街の農薬汚染・住宅地通知にもどる

n02402#無登録の複合除草剤の販売〜グリホサート+不快害虫殺虫剤#20-03

 植栽管理に使用されある農薬の有効成分が、農薬以外の用途(@衛生害虫用殺虫剤、防疫用殺虫剤及び殺菌剤、動物用医薬品、A不快害虫用殺虫剤、虫よけ剤、衣料用防虫剤、木材保存剤、シロアリ防除剤、非植栽用除草剤など)に使われていますが、日本での化学物質規制は、殆どが用途別で、@は薬機法(旧薬事法)の規制がありますが、Aは化審法のしばりがあるだけで、野放し状態です。
 わたしたちは、てんとう虫情報2号(1991年8月)で。農薬にさらされない権利の確立を!』を発表しましたが、そのトップの”農薬を含有する製品を知る権利”では、『農薬の成分と同じ化学物質が、シロアリ駆除剤や家庭用殺虫剤、動物用薬剤、衣料用防虫剤だけでなく、塗料、衣料品、電気掃除機、家具、建築材料、その他日常生活で使用されるいろいろな製品の中に目に見えない形で含まれています。農薬及び農薬関連物質を使用したすべての製品に、薬剤成分名と含有量を表示することを求めます。』としました。しかし、30年後のいまも、残念ながら、この状況はかわりません。まるで、もぐらたたきで、つぎつぎと、あらたな製品がでてきます。

★農薬取締法では、無登録除草剤に、歯止めがからず
 農薬取締法では、登録されていない除草剤を植栽管理に使うことを禁じており、同法第22条(除草剤を農薬として使用することができない旨の表示)で『その容器又は包装に、当該除草剤を農薬として使用することができない旨の表示をしなければならない。』『除草剤販売者(除草剤の小売を業とする者に限る。)は、農林水産省令で定めるところにより、その販売所ごとに、公衆の見やすい場所に、除草剤を農薬として使用することができない旨の表示をしなければならない。』となっています。違反すれば、罰則の適用を受けます。そのため、昨年の農薬危害防止運動では、農水省が、製造メーカーや販売業者の団体に「農薬として使用することができない除草剤の販売等について」とい通知を発出し、容器や販売店陳列棚へその旨の表示を強化するよう求めました。
 わたしたち、いままでにも、植栽管理に使わない除草剤は。農薬でないため「住宅地通知」は適用されず、住宅地域で使用する際には、周辺の学校や住民に散布周知は不要になっていることを指摘し、これらを、単に農薬として使用しないだけでなく、製造・販売・使用を規制すべきだと主張してきました。さらに、農水省が先に通知を送った4社11団体のうち、2団体を除く関係先に要望と質問をしましたが、通知を受けた団体からは、自分のところでは販売していないとか、表示をしているなどとの返事が多く(日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会や全国商店街振興組合連合会は回答すらきませんでしたが)、農薬と同じ成分を含む非農薬の除草剤の製造・販売・使用には、歯止めがかかりません(記事n01802)。

★グリホサートイソプロピルアミン塩含有除草剤では
【関連記事】記事n01604囲み記事

 グリホサートイソプロピルアミン塩(イソプロピルアンモニウム N-(ホスホノメチル)グリシナートともいう)は、いわゆるグリホサート系除草剤(主な商品名ラウンドアップ)の有効成分のひとつで、登録農薬として液剤が50あります。有効成分の含有率が41%や51%のものは、水で希釈して茎葉散布するのがふつうですが、下記に示す含有率1%の以下のものは、希釈することなく、原液で散布します。
 グリホサートは、非選択性の除草剤なので、栽培作物に直接散布することは、できません。耕起。播種や植え付け前の圃場や水田の畦畔、収穫後の圃場整備、果樹・樹木では根元などの除草に適用がありますが、希釈する必要がない製品は、農家むけというより、栽培植物の少ない場所や植木、家庭菜園向けといえます。製剤の一部を下記に示します。

  ・「園芸用サンフーロン液剤」(登録番号19744、有効成分0.40%、申請社大成農材)
  ・「サンフーロンAL除草エース」(登録番号22711、申請は大成農材、カインズ社販売) この剤は、当該成分を1%含有し、公園、庭園、堤とう、駐車場、道路、運動場、宅地、のり面等の樹木の周辺地に生育する雑草茎葉に原液散布して、枯らすもので、希釈せずに、『そのまま使える』が売りになっています。
  ・「ハイ・フウノンそのまま除草」(登録番号22713、有効成分1%、申請社は台湾のフウロンケミカルインダストリア、カインズ社販売)などがあります。

