街の農薬汚染・住宅地通知にもどる        通知「住宅地等における農薬使用について」

n02903#天草市の公園での違法な農薬散布で提訴〜桜などに石灰硫黄合剤使用  植村振作#20-08

【関連記事】記事n02404

★はじめに
「てんとう虫情報」n024号で、天草市が、天草市広瀬公園外で農薬取締法に違反してサクラとうめの樹皮病防除と称して「石灰硫黄合剤」を散布したので、早速、市に申し入れ書を提出したことをお知らせしました(記事n02404)。その後、使用した農薬についての指摘に感謝し、今後、施設や樹木の適切な維持管理に努めてまいりますとの趣旨の回答が届きました。(【回答書】全文はこちら

★提訴を前提に、天草市に住民監査請求をする
 早速、回答を寄せた天草市当局の姿勢は評価します。しかし、サクラの樹皮病防除のための石灰硫黄合剤散布が農薬取締法に違反していたという肝心なところについては触れていません。そこで、今回の散布が法令違反であることをはっきり認識してもらうために、違法な薬剤散布に公金を使ったのは地方自治法違反だという住民訴訟を起こすことにしました。
 住民訴訟を起こすには、住民が居住する自治体で先ず住民監査請求をしなければなりません。そこで、住民監査請求を天草市監査委員に提出しました。

★市からの監査請求結果通知が届いた
 地方自治法によれば、監査委員は住民監査請求が提出されてから60日以内に監査結果を請求人に通知し、これを公表しなければなりません。3月30日に提出してから59日経った5月28日に、5月28日付監査請求結果通知が漸く届きました。
 これまで天草市に対して何件もの住民監査請求をしましたが、このように期限ぎりぎりまで延ばされることはありませんでした。相当苦労して私の請求を拒んだことが監査結果からわかります。

 例えば、細井石灰硫黄合剤の登録資料には、サクラやウメの樹皮病適用は記載されていません。

 それでも違法ではない、とするために、いろいろ屁理屈をこね回して、サクラへの石灰硫黄合剤の散布は違法とはいえない、ウメへの散布は適法との監査結果を出しました。農薬取締法で定められた使用作物や使用方法に違反した散布をして公金を支出しても違法ではないだなんて言わるわけにはいきません。住民訴訟で争うことにしました。

★違法な農薬散布に、公金を使うなと天草市を提訴へ
 食用農産物への適用外散布については農薬取締法で禁止されていますが、公園のサクラや街路樹等非食用作物への使用については、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」第2条2によって適用病害虫の範囲及び使用方法を守って「使用するよう努めなければならない」と罰則規定のない努力義務として定められています。そのため比較的安易に自治体が公園などで薬剤散布をしています。
 しかし、いくら罰則規定がないからと言って、違法な農薬散布を見逃すことはできません。
 住民訴訟は住民監査請求結果が通知されてから30日以内に起こさなければなりません。早速、以下の訴状をまとめ、6月24日付で、熊本地方裁判所民事部 へ提出しました。訴状では、天草市長五木名で支払った経費[約20万円を五木個人が市に返却することをもとめています。
 【口頭弁論(予定)】訴状提出後20日ほど経った7月15日付で第1回口頭弁論期日呼出状が届きました。第1回口頭弁論は9月2日(水)の予定です。
 今のところ相手から訴状に対する答弁書が届いていません。天草市がどのような反論をしてくるか興味のあるところです。
 証拠が整わず訴状では書けませんでしたが、訴状提出後、監査委員が地方自治法で定められている監査委員の任務に違反して審理していることが明らかになりました。答弁書に対する反論だけでなく、この自治法違反についても、そのうち口頭弁論で明らかにする予定です。
 これまで、いろんな反農薬運動にかかわってきました。この裁判を最後にしたいと思っているところです。
 それにしても、住民訴訟の勝訴率は和解を含めても9%程度だそうです(「ニッポンの裁判」(瀬木比呂志著、講談社現代新書)による)。めげずに頑張りたいと思っています。

