空中散布・松枯れにもどる

n02602#松本市長が四賀地区の松枯れ空中散布の中止を表明#20-05
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       全国空中散布:記事n02002記事n02501
【参考サイト】長野県:県松くい虫防除対策協議会(2019年度:松くい虫防除薬剤散布計画・実績19年度実績
                                 2020年度:2020年度3月24日開催案内資料20年度被害対策)
                                 病害虫防除所の無人航空機関係情報令和2年の無人ヘリコプターによる作業実施計画
       上田市:地上薬剤散布を実施します(5/25)と予定日位置図

 長野県では、松枯れの原因をマツノザイセンチュウとし、これを媒介するマツノマダラカミキリ駆除のため、有人ヘリや無人航空機による農薬散布が実施されています。住民の反対で、すでに、県内では、神経毒性のある有機リン系のスミパインの空中散布はやめられており、上田市では地散のみに切り替わっています。しかし、現在でも、ネオニコチノイド系のエコワン3フロアブル(チアクロプリド含有)やマツグリーン2(アセタミプリド含有)の散布が続いたままの地域もあり、今年も有人ヘリ、無人ヘリ空散が計画されています。
 松本市においても、効果のみられない空散予算の不当計上に反対し、ネオニコチノイド系農薬の蜜蜂被害や人の健康への影響防止を訴える住民グループによる運動が行われているものの、本年は、約29haの松林へのマツグリーン2の空中散布が予定されていました。

★市民の反対署名9239が空中散布中止を勝ち取る
【参考サイト】松本の松枯れを考える住民の会FaceBook5/195/205/215/22-15/22-25/23-15/23-25/23-35/23-4
                           5/24-15/24-25/255/265/285/296/04

 「空中散布の中止を要求する松本市民の会」(代表山根二郎弁護士)は、5月7日、9239人の反対名簿(2017年にはじめた【子ども達の未来のために松本市の農薬空中散布をやめてください】)を、3月の市長選で当選した臥雲(がうん)新市長に面会、手渡し、空中散布中止を求めました。市がこのような市民の要請と署名を受け取ることは、前菅谷市長の時にはなかったとのことです。
 市では、これに先立つ4月22日から5月6日まで、松くい虫被害対策に係る市民アンケートを実施しており、その設問内容は、居住地区を記入し、予防薬剤散布に賛成か反対か、どちらでもないとの三択を選び、その理由を自由記載するという簡単なものでした。
 市長は、アンケート結果を検討し、5月20日までに、本年の空中散布について、方針を決めるとの意向を示しました。  松本市のHPにある松くい虫被害を防ぐためにの頁)は、市長がかわっても、昨年更新日(2019年8月27日)のままでしたが、アンケートの前文には、下段のような説明がありました。

★松本市の市民アンケート結果は、賛否二分
【参考サイト】松本市:松くい虫被害対策としての薬剤散布に関するアンケートの結果をお知らせします(5/15)
           無人航空機による空中散布等の実施について(5/30)
 松本市が、5月15日発表したアンケート結果は、回答者の総数は、1367名(市HPから913名、地域づくりセンターで用紙提出454名)で、居住地区別では、約70%が旧松本市地区、散布される四賀地区は24%でした。農薬空散については、賛成が 674名 (49.3%)、反対が 619名 (45.3%)と意見が二分されました。以下に、地域別の数値を示しますが、人口の多い旧松本地区と空散地元の四賀地区からの回答が多く、直接影響をうける後者では空散賛成の比率が58.3%とやや高い結果がえられています。

       ***  地区別の詳細   ***

           賛成         反対        どちらでもない   合計    地区比率
                                                                         
   旧松本市地区 432(45.7%)    476(50.3%)      38( 4.0%)     946   69.2%  
   四賀地区   187(58.3%)   103(32.1%)      31( 9.7%)     321   23.5%  
   安曇地区    2(25.0%)     6(75.0%)      0( - )         8    0.6%  
   奈川地区    0( - )       0( - )        0( - )         0     -  
   梓川地区    33(71.7%)     8(17.4%)      5(10.9%)      46    3.3% 
   波田地区    12(36.4%)    21(63.6%)       0( - )        33    2.4%
   無回答       8(61.5%)     5(38.5%)       0( - )        13    1.0%    
   合 計     674(49.3%%)  619(45.3%)     74( 5.4%)    1,367   100.0%
 回答者が述べている意見は、以下のようで、市長の判断が待たれました。
   賛成の方の主な意見
     ア 経済的で効果的な手法である。
     イ 国・県の基準に沿って実施しているので問題ない。
     ウ 景観、森林資源、自然環境を守るためには必要である。
     エ 山林の土砂災害防止や保水力維持のために必要である。
   反対の方の主な意見
     ア 効果がなく税金の無駄遣いである。
     イ 健康被害など安全性に問題がある。
     ウ 生態系への影響がある。
     エ 松枯れはカミキリムシやセンチュウが原因ではない。
   どちらでもないとする方の主な意見
     ア 薬剤散布予定地域の意向を尊重すべき。
     イ 早急な対策を行うべきであるが安全性が不確かである。
     ウ 生態系や人体へのリスクが管理されていれば賛成である。
★5月19日の記者会見では、空中散布効果が確認できないと
【参考サイト】松本市:5/19市長記者会見関連資料(会見のtxt版あり)

