空中散布・松枯れにもどる

n02503#水素燃料電池ドローンで、農薬空中散布の拡大がめざされる#20-04
 経済産業省が、ドローンに関するパブコメ意見募集を、2020年03月04日から04月02日まで実施しました。現在のドローンは、充電式のリチウム電池が動力源となっていますが、同省は、化石燃料にかわるものとして、水素エネルギーの利活用に力をいれています。その一環として、2013年12月、水素・燃料電池戦略協議会を設置しました。さらに、水素燃料電池の一番のターゲットは自動車用ですが、ドローンにも興味を示し始めたわけです。
【参考サイト】日本水素燃料電池実証プロジェクト:Top Page燃料電池自動車(FCV)のしくみ

★なせ、水素燃料電池ドローンを農薬散布にもちいるか
【関連記事】記事n02501
【参考サイト】経済産業省:「水素燃料電池ドローンにおける高圧ガスの安全のためのガイドライン(案)」に対する意見募集について
       ガイドライン案資料

 上記のドローンに関する経済産業省のパブコメ意見募集が、2020年03月04日から04月02日まで実施されました。これは、いままでのドローン用の電池がリチウム系のもので、無人ヘリコプターに比べ、農薬の搭載量が少なく、長い時間飛行ができないという欠点がありました。そこで、眼をつけたのが、水素燃料電池型ドローン(以下、水素ドローンという)です。
 同省の産業保安グループ高圧ガス保安室が作成した参考資料には、水素ドローンの活用状況として『バッテリーと比して長時間の飛行が可能であることから、農薬散布や物流等の領域における需要・期待が大きい。』『燃料電池スタック、水素タンク、水素供給系(配管、バルブ等)、空気供給系(コンプレッサ等)、プロペラ等の要素から構成される。』とありますが、検討グループには、農薬の専門家はみあたらず、農薬空中散布のメリットの説明は、以下のようになっているだけです。

 現 状 水素ドローンによる期待・効果
・10kg程度の農薬を搭載
・1日3〜4時間程度のフライト
・数十本のバッテリーを携行
・農地上空を高度10-15mで飛行
・大容量・長時間の農薬散布が可能に
・予備バッテリーの携行や交換が不要
 となり利便性向上が期待

 同省が作成した『ガイドライン案』(全26頁)には、高圧ガス保安関係の内容が多く、、農薬に関する記述はありません。『農業』という語句は皆無ですし、『農薬』は使用用途を記載した資料に『(たとえば、「農薬散布」のように記載)』とあるだけです。
 基準作成の検討に関する調査研究会には、農薬危害防止運動をしている農水省、環境省、厚労省も、ドローン飛行を許可・承認する国土交通省も参加していません。オブザーバーに農薬空中散布ドローンメーカーがはいっているくらいです。農薬散布を、物品の輸送と同一レベルで考えればよいとの安易な姿勢のもとで、、農薬空中散布が拡大することは危険です。いまでも、架線や建物・電柱などの障害物の多い農耕地での農薬散布には事故がつきもので、無人ヘリコプター(燃料油を使用)やドローン(可燃性電解液を含むリチウム電池を使用)は、墜落事故で、火災をおこした事例もあります(記事t31606)。水素燃料電池は、主たる排出物が水であり、環境に優しいというものの、爆発性の気体である水素を用いるため、空中散布中の水素ドローンで事故が起これば、その被害は一層大きなものとなります。
 そこで、ガイドラインとして、水素ドローンの製造者・販売者には、ドローンに搭載する水素貯蔵用高圧ガス容器の要件のほか、落下時の衝撃を緩和する措置(“モノ”の安全性)及び衝撃を生じさせ得る行為をしないこと(“行為”の安全性)の二つの視点から、さまざまな機体や部品の試験、ドローンの点検・整備・運用体制の確立が求められます。また、使用者については、水素ガスの貯蔵・消費・廃棄、車載移動、緊急事態への対応などに関して、遵守すべき事項がいくつも挙げられています。

★反農薬東京グループの【意見】と経済産業省の[回答]
【参考サイト】経済産業省;意見募集結果反農薬東京グループの意見回答
      4月10日のニュースリリース:「水素燃料電池ドローンにおける高圧ガスの安全に関するガイドライン」を策定しました(最終ガイドライン)

