「落下距離」を合算して、
    飛行範囲の外側に立入管理区画を設定する 

   ・製造者等が保証した「位置誤差」、「落下距離」(飛行の高度及び使用する機体に基づき、
    当該使用する機体が飛行する地点から当該機体が落下するまでの距離として算定されるもの)に
    応じて、立入管理区画を設定する。 
   ・製造者等が保証した「位置誤差」等が示されていない場合には、下記の飛行マニュアル別添に基づき、
    飛行範囲の外周に立入管理区画を設定する。 
   ・立入管理区画では、人や車両の接近の可能性がある場合に、飛行場所の状況に即した注
    意を求める対応を行う。 
      (注意喚起措置の例) 
        看板等の設置 
        空中散布の実施区域及びその周辺への事前周知の徹底 
        空中散布の実施前、合間の見回り  

    *注意喚起の対応が必要な場合 
     第三者の立ち入りが予想される農道に隣接する場合 
         ⇒農道を含む飛行予定農地の外側に立入管理区画を設置
     第三者の立ち入りが制限できない公道に隣接する場合
         ⇒飛行予定農地内に立入管理区画を設置。看板等による注意喚起。

    飛行マニュアル別添:立入管理区画の設定 詳細はこちらを参照
     1.立入り管理区画の設定の考え方
       以下の考え方に基づき、位置誤差に由来する機体そのものの@「位置誤差」と、
       落下距離に由来するA「落下距離」を合算して、立入管理区画の幅を設定する。
       立入管理区画の幅 = @位置誤差 + A落下距離

     <自動操縦の場合>・メーカーが位置誤差を保証する場合 : メーカー保証値(数cm〜(補強情報活用時))
              ・メーカーが位置誤差を保証しない場合: 10m
     <手動操縦の場合>操縦者が目視で確実に機体の位置を把握できれば、位置誤差を考慮する必要はない。
       ※ 目視で確実に機体の位置を把握できない場合は補助者無しで空中散布を行うことはできない。
     2.立入管理区画の設定の例           3.立入管理区画の設定例
 上記のように、30m未満に物件やヒトいたり、立入の恐れがある場所で、「立入管理区域」設定なし、かつ補助員なしで、農薬空中散布する場合、飛行高度は対象物上4m以下とし、プロペラガードをつけた機種、夜間飛行や目視外飛行の場合は、自動操縦の機種でなければいけません。また、「立入管理区域」は、飛行域外に設置せねばなりません。これは、内閣府の資料で、「緩衝区域」となっていたもので。立入りを禁止するものではなく、無人航空機が墜落しても、そこにヒトや物件がなければ、被害が発生しないせいぜい10m前後の幅のもので、わたしたちが主張してきた、農薬飛散によるヒトや作物や環境被害を防止する緩衝地帯の設定とは、まったく違います。

 今回提示されたガイドラインには、農薬空中散布の拡大を目指す関連業界や農業団体の主張を具体化したもので、農薬空中散布に疑問をもち、出来るだけやめるようにと、その規制を求めている農薬被害者や有機農業者、環境・生態系の保護者などの意見は、反映されていません(記事n01601にある@2月の募集意見A5月の募集意見)。
 記事n01702で述べたように、ミツバチやポリネーター被害は空中散布される農薬も原因となっています。明日はわがみ、ヒトにも起こることことは必定です。
 農水省は、農業用ドローンの普及に向けて(農業用ドローン普及計画)〜 ドローン × 農業 のイノベーション 〜(2019年3月)中で、農業の技術革新を語っていますが、人口減少に向かう日本で、農村の過疎化をドローンをはじめとする農薬空中散布の拡大で対処しようとするのは、反イノベーションのように思えます。行政には、有害な農薬の使用を減らし、ヒトの受動被曝や食品や水などからの摂取を減らすことを目標に、農薬空中散布はどうあるべきかを考えてもらいたいものです。