 一方、後述するように、農薬登録がなく、空き地や運動場、道路。駐車場ほかの除草に使い、花卉や樹木に使えない除草剤も多数あります。

★シフルトリン含有殺虫剤や虫よけ剤では
 病原菌を媒介するゴキブリ、ハエ、カ、ダニ類などの衛生害虫は、薬機法(旧薬事法)の規制対象ですが、アリ、ムカデ、ダンゴ虫、ヤスデ、クモ、ユスリカ、コバエなどの不快害虫が、家の中に入り込まないように、虫よけ目的の製品としても開発されています。
 シフルトリンは、毒物及び劇物取締法で劇物指定(0.5%以下は指定なし)されているピレスロイド系殺虫成分で、虫を殺すだけでなく、身の回りでは、不快害虫用の虫よけにも使われています。下記に製品の一部を示します。

 登録農薬は5製剤(5%単乳剤が3製剤と0.005%単液剤1製剤)あります。
  ・「バイスロイド乳剤」(登録番号17106、バイエルクロップサイエンス申請)は、劇物指定の殺虫剤で、キャベツやにんじん他の野菜のアブラムシやヨトウムシに、概ね1000-2000倍希釈で、適用されます。
  ・「HJ バイスロイド液剤AL」(登録番号22014、ハイポネックス社申請)は、希釈せずに、原液で散布する殺虫剤で、ばらやきくのアブラムシ類、つつじ類のツツジグンバイ、つばき類のチャドクガ、キャベツのアオムシやアブラムシ類に適用があります。

 非農薬で、対象が衛生害虫や不快害虫である殺虫剤・虫除け剤としては、
  ・「レスポンサー水性乳剤」(バイエル クロップサイエンス社、シフルトリン1.0%の第二類医薬品) は、衛生害虫のとまる天井や壁等の全面に25〜50倍液を噴霧、又は。成虫に直接噴霧。
  ・「テンプリドSC」(バイエル クロップサイエンス社、イミダクロプリド21%、シフルトリン10.5%) は、不快害虫の発生又は生息場所に。通常:200〜400倍。広域防除の場合:1,000倍の希釈液を散布。
  ・「不快害虫用水性シフルトリン乳剤」(キンチョー社、シフルトリン) 10倍希釈液を不快害虫に直接散布するか、虫が寄り付きそうな場所などに十分濡れる程度に噴霧塗布。
  ・アース虫よけネットEX 260日用(アース製薬社、トランスフルトリン、エムペントリン、プロフルトリン) ベランダなどに吊り下げるネットでユスリカ対策
  ・「虫よけバリアスプレー アミ戸窓ガラス」(フマキラー社、フタルスリンとシフルトリン)網戸や窓ガラスにスプレー。
  ・「フマキラープレミアム プロ用」(フマキラー社、イミプロトリン、フタルスリン、シフルトリン、トランスフルトリン)ジェット噴射で殺虫又は虫バリヤ−をつくるそうです。

 不快害虫用殺虫剤・虫よけ剤は、植物管理が目的ではなく、衛生害虫対象でもないため、農薬取締法や薬機法による法的規制はありません。身近で使用されるため、規制を求めるわたしたちの主張に対し、厚労省は、関連業者に、毒性試験などを求めた『家庭用不快害虫用殺虫剤安全確保マニュアル作成の手引き』を発出し、製造から廃棄にいたるリスク評価を行うようもとめています。しかし、これは、メーカーの自主規制につながるにすぎず、毒性試験データや環境への影響は、農薬評価書のように公表されることがないのが現状です。

★複合除草剤「除草液」と「除草王」
【参考サイト】カインズ社:会社概要防草・除草関連アイテムの頁
       フマキラー社:Top Page殺虫剤 虫よけの頁

 草むらに潜む不快害虫と除草を同時に行おうというコンセプトの下に、混合剤としての人や環境への影響についての評価方法もないまま、既存の除草剤と殺虫剤との複合化がはかられました。除草剤等を販売してきたカインズと、殺虫剤メーカーのフマキラーが、それぞれ、下記の製品をだしています。

【カインズ社の除草液】まず、グリホサートイソプロピルアミン塩とシフルトリンの複合剤の「防虫もできる そのまま使える除草液」という商品の宣伝をみてください。『本剤は、農薬ではありません』との表示があります。
 全国28都道府県に228店舗をもち、通販サイトも運営する大手ホームセンター「cainz=カインズ」は、プライベートブランド商品にも力をいれ、同社の名前を容器に記載した製品も売りだしています。
 @登録除草剤「ハイ・フウノン液剤」(登録番号20995、グリホサートイソプロピルアミン塩41%含有)、A「ハイ・フウノンそのまま除草」(登録番号22713、有効成分1%)に加え、農薬ではないB 『防虫もできる そのまま使える除草液』があります。

