空中散布・松枯れにもどる
t02508#農水省、空中散布規制強める?農薬安全使用基準に航空防除の規制を新設#94-05
 4月19日、農水省は官報に大臣名で「農薬安全使用基準の公表について」を告示し、同日、事務次官名で「農薬安全使用基準の一部改正について」という通達を出し、農薬空中散布や農産物への農薬残留基準設定に関連して「農薬安全使用基準」の改定を通知しました。
 通達では、環境庁や厚生省が水質に関する基準を新たに設定したことや、中央環境審議会の答申が出されたことに触れ、「このような動きを踏まえ、農林水産省としても水質保全の重要性を十分認識し、公共用水域等での農薬による水質汚濁の防止に万全を期していくこととし、更に、水道原水を含む公共用水域の水質保全の徹底を図るための農薬取締法の運用強化の一環として、「農薬安全使用基準」を拡充し、「水質汚濁の防止に関する安全使用基準」及び「航空機を利用して行う農薬の散布に関する安全使用基準」を新たに設定した」となっています。
 今まで、農薬の危険性にあまりにも無関心だった農水省が、ようやく水質汚濁に限って少しは重い腰を上げようと言うのでしょうか。
 もともと、松枯れ空散以外には、農薬空中散布に関する法律はなく、昭和40年に出された次官通達「農林水産航空事業実施指導要領」があるだけでした。今回は農薬取締法第12条の6に基づいて、大臣が新たに基準を設けたということで、農水省の担当官は、より強い規制ができると説明していましたが、今までこれだけ広範な環境汚染を引き起こし、周辺住民の約1割が健康被害を訴えていることを考えれば、非常に遅いと言わざるを得ません。
 では、新たに設定されたその大臣の基準を見てみましょう。通達で言う「水質汚濁の防止に万全をきしていく」内容とはほど遠いものですが。
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 航空機を利用して行う農薬の散布に関する安全使用基準
 別表5に掲げる物質を有効成分とする農薬を航空機を利用して散布する場合の使用の場所及び方法等に関する基準は以下のとおりとする。
ア 市街地等人口密集地、河川等の区域及び浄水場、学校、病院等(以下「浄水場等」という。)の区域(以下「散布除外区域」と総称する。)では、散布を行わないこと。
イ 散布を行う区域(以下「散布区域と言う。)及び散布除外区域の境界、河川等、浄水場等並びに航空機の飛行の障害物の位置を明示した地図を作成すること。
ウ 散布を開始する前には、散布区域、散布除外区域及び航空機の飛行の障害物を示す標識を設置するとともに、イの地図に基づき、地上及び空中から、散布区域及び散布除外区域の境界、河川等、浄水場等並びに航空機の飛行の障害物の位置並びに当該標識の設置状況を十分に確認すること。
エ 散布は、散布除外区域に散布することがないよう、風向、風速等を十分注意し、かつ、ウの標識を常に確認しながら行い、強風等の場合は、直ちに当該農薬の使用を中止すること。
オ 雨、霧等により標識の確認が困難な場合又は航空機の飛行に支障がある場合には、散布を行わないこと。
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 と、このように、非常に簡単な内容が記されています。ここで、散布除外区域として上げられている市街地等人口密集地、河川等、浄水場、学校、病院等の区域というのは、例えば、学校ならば学校敷地内だということです。今まで学校の真上から農薬を撒いていたところは、少なくとも、学校敷地内には撒けなくなったということです。多くの県では、このような場所から100メートルとか200メートル離すようにと指導していますから、今回の農水省の規制は実態の後追いでしかないと言われてもしかたないでしょう。
 しかし、雨の時でもスケジュールを乱さないために無理して空散するということが、今までままありましたから、今後は雨や霧の時には、空散をやめさせることができるでしょう。
 また、河川での空散禁止は、今回初めてだされたもので、これをバネに水源付近での空散禁止をもっと押し進めることができるかと思います。(辻)

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作成:1998-04-01