ガイドライン比較

 黄色部は改定により削除、太字部は追加修正
無人ヘリコプター無人マルチローター =ドローン
第1 趣旨 
ほぼ垂直な軸回りに回転する三つ以上の回転翼によって主な揚力及び推進力を得る回転翼無人航空機以外の回転翼無人航空機をいうほぼ垂直な軸回りに回転する三つ以上の回転翼によって主な揚力及び推進力を得る回転翼無人航空機をいう 
農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令に基づき、農作物や人畜、周辺環境等に危被害を及ぼさないようにする責務を有するとともに、関係通知に沿った安全かつ適正な使用に努める必要がある。
 農薬を使用する者は、法第27条に基づき、農薬の安全かつ適正な使用に関する知識と理解を深めるように努めなければならない。 
第2 空中散布の実施 1 空中散布の計画
(1)実施主体(防除実施者及び防除を 自らは行わずに他者に委託する者。以下同じ。)は、空中散布の実施区域周辺を含む地理的状況(住宅地、公共施設、水道水源、蜂、蚕、 魚介類その他水産動植物の養殖場等に近接しているかなど)、耕作状況(収穫時期の近い農作物や有機農産物の生産ほ場が近接しているかなど) 等の作業環境を 十分に勘案し、 実施区域及び実施除外区域の設定、 散布薬剤の種類及び剤型の選定 (粒剤、 微粒剤等の飛散の少ない剤型) 等の空中散布の計画について検討を行い、実施場所、実施予定月日、作物名、散布農薬名、10a当たりの使用量又は希釈倍数等について記載した
 空中散布計画書(別記様式1) を作成する計画書を作成する
(2)空中散布の作業を他者に委託する場合は、 防除委託者は、 防除実施者と 十分に連携して空中散布の計画を検討する。
(3)空中散布を行う実施者は、(1)の空中散布計画書を、空中散布を実施する 月の前月末までに、空中散布の実施区域内の都道府県農薬指導部局に届け出ること
(4)都道府県農薬指導部局は、 (3) により空中散布計画書の届出があった場合は、 当該計画の記載に不備がないことを確認した上で、地方農政局消費・安全部安全管理課を経由して、農林水産省消費・安全局植物防疫課(以下「植物防疫課」という。)に提出すること。
(5)都道府県農薬指導部局は、 (3)により届出のあった空中散布計画書により、管内の空中散布の計画を把握し、 安全かつ適正に実施されるよう、地域の実情に応じた指導を行うこと。
(6)都道府県農薬指導部局は、実施主体と養蜂家との間における情報共有の徹底を図り、空中散布の実施による蜜蜂被害の発生を防止するため、 (3) により届出のあった空中散布計画書を都道府県の畜産担当と共有すること。
 また、都道府県の畜産担当は、養蜂組合等の協力を得て、当該情報のうち必要な情報(農薬散布の実施予定月日、実施場所、作物名、散布農薬名等)を整理し、個々の養蜂家に対し、情報提供すること。
 なお、地域の実情に応じ、 より適切な情報共有手段を講じることが可能であれば、上記の限りではない。
 
