松枯れ・空中散布にもどる
n02002#2019年度の有人ヘリコプターによる農薬空中散布計画〜水稲殺虫剤はジノテフラン、松枯れはスミパインが多い#19-11
【関連記事】記事n00601(2018年度)、記事n02001
【参考サイト】農水省:有人ヘリによる空中散布の実施計画についての頁にある
2019年度の全国総括表と都道府県別散布面積)
農水省消費・安全局植物防疫課防除班は、昨年は8月末に、有人ヘリコプターによる農林水産航空事業計画を示していますが、今年は、殆どの農薬空中散布が終わった10月30日に都道府県別薬剤別の空散計画がHPで公表されました。なにしろ、詳細資料では、市町村別に、実施主体、対象作物、目的、使用農薬製剤名、散布面積などがわかる唯一の情報源ですから、もっと早くに知らせるべきです。
本年の農薬散布については、表1に示すように、農業用で、水稲防除面積が前年に比べ1261ha減の3万403ha、水稲以外の畑作関係が8071ha(沖縄でサトウキビの野ネスミ対策)。林業用では、松枯れ対策が2425ha減の1万1875ha、樹木の野ねずみ用が5万1909ha(すべて、北海道でのリン化亜鉛粒剤散布)でした。
ほかに、沖縄県でのウリミバエ、ミカンゴミバエ対策(農薬散布液でなく、ダイアジノンをしみこませたテックス板=ユーゲサイドDや不妊化虫を投下する)とイモゾウムシ対策の不妊化虫投下があり、ミバエ類対策等の防除面積は。前年増4万6010haの255万9458haです。
表1 2019年分野別空中散布計画(単位ha)
分 野 防除延べ面積 前年増減
水稲防除 30403 -1261
農 水稲以外* 8071 -10828 *沖縄のさとうきの野ねずみ駆除a
その他(播種/施肥等) 1791 -274
業 農業 計 40265 -12363
ミバエ類対策等** 2559458 46010 **沖縄でミバエ不妊虫やテックス板と
かんしょのイモゾウムシ不妊虫
松くい虫防除 11875 -2426
林 野ねずみ駆除 51909 -5456
業 その他(播種/施肥等) 23 - 6
林業 計 63807 -7888
合 計 2663530 25759
★水稲殺虫剤空散面積〜茨城県は前年約2100ha減だが、トップの座は変わらず
農業用空中散布は昨年同様7県で実施されており、水稲の斑点米カメムシ対策用殺虫剤やイモチ病対策用殺菌剤の散布面積が多くなっています。北海道では、前年あった秋まき小麦の雪腐病対策殺菌剤の散布予定がなくなりましたが、千葉県野田市では、水稲の植物活力剤として、玄米黒酢の散布がつづいています。
表2には、、殺虫剤の農薬別、県別の防除予定面積を示しました。県別では、トップが茨城で、前年2142ha減の7750haでした。ついで、272ha増の山形6054ha、20ha増の秋田5250haが続きます。
殺虫剤の種類別散布面積は、スタークル(ジノテフラン)、トレボン(エトフェンプロックス)、キラップ(エチプロール)、アプロード(ブプロフェジン)の順で、スタークル系が全体の73%を占める22332haでトップにあることはかわりありませんが、茨城での散布面積が減少したせいで、前年より2189ha減少したのが目立ちます。トレボン系は、秋田と千葉が多く、4県で4619a、キラップ系は青森だけで、1454haでした。アプロードは、鹿児島で、スタークルやトレボンと併用されていました。
農業用の有人ヘリ防除面積の減少は、このところ続いていますが、これは、100万haを超える無人航空機による空中散布に、とって替られているためです。さらに、無人ヘリコプターだけでなく、地上散布の代替としてドローン型による散布面積が増えていくと考えられます。
表2 2019年度、県別水稲用殺虫剤散布予定面積(単位:ha、( )は2018年度)
県名 散布 前年 殺虫剤の種類
面積 増減 スタークル系 ダントツ系 トレボン系 キラップ系 アプロード系
青森 3418 -17 990 414 50 1454
秋田 5250 20 5250
山形 6054 272 3027 2847
茨城 7750 -2142 7750
千葉 3443 685 2011 688 *別に黒酢散布744haあり
宮崎 200 0 200
鹿児島 4288 -79 3104 150 1034 998**
**スタークル又はとレボン併用
合計 30403 -1261 22332(24521) 564(547) 4619(4583) 1454(1405) 998(1064)
★松枯れ空散面積は鳥取、宮城、兵庫がトップ3
【関連記事】記事n00404、記事n00503、記事n00603
松枯れ防除は、表3に示したように、前年あった愛媛と佐賀の2県が防除面積がなくなり、23県で実施が予定されています。散布面積は前年2425ha減で1万1875haとなりました。空中散布時期は、マツノマダラカミキリ成虫が羽化する5月中頃から7月中頃が主です。
県別散布面積で一番多いのは、鳥取で、192ha減ったものの1993ha、ついで、前年515ha増の宮城が891ha、前年353ha減の兵庫が820haでした。そのほか500haを超えたのは、鹿児島744、石川737、岡山608、新潟532各haでした。前年より減少が目立ったのは静岡で、871ha減の322haでしたが、これは、県内9個所のゴルフ場での計画がなかったからです。なお、表には、松への空中散布がおこなわれているゴルフ場数を(golf:)として示してあります。今後、ゴルフ場の松林や山林での除草剤散布に無人ヘリだけでなく、ドローン型散布が拡大することに、要注意です。
県別以外に国有林(関東森林管理局の磐城署、棚倉署、新潟署と九州森林管理局の福岡署、佐賀署、宮崎署、鹿児島署。大隈署)での散布が2443haあります。
殺虫剤の種類別では、ネオニコチノイド系のエコワン3フロアブル(チアクロプリド)が前年約140ha減の4129ha、有機リン系のスミパイン系(フェニトロチオン)のMC剤が約120ha増の6024haと乳剤が約1100ha減の1721aで、ネオニコ系のエコワン3の比率は、前年よりやや減り。34.8%でした。それにしても、有機リンのスミパイン系の散布がいまだ三分の二近くあるというのは、おどろきです。
表3 2019年度、県別松くい虫用殺虫剤散布予定面積(単位:ha、( )は2018年度)
県名 散布 前年 殺虫剤の種類別 エコワン3
面積 増減 スミパインMC スミパイン乳剤 フロアブル
岩手 27.25 0.25 27.25
宮城 891 515 891
秋田 89 0 89
福島 421 3 421
茨城 310 162 163 147 (golf:1)
栃木 45 0 45(golf:2)
長野 190 -23 190
静岡 322 -871 322
新潟 532 -86 532(うちgolf:7)
石川 737 0 737
福井 473 0 473
愛知 160 0 160
三重 314 0 130(うちgolf:1) 184(golf:1)
兵庫 820.4 -352.6 190(golf:4) 630.4(うちgolf;4)
和歌山 116 0 116
鳥取 1993 -192 1416 577
島根 60 0 60
岡山 608 -252 608
愛媛 - -93
福岡 200 0 76(うちgolf:2) 28(golf:1) 96(うちgolf:2)
佐賀 - -24
長崎 328.2 -76.8 209.78 118.42
熊本 110 -48 110
宮崎 462 -464 462
鹿児島 744 -107 744
国有林 2443 5 308 2135
合計 11874.85 -2425.15 6024.03(5903) 1721(2843) 4129.82(5555)
作成:2019-11-30