クロルピクリンにもどる
      クロルピクリン資料:毒ガス兵器そのものが農薬として使用されている。被害は周辺住民に多い

n03004#クロルピクリン被害撲滅には、農水省の認識を変えねばならぬ#20-09
【関連記事】記事n02801
  反農薬東京グループの農水省への「クロルピクリン等の使用についての質問と要望(8/17)と回答
【参考サイト】農水省:クロルピクリン剤等の土壌くん蒸剤の適正使用について(2006/11/30、18消安第8846号)
          「被覆を要する土壌くん蒸剤の適正な取り扱いの徹底について」(2020/3/11、元消安第5645号)
          被覆を要する土壌くん蒸剤の使用実態等に基づく適正な取扱いの徹底について(2020/07/15のニュースリリース)
          被覆を要する土壌くん蒸剤の使用実態等に基づく適正な取扱いの徹底について(2020/07/15、2消安第1758号)

 記事n02801で、農水省が、7月15日に、「2消安第1758号」で公表した『クロルピクリンの使用実態等に関する調査結果を紹介しました。これは、同省が3月11日に発出の通知「元消安第5645号」に基ずくものでしたが、さらに、5月15日の通知『令和2年度 農薬危害防止運動の実施について』の実施要綱でも、クロルピクリン対策への言及があり、私たちが緊急要望(5月20日)し、6月30日に、回答を受理しましたが、いろいろ不明の点があり、また、従来から私たちが求めてきたクロルピクリン規制とかけ離れた方針が示され、納得いくものではありませんでした。
 そこで、今号では、7月15日の調査報告について、農水省へ送った質問と要望、及びその回答を紹介します。
 項目は、2つにわかれており、【1】は農水省の[回答]そのものに対するもので、<1-1>質問)と<1-2>要望からなり、【2】は、広島県尾道市に対して、クロピク使用に関する行政指導を求めるものですが、後者の詳細は省略し、農水省通知<2消安第1758号>関連だけを。回答とともに、下記に示します。

【質問への回答概要】
 *調査については、全都道府県から回答があったが、個々の自治体の回答は開示しない、また、個々の作物別の栽培面積やクロルピクリンの使用実態は把握していない。さらに、調査目的は、使用実態や現場での指導方法について総点検することであり、クロルピクリンによる被害調査は行っていない。としている。
 *農水省は『都道府県名も含め、産地の匿名性を確保した方が、より正確な調査結果が得られるものと考えました。』と答えているが、これは、わたしたちの主張『クロルピクリン被害を減らすには、個々のケースバイケースで対処することが必要で、具体的にどのような圃場で、どんな作物を栽培している時に、発生したかを具体的に知ることが一番ある。』とは相容れない。
 *そのせいか、わたしたちが、個別の地域で被覆をしない理由を尋ねても『個別の産地の回答に関することはお答えできません。』と、また、被覆しなかったケースについて、具体的な理由ごとにその件数をたずねても、『実施状況やクロルピクリン剤の使用に伴う被害の事例について調査していません。』と返ってくるだけである。
 *他国での規制状況を尋ねましたが、『欧州では登録がないこと、米国では緩衝地帯の設定等の規制が設けられていることを承知しています。規制の理由については、それぞれの規制当局にお尋ねください。』としかいわない。

【要望への回答概要】
 農水省は、『ほとんどの産地でクロルピクリン剤の使用時の被覆は、完全に実施されていると回答がある』と認識し、適正に使用すればよいといいます。いままでどおりの指導では、被害がなくならず、クロルピクリン使用禁止の実現は遠のくばかりです。

 

