これは、わたしたちの要望に応じて、農水省から出された「住宅地等における農薬使用について」(以下、「住宅地通知」という。2013年4月26日、農水省消費・安全局長及び環境省水・大気環境局長から発出)の内容がもとになっています。恐らく、尾道市の農協では、初めて掲載されたものと思われます。農業者に直接配布されるJAからのお知らせは大きな影響を与えると期待をもちましたが、その内容は、いまいちで、農薬使用を是として、行政からの通知等を遵守して、適正に散布することが前面にでており、その他の項にある【農薬を使用しない管理】としてあげているのが、防虫網の活用だけとは、なさけないかぎりです。*** 住宅地付近での農薬散布について *** 学校、病院、公園など公共施設や住宅地付近の農地での農薬を散布せざるを得ない場合は、住民や 子どもたちへ健康被害が生じないよう、農薬の飛散防止に努めるなど、十分に配慮しましょう。 ■農薬の飛散防止に最大限の配慮を! ・誘引、塗布、樹幹注入や粒剤など飛散の少ない農薬の活用や最小限の区域の散布に努めましょう。 ・風の強さ、向きに注意し、学校や通学路では子どもたちに影響が出ないよう天候や時間帯を 選んで行い、特に、クロルピクリンなど揮発性が高く、催涙を伴う強い刺激臭があるものを 使用する場合は、周囲に十分注意を払いましょう。 ■事前に十分な周知を! ・農薬を散布する場合は、周辺住民に使用目的、散布日時、使用農薬の種類などを知らせましょう。 特に化学物質に敏感な人が居住している場合は、十分に配慮しましょう。 ■その他 ・住宅地周辺では、防虫網の活用など出来るだけ農薬を使用しない管理に取り組みましょう。 ・ラベルに記載された内容を厳守し、農薬の適正な管理に努めましょう。
追加情報として、5月25日の回答を設問ごとに赤字で記載しました。 *** 住宅地通知等についてのお尋ねと要望 *** 尾道市農業協同組合 代表理事組合長 丹下 和博 様 私たちは、農薬をはじめとする化学物質による環境汚染・健康被害を出来るだけ減らそうと 運動している市民団体「反農薬東京グループ」です。 尾道市に居住する化学物質過敏症患者から相談を受けて、何度か、広島県や尾道市に質問や 要望をだしてきましたが、住宅地近郊での、農薬(除草剤を含む)使用は絶えることなく、 無通知であったり、散布周知が直前におこなわれたり、クロルピクリンのガス抜きの被覆除去の 通知がないなど、被害者が防備することもできない状況がつづいています。 こうした中で貴JAは、広報誌「えぇJAん!おのみち」3月号の20頁の下半分に 「住宅地付近での農薬散布についてー周辺にお住まいのみなさんに配慮を」という文章を 掲載されました。 これは、わたしたちの要望に応じて、農水省から出された「住宅地等における農薬使用について」( 以下、「住宅地通知」という。2013年4月26日、農水省消費・安全局長及び環境省水・大気環境局長から 発出)の内容で、尾道市で、初めて掲載されたものと思われます。農業者に直接配布されるJAからの お知らせは大きな影響を与えると期待しています。 世の中では、大規模・薬剤頼りの農業に対する批判も高まっており、農水省は、 『環境を重視する国内外の動きが加速していくと見込まれ、我が国として持続可能な食料供給システムを 構築する』として、「みどりの食料システム戦略〜食料・農林水産業の生産力向上と持続性の 両立をイノベーションで実現〜」を検討していましたが、3月29日、中間取りまとめ案 が決定されました。 文中には、スマート防除技術体系の活用や、リスクの高い農薬からリスクのより低い農薬への 転換を段階的に進めつつ、化学農薬のみに依存しない総合的な病害虫管理体系の確立・普及等を 図ることに加え、 ・ 2040年までに、主要な品目について農業者の多くが取り組むことができるよう次世代有機農業に 関する技術を確立する。 ・2050年までに、オーガニック市場を拡大しつつ、耕地面積に占める有機農業の取組面積の 割合を25%(100万ha)に拡大することを目指す。 とあります。 