第2の2 空中散布の実施に関する情報提供
(1)空中散布の実施区域及びその周辺に学校、病院等の公共施設、家屋、蜜蜂の巣箱、有機農業が行われているほ場等がある場合には、実施主体は、危被害防止対策として、当該施設の管理者及び利用者、居住者、養蜂家、有機農業に取り組む農家等に対し、農薬を散布しようとする日時、農薬使用の目的、使用農薬の種類及び実施主体の連絡先を十分な時間的余裕を持って情報提供し、 必要に応じて 日時を調整する
(2)天候等の事情により空中散布の 日時等に変更が生じる場合、実施主体は、変更に係る事項について情報提供を行う。
(3)空中散布の実施区域周辺において人の往来が想定される場合、実施主体は、作業中の実施区域内への進入を防止するため、告知、表示等により空中散布の実施について情報提供を行うなどの必要な措置を講ずる。
第2の3 実施時に留意する事項
(1)実施主体は、操縦者、補助者(無人ヘリコプター/無人マルチローター飛行状況、周辺区域の変化等を監視し、的確な誘導を行うとともに、 飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行い、操縦者を補助する者)等の関係者及び周辺環境等への影響に十分配慮し、 風下から散布を開始する横風散布を基本に飛行経路を設定する。
(2)操縦者は、あらかじめ機体等メーカーが作成した取扱説明書等により、無人ヘリコプター/無人マルチローター及び散布装置に関する機能及び性能について理解する。
(3)操縦者は、第4の3(1)により機体等メーカーが取扱説明書等に記載した散布方法(飛行速度、 飛行高度、 飛行間隔及び最大風速。別添参照。)を参考に散布を行う。
(4)(3)において、機体等メーカーによる散布方法が設定されておらず、取扱説明書等に記載がない場合は、無人ヘリコプターの標準的な散布方法として策定された以下の散布方法により実施する。
  ・ 飛行高度は、作物上3〜4m以下
(4) (3) において、機体等メーカーによる散布方が設定されておらず、取扱説明書等に記載がない場合は、 当面の間、 「マルチローター式小型無人航空機における農薬散布の暫定運行基準取りまとめ」(平成28年3月8日マルチローター式小型無人機の暫定運行基準案策定検討会) において、 無人マルチローターの標準的な散布方法として策定された、 以下の散布方法により実施する。
  ・ 飛行高度は、作物上2m以下。
  ・散布時の風速は、地上1.5mにおいて3m/s以下。
  ・ 飛行速度及び飛行間隔は、 機体の飛行諸元を参考に農薬の散布状況を随時確認し、適切に加減する。
(5)操縦者は、散布の際、農薬の散布状況及び気象条件の変化を随時確認しながら、農薬ラベルに表示される使用方法(単位面積当たりの使用量、希釈倍数等)を遵守し、散布区域外への飛散(以下「ドリフト」という。)が起こらないよう十分に注意する。
(6) ドリフト等を防ぐため、架線等の危険個所、実施除外区域、 飛行経路及び操縦者、補助者等の経路をあらかじめ実地確認するなど、実施区域及びその周辺の状況把握に努めるとともに、必要に応じて危険個所及び実施除外区域を明示しておく。
(7)実施主体は、散布装置については、適正に散布できること(所定の吐出量において間欠的ではないことなど)を使用前に確認するとともに、適時、その点検を行う。
(8)周辺農作物の収穫時期が近い場合、 実施区域周辺において有機農産物が栽培されている場合、学校、病院等の公共施設、家屋、水道水源、蜂、蚕、 魚介類その他水産動植物の養殖場等が近い場合など、農薬の飛散により危被害を与える可能性が高い場合には、 状況に応じて、 無風又は風が弱い天候の日 や時間帯の選択、 使用農薬の種類の変更、飛散が少ない剤型の農薬の選択等の対応を検討するなど、農薬が飛散しないよう細心の注意を払う。
(9)強風により散布作業が困難であると判断される場合には、無理に作業を続行せず、気象条件が安定するまで待機する。
(10)操縦者、補助者等の農薬暴露を回避するため、特に次の事項に留意する。
   ア 操縦者、補助者等は、防護装備を着用すること。
   イ 空中散布の実施中において、 操縦者、 補助者等は農薬の危被害防止のため連携すること。
(11)作業終了後、散布装置(タンク、配管、ノズル等)は十分に洗浄し、洗浄液、配管内の残液等は周辺に影響を与えないよう安全に処理する。
(12)実施主体は、空中散布の実施により、農業、漁業その他の事業に被害が発生し、又は周囲の 自然環境若しく は生活環境に悪影響が生じた場合は、直ちに当該区域での実施を中止し、その原因の究明に努めるとともに、適切な事後処理を行う
第2の4 空中散布の実績 
 (1)実施主体は、空中散布を実施した場合は、速やかに実施場所、実施月日、作物名、散布農薬名、10a当たりの使用量又は希釈倍数等について記載した実績報告書(別記様式2) を作成し、 空中散布の実施区域内の都道府県農薬指導部局に提出すること。なお、当該報告については、電子メールによる提出を可能とする。
 (2)都道府県農薬指導部局は、 (1)により実績報告書の提出があった場合は、記載に不備がないことを確認した上で、地方農政局消費・安全部安全管理課)を経由して、 毎年4月から翌年3月 までの実績を翌年4月末までに植物防疫課に提出すること。
 (3)植物防疫課は、 (2)により実績報告書の提出があった場合は、 これを取りまとめ、 安全かつ適正な空中散布が実施されているかどうかを確認すること。
 