 先の市民団体と話し合いと上述のアンケート結果を踏まえ、臥雲市長は、19日の記者会見で、四賀地区での松枯れ被害の推移を図示し、散布地区も非散布地区も被害状況に差がないと説明し、「空中散布の十分な効果の確認ができていない」「空中散布しても予防効果は限定的で、松枯れの進行を1、2年延ばすに過ぎない。」との見解を述べ、さらには「市民からネオニコ農薬の健康への懸念の訴えがある」ことも理由のひとつだとし、空中散布を実施しないとの方針を表明しました。
 松本の松枯れを考える住民の会のFBによると、「空中散布の中止を求める松本市民の会」「空中散布公金支出差止訴訟の原告団」は、『市長の決断を高く評価する。これこそが新しい松本の始まりだ。 松本がネオニコの汚染地帯にならなくてよかった』との声明文をだしました。また、5月19日の市民の会のフェイスブックにも、『快挙です(^-^)v やりました!この日を待っていました! 素直に嬉しいです! この4年間で市民の間で、空中散布はやり続けても効果が無いのではないか、思ったよりも枯れが広がっているなと、世論が形成され、空中散布待望論が萎んでいきました。市長の判断には、世論の後押しもあったのではないでしようか? これまで、「市長への手紙」や「市へのご意見」を送ってくださった方、松本市へ激励や感謝のエールを送っていただければ幸いです。』とのコメントを投稿しています。
 5月23日には、市長は、散布希望の多かった四賀地区に出向き、中止・凍結の考えを説明、理解をもとめました。住民からは、空中散布以外の具体的対策を5月27日開催の市議会全員協議会で検討するという市長の主張を容認する考えも示されました。  27日の議会協議会では、いままで、空中散布を推進してきた議員達から、繰り返し市長に散布を要求する発言が続き、両者の意見は対立しましたが、31名の議員のうち、空中散布中止の議員はいままで、よりも増えており、6月4日に2回目の協議がおこなわれることになっています。

★科学的事実に眼をむけることの大切さ
 2008年5月、島根県出雲市では、松枯れ対策のスミパインMCの空中散布で、1000人を超える被害がでましたが(記事t20201)、これを契機に、健康被害原因調査委員会が作られ、その後、2009年の松くい虫防除検討会議の討議を経て「出雲市松くい虫防除対策基本方針」が策定され、2009年以降は空中散布は中止となりました。2012年には、「出雲市松枯れ対策再検討会議」で、「出雲市松くい虫対策・森林再生等基本方針」がつくられています(記事t24401記事t24202>。2012.5.18 広報いずも。現在では、出雲市森林再生等基本方針となる)。  長野県では、2011年に「今後の農薬の空中散布のあり方についてのパブリックコメント募集が実施されており、松枯れ対策については、反農薬東京グループからも県の中間報告案に意見をだしています記事t23603記事t23703)。その後も、長野県やその他の市町村に対し、意見・要望を述べてきましたが、空中散布が全廃とはならず、継続されたことについては、忸怩たる思いがします。
 市民の方々には、2019年の植村さんの署名入り記事松枯れ防除剤は効果があるのか〜マツグリーン液剤2の空中散布防除効果についての検討 (本文はこちら)をもう一度、読み返してもらいたいものです。


4月22日の松本市の「松くい虫被害対策に係る市民アンケート」前文

 ***  このアンケートは、松本市が行う松くい虫被害対策の薬剤散布に関するものです ***

 松本市の松くい虫被害対策
  松本市の松くい虫被害対策は、「松本市松くい虫被害対策基本方針」(別表)に基づき、地域の特性を
  踏まえ、地域の皆さまと協議をして伐倒駆除(被害木の伐採と消毒)、予防薬剤散布
  無人ヘリコプターによる散布)、更新伐(被害に遭う前に伐採利用して樹種転換)、
  樹幹注入(健全木に薬剤を注入)など、総合的な対策を実施しています。

 薬剤散布について
  薬剤散布は、平成25年度から地域住民の要望に応え、四賀地区の一部で、無人ヘリコプターにより
  実施してきました。一定の効果は認められましたが、被害を完全に食い止めるには至っておりません。
  また、散布を要望する声と、健康被害を心配する声をいただいています。

 薬剤について
  使用している薬剤(ネオニコチノイド系殺虫剤マツグリーン液剤2 主成分:アセタミプリド2%)は、
  国に認められた農薬であり、使用基準に従い適正に使用しています。散布後の気中濃度、水質検査では
  基準値を下まわる値でした。また、これまで健康被害の報告はされておりません。
  (詳しくは、市ホームページ松くい虫対策Q&Aをご参照ください。)

  一方、国内外の一部研究者は、ネオニコチノイド系農薬は、自然界の生態系に、ひいては人体にまで
  悪影響を与える危険性があると発表しています。

  以上の状況を踏まえ、市民の皆さんに松くい虫被害対策の薬剤散布のご意見をお伺いします。
  今回のアンケートは松本市民の皆さんを対象に行います。
  ながの電子申請サービスにおいて、回答をお願いします。

  受付期間は令和2年4月22日(水)から5月6日(水)までです。

作成:2020-05-30