松枯れ・空中散布にもどる
n03601#国土交通省が無人航空機飛行拡大で航空法改定へ#21-03

【関連記事】記事n03602() 【参考サイト】農水省:農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会の頁
       国土交通省:無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の飛行について
       内閣府無人航空機に関する航空法の許可・承認状況と今後の環境整備について
       首相官邸のHP空の産業革命に向けたロードマップ2020

 農薬の無人航空機による空中散布は、航空法で原則禁止されている危険物の輸送と投下にあたり、所管の国土交通省からの飛行許可・承認が必要となっていますが、同法は、飛行の規制、無人航空機事故の防止に焦点があわされ、私たちが問題視している農薬空中散布についての規制は、農水省の所管で運用されています。
 なお、無人航空機の事故については記事n03602を参照ください。

★無人航空機の飛行許可・承認数は年間約4万件
 まず、無人航空機の年間飛行状況をみておきましょう。内閣府の統計では、2018年度の飛行許可・承認件数は2万8855件、月平均は2016年度1128件,17年度1650件,18年度3075件、19年度12月現在4095件となっています。2018年度の飛行目的別では、空撮が最も多い36%、測量及びインフラ点検保守がともに12%で、農林水産関係が5%です。飛行項目別件数(重複あり)は、下記のようで、農薬空中散布は危険物投下に該当します。
 人又は物件30m以内:23822件  人口密集地域:23011件  高度150m以上:1964件
 空港等周辺:     696件  目視外:   15388件    夜間:    13796件
 催し:        1230件  物件投下:     1230件    危険物投下:  901件
 なお、無人航空機の機種については、下段のリンク集を辿ってください。

★国土交通省のパブコメでは
 そんな中、国土交通省は2月16日のパブコメ意見募集「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領の改正について」で、『高構造物周辺に限定するなどした目視外飛行や立入管理区画の設定等を行い低高度からの物件投下を伴う飛行の場合には、補助者の配置が不要である』とし、<農薬>という語句も追加されることなく、目視外飛行について、
 (1)一時的に 150m を超える山間部の谷間における飛行や、高構造物の点検のために
   飛行するものであって高構造物周辺に限定した飛行など、有人機との衝突リスクが比較的低い
   空域等を選定した上で必要な安全対策を講じている場合には、補助者の配置を不要とする。
 (2)物件投下を伴う飛行について、原則1mを超えない低高度からの投下であって、
   立入管理区画の設定等により物件投下地点の周辺に第三者が立ち入らない対策が取られている
   場合には、補助者の配置を不要とする。
 (3)その他所要の改正 −省略−   とする旨の提示をしました。
★国交省は法改定で、ドローンのさらなる利用をめざすのが目的
【参考サイト】国土交通省:3月9日のプレスリリース(「航空法等の一部を改正する法律案を閣議決定〜航空ネットワークの確保と航空保安対策、ドローンの更なる利活用を推進!〜」)

 上記審査要領は、高構造物に関するもので、農薬空中散布に関係ないとわけですが、3月9日に、国土交通省はプレスリリース本文で、航空法改定法案が衆議院に提出されたことを報告しました。その理由は下記のようです。
  最近における航空輸送及び無人航空機をめぐる状況に鑑み、航空機の航行の安全及び無人航空機の
  飛行の安全並びに航空運送事業の利用者の利便の確保を一層推進するため、国土交通大臣による
  航空運送事業の基盤強化に関する方針の策定及び必要な支援の実施、危険物等所持制限区域に
  立ち入る旅客等に対する保安検査の受検の義務付け、無人航空機の機体の安全性の確保及び操縦を
  行おうとする者について行う技能証明に係る制度の創設、運輸安全委員会による無人航空機に係る
  事故等の原因を究明するための調査の実施等の措置を講ずる必要がある。
 法に付随する概要法律案要綱をみても、<農薬>の"農"とい文字もでてこないことは、先の審査要領とかわりありません。このことからも、縦割り行政の結果として、私たちが、懸念する輸送・投下される農薬の危険性については、いままでと同じく、農水省に丸投げであることがわかります。

★航空法の改定で新設される制度
 コロナにかこつけて、無人航空機を航空運送事業にもっと利用しようとするための航空法及び運輸安全委員会設置法の一部改定の法律のうち、重要なのは、『無人航空機の<レベル4>実現に向けた制度整備』として、下記の2つの制度が創設されたことにあります
 @機体の安全性に関する認証制度(機体認証)
   法第二節 無人航空機の安全性 第一款(かん) 機体認証等にある
    第百三十二条の十三(機体認証) 国土交通大臣は、申請により、無人航空機について
    機体認証を行う。
 A操縦者の技能に関する証明制度(操縦ライセンス)を創設
   法第三節 無人航空機操縦者技能証明等 第一款 無人航空機操縦者技能証明にある
    第百三十二条の四十(技能証明の実施) 国土交通大臣は、申請により、無人航空機を
    飛行させるのに必要な技能に関し、無人航空機操縦者技能証明を行う。
 3月に公表された無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会 中間とりまとめでは、『今後、都市部での物流等、さらに多様な産業分野の幅広い用途に利用され、多くの人々がその利便性を享受し、産業、経済、社会に変革をもたらすためには、有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4)の実現が不可欠である』とされており、国が行う機体に必要な機体認証と形式認証では、第一種(第三者上空を飛行する)と第二種(第三者上空を飛行しない)が、操縦者には、国の操縦ライセンス又は民間の技能証明が必要となっています。国のライセンスは、一等資格(レベル4飛行可能)と二等資格の区別があり、機体の種類や飛行計画を踏まえ、飛行承認の判断につながります。
 *注:<レベル4>というのは、空の産業革命に向けたロードマップ2020の「社会実装」の項にある
  説明によると、
  <レベル1、2>(目視内、操縦・自動/自律) 用途例:空撮、農薬散布、点検、測量等
  <レベル3>(目視外(補助者なし)、無人地帯)用途例:本土・離島間、山間地物流等
  <レベル4>(目視外(補助者なし)、有人地帯)用途例:物流、警備等
 一見、今回の法改定が、無人航空機利用の規制につながりそうですが、それは、逆で、<レベル4>で輸送を行いやすくすることに繋げようとしているとの認識で対応せねばなりませんし、<レベル1、2>の目視内の農薬散布はそのままになっています。

 上記制度のほか、無人航空機の事故に関する条文が整備され、事故通報の義務化、事故等の原因を究明する国土交通大臣の役割が明確化されてもいますが、農薬を所管する農水省の姿はみえません。

*** 無人航空機の認定機種のメーカーへのリンク集 ***
 国土交通省が、いままでに認定した無人航空機の機体は60種ほどあり、
 無人ヘリコプター(大型100kg級)として、ヤマハ発動機やヤンマー社の、
 又ドローン型(3-15kg級が多い)としてDJI社の機体がよく使われます。
 農水省といくつかのメーカーのリンク先を、下に揚げておきます。

   農水省:農水省の農業用ドローン
   ヤマハ発動機  ヤンマーヘリ&アグリ  エアロセンス  
   ナイルワークス  acsl  DJI

作成:2021-03-31