農薬については、 ・化学農薬のみに依存しない次世代総合的病害虫管理の確立と現場への実証等を通じた促進 ・天敵等を含む生態系の相互作用の活用技術の開発 ・従来の殺虫剤を使わなくてすむような農薬・防除技術の開発(RNA農薬、生物農薬、光・紫外線や 超音波等を活用した物理的防除等) ・2040年までに、ネオニコチノイド系農薬を含む従来の殺虫剤を使用しなくてもすむような 新規農薬等を開発する。 ・2050年までに、化学農薬使用量(リスク換算)の50%低減を目指す。 などが、 提起されています。 しかし、私たちは、農水省の10年単位の計画ー具体的な削減計画も示さず、喫緊の問題となっている ネオニコチノイド系を、10年延命させ、今後、30年かけて、農薬使用を半減さすというーを 是とすることはできず、もっと迅速にすすめるべきだと考えています。 このような流れの中、尾道市は、柑橘栽培が盛んで、観光にも貢献しています。島以外の農地でも 安全な農作物の栽培で未来ある農業の振興に力を入れていただきたいと願っています。 そこで質問と要望を出させていただきます。回答は4月27日までに下記にお願いいたします。 *** お尋ねと要望及び5月25日の回答 1)住宅地通知については、貴農協は、いままで、農薬使用者にどのような方法で、どのような 内容の指導をされてきましたか。 [回答]農薬流通業者の立場から,産地の栽培講習会等で,農薬の安全使用について講習しています。 2)このたび、貴農協は、広報に、住宅地通知の内容をお示しになり、周知徹底するよう会員に 求められていますが、従来の指導とどのような点が違いますか。 [回答]従来どおり,農薬の安全使用についての講習を継続します。 3)上述の農水省の方針を踏まえ、農薬を使用する農家への働きかけが重要と思われますが、 具体的にどのような計画で、住宅地通知を周知徹底し実践をはかっていく予定ですか。 周知達成目標があれば、タイムスケジュールもお示しください。 [回答]従来どおり,農薬の安全使用についての講習を継続します。 なお,周知達成目標はありません。 4)住宅地通知にある「事前に十分な周知を」の項目の中で「特に化学物質に敏感な人が居住して いる場合は、十分に配慮しましょう」とありますが、既に判明している化学物質過敏症患者に 対して、どう対応をとりますか。具体的に教えて下さい。 [回答]地方公共団体や農薬使用者では無いため権限がありません。 農薬の安全使用についての講習は引き続き実施します。 5)尾道市でも使用されている土壌くん蒸剤のクロルピクリンは、非常に毒性が強く、全国で 毎年事故が起こっています。もともと毒ガス兵器として使用され、現在も毒ガス兵器として 指定されています。農水省も昨年、異例の調査を行い、注意事項を出していますが、貴農協では、 クロルピクリンを使用する生産者はどの程度いますか。適用作物ごとに、該当数をお示し くだされば、幸いです。 [回答]具体的に把握していません。 6)クロルピクリン使用を削減又はやめるため、どのような栽培方法を薦めておられますか。 また、その実践の程度は、どうなっていますか。最近5年間でのクロピク使用推移と その代替方法も教えてください。 [回答]具体的な栽培方法は生産者が判断することであり,個別に相談があれば指導しています。 なお,クロルピクリンの使用推移は把握していません。 7)農作物の栽培に、クロルピクリンを出来るだけ使用しないよう、会員に求めてください。 クロルピクリンを使用削減のタイムスケジュールがあれば、お示しください。 [回答]引き続き,農薬の安全使用について,講習会等を通じて農薬使用者へ周知していきます。 なお,タイムスケジュールはありません。 8)住宅地通知を詳しく知らせるために、JAの広報誌に繰り返し掲載して下さい。 また、 他の媒体や会議などでも農家に知らせる努力を続けて下さい。 なお、住宅地通知及びクロルピクリンについては、当グループの機関誌てんとう(ロゴ印)情報に、 適宜、記事を掲載しております。タイトル一覧が下記にありますので、参考にしてください。 住宅地通知。クロルピクリン 以上