街の農薬汚染にもどる
t03903#有害無益な車内農薬消毒−鉄道10社アンケートから#95-07
「地下鉄サリン事件」以降、各地で“異臭騒ぎ”が起こっています。原因は不明のものが多いようですが、ちょっと神経をとがらせていると、いかに、多くの薬剤が私たちの身の回りに使われているか気づくことでしょう。
ところで、皆さんは、電車、バスに乗って刺激臭がしたり、気分が悪くなったという経験はありませんか。これらは車内消毒が原因と思われます。そこで、反農薬東京グル−プでは、この車内消毒の実態を調べてみました。
なお、調査は、1993年に日本消費者連盟関西グル−プが関西地域で、車内消毒の実態を調査していますが、設問などはほとんどこれを踏襲しています。
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1.調査方法
1.調査対象 小田急電鉄、京王帝都電鉄、京浜急行 電鉄、相模鉄道、JR東日本、
西武鉄道、帝都高速度交通営団、東京急行電鉄、東京都交通局、東武鉄道… 以上10社
2.調査時期 1995年6月
3.調査方法 上記10社に「電車」「バス」両者について、アンケ−ト用紙を郵送。
回答を返送してもらう。
4.回収状況 10社すべてから回答。「バス」についても回答があったのは、相模鉄道、 東武鉄道、東京都交通局の3社。
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[質問1]薬剤消毒の有無
→「していない」と答えたのは、都営地下鉄のみです。 しないことで、今まで、なにか問題が生じたのでしょうか。その経験を他社と共有していってもらいたいと思います。
[質問2]薬剤の散布回数
→バスは1回/月が義務づけられています。
電車は1回/月から1回/年とおおきな幅があります。このような実施方法で、果たして効果がどの程度持続しているのか、科学的にも疑問です。
[質問3]散布目的
→衛生管理、車内消毒、殺菌、殺虫が目的とされています。虫では、ノミ・ダニの名があがっている会社もあります。特に、座席の部分にダニやカビが繁殖しやすいと思いますが、直接座席に散布しているところは後の設問にあるように都営 のバスだけです。
[質問4]散布薬剤名
→ミケゾール、フヂゾール、ネオデシゾール等にはオルソジクロロベンゼン(衣料防虫剤パラジクロロベンゼンの仲間、燃やすとダイオキシンが生成する)が、含まれますが、これは有機塩素系の殺虫剤で伝染病予防法では、ハエやカの幼虫に適用となっています。電車にトイレがあ るわけでなし、このような薬剤の効果がどの程度あるのか疑問です。また、上記の薬剤には、殺菌作用のあるOPP(柑橘類に使われる防カビ剤としておなじみ、動物実験で発癌性が認められている)やクレゾール(病院などで消毒剤としても使用されている)が配合されたものもあります。
有機リン系薬剤としては、ネオバルサンゾールにMEP(スミチオン)とDDVPが含まれています。小田急は、特急車のみ、スミチオンの特別サービスを実施しているようです。
エクスミン剤には、ピレスロイド系のペルメトリンが含まれますが、これは、アメリカのEPA(環境保護庁)が発癌性のある農薬として挙げている薬剤のひとつです。
SSK乳剤については、不明です。
[質問5]散布方法
→すべて噴霧ですから、薬剤の飛抹が散布個所以外に付着することは確実です。
[質問6]散布個所
→床や座席下に散布しているところがほとんどですが、座席そのものにも飛抹がかかることは、充分考えられますし、都営バスのように乗客が直に接する座席そのものに散布しているところもあります。
[質問7]散布実施者
→外部委託業者にまかせている会社が多いようです。
[質問8]散布前の害虫の確認
→しているのは、東急のみです。どのような害虫がどの程度いたのでしょう。
[質問9]散布後運転までの時間
→5時間以内というのが多く、京王が12時間以上、東武のバスが約10時間となっています。
質問11でわかるようにすべての会社は散布後の薬剤分析をしていないので、この時間で果たして、どの程度残留しているのか不明です。
薬剤処理後、車内は密閉された状態で放置されるのでしょうか。車内の換気は充分なされた後、出庫されているのでしょうか。
[質問10]散布記録の車内表示
→バスは法律で表示が義務付けられています。電車の場合は、そもそも実施する法的根拠がありませんから、各社対応はまちまちで、JRと相模鉄道、東武の3社が表示していると答えています。表示していない場合でも、その車両を何月何日に処理したのか、チェックをきちんとや っているのでしょうね。
[質問11]散布後の薬剤の残留分析
→いずれの会社も実施していません。薬剤臭のする車輌に乗り合わせるた経験もあると思いますから、車内の空気を汚染していることは間違いありません。また、散布個所に薬剤がどの程度の期間残留しているかもわかりません。
[質問12]散布後の虫死骸の確認
→東急と東武の電車が確認しているとなっています。どのような虫の死骸がどの程度みつかっているのでしょう。それも散布直後に薬剤で死んだと確証があるのでしょうか。
[質問13]散布の根拠とする法令
→バスの場合は、旅客自動車運送事業等運 輸規則第44条に1回/月の薬剤散布と実施内容の表示が義務づけられていますが、電車については、実施について何等法的根拠がないまま、薬剤散布が行なわれており、会社もそのことをちゃんと認識しているようです。
[質問14]散布に関する内規の有無
→内規のある会社もない会社もあります。
[質問15]散布薬剤の人体への影響について調査したことがあるか
→京王のみが調査したことがあると答えて います。その内容を聞きたいものです。
[質問16]薬剤散布以外の管理方法
→今後散布を再検討しようという動きもみられます。
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以上、各設問ごとに各社の回答内容をみてきました。
先程ふれましたように、電車の消毒は、道路運送法に準じて実施されているもので、法的な根拠はありません。また、消毒の意味も伝染病の発生時ならいざ知らず、日常的な散布はまったく無意味です。
さらに、使用薬剤をみますと、すでに毒性が明らかな有機リン系薬剤やその他にも安全性に不安なものが使われています。その上、薬剤による汚染調査や健康への影響の調査は行われていません。きちんとした薬剤の知識も調査もなく無責任な薬剤散布が惰性で続けられているわけです。車内消毒は有害無益と言うほかありません。
乗客にとって清掃の行き届いた車内は気持ちの良いものですが、車内消毒は逆に、車内薬剤汚染と呼ぶにふさわしいもので す。現にこれが原因で、気分が悪くなった、頭が痛くなったという利用者の声も聞きます。また、先般、南武線沿線のス−パ−でクレゾ−ル使用による異臭騒ぎがあったように、今後、この車内消毒による異臭騒ぎが起こる可能性も十分です。
以上の点から、反農薬東京グル−プでは各社に、早急に車内消毒をやめるよう申し入れるとともに、国に対しても、バスやタクシ−の車内消毒を義務づけた道路運送法の見直しを求めてゆくことにしています。
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作成:1998-04-01