--- クロルピクリン等の使用についての質問と要望(2020/08/17)と農水省の[回答] ---

 【1】「被覆を要する土壌くん蒸剤クロルピクリンの使用実態等に基づく適正な
     取り扱いの徹底について」(消安第1758号)に関する質問と要望

  <1−1>調査結果に関する質問

  貴省は、前記調査の実施に際し、使用実態、指導実態について、詳細な記載様式をお示しに
  なりながら、『産地及び都道府県の特定につながる情報を除き、各都道府県担当者に
  共有します』『産地及び都道府県の特定につながる情報は、不開示情報とし、調査の
  個票を含め、公表しません。』とされています。
  作物名やその生産地、農薬使用状況は 秘密事項ではありません。
  クロルピクリンの都道府県別出荷量は、農薬要覧で公表されており(注2)、貴省が
  発出している「農薬危害防止運動について」や「住宅地等に置ける農薬使用について」には、
  指導事項として、『農薬の散布に当たっては、事前に周辺住民に対して、農薬使用の目的、
  散布日時、使用農薬の種類及び農薬使用者等の連絡先を十分な時間的余裕をもって幅広く
  周知すること。』とあります。
  また、『病害虫に強い作物や品種の栽培、病害虫の発生しにくい適切な土づくりや施肥の実施、   人手による害虫の捕殺、防虫網の設置、機械除草等の物理的防除の活用等により、農薬使用の   回数及び量を削減すること』との記載があり、クロルピクリン使用の低減・代替化が求められて   もいます。産地や作物が不明なままで、農薬削減や住民の健康被害防止につながるとは、   とても思えません。   なぜ、産地や作物名を不開示事項としたのか、まず、説明してから、以下の(1)から(10)の質問に   答えてください。
 (1)回答は47都道府県全てからありましたか。回答県数と回答がなかった県名を教え
  て下さい。広島県は私たちの質問に、クロルピクリンに関して、今までもこれからも
  調査はしないと回答してきました。このことは国に報告済みとのことです。
  これに対して貴省はどのように対応しましたか。
 【回答】本調査に対し、全47都道府県から回答がありました。個別の県の回答に関しては、
   お答えできません。

 (2)クロルピクリンを使用している県毎に、どこで、どういう作物にどのくらい使用
  されているか、作物別に、使用量、栽培及び防除面積を把握しておられますか。
  判明しておれば、当該データを一覧でお示しください。
 【回答】作物別の使用量、面積等は把握していません。

 (3)クロルピクリン使用によって周辺住民が大気や水系汚染で健康被害を受けたり、
  農作物・家畜・鶏などが被害を受けた例は過去にも多くあります。これらについて
  質問しなかったのは何故ですか。
   貴省がすでに、危被害発生件数を把握しておられれば、2000年以後の事例発生
  件数を県別・内容別にお示しください。
 【回答】 本調査は、 クロルピクリン剤の使用実態や、現場での指導方法について
  総点検することでしたので、使用に伴う被害の事例等は調査していません。
  クロルピクリン剤をはじめ、農薬の使用に伴う事故・被害の発生状況については、
  以下の当省ウェブサイトで公表しています。
   https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_topics/h20higai_zyokyo.html

 (4)まとめにある「産地」の定義は何ですか。基準は生産量ですか。面積ですか。
  どういう条件だと「産地」になるのか具体的に教えてください。
 【回答】 「各地域の単位農協や部会の防除暦、主要な法人の栽培体系等、各都道府県
  が把握し得る営農に関する情報に基づき、クロルピクリン剤の使用が見込まれる地
  域」を「産地」としています。

 (5)「根菜類」「その他の野菜」などという言い方ではなく、「ナガイモ」
  「ニンジン」などのように作物名で公表すべきと思いますが、いかがお考えですか。
 【回答】 クロルピクリン剤の使用実態や、現場での指導方法についての傾向を見るに
  は、個別の作物名ではなく、作物の種類で分けた方が良いと考えます。

 (6)結果を「個人、法人、産地および都道府県の特定につながる情報を除き」公表
  するとありましたが、何故、そういう情報を公開しないのですか。
  現在、クロルピクリンの使用は禁止されていませんから、使用しても違法という
  わけではありません。最低、都道府県名くらいは公表すべきだと思いますが、
  いかがですか。
 【回答】 各産地におけるクロルピクリン剤の使用実態や、現場での指導方法について
  調査するには、都道府県名も含め、産地の匿名性を確保した方が、より正確な調査
  結果が得られるものと考えました。

 (7) 被覆をしない理由として回答のまとめでは、「鎮圧すれば被覆しなくてもいいと
  誤認。被害防止対策等の理解不足。大規模産地で被覆作業が間に合わない。強風で
  難しい。使用者が理解していない。使用者の危険意識が希薄。指導内容が届きにくい
  農業者がいる。新規使用希望者は情報の入手が難しい。コスト。被覆資材や方法の
  変更が容易でない。被覆が努力義務にとどまっているため指導がすすまない。
  代替資材は高価で作業能率も悪い。被覆資材の揮散防止効果に具体的な根拠がない」
  などがあげられています。各項目ごとの件数と該当する県名を教えてください。
  また、「使用者の危険意識が希薄」という回答がありますが、クロルピクリンの毒性
  や被害例などの情報をきちんと使用者に伝えるべきと思いますが、どうお考えですか。
 【回答】 個別の産地の回答に関することはお答えできません。
  本調査結果を踏まえて、クロルピクリン剤の適正な取扱いについて改めて指導しました。