 
第3 事故発生時の対応 
空中散布を実施した場合の事故発生時の対応については、 次のとおり実施する。
 1 事故の類型は、以下のとおりとする。
 (1)農薬事故
   空中散布中の農薬のドリフト、流出等の農薬事故
 (2)その他
   無人ヘリコプター/無人マルチローターの飛行による 人の死傷、第三者の物件の損傷、 飛行時における機体の紛失又は航空機との衝突若しくは接近事案
 2 1 (1)に規定する事故が発生した場合は、実施主体は、別記様式3の事故報告書を作成し 実施区域内の都道府県農薬指導部局に提出する。
 3 事故報告書は、事故発生後直ちに第1報(事故の概要、初動対応等)を、事故発生から1ヶ月以内に 最終報(事故の詳細、被害状況、事故原因、再発防止策の策定)をそれぞれ作成すること。
なお、空中散布の作業を他者に委託した場合は、防除委託者は、防除実施者と 十分連携して 当該事故報告書を作成する。
 4 都道府県農薬指導部局は2により事故報告書の提出があった場合は、記載に不備が ないことを確認し、 地方農政局消費・安全部安全管理課を経由して、 植物防疫課に当該事故報告書を提出する。
 5 植物防疫課は、4により事故報告書の提出があった場合は、これを取りまとめ、都道府県等の協力を得て、空中散布における安全対策を検討する。また、関係機関との間で、当該検討結果に係る情報を共有するとともに、実施主体に対し、再発防止を図るよう指示する。
 6 植物防疫課は、 5により取りまとめた事故報告を地方航空局保安部運用課に提供する。
 7 1(2)に該当する事故が発生した場合、実施主体は、直ちに以下の飛行の許可等を行った地方航空局保安部運用課又は空港事務所まで報告する。なお、夜間等の執務時間外における報告については、24時間運用されている最寄りの空港事務所に連絡を行う。
 東京航空局保安部運用課03-6685-8005 大阪航空局保安部運用課 06-6949-6609
 最寄りの空港事務所 (執務時間外は別表に示した、 飛行させた都道府県に対応する24時間対応の空港事務所へ連絡する。
第4 関係機関の役割
空中散布に関係する機関は、 次の役割を果たす。
  1 植物防疫課
   (1) 空中散布の安全かつ適正な実施のために必要な情報及び資料の収集及び提供を行うこと。
   (2)空中散布の円滑な実施及び事故発生時における迅速かつ的確な対応のため、関係機関との間で連絡体制を整備すること。

  2 都道府県
   (1)実施主体に対し、 1(1)により提供を受けた情報及び資料その他空中散布に関する技術的情報を提供すること。
   (2)実施主体から事故に関する情報が提出された場合には、安全かつ適正な空中散布の実施のための指導及び助言を行うこと。

  3 機体等メーカー
   (1)機体・散布装置の使用条件(対象農作物、農薬の剤型等)ごとの散布方法に関する情報について、取扱説明書等に記載するなど、使用者が把握しやすい手段により情報提供すること。散布方法の設定に当たっては、落下分散性能の把握、ドリフト状況の把握等の結果から設定するとともに、その根拠となった試験結果(試験条件を含む)をWebサイト等で公表するよう努めること。
   (2) 1 (1)により提供を受けた情報及び資料その他空中散布に関する技術的情報を使用者に提供するとともに、使用者からの照会に対応する窓口を整備すること。
第5 情報管理
本ガイドラインに基づく情報提供に当たっては、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)、 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)、 各都道府県が定める個人情報保護条例等に留意する。

作成:2019-08-31