*** 公園における病害.防除のための薬剤散布に関する 天草市からの回答書  ***

 ー前略ー
 さて、本市では、現在68箇所の都市公園を管理しておりますが、供用開始から30年以上経過した公園も多く、
 樹木の枯死、衰退が進行している箇所も少なくありません。
 このため、樹木の予防保全を図る公園管理の一環として、薬剤散布を実施しているところでございます。
 今回、薬剤散布において、公園利用者への周知や立ち入り制限など適切な措置を講じなかったことは、
 職員及び受託者の認識不足であり、深くお詫びを申し上げます。 
 また、.石灰硫黄合剤は、樹木医の資格を有する受託者からの提案や効果実績などを参考に検討したうえで
 使用しておりましたが、薬剤の取扱説明書等によればサクラの予防保全には適合しないことが判明し
、業務改善の検討に繋がったのは、先生からご指摘いただいたお陰と.より感謝申し上げます。 
 今後の改善策としましては、平成25年4月26日付けで農林水産省及び環境省より通知された
 「公園や街路樹等における病害.防除にあたっての遵守事項」に基づき、石灰硫黄合剤の使用を禁止し、
 塗布や樹幹注入等を主体とした樹木の維持管理に努め、薬剤の使用においては樹木への適合や取り扱いなど
 細心の注意をはらってまいります。 
 また、薬剤使用に関する研修会への参加や、専門家への意見聴取などにより、職員の意識改革・能力向上を
 図るとともに、受託者に対する指導も徹底してまいります。
 来園者が安心・安全に公園を利用いただけるよう施設や樹木の適切な維持管理に努めてまいりますので、
 今後もお気づきの点がございましたら、ご指導、ご教示いただきますようお願いいたします。 令和2年3月16日   

 *** 住民監査請求書    2020年3月30日 ***

 天草市監査委員 殿

 請求人 
 住所 : 熊本県天草市
 職業 : なし
 氏名 : *********
                  記
 請求の要旨
  天草市は、随意契約により村川緑宝園に「広瀬公園外桜等樹皮病薬剤散布業務」を委託し、
 村川緑宝園は2020年2月19日に桜等樹皮病防除目的で広瀬公園及び城山公園において、桜及び
 ウメに石灰硫黄合剤「細井石灰硫黄合剤」(農林水産省登録番号15850号)を散布した(事実証明-1)。
 天草市は、当該業務に対して2020年3月12日に196,570円を村川緑宝園に支払った(事実証明-2)。
  (筆者注:本件で樹皮病とは、市当局の説明により、がんしゅ病、てんぐ巣病、こうやく病、
   胴枯病などを指すものとする)。
 今回散布された「細井石灰硫黄合剤」(登録番号15850号)は、全ての登録硫黄合剤がそうであるが、
 適用作物を桜とした登録はない。また、ウメでは、縮葉病が唯一適用病であり、樹皮病は
 登録されていない(事実証明-3、4)。
 登録農薬の適用病害虫等名は、農林水産省の農薬登録検査を受け(事実証明-5)、
 薬効・安全性等が確認されたものについて、農薬取締法第16条に基づいて表示されたものである。
 適用病害虫名が表示されていない病害虫名に対する薬効は確認されていないか、薬効のない
 薬剤である。
 「細井石灰硫黄合剤」(登録番号15850号)の適用病害虫の範囲及び使用方法欄に桜および
 ウメの樹皮病が表示はされていないことは、桜及びウメの樹皮病に対する同剤の防除効果が
 確認されていないか、防除効果のないことを意味する。
 ところで、「登録に係る適用病害虫の範囲及び使用方法」欄に表示されていない作物に
 当該農薬を使用すること即ち適用外使用は農薬取締法第25条第3項により禁じられている。
 登録農薬であっても適用外使用は禁じられているのである。今回の村川緑宝園による桜及び
 ウメへの「細井石灰硫黄合剤」散布は適用外使用であり、農薬取締法第25条第3項に反する
 違法な散布である。
 効果が期待されない農薬を違法に散布した村川緑宝園への196,570円の支払いは、地方財政法
 第4条第1項「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、
 これを支出してはならない。」に違反する、違法かつ不当な支出である。
 よって、監査委員は、市長に対して、市長は村川緑宝園へ支払った196,570円を天草市に
 返還すること、と勧告するよう求める。

 上記の通り、地方自治法第242条1項の規定により、別紙事実証明書を添付の上、必要な措置を
 請求する。(添付事実証明:掲載省略)

 *** 訴  状(サクラ等樹皮病防除石灰硫黄合剤散布公金支出返還請求事件) 概要で項目のみ記載 ***

 被告   天草市長 中村五木 


 第1 請求の趣旨
   1 被告は,中村五木に対し, 196,570円を支払うよう請求をせよ。
    2 訴訟費用は被告の負担とする。 との判決を求める。

 第2 請求の原因 
  1 当事者 (1)原告  原告は熊本県天草市民である。 
       (2)被告  被告天草市長は、村川緑宝園に対して「広瀬公園外サクラ等樹皮病薬剤散布業務委託」
          委託料の支出命令を発する権限を有する者であり、違法な公金の支出により天草市に損害を
                   生じさせた損害賠償の義務を負う者である。 
  2 「広瀬公園外サクラ等樹皮病薬剤散布業務」とは ー略ー
  3 石灰硫黄合剤とは(概要)ー略ー
  4 石灰硫黄合剤の適用病害虫の範囲(概要)ー略ー 

 第3 本件支出の違法性(概要)
   1 農薬取締法第25条第3項違反について
    2 地方自治法第2条第16項違反について  
    3 地方自治法第2条第14項違反について 
    4 地方財政法第4条第1項違反について

 第4 監査請求前置 

 第5 結論 

作成:2020-08-31