内分泌撹乱物質にもどる
t03005#エストロゲン類似作用のある農薬規制の動き#94-10
 生殖や授乳に関連するホルモン「エストロゲン」は、乳癌や子宮癌の原因になったり、精子や精巣に影響を与えることが知られています。合成エストロゲンのDESは流産防止に使用されましたが、その母親からうまれた子供に癌や生殖器異常の発生が見られました。
 ところで、このエストロゲンと類似の作用を示す化合物として、有機塩素系農薬のDDT、その代謝物DDE、キーポン、ディルドリン、ジコホール、メトキシクロルやいくつかのPCBなどがあることがわかってきました。
 エストロゲン類似作用物質は、脂肪に溶けやすく、ヒトや動物の組織に蓄積し、その多くは胎盤経由して胎児に移行する性質を有します。そのため、環境や人体を汚染し、生態系に影響を与えているほか、男性の精巣がんや女性の乳癌を引き起こす恐れのあるものとして、今、アメリカで注目されています。
 93年に報告されたニューヨーク州での乳癌の女性58人と非乳癌の女性 171人を対象とした疫学調査では、血液中のDDEレベルが上位の90%以上にあるひとの方が、下位の10%以下にあるひとよりも4倍程乳癌になりやすかったがことが判明しました。アメリカ連邦議会では、ワックスマン下院議員が神経毒物、生殖系毒物、成長系毒物とともにすべての内分泌系異常を引き起こす物質の許容設定値を5年間停止するとともに、新農薬の登録に際しては、エストロゲン類似作用があるか否かを確認することを求める法律を提案しています。
 環境保護団体は食品における発癌の恐れのある物質の使用をやめさせる運動の一環として、この法律を歓迎していますが、全米食品加工業者の団体は、非科学的な法律だと批判しています。
 一方、先に乳癌と農薬の関係が示唆されたニューヨーク州では、なんらかの規制を行なうことが、また、メリーランド州では、ヒトに対する発癌性又はその恐れのある農薬を学校のグランドでの使用規制する条例が検討されています。
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作成:1998-04-01