 (8)クロルピクリン使用の最低条件の被覆すら守らせることができないのであれば、
  使用禁止など規制を強化すべきと思いますが、どうお考えですか。
 【回答】 本調査結果において、ほとんどの産地でクロルピクリン剤の使用時の被覆は
  完全に実施されていると回答があり、各都道府県において、被覆の徹底や住宅地等
  周辺での被害防止対策について、地域において様々な取組が行われていることが報
  告されました。
  本調査結果を踏まえて、クロルピクリン剤の適正な取扱いについて改めて指導しました。

 (9)住宅、畜舎等の隣接ほ場で処理を実施する場合については、使用禁止ではなく、
  下記の要件を満たせば、実施可能となっています。
  それぞれの項目の具体的な内容、及び、項目ごとの実施件数を、県ごとに教えてください。
  また、万一、実施を怠ったことが危被害の原因となった件数を県ごとに教えてください。
  a) 周辺住民への説明や事前周知(周知手段ごとに、県別数値をあげる)、
   b)被覆の徹底、厚さ 0.03 mm 以上又は難透過性の被覆資材の使用
   (厚さ0.03mm以上と以下に、また難透過と非難透過性にわけて)、
   c) 近隣に揮散しないよう丁寧な被覆(被覆方法を実施形態別にわけて)、
   d) マルチ同時施用機の使用(同機の使用の有無にわけて)
   e) 適度な土壌水分(水分の含有率ごとにわけて)
  f) 地温に応じた被覆期間の確保(地温ごとの被覆期間にわけて)、
   g) 住宅地等が風下となる時間帯を回避(風下に向けた使用の有無にわけて)、
  h) ガス抜き確認の徹底(ガス抜きまでの期間や確認の方法にわけて)
  i) 廃容器や残液の不適切な投棄による危被害についての件数もおねがいします。
 【回答】 本調査ではこれらの項目の実施状況やクロルピクリン剤の使用に伴う被害の
  事例について調査していません。
 
 (10)現時点での外国で規制状況を、規制条件、規制理由とともに、教えてください。
 【回答】 クロルピクリン剤について、欧州では登録がないこと、米国では緩衝地帯の
  設定等の規制が設けられていることを承知しています。
  規制の理由については、それぞれの規制当局にお尋ねください。

  <1−2> クロルピクリンの使用規制についての要望
  (2-1)クロルピクリンは禁止してください。既に多くの国で使用が禁止されています。
   貴省も代替方法を勧めています。被覆の必要性ばかりを力説してもあまり意味は
   ありません。クロルピクリンの毒性や被害者の声を使用者や行政にきっちり明確に
   知らせるべきです。クロルピクリンは、農薬事故の原因農薬として唯一毎年名前を
   あげられている農薬です。
   これだけの毒性を持ち、毎年被害者を出し、被覆したからと言って決して安全ではなく、
   周辺住民に被害を与えているクロルピクリンは禁止すべきです。

  (2-2)直ちに禁止出来ない場合は、禁止するまでの間、以下の対策を実施することを求めます。
   1)住宅地周辺でのクロルピクリンの使用禁止、代替法の義務付
   2)クロルピクリン使用ほ場周辺住民の健康調査
   3)10a以上のほ場でクロルピクリン処理を実施している地区での環境調査
   4)現在努力規定である被覆を義務規定にする
   5)使用者に免許制度
   6) 残液や廃容器の回収、処理システム構築。
   7)クロルピクリンなど劇物農薬は、使用免許制度の導入、
   8) 使用者に、使用計画を出させ、周辺への通知を義務づける。
   9)貴省は、本年の「農薬危害防止運動について」で、『国は、各都道府県等での
     取組の効果を検証し、優良な取組事例等を 全国レベルで共有することにより、
     農薬の適正使用に係る指導を充実させるとともに、次年度以降の運動の実効性を
     なお一層高めるよう努めるものとする。』と記載されています。
     農薬やクロルピクリンなどを使用しない優良事例の調査を国が様式・期限を決めて
     早急に行ってください。
  10)貴省は、クロルピクリンの適正使用の指導を優先する施策だけでなく、前記調査で
     判明した優良事例を全国的に共有化し、クロルピクリン使用削減と代替栽培法を
     拡大するとりくみ施策を作成し、その普及に重点をうつしてください。

   これについての回答はまとめて以下のようでした。
 【回答】 本調査結果において、ほとんどの産地でクロルピクリン剤の使用時の被覆は
  完全に実施されていると回答があり、各都道府県において、被覆の徹底や住宅地等
  周辺での被害防止対策について、地域において様々な取組が行われていることが報
  告されました。
  本調査結果を踏まえて、クロルピクリン剤の適正な取扱いについて改めて指導しました。


【2】広島県尾道市への指導についての要望 −省略−
 → 詳細は、こちらにあるその4以下をごらんください。

作成:2020-09-29