室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t03804#シロアリ駆除剤井戸水を汚染−千葉県鴨川保健所の報告より#95-06
千葉県鴨川保健所は、隣家のシロアリ防除で井戸が汚染された事例とその対策を報告しています。以下、要約を紹介します。飲料水の汚染だと保健所がこれだけ迅速に調査してくれますが、大気汚染はまだまだのようです。万一、被害にあったら直ちに保健所に届け調査するよう要請しましょう。そういう声が大きくなると調査も行われるようになると思います。
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今回、隣家で行ったシロアリ防除により井戸水がクロルピリホスに汚染された事例が発生しましたので、その経過について報告します。
<発生場所>安房郡天津小湊町
<日時>平成5 年12月14日〜平成6年1月18日 シロアリ防除日平成5年12月8日
<調査経過概要>
*12月14日(火) 住民から町役場への通報
内容:井戸の中で飼育していたフナが死んでいるのに気がついた。今月の8日に隣家でシロアリ防除作業をした。9日には井戸水から異臭を感じたが気にせず、魚が死んだので驚いて届けた。なお、この井戸水は野菜の洗浄に使用する程度であった。
小湊町役場からの相談をうけて鴨川保健所では、同日午後現地調査を実施し、県薬務課に連絡し飲料水に対する苦情処理の体制をとった。
井戸:直径約1m 深さ約4mの素掘り 水面は地表より1m下
井戸水:有機溶剤様の臭気
使用防除剤:レントレク(有効成分クロルピリホス)
施工方法:木部処理として24L(クロルピリホス1%含有の油剤)土壌処理として110L(クロルピリホス40%含有の乳剤で使用時40倍希釈)
*12月15日(木) 採水した井戸水を県衛生研究所に持ちこみ、クロルピリホス等について分析を依頼した。
*12月20日(月) 衛生研究所よりクロルピリホスが0.29mg/L検出された旨の連絡をうけ、汚染の拡がりを知るため半径100m以内の井戸の調査を始める。
*12月21日 役場の調査により28件の井戸を確認、飲用目的及び地形等を考慮して採水を行う井戸8箇所を決定。あわせて範囲内の住民に事実を知らせ、調査結果がわかるまで飲用しない様指導するチラシを配布することとした。
*12月22日(水) 4班で採水、9検体を衛研に搬入、そのうち飲用していた2件について夜までに分析結果が不検出である旨連絡が入り、各世帯、役場に安全である旨知らせた。周辺区域の井戸の確認調査では、区域内96世帯のうち連絡がとれた69世帯のうち、60%にあたる42世帯で井戸を所有、そのうち7世帯が飲用、上水道がない世帯も3件確認された。
*12月24日(金) 衛研よりのこりの検体もクロルピロホスについては不検出との連絡、汚染の拡大はなかったことが判明、また汚染井戸ではクロルピリホスが0.096mg/L検出された。
この結果を受けてその日のうちに、@安全が確認されたのは殺虫剤成分のクロルピリホスであること。A飲料用とするためには他の項目(必須項目)の水質検査を定期的に実施することを内容とするチラシにより安全宣言をすることとした。
汚染された井戸のクロルピリホスの濃度については9日間で1/3に減少、さらに濃度を下げるため防除業者に対して井戸の清掃を実施するよう指示。
*12月29日(水) 業者が井戸の清掃を実施、井戸水を全量(約3.5t)くみ上げ、底部の土砂を取り除く。その後、壁部及び底部は次亜塩酸ナトリウム溶液で消毒を行った。
*1月6日(木) 井戸水を採水し分析を行ったところ、クロルピリホスが0.008mg/L検出された。クロルピリホスについては水道法に水質基準がないため、水質目標値0.004mg/Lを参考都市他。目標値を下回るまで検査を実施し、経時変化を見ることにした。
*1月12日(水) 井戸水を採水分析したところクロルピリホスは検出限界値(0.0004mg/L)未満であった。
*1月18日(火) 汚染された井戸の使用者に対して経過の説明、汚染の広がりもなく防除剤クロルピリホスも検出されなくなったのでこの時点で調査を終了とした旨を伝え了承を得る。又、井戸水についても野菜等の洗浄には使わず、庭の散水程度に使用するよう指示をした。
<まとめ>
○行政の対応について
汚染が確認されたのを受けて、薬務課及び衛生研究所の外に県水質保全課並びに館山保健所環境保全班と協議に入ったが、「千葉県地下水汚染防止対策指導要領」に規定されている4物質に該当していないため、要綱による対応が取れなかった。
現地調査のほとんどは、地元保健所と役場の合同で実施した。役場の職員と合同で調査を行ったことは、特に住民との接触には抵抗がなく実施でき、よりよい対応となった。
後日、水質保全課から、要綱の対象外物質であっても、必要に応じ技術面での援助等対応して行く旨の回答を得た。さまざまな化学物質が使用されている現在、このような地下水汚染事例時には、より専門的な知識を持っている部署の対応が望まれる。
○シロアリ駆除剤について
今回の事例は家庭において日常的に使用されているシロアリ防除剤に起因しており、施工の方法及び周囲の地質環境(特に井戸、河川の存在)に相違があるものの、他の地域でも起こり得る可能性があり特異的な事例ではないと思われる。施工にあたっては、井戸や河川(魚毒性が大のため)を含めた周囲の十分な環境調査が必要と考える。
又、使用された薬剤は農薬であるにもかかわらず、シロアリ防除という作業についてはなんらの法規則もないのが現状である。クロルピリホスは有機リン系の農薬に分類され、以前使用されていた有機塩素系農薬のクロルデンよりも急性毒性が強いため、防除業者に対する健康への影響が危惧される。最近になり防除家屋における居住者への健康影響や食品への吸着も問題として取り上げている。
農薬成分が身近な日常生活の中で使用されていることを再認識すると共に、健康や環境に対する影響が小さい薬剤を使用するよう心がけることが大切である。このような薬剤に対するさまざまな情報について住民に提供することも我々の重要な課題と思われる。
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作成:1998-04-01