 AとBのラベルを比較すると、前者には、『そのまま使える除草剤』とあり。後者には、”防虫もできる”『そのまま使える除草液』と,そっくりで,まぎらわしいことこのうえありません。
 除草液のラベルの詳細は、容器表容器裏の表示でわかりますが(囲み記事1をごらんください)。


【フマキラーの除草王】家庭用殺虫剤や不快害虫殺虫剤などを製造・販売しているフマキラー社は、ピレスロイド系殺虫剤に、ペラルゴン酸(囲み記事2参照)やグリホサート系の非選択性除草剤を混合した下記のような農薬登録のない複合除草剤を製造しています。それぞれの含有率は不明です。
  ・「虫よけ除草王」(除草剤成分:ペラルゴン酸、虫よけ成分:トランスフルトリンとトラロメトリン)
  ・「虫よけ除草王 プレミア」(除草剤成分:ペラルゴン酸とグリホサートアンモニウム塩、虫よけ成分:トランスフルトリンとトラロメトリン)

★複合剤の製造・使用、量販店やホームセンター、ネット通販での販売はやめるべき
 ゴキブリ、ハエ、カ、ダニ類など病原菌を媒介する衛生害虫は、薬機法の規制対象ですが、アリ、ムカデ、ダンゴ虫、ヤスデ、クモ、ユスリカ、コバエなどは気持ち悪いというだけで、殺虫剤で駆除したり、家の中に入り込まないよう虫よけ剤は、法規制がないまま、製造・販売・使用されています。そこに、加わったのが除草剤と虫除け剤の複合剤です。
 非選択性除草剤と殺虫剤の組み合わせは、植栽管理に使う農薬では、みかけません。空き地などの除草に使う際、ついでに、アリやダンゴ虫などの不快害虫も殺してしまおうというコンセプトで、メーカーが開発した複合製品でしょうが、メーカーの環境問題を考えない、売らんかなという安易な考え方がベースにあるようです。
 生活環境での無差別な散布は、免疫や呼吸器の病気の人や化学物質に過敏な人、発達途上の子どもや妊婦、高齢者への影響、ペットや生活環境動植物への影響、さらには、耐性がついて、衛生害虫の繁殖にもつながる恐れがあります。
 農薬と同じ成分を何の規制もないまま、製造・販売・使用をつつけることは、やめるべきです。

*** 囲み記事1: カインズの「そのまま使える除草液」ラベルには 下記の説明があります ***

【商品特徴】
  ・本品は殺虫成分と除草成分を配合した殺虫剤です。殺虫・除草の相乗効果で
    防虫効果が高まります。
  ・薄めずにそのまま家や建物の周りに散布できます。
  ・害虫の殺虫効果と最大2ヶ月の虫よけ効果があります。
  ・雑草の除草効果で害虫の生息場所をなくすため虫よけ効果をさらに高めます。
      (除草成分は雑草を枯らした後は土壌中で速やかに不活性化します。)
【適応害虫】 <殺虫・虫除け>アリ・ダンゴムシ・ヤスデ・ムカデ・クモ
【適応雑草】 一年生及び多年生雑草
【有効成分】 
  <殺虫成分>シフルトリン、
  <除草成分>イソプロピルアンモニウム N-(ホスホノメチル) グリシナート
  <その他の成分>水、展着剤、界面活性剤、色素
【使用時期と使用量】雑草生育期(草丈30cm以下)、50〜100ml/m2
【容量】2.5L 約6〜12坪(約20〜40m2)

 ※本製品は農薬ではありません この除草剤は農薬として使用することは出来ません。
  農作物の栽培・管理に使用すると罰せられます。

***   囲み記事2: ペラルゴン酸  pelargonic acid ***

 ●農薬登録1996/03/26→失効●2003/08/06。複合剤として再登録●2016/04/13

 ●主な適用●樹木等で、公園、庭園、堤とう、駐車場、道路、運動場、宅地、のり面等の
  植栽地を除く、樹木等の周辺地の雑草に茎葉散布、

 ●商品名●グラントリコは2003/08/06に登録失効した。
   再登録されたのはグリホサートイソプロピルアミン塩との複合乳剤として、スピードスターGPとGT、雑草一撃TとU。
   グリホサートカリウム塩とペラルゴン酸カリウム塩との複合液剤はラウンドアップマックスロードALU。
   単乳剤として、スピードスター原液、コケとーるスピード原液

   非植栽用除草剤として、アース製薬のおうちの草コロリ:
    アースガーデン おうちの草コロリ ジョウロヘッド 2lなど

 ●毒性●毒劇区分:指定なし。農薬抄録、カリウム塩の農薬抄録農薬学会誌24巻4号
     環境省の土壌農薬部会農薬小委員会ペラルゴン酸及びペラルゴン酸カリウム塩安全性評価資料



作成:2020-04-01