 パブコメ意見は、当グループの2件(【意見2】と【意見3】)を含め2名3件あり、いずれも農薬空中散布に関することでした。以下に回答とともに示します。  このような回答では、大型化と長時間飛行により、ドローンがより無人ヘリ空散に近づくのに、現行のように、ドローンを地散の延長と位置づけ、実施計画の届けも不要のままというのでは、農薬散布事故やドリフト防止、人の健康や自然環境への影響防止につながるとは、とても思えません。
    *** パブコメ意見と回答 ***
【意見1】災害対応や過疎地での物流に活用されるなら、反対はしないが、長時間の
 農薬散布のために水素ドローンを使うためのガイドラインであるなら、やめていただきたい。
 国民の健康にリスクのある農薬は原則なくすべきで、仮に経過措置的に使うにしても
 長時間対応のドローンを使う必要はない。

 [経済産業省の回答]
  本ガイドラインは、水素燃料電池ドローンの活用にあたり、高圧ガスの安全を確保
 するために必要な措置を示すものであり、高圧ガス保安の観点で、農薬散布により直
 ちにリスクが生じるものではないため、現案のとおりとさせていただきます。
  なお、ドローンによる農薬散布については、農林水産省が安全ガイドラインを策定
 したほか、物件の投下等に該当する場合国土交通省へ許可・承認の申請を行うことと
 されており、引き続き関係省庁とともに安全確保を図って参ります。


【意見2】水素燃料電池の導入により、ドローン農薬散布が『大容量・長時間』の散布
 を可能にすることが、メリットとされているが、ドローン空中散布による農薬の散布
 域外への飛散防止を第一に考えると、『大容量・長時間』は避けるべきである。

 [理由]
  1、地上散布より、高い飛行高度から、高濃度で、短時間で、広い範囲に散布する
   のが空中散布の特徴であり、地散より域外への農薬飛散が増大する危険がある。
   そのため、農薬の人への影響、生活環境、自然環境・生態系・生物多様性への
   影響指定外の農作物汚染やミツバチ被害防止等を配慮すべきであり、大容量
   ・長時間散布はマイナス要因となる。
  2、無人航空機のうち無人ヘリコプター空中散布は、都道府県農薬指導部局に
   実施計画や実績報告を提出せねばならないが、現行のドローン散布では、
   届出提出は不要である。『大容量・長時間』散布は無人ヘリコプターに近いもの
   であり、都道府県への届出が必要である。

  3、ドローン散布は、小回りが効くということで、住宅近郊での散布がなされる
   ことが多い。また、同一地域で、複数のドローンによる散布も行われる。広範囲
   の散布などを、実施団体まかせにして、散布区域を拡大しやすくすべきでない。

  4、水田や圃場には、架線や障害物が多く、農薬空中散布中の事故も多い、大容量
   になると、事故被害も大きくなる。

  5、ドローンでの農薬散布で、高度や風速変化を人がコントロールすることは
   困難である。旋回や方向転換、風速の変化時に、散布を停止するなどの自動操縦
   ができないと、水素燃料電池搭載ドローンのメリットがない。森林など高地や
   斜面での散布も目視散布はできない。

  6、ドローンでは、操縦不能で、墜落する危険があり、緩衝区域を設置する必要が
   あるが、広範囲に散布では、適切な場所がとれない。

  [経済産業省の回答] 【意見1】の回答と同じ。


【意見3】農薬散布では、粒剤粉剤からの微粒粉塵や、農薬に含まれる化学物質
 (有効成分、溶剤、界面活性剤、添加物など)の影響で水素燃料電池や関連装置
 の劣化・腐食が懸念される。農薬を高温多湿の夏期に、高所から環境中に散布
 することを配慮した燃料電池の性能試験が必要である。

 [理由]一般的な輸送飛行や撮影のための飛行と、農薬散布を同等と考えてはならない。

  [経済産業省の回答]
  農薬による影響については、本ガイドラインでは高圧ガス保安の安全の観点から、
  ドローン落下のトリガー事象とみなし、落下した場合の安全性について議論を行い、
  その安全性を担保しました。

作